ポートセルミの港
「これは凄い。」
「大変よい船を頂きましたね。ルドマンさんに感謝しなくては。」
「これほどの船をくださるとは、ルドマンさんは本当に喜んでおられたんですね。」
「ただの成金じゃねえのか。」
「ルドマンさんは成金じゃないよ。いい人なんだよ。」
「いったいいくらぐらいの船なんだろうか。」皆がルドマンにもらった船を見て思い思いの感想をこぼした。それほどルドマンがくれた船が立派であったからだ。
「皆さん、わしがこの船の船長を勤めるボルカノといいます。よろしくお願いします。」
皆が船に見とれていると、その船からすさまじくガタイがいい男が降りてきて自己紹介した。この船長のボルカノと船員は、全て優秀なメンバーで、ルドマンがお金をかけて集めてきた精鋭であった。
「こちらこそよろしくお願いします。私はパパスと言います。このメンバーのリーダーを勤めているが、気軽に話して欲しい。互いに敬語なしで話そうじゃないか。」
「おお、そっちのほうが話しやすい。他のお仲間さんもよろしく頼むよ。」
「よろしくお願いします。私はレイシアと言います。」
「俺はバルバルーだ。」
「私はパピン。」
「わたくしめはサンチョと言います。」
「僕はプオーンです。」
皆自己紹介をする。あまり些細なことを気にしない男たちであるから人間以外がまじっていても気にしなかった。
「ではボルカノ船長。天空の塔までよろしく頼む。」
「よし、出港するぞ、てめえら配置につけ。」
船はポートセルミ港を出航する。
「うわ~凄いな。僕は初めて船に乗ったよ。」「まあ確かにお前は初めてだろうな。あの図体じゃあな。」
「幻魔の世界には海ってないのか?」
「まああるが。俺もプオーンと同じく初めて船に乗ることになったんだけどな。」
プオーン、バルバルー、パピンはノンビリと船旅を楽しんでいる。
パパスとレイシアは地図を見ながらボルカノと話ている。サンチョは船室でリュカの面倒を見ている。
まあ、船の中では、パパスたちは、出てくる魔物と戦うだけしか仕事がないので、このようなことになっている。
「皆さん。ボルカノさんから話を聞きましたが、天空の塔がある大陸までは約1ヶ月ほどかかるようです。なので皆さんはゆっくりしていてください。手強い魔物が出たら及びしますので。
「僕はここで海を見てるよ。」
「俺は少し寝てくるかな。」
「う、なんか私は気分が悪くなってきたんで休ませてもらいます。」
ということで各々行動することになる。
プオーンは鼻唄を歌いながら熱心に海を見ている。
「楽しそうですね、プオーンちゃん。」
「うん。とても楽しいんだ。いつまで見てても飽きないよ。」
「じゃあ私も、船旅を楽しみましょう。横いいですか。」
「うん。僕もお姉さんと一緒に海を見ていたいから。」
ゆったりと時間が過ぎていく。しかし、そのゆったりとした船旅は長くは続かない。
「魔物だ。パパスさんたち、頼むぜ。」
「よし、行くぞ。」
「体を動かしたくてウズウズしてたぜ。」
「私には遠くの敵を任せてください。」
パパス、バルバルー、レイシアで敵を迎え撃つ、プオーンは小さくなってからあまりにも弱くなりすぎていたので後衛もしくは待機ということになっており、強さが戻ってきたら戦うということになっている。
「乗り込んでくるぞ。」
船員が言うと同時に幽霊船長が船に這い上がってきた。船の前方には巨大な深海竜、船の周りには痺れクラゲが大群で取り囲んでいる。
「よし私は幽霊?船長を。(幽霊というより機械だな。)」
「じゃあ、俺は深海竜だな。」「では、私はクラゲを相手します。」
幽霊船長は船員もよく遭遇する敵ではあるが、意外と強く、たった一人で船の船員が全滅することもある。
深海竜は恐怖の対象でよく船ごと沈められるということが度々ある。
痺れクラゲは一匹一匹はたいしたことはないが大群で襲ってくると、船が進めなくなり困る程度である。
やはりそれぞれの魔物に苦戦するのではと船員は思っていた。しかしそれは杞憂であった。
「はあ!」
パパスの洗練された剣の一振りで両断されて動かなくなる。
深海竜はバルバルーの剛剣で首を落とされ即死、痺れクラゲの群はレイシアの上級閃熱魔法ベギラゴンで一匹残らず消し飛んだ。
もう戦いというより虐殺とでもいうような戦いであり、船員は呆然としていた。
「お前らすげえな。これで安心して船を動かすのに専念できるぜ。」
ボルカノがそう言うと我に返った船員達が同意する。
「おう任せてくれ。」
パパスがボルカノに答える。
しっかりと役割分担がなされ、船は進んでいく。