二話との繋がりがへんかもしれませんが随時直していくのでご容赦ください。
まるで先ほどまで戦争でもあったかのような荒れ果てた城内、壁には人間の力では到底つけることが叶わないであろう穴があき、飛び散った血痕などもついている。元は教会であったろう場所では破壊されて砕け散っているステンドグラスの破片がそこらじゅうに散らばり、足の踏み場がないほどの凄惨な状況が広がっている。
そのような場で二人の男性が言い争っている。
一人は熟練の戦士とも言える風格を備えた男、もう一人は身なりはいいが、少し気の弱そうな男である。
「兄さん、こんな大事な時に城をほって出ていくというのですか。」
「たしかに私にとってこの生まれ育った城は何物にも代えがたいものだ。しかし比べることができないぐらいにマーサも大事な妻だ。
この城ならば、お前が治めていけば私が治めていた時と変わらずよい国であり続けられよう。
しかし、マーサはというと、私しか助けだせる者はいないのだ。分かってくれオジロン。」
気の弱そうな男、オジロンが必死の形相で男を説得しているようであるが、男は頑なに受け入れようとはしない。
いたちごっこの議論が続き、男は嫌気がさしたのか「ここまでだ。」といい城を出ようとした時であった、
「お待ちください。」
去っていこうとする男の背に待ったをかける声が広間に響き渡った。
その声は凛とし、また力が込められた声であった。
「レイシアお前も私を止めるのか。」
男は少し苛立ちを込めた声で待ったをかけた者、レイシアに尋ねる。
「はい、そうです。」
普通の者であれば、怒気のこもった男の問いにたじろいでもしょうがないほどのものであるが、レイシアは男に臆することなく淡々と答える。
「なぜ私を止める。」
「今パパス王が行かれたとしても、御本懐をお遂げになることは難しいと判断したからです。」
レイシアとパパスの口論が広間に響き渡る。
先ほどまで口論していたオジロンは入っていくことすらできずにオロオロしている。
「お前の言うことだ、理由もなしに言うとは思えん。理由を述べてみよ。」
「はい。では」
パパスは幾分冷静さを取り戻したのか、レイシアの止める理由を静かに聞き始めた。
「理由としてあげられることは主に二点あります。
一つ目は、パパス王の装備です。」
「私の装備?」
パパスは全く予期していなかった発言に戸惑いの表情を浮かべる。
さてパパスの今の装備はというと。
E パパスの剣
E 皮の腰巻き
以上である……。
レイシアでなくとも誰もが考え直してくださいと言うであろう装備である。
しかしながらとうの本人はなぜ装備が問題であるかまるで分かっていないのか困惑の表情である。
「はぁ、王はお分かりではないようですが、今の装備では王の技量を持ってしても、この城を襲撃した魔物には叶うことはないでしょう。
王であるからこそ、この周辺の魔物とは戦えていますが、一般的な兵士であれば、スライムナイトでも苦労するレベルの装備です。」
「そ、そうだったのか。」
パパスはたぐいまれなる力を持っていたこと、そして、王の身分で産まれたことが引き起こした悲劇であった。
パパスは信じられないといった様子でレイシアの話を聞いており、納得できないで隣を見ると、隣に来ていたオジロンがパパスの目を見て深く頷いた。
「えっと、では二点目にいかせてもらいますね。」
今にも崩れ落ちそうなパパスを気にしながらも仕切り直して、レイシアは話を進める。
「二点目は、王の強さです。」
「私の強さ。」
これには先ほど頷いていたオジロンも首を傾げる理由であった。
すでにパパスの強さは、人間の強さを遥かに越えていた、世界の中でも三本の指に入るといってもよい強さである。ならばなぜ?皆が思う疑問にレイシアは徐に口を開いた。
「王はたしかに大変なお力をお持ちになっております。
しかし、それが王の限界ではありません。
まだまだ強くなれる余地が残っています。
そして、このグランバニアの地が王をより高めるのにもうってつけの場所でもあるのです。」
パパスとオジロンはレイシアの力説をじっと聞き入っていた。
「まだ私は強くなれるのか?
強くなれればマーサを救い出すことができるのか?」
パパスは神に救いを求めているかのようにレイシアに弱々しく問いかける。
「勿論です。マーサ様の救出は少しあとになりますが、私の指示にしたがっていたたければ、王の御本懐は必ずお遂げになることができると断言いたします。」
レイシアの力強い宣言にパパスは希望の光が見え始めていた。
「明日から頑張りましょう。」
「ああ、頼む。」
パパスの再び力がこもった声に笑顔で返すレイシアであった。