◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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番外箱 いつか言ってたなじみへのドッキリ話 ③

 教室の中で、かつての仲間と再会した珱嗄と連れて来られた安心院なじみは、少しばかりの談笑を踏まえながら、次の教室へと向かうことにした。入ってきた扉とは別にもう一つ扉がある。その扉を潜ることで、次なる世界へと移動する事が出来るだろう。

 

「コラコラ、ピトーもなじみもそろそろ落ち付け」

「ここだけは譲れないね」

「僕の台詞だよ」

「うるせぇな、別に俺はお前らのモノじゃねぇよ。喧しい」

「うぉーい!? 随分見ない内にお前結構辛辣になったな!?」

 

 珱嗄が未だにぎゃーぎゃーと騒ぐピトーとなじみに冷たく言い放つと、クロゼは心底驚いた様にツッコミを入れた。

 なんというか、珱嗄と相性のいい者同士が一同に会すると、相性は悪い様だ。

 

 さて、珱嗄の言葉で不本意ながらも、むくれながらも、一旦落ち付いた二人を見て、珱嗄は次の世界に行こうとする。

 

「で、だ。二人に説明しておこうか……とりあえず俺が昔に出会った仲間……っていうのもお前らが死んだ後に出会った奴らに会いに行くんだけど……一緒に来るか?」

「へぇ、どんな奴らだ?」

「俺の娘だ」

 

 珱嗄の言葉で沈黙が訪れた。時が止まったようにも思えた。全員の思考が、等しく停止していたのだ。そして、数秒の後―――三人は同時に自分の時間を取り戻す。

 ハッとなった後、同時に珱嗄に詰め寄った。

 

「ど、どういうことだい!? 娘って……珱嗄、何時の間に娘なんて……!」

「そうだよ! ボクとは遊びだったの!?」

「お前娘出来たのかよ! っていうかオウカの娘とか……全然想像付かない……!」

 

 三人の反応は三者三様。娘がいた事実を問うなじみ、自分との関係が幻想だったのかと問うピトー、そして珱嗄の娘がどんな子なのかと想像するクロゼだ。

 とはいえ、珱嗄は慌てず一つずつ答えた。

 

「お前と出会う前に出来た子だ。お前とは旅の仲間だったろうが、変なこと言うな。俺の娘を馬鹿にすんな、純粋で友達想いの可愛い娘だぞ」

「ゴメンゴメンゴメン! 謝るから許してくれその顔怖い!」

 

 珱嗄は最後にクロゼの胸ぐら掴んで無表情に詰め寄った。クロゼは即座に謝る。珱嗄の表情が滅茶苦茶怖かったのだ。しかも、放つ殺意が尋常じゃない。

 

「ま、良いか。お前らも一緒に来るか?」

「ん、俺らも行けるのか?」

「珱嗄の娘……一度会ってみたいかも」

「ボクとしてはその娘の母親に会ってみたいけど」

「あ、母親なんていねーよ。養子だから」

「「あ、そうなんだ!?」」

 

 珱嗄は二人の反応に苦笑しながら、続く扉に手を掛けた。三人は珱嗄の後ろに歩み寄り、同じく扉を潜る意思を見せた。

 そして扉を開ける。その先は、空間の歪みのようになっていた。此処を通れば次の世界に行けるのだろう。

 

「じゃ、行くよ」

「なんだか懐かしいな、お前と未知の世界に足を踏み入れる感覚」

「ボクもだよ」

「………」

 

 珱嗄がその空間の歪みに姿を消すと、クロゼ、ピトーが続いて入る。そして最後に残ったなじみは、少しだけ複雑な表情を浮かべながら、その歪みを見つめる。だが、ぶんぶんと顔を振った後、もやもやとした気持ちを振り払うようにその歪みの中へと飛び込んだ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「パパ?」

「よう、ヴィヴィオ。久しぶり」

 

 空間の歪みを抜けた先、そこにあったのは同じく教室だった。但し、小学校の教室だ。机や黒板が、高校用よりも一回り小さく、まるで子供の世界に来た様な感覚だった。

 そして、そこにいたのは金色の髪をサイドテールに纏め、紅と翠の虹彩異色を持った少女と、銀髪に青と藍の虹彩異色を持った少女、金髪に青い瞳の女性、茶色のショートカットの女性の、計4名だ。

 

「パパ!」

「おっと……大きくなっても甘えん坊なのは変わらないな」

「うん……でも、会えて嬉しい……! 本当にパパだ……!」

 

 ヴィヴィオは、何故此処に珱嗄がいるのか、全く理解できていなかったが、それでも父親に会えた感動でどうでも良くなった。とりあえずは、この再開を喜びたい。

 

「師匠、お久しぶりです」

「おーアインハルトちゃん、調子はどうよ?」

「とりあえずは健康みたいですよ?」

 

 そこへ近づいてきたのは、銀髪で虹彩異色を持つ少女。かつて、珱嗄の弟子として『不知火』を教わった少女だ。また、ヴィヴィオは珱嗄の娘であり、同様に『不知火』を教わったことがある。

 

「珱嗄……その子が珱嗄の娘?」

「ん、そうだよ。泉ヶ仙ヴィヴィオだ」

「あれ? パパ……その人達は?」

「面倒だ、纏めて紹介するよ。そこで空気になってる二人もこっち来い」

「あ、忘れられてなかったんや」

「お兄ちゃんは意図的に空気になる人をスルーするからね……」

 

 珱嗄の呼びかけで、とりあえずたくさんある椅子に全員が座った。珱嗄は幹事よろしく両陣営の中心に立っている。

 そして、珱嗄は双方の紹介を始めた。

 

「まず、俺と一緒にやってきた奴らだが……アインハルトちゃんには一回話したかな、コイツは俺の一番弟子で親友の……」

「クロゼだ。よろしく頼む」

「む……女の子では私が一番です」

「珱嗄ーなんかすっげぇ敵視されてるんですが!?」

「死ね」

「めんどくさくてもその言い方は止めて欲しかった!!」

 

 一人目でもう面倒臭くなってきた珱嗄だが、紹介を続ける。続いて示したのは、ピトー。

 

「で、またアインハルトちゃんに話した覚えがあるコイツ。元蟻の王の配下で、俺の旅仲間のネフェルピトー、ネコーと呼んであげてくれ」

「ボクの名前はピトーだ!! その呼び方は断じて認めない!!」

「よろしくお願いします! ネコーさん!」

「流石はオウカの娘だね人の魂の叫びをガン無視だ?」

 

 無視して続ける

 

「で、最後に現在俺と一緒に暮らしている……同類、安心院なじみだ」

「僕の名前は安心院なじみ、親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」

「同類ってどういうことや? 兄ちゃんみたいに怪物染みてるんか?」

「年齢で言えば3兆歳を超えたクソババアです」

「珱嗄、その首刎ねてやろうか?」

「やってみろやその顔に皺でも刻みこんでやろうか?」

 

 珱嗄となじみが睨み合う。人外同士の睨み合いは、周囲にいたクロゼ達に寒気と重圧を与えるほどに威圧を振りまいていた。

 だが、それを止めることが出来たのは珱嗄の娘、ヴィヴィオ。

 

「パパ、喧嘩は駄目だよ?」

「………はいはい、分かったよ」

 

 珱嗄が素直に言うことを聞いた!? と驚愕の表情を浮かべると共に、ヴィヴィオに対して畏怖の念を送るクロゼとピトーだった。リリカル組はいつも通りの光景なのか、苦笑しているが。

 

「さて、次はこっちの紹介だな」

 

 珱嗄はそう言って、今度はリリカル組の紹介を始めたのだった。

 

 


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