大広間
「はっ。」
バルバルーの振るう大剣が、セルゲイナスのハルバードを弾き、体勢を崩す。そこでできた隙に大剣で切りつける。
「グギャー。」セルゲイナスの断末魔と共に右腕が宙を舞い、袈裟懸けに切り込みが入っている。
「ふん。」
パピンも体力は消費しているものの、ゴールデンゴーレムの数を順調に減らしていた。といっても殺すまでいかず、死にかけのものも多い。これが、今後の苦戦に繋がることになる。
傷つきあと一息にまで追い詰められたセルゲイナスが何か唱えようとする、そうはさせないとバルバルーがセルゲイナスに襲い掛かるが、ゴールデンゴーレムの妨害が入り失敗する。
「ベホマズン。」
セルゲイナスが唱えると、大広間にいる全ての魔物の傷が癒える。
「クソッ。」
「しまった。」
セルゲイナスの傷は完全に癒え、ゴールデンゴーレムは続々と立ち上がる。
バルバルー、パピンの状況は悪い方に向かっていた。
ゲマとパパスは一般人には見えないほどの速さで対峙している。パパスはメタルキングの剣を振るい、ゲマは死神の大鎌を振るいぶつかり合う。
「ふん。はあっ。」
「ホッホッホッホ。なかなかやるものでしょう私も。」
パパスは戦う前までは、大鎌を扱うことと、ゲマの細腕から接近戦を行えば、苦労せずに戦えるのではと考えていた。しかしゲマは細腕とは思えない力と、大鎌の重さを生かした流れるような動きで攻撃を繰り出し、パパスを攻め立てる。パパスの剣とゲマの鎌が何十合とぶつかり合い、激しい金属音を部屋内に轟かす。
パパスもゲマも共に全く傷つくことはなく、全くの互角の戦いであった。
「まさか接近戦でここまでやるとは!」
「私も貴方とデュランとの戦いを見てから少し腕を磨きましたので。」
ゲマはそう言いながら、嫌らしい笑みを浮かべる。自分の優位を確信しているからだろう。
「行くぞ。」
「いらっしゃい。」
再びパパスとゲマは、接近戦でぶつかり合い。今回も互角の戦いになると思われたが、そうはならなかった。「はあっ。ふん。」
「クッ、クッ。」
少しずつゲマが押され始める。パパスはゲマの戦いをよく見てその癖、弱点を見いだしたのだ。それからはパパスは攻勢にでて、ゲマは防戦一方になる。
キン、パパスはゲマの大鎌を弾き、切りつける
「まだまだですよ。」
「浅いか、しかし次できめる。」
強く踏み込み、完全にパパスの間合いに入る。ゲマが大きく息を吸う。
「ちっ冷たく輝く息か。」
パパスは大きく間を取る。冷たく輝く息は威力は高いが、範囲は狭い。
しかし、間を取ったパパスの目前には巨大な火球メラゾーマが迫っていた。
「しまった。」
パパスは咄嗟にドラゴンシールドを構えるが、抑えきれない。巨大な火柱が上がるが、ドラゴンシールドだけでは止めきれず、パパスは大きなダメージを受けることとなる。
「ホッホッホッホ。私のメラゾーマを受けてその程度とはやはり貴方は強いですね。しかし…」
ゲマが喋っている最中に、何処からか凄まじい爆発音と、衝撃波、そして塔が揺らめく感じがした。
「まさか!?」
「ホッホッホッホ。貴方のお仲間があの世に向かったようですね。」
「何!?」
パパスが少し気を反らし、隙ができた。その隙を見逃すゲマではない。
ゲマが宙を滑るように飛び、パパスに接近し、死神の大鎌を振るう。
パパスの隙を狙ったため、パパスの対応も遅れる、ただパパスも歴戦の強者であるため致命傷になるのは避けることができた。鎌の進行方向と同じ向きに飛ぶことにより、鎌によるダメージを極力減らす。
「先程の貴方と同じように浅かったみたいですね。しかし私は貴方と違い遠距離攻撃もあるんですよ。メラゾーマ!」
吹き飛び受け身をとっているパパスに、追い討ちとなるメラゾーマを放つ。
メラゾーマの直撃を受け、全身大火傷の為、意識が朦朧となっている。かなりの精神力で意識を保ち、パパス最強の、いやこの世界(ドラクエの世界)屈指の回復魔法ホイミを唱えようとする。しかし、もう死神は目前に迫っていた。「苦しまないように、首を跳ねてあげますよ。私の優しさにあの世で感謝してくださいね。」
ゲマは、この世のものとは思えないほど残忍で、冷酷な笑みを浮かべ、死神の大鎌を降り下ろす。
「パパスさんに手を出すなー。あと鍵返せー。」と言う声と共に、灼熱の炎がゲマを包みこむ。
「何者ですか。」
灼熱の炎に焼かれながらも、なんとか炎を振り払い、ゲマは尋ねる。
パパスの危機を救い、ゲマに手傷を与えたのはプオーンであった。
「まさか死に損ないで力を失った貴方に、邪魔されるとは全く思っていませんでしたよ。」
ゲマはいつも通りの笑みを浮かべてはいるが、そこには明らかにかなりの怒りが込められている。
「パパスさんは、殺らせない。そしてお前からルドルフに貰った鍵を取り返す。」
「ホッホッホッホ。不意打ちが効いたからといって、いい気にならないでもらいたいものですね。貴方には痛みにもがき苦しみながら、死んでもらいましょうか。」
「私の大事な仲間に手は出させん。」
「!!!なぜ貴方が、貴方はもう死にかけだったはず。」
ゲマが驚きの表情で見つめる先には、大火傷と鎌による傷を癒したパパスが立っていた。
「プオーンが作ってくれた時間で回復することが出来たのだ。プオーンありがとう。」
「はい、パパスのお役にたてて嬉しいです。」
「あとは任せてくれ、もうこのような失敗はしない。」
「本当にしつこいですね。つぎこそは跡形もなく消し去ってくれる。」
パパス対ゲマの第2ラウンドが始まる。