「で、言峰はいないと…」
「そう言っているであろう雑種!久々に門を開く者が現れた故にこうして会話に興じてやっているだけでもありがたく思え」
「なんでさ…」
勢いよく扉を開けた俺を出迎えたのは金髪の青年…というよりもギルガメッシュだった。
「フハハハハハ!良く来たな迷える子羊よ、何を下らぬことで悩んでいるかは知らぬが話せ!我が導いてやろう!」
そっと閉じた。
「待てぃ!悩みを抱えたまま過ごす余生は今よりも下らぬ物になりかねん!
開けられた。
引きずられた。
懺悔室に入れられた。
「座れ、我が許す!」
座った。
「話せぇい!」
「あの、言峰神父は…?」
「む、あ奴なら今は代行者としての仕事とやらでイギリスだ」
えぇ…だからってお前が神父代行するなよ。
「あ奴め留守は任せるとぬかしおった、つまりは我にその職を一任したということに相違ない、であろう?」
「あ、あぁ、そうだな」
「フハハハハハ!そうであろうそうであろう!我の考え其れ即ち定めなり!」
ダメだ、一気にまともに話す気が無くなった。
というかテンションが高い、俺の覚悟を踏みつぶされたみたいに感じたぞ。
「まぁ我の話を聞け、我はギル…ギルガメ=シュバビロウと言う」
ダッッッサ!!
偽名名乗るにしてももう少しマシなのあっただろ、なんだよそのハシビロコウみたいな名前。
「えぇい、面倒だ、王と呼べ」
じゃあ名乗るなよ!
「小僧、名前は?」
「衛宮士郎だ」
「む、衛宮…?」
ん?まずったかな…
「衛宮とは珍しい名前をしている、過去に我の婚姻を邪魔した者もその様な名をしていた」
「婚姻?アンタ結婚してたのか?」
「我のことは王と呼べと言っているだろう下朗!…まぁいい、我に相応しき黄金律すらも嫉妬する美しさを持った女が過去にいたのだ」
黄金律すら嫉妬するって初めて聞いたな。
「へぇ、さぞ美人なんだろうな」
「たわけぇっ!!」
煩いなぁ…。
「貴様如き想像力で思い描ける様な者では無い!あの者を言葉で表すのならば…そう、なんだ、その…」
考えてから喋れよ…。
「言葉で言い表すことは出来ぬ!」
お前の前振りなんだったんだよ!?
「まぁ俺の想像力じゃ及ばないのは分かったよ、それで、どんな人なんだ?」
こいつ結婚とか出来るのかよ、なんか逆玉狙いの人に引っ掛かりそうなタイプだけど。
「む…思い出を語れば幾つもあるが、やはり我の記憶に残りしは月下の晩餐よな」
意外と素敵だ。
「我とセイバー、そしてイスカンダル王と共に酒を呑み交わしたあの夜の月は美しかった」
…は?
セイバーって言ったか今?
「お、お前セイバーと結婚してたのか!?」
「小僧ッ!?何故セイバーを知っている」
しまった!
いや、待て、ここは何とか切り抜けるんだ!
「違う、セイバーっていうと剣士だろ?そんでお前は王を名乗った、それなら従者たる剣士と結婚したのかって聞きたいんだ」
「ふむ、なるほど道理で驚く物よのぉ、我を王と認め従者との結婚を信じられぬのは当然のこと、我程の男であれば同じ王たる存在と婚姻を結ぶのが当然だからな」
何言ってんだこいつ。
「安心せよ!セイバーとは仮の名、我と同じ王であり実力をも兼ね備えた女だ!!」
「へぇ」
「言葉も無いか!まぁそうだろう、我が認めるなどそうそう無いことだ、それ程の価値があるということだ」
「へぇ」
二へぇだ、やったなギルガメッシュ、二百円だぞ。
「おっと、本題を忘れていた、小僧、貴様確か言峰に会いに来たと言っておったな」
「あ~、うん、そうだな」
帰りたいって言ったらどういうリアクションをとるだろうか…。
「今はおらん!そして我はここにいるのは飽きてきた!よって街へ赴き買い物をするぞ!付き従うことを許可してやろう、付いてこい!」
「は?」
「フハハハハハハ!王の外出だ!」
「ちょ、う、腕を引っ張るな!」
…はぁ、急過ぎるけど、付き合うしかないみたいだ。