◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
「えー、これが俺の義娘のヴィヴィオ、不知火の継承者です」
「なんてもん教えてんだお前は!?」
「泉ヶ仙ヴィヴィオです、よろしくお願いします!」
「お、おぉ……」
珱嗄がリリカル組の紹介をする。
不知火の後継者ということでクロゼが物凄い形相で突っ込んできたが、ヴィヴィオが純粋な表情で自己紹介すると、その綺麗な瞳と子供ということでどういう対応をすればいいのか分からずクロゼは身を小さくしてしまった。
珱嗄はそんなクロゼを内心鼻で笑いながら、紹介を続ける。
「で、この子が俺の弟子のアインハルトちゃん。この子にも不知火教えました」
「お前はなに? なんで
クロゼが珱嗄の暴走が止まらないとばかりに突っ込む。ちなみに貧者の薔薇というのは、ハンターハンターの世界で核爆弾の様な威力を持ち、爆発後広範囲に渡って猛毒をばら撒く最悪の爆弾のことである。
核爆弾と評されたアインハルトは一歩前に出て、ハンター組……特にクロゼを睨みつけながら自己紹介した。
「師匠の『一番弟子』のアインハルト・ストラトスです、よろしくお願いします」
「よろしくねー」
一番弟子を強調するアインハルト。クロゼはアインハルトに睨みつけに気圧され、一歩後ろに下がった。クロゼは正直珱嗄の弟子である意識はあまりなかったし、最後は親友であったから弟子であることを誇りに思っていた事も無い。
故に、アインハルトに何故睨まれているのか分からないのだ。正直、自分より年下の、しかも美少女から睨まれていることが物凄く悪人になった気がするので、居心地が悪くなった。
対照的に、ピトーはアインハルトに気さくな笑みを浮かべながら挨拶を返した。
「で、この二人が俺の義理の妹で、茶髪が八神はやて、金髪がアリシア・テスタロッサだ。どっちも不知火並の規格外に強化しました」
「なんなの? 俺結構強い自信あったのに此処には化け物しかいないの? 帰りたくなってきたんだけど」
「分かる、分かるでクロゼさん……兄ちゃんは本当ぶっ飛んだことしかせぇへんもんな」
「以外とまともだった! えーと八神、はやてちゃんか……アンタとは仲良くなれそうだ」
「せやな、改めまして私は八神はやてや。兄ちゃんには小さい頃に家族になってん」
「実際は住むとこなかったから一人暮らしの小娘に取り入ったんだけどな」
「「最悪
息の合ったツッコミを繰り広げるはやてとクロゼ。珱嗄はそんな二人を華麗にスルーして別の方向を見ていた。
「ねぇお兄ちゃん、私達が死んでからお兄ちゃんはどうなったの? 彼女出来た?」
「出来てないけど」
「このへたれ」
「うるせぇ生涯独身が」
「言ってはならないことを言ったな貴様」
珱嗄に無視されたはやてとクロゼが肩を組んで愚痴の言い合いを始めたので、珱嗄は話し掛けて来たアリシアの対応をしたのだが、どうやら言ってはならないことを言ったらしく、アリシアは光を失った瞳で見上げて来た。ので、とりあえず目潰ししてみる。
「うぎゃああああああ!!?」
「あ、ごめんとても濁った眼だったからつい」
「謝ってない! 謝ってないよねそれ!?」
「目薬いる?」
「貰う……うー、あー……」
珱嗄が何処からともなく取り出した目薬を受け取ってそれを点すアリシア。
「あ、ごめんそれシャンプー水で薄めた奴だ」
「おっそい! 何もかも遅いよ!! ふぉぉぉおおおお!!?」
眼の痛みにぼろぼろと涙を流すアリシア。珱嗄はそんな彼女を見下ろしながらゆらゆら楽しげに笑う。すると、ヴィヴィオとアインハルトが駆け寄ってきた。
「パパ!」
「師匠!」
「なんだ?」
「アインハルトさんがクロゼさんと戦いたいんだって!」
「やります、一番弟子は私のものです」
ヴィヴィオが用件を伝え、アインハルトが妙に鋭いシャドーボクシングを始めた。珱嗄はそんな二人の幼女に苦笑しながらクロゼの首根っこを掴んだ。
「クロゼ、お前ちょっとこの二人と試合やってやってくれないか」
「は? ……あーまぁ、いいか……どうせもう死んでるから死なないし」
「よろしく」
「おう……じゃあやろうかっ―――!?」
「チッ……躱しましたか……」
「オウカ! この子もうやだ! 俺何かした!?」
「さぁ! 行きますよクロゼさん!」
「うわあああああぁぁぁぁぁ………!!」
アインハルトはやる気満々、珱嗄に助けを求めるクロゼはヴィヴィオによって引き摺られて行った。珱嗄はその様子をとてもいい笑顔で見送った。
全員、久しぶりの再会にテンションが上がっているのかとても楽しそうだ。珱嗄も、親友や娘、義妹、弟子、ペット等々、普通の家族よりも深く繋がっている家族のような関係の皆との再会を楽しんでいるようだった。
だが、この中で一人だけ不満気な表情を浮かべている者がいた。
そう、安心院なじみだ。
彼女はこの中で一人、珱嗄の過去を知らない人間だ。だから、珱嗄達が楽しく話をしていようと混じれない。一人だけ仏頂面で机に座っていた。その視線の先にいるのは、珱嗄だ。
自分の知らない珱嗄がいる。数億年一緒にいたとしても、けして知る事の出来ない珱嗄の大事な思い出がある。それが少しだけ、嫌だった。
「………」
そんな思いは、考えれば考えるほど膨らんでいく。
そして、心の中で溜まった嫉妬は、安心院なじみを無意識に動かした。
「―――と……?」
「……」
「どうした、なじみ?」
気が付けば、なじみは珱嗄の袖をちょこんと摘まんでいた。珱嗄はなじみに気が付き、少し様子がおかしいことに怪訝な表情を浮かべた。
だが、なじみはずっと俯いたままだ。
そうしていると、他の面子もその様子に気が付いたようで、きょとんとした様子で珱嗄となじみに視線を送った。
「なじみ?」
「珱嗄………」
なじみは俯いたままか細い声で口を開いた――――