サラボナ
サラボナの町はルドマンが各地で雇ってきた傭兵や、腕に自信のある者が金を求めて集まっていた。パパス一行はまずは宿をとりそれからルドマンとの面会を求めるようにしようということになった。
幸いにもルドマンの元に集まった兵士はルドマンが特別に用意した宿泊所にとまることになっていたようで、宿は問題なく確保できた。
「何故ルドマンさんがここまで多くの傭兵や腕のたつ者を集めているのか、少し町で情報を集めてみましょう。」
とレイシアが提案するので、今日いっぱいは役にたちそうにないバルバルーとパピンを宿に残して、パパス、レイシア、サンチョの3人が情報を集めるために町に出ることにした。ついでにいうとパパスは背中にリュカをおぶった状態である。
町に出て傭兵や兵士に理由を聞いてみるが給金がいいからきたという話ばかりでなんのために集められたのかは分からないという者がほとんどであった。なかには魔物の討伐に呼ばれたというものがいたが、ここまでの人数が必要なのかという意見も聞かれた。
町の人に聞いても噂ばかりで確実性のある情報は得られなかった。ただルドマンは屋敷にいるはいるが、誰も会うことはできないだろうという情報はありがたかった。
パパス一行は宿屋に戻ってきてこれからのことを決めることにした。
「このままてをこまねいていてもしょうがないので、いっそのこと私たちもルドマンさんに会えるかも知れないので傭兵として雇ってもらいませんか?」
「そうだな、このままルドマン殿が自由の身になるのを待っていたら、いつになるか分からないからな。いっそのってみよう。」
「それがよいとわたくしも思います。」
「いいんじゃねえか。」
「私もそれでいいと思います。」
レイシアの提案をパパスが了承し異論を唱える者もなく、皆が了承したので、明日皆でルドマン邸にいこうということになった。
次の日
パパス一行がルドマン邸に着くと既に多くの傭兵が集まっていた。どうやらルドマンが集まるように呼び掛けたらしい。ざっとみても200~300人ほどいるのではなかろうか。どうするべきかとパパスが考えていると、ルドマンが屋敷の二階のベランダにでてきた。
「皆さんよく集まってくれた。皆に集まってもらったのはある魔物を討伐してもらいたいからだ。」
ルドマンが今回集まってもらった理由を発表すると、場がざわつく。
「こんなに人数が必要なのか。」
「魔物の数が多いのだろう。」「俺一人で十分だ。」
等々色々な話が聞こえてくる。ルドマンが手を叩きざわつきを治めて話を再開する。
「今回討伐して欲しい魔物はブオーンという巨大な魔物だ。町一つ軽々と壊す力を持っている。集まってくれた者皆に5000ゴールドを与え、倒してくれた者にはなんでも望む物をあたえよう。」
町一つ壊せるという話にはかなりのインパクトがあったが、5000ゴールドということと、なんでも望みをかなえるということで恐怖よりも物欲のほうが勝ち場が盛り上がる。どの傭兵もやる気になったようだ。ルドマンが言うにはその魔物はいつ町にやって来るかはわからない。ただ2~3日中には必ず来るそのため待機していて欲しいということだった。そのため解散ということになった。
サラボナを一望できる丘
この騒動を引き起こした禍々しい男が邪悪な笑みを浮かべて見下ろしていた。「あの中にわしの意に添う者がいるといいが。居なければいないで人間の断末魔が聞ける。どちらに転んでも悪くない。」
と物騒なことを呟いている。
「このような所で何か悪巧みですか?」急にローブを纏った男が現れる。
「ゲマといったか。わしになにかようか?」
「貴方がなにやら面白そうなことをしているので少々気になりまして。」
ゲマと呼ばれた男がそう答える。
「お前はこそこそ人間の子供を拐う仕事があるのではないか?」
皮肉を込めた言葉を投げ掛けると、
「確かにそのような仕事が私にはありますが、それは部下の者が代わりに行っていまして。私は貴方の華麗な仕事を拝見して学ばせてもらおうと思いまして。」
「気にくわんやつだ。」
「よく言われます。ホッホッホッホ。」
ゲマのほうが一枚上手であった。
話が一時止み、禍々しい男とゲマは一点を見つめる。
「ほう、早かったな。もう少し時間を要すると思っていたが。」
男とゲマの視線の先には巨大な魔物が祠を破壊しながら立ち上がるところであった。