魔法先生も異世界から来るそうですよ!   作:さゆとき

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第5話

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 店内に入った僕たちは白夜叉さんに連れられて、和室の部屋に案内された。

 

「さて、もう一度自己紹介しておこうかの。私は4桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。

 この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

 黒ウサギさんの口調がだいぶ荒くなってる、一体いつも何をされてるんだか──

 耀さんが小首をかしげながら白夜叉さんに質問する。

 

「外門ってなに?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門のことですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つもの達が住んでいるのです」

 

 なんでも此処、箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられているらしい。

 そして、外門は内側に行くほど数字は若くなり、同時に強大な力を持つということだ。

 

「──超巨大タマネギ?」

「──何か違いますね」

「なら、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかと言えばバームクーヘンだ」

 

 そうかバームクーヘンか、なるほど───

 

「ふふ、うまいこと例えおる。その例えなら今いる7桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の4つの区切りの東側にあり、外門のすぐ外には“世界の果て”と向かいおる場所になる。

 彼処にはコミュニティに所属はしていないものの強力なギフトを持ったもの達が住んでおる。

例えばその水樹の持ち主などな───

 

 ───して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

 

「いえいえ。この水樹は十六夜さんが蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

「なんと⁉︎ゲームクリアではなく直接倒したとな⁉︎ではその童は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそうは思いません。神格なら一目見ればわかるはずですし」

 

「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほどのパワーバランスがある時だけのはず。───蛇と人ではどんぐりの背比べなのだが」

 

 なんでも神格というのは、生来の神様そのものではなく、種の最高ランクに体を変幻させるギフトを指すらしい。

 そして、神格を持つと他のギフトも強化されるから、箱庭のコミュニティは各々の目的のために神格を手にすることを第一目標にしているというだ。

 ていうかそれよりも、

 

「白夜叉さんはあの蛇神さんと知り合いなんですか?」

 

「うむ、なにせアレに神格を与えたのはこの私だからな。もう何千年も昔の話だがな」

 

「へぇ? じゃあオマエはあの蛇より強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東の“階層支配者(フロアマスター)”だぞ。この東側の4桁以下にあるコミュニティでは並ぶものがいない、最強の主催者(ホスト)なのだからの」

 

 あっ、そんなこと言ったら──

 

「そう──ふふ。ではつまり、あなたのゲームをクリア出来れば、私たちのコミュニティは東側で最強のコミュニティということになるのかしら?」

 

「無論そうなるのぅ」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

 こうなるよね〜。もう少し相手の実力を図れるようになってくれると僕も心配が減るんだけど───

 

「え、ちょ、ちょっと御三人様⁉︎」

 

「よい、黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えてる故な。それよりもネギ、おんしはやらんでもよいのか?」

 

「ええ、想像通りだとしたら流石に準備が──」

 

 絶対すぐには終わらないだろうし、被害が尋常じゃないことになるからね

 

「ふふ、そうか。まあよい───。さておんしら、ゲームの前に一つ確認しておくことがある」

 

 すると白夜叉さんが袂から“サウザンドアイズ”の旗印───向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し一言告げてきた、

 

「おんしらが望むのは“挑戦”か────もしくは“決闘”か?」

 

 白夜叉さんが言った直後、僕らの周りに爆発的な変化が起こった。

 白い雪原と凍る湖畔───そして、水平に太陽が回る世界に僕らはいた。

 

「────なっ⁉︎」

 

 あまりの異常さに、十六夜君達は息をのんだ。

 唖然として立ち竦む三人に、白夜叉さんが問いかける

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”───太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」

 

「水平に回る太陽と──そうか、白夜と夜叉。あの水平に回る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

 さて、この圧倒的な実力差でどんな返答をするのかな

 

「───参った。やられたよ。降参だ白夜叉」

 

「ふむ? それば決闘ではなく、試練を受けるということかの?」

 

「ああ、これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

 十六夜君の可愛らしい意地の張り方に、白夜叉さんが腹を抱えて哄笑を上げた。

 一頻り笑った後、白夜叉さんは

 

「く、くく───して、他の童達も同じか?」

 

「───ええ。私も試されて上げていいわ」

「右に同じく」

 

 ふふ、良かった良かった、さすがに決闘って言ってたら止めなきゃだったからね

 

「も、もう! お互いに喧嘩をする相手をもう少し選んでください! “階層支配者”に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う“階層支配者”なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前のことじゃないですか‼︎」

 

「何? じゃあ元・魔王様ってとこか?」

 

「はてさてどうだったかな? とこれでネギ、おんしには決闘を受けてもらいたいんじゃが良いか?」

 

「なぜですか?」

 

 みんなと一緒で挑戦でいいんだけど、

 

「いやなに、ナギ・スプリングフィールドの息子の実力が気になっての」

 

「まさか、父さんもここにきたことがあるんですか」

 

「あぁ、と言っても三年ほどじゃったがの。確か紅き翼(アラルブラ)といったコミュニティを作っておったの」

 

「なんと! ネギさんのお父様は、あの紅き翼(アラルブラ)のナギ・スプリングフィールド様だったのですか」

 

まさかホントに来てるとは。

ていうか父さんは一体なにしたのさ?

 

 

「そのナギさんと紅き翼(アラルブラ)は何をしていたのかしら?」

 

「まず紅き翼(アラルブラ)ですが、このコミュニティは対魔王を掲げ黒ウサギ達のコミュニティと同盟を結んでおりました。

 コミュニティはリーダーのナギ・スプリングフィールド様、そしてアルビレオ・イマ様、近衛詠春様と三人だけでしたが、個人の戦闘力が非常に高く、特にナギ様は魔王側からは【赤毛の悪魔】と恐れられる程でした」

 

「「「「すごっ‼︎‼︎」」」」

 

 素で4人の声が揃うほど驚いたよ。ていうか、まさかそんなことしてたなんて。

 

「まあ、そういうわけでの。ネギ、おんしの力が見てみたいんじゃが良いか?」

 

 ん〜、まぁ僕の力も試してみたいからいいかな

 

「わかりました、“決闘”、受けさせてもらいます。」

 

「うむ、良い返事じゃの」

 

 そんなことを話していると、山脈の方から甲高い鳴き声が聞こえてきた。

 

「ふむ、あやつか。そうだの、おんしら3人にはこのゲームに挑戦して貰おうかの」

 

 そう言うと白夜叉さんは双女神の紋が入ったカードを取り出した。そしたら虚空から光が輝く羊皮紙が現れて、そこにゲーム内容を記述していった。

 

【ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

 

 ・プレイヤー一覧

  逆廻 十六夜

  久遠 飛鳥

  春日部 耀

 

 ・クリア条件

グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

 ・クリア方法

“力”“勇気”“知恵”の何れかでグリフォンに認められる。

 

 ・敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します

 

  “サウザンドアイズ”印】

 

 

「私がやる」




はい、今回も読んでいただきありがとうございます。

今回はちょっと解説を……

紅き翼ですがこれは戦争が終わり、ナギとアリカ様が結婚した後に箱庭にきたものとしています。そして時間ですが、箱庭では三年となっていますが元の世界では半年ほどいなかったという感じにしました。

それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。

次回、決闘、ネギv.s白夜叉
お楽しみに〜

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