◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

63 / 89
さて、それじゃあ行こうか。鶴喰梟の居場所にして不知火半袖の次の仕事場、そして俺が前働いてた場所、箱庭病院に、さ

結果と共に、過程も重視する。

 

 安心院なじみも泉ヶ仙珱嗄も同じくこの理念を持っている。故に、復讐とは違って自身の楽しみ

おもしろいだけを追求して言彦に会おうとしている珱嗄はその過程も重視する。

だけを追求して言彦に会おうとしている珱嗄はその過程も重視する。

 故に、彼は黒神めだかが言彦を打倒しようとしているのならそれを少しだけ手助けしようと考えた。

 

 黒神めだかに勝ちたかった球磨川禊の時と同じ様に。黒神めだかに胸を張れるようになりたかった人吉善吉の時と同じ様に。言彦を打倒し不知火半袖と友達になりたい黒神めだかに、ほんの少しだけ手を貸す事にしたのだ。

 

 そこで珱嗄が連れてきた人材は二人。贄波生煮と鶴喰鴎の二人だ。この二人には共通して持っている力が有る。そう、スタイルだ。スキルとは違う別次元の力。言葉というありふれたコミュニケーション能力を武器にしたある種スキル以上に厄介に力だ。

 今回、珱嗄はそのスタイルを黒神めだかに習得させようと考えたのだ。言彦に対し、スキルは通用しない。だが、言葉が通じる以上、コミュニケーションが取れる以上、言彦にスタイルが通用しない筈が無い。

 

「スタイルは言葉におけるコミュニケーションを軸にした武器であり、力だ。今回、めだかちゃんにはそれを習得してもらう」

 

 現在、珱嗄とめだか、生煮、鴎と人吉瞳の治療で眼を覚ました善吉と球磨川が電車に乗って鶴喰梟の居場所へと向かっていた。

 ちなみに、鶴喰梟の居場所についてはめだかがちょっと走って父親である黒神舵樹から家長の権限と共にぶんどって来た。一応珱嗄も知っているのだが、そっちの方が面白いという理由で教える事はしなかったようだ。

 

「と、いう訳なんだけども。全然状況が分かって無い様だからさめだかちゃん。球磨川君と善吉君に意識を失ってからの事を教えてあげなよ」

「む、まぁそうだな」

 

 球磨川と善吉は空気だったポジションからやっと解放されると身を乗り出してめだかの話を聞く体勢になる。そしてめだかはそんな二人を見て、獅子目言彦に付いて話し始めた。

 

「まず、貴様達が言彦にやられてからの事だ。私は貴様達がやられ、逃げられないと踏んで奴と戦う事にしたのだ。結果から言おう。奴には私の主立った技が全て効かなかった。改神モードによる黒神ファントムもそれ以上の速度で動かれては何の意味もない」

「ま、マジかよ。で、でもよ! それならスキルはどうなんだ? 箱庭学園の二大反則スキルの【不慮の事故(エンカウンター)】と【致死武器(スカーデッド)】とか……」

 

 めだかの言葉に善吉が反論を申し立てる。だが、そんなのは予想済みとばかりにめだかは一つ息を吐いて諦め半分に応えた。

 

「使ったんだよ。【不慮の事故(エンカウンター)】も【致死武器(スカーデッド)】も【大嘘憑き(オールフィクション)】も観察できた限りの一京分の一のスキルも、劣化とはいえ珱嗄さんの珱嗄式スキルも、【完成(ジエンド)】で会得したスキルは全て使った。だが、効かなかった……いや、奴は私がスキルを使ったことすら気付かなかったようだった」

「アイツにはスキルそのものが通用しないって事か……」

「まぁあれは昔からだからね。なじみも終盤ではあしらわれる感じだったし」

 

 珱嗄は会話に口を挟んでそう言った。そしてめだかはそんな珱嗄の言葉を聞いて、続けた。

 

「それで、安心院さんが死んで反転した反転院さんによれば、珱嗄さんは以前言彦に勝利したとの事だが……詳しく聞かせてくれないか?」

「まぁいいぜ」

 

 めだかの言葉に珱嗄は頷き、昔の事を懐かしむ様に切り出した。今から5000年前の言彦との戦いを、簡単にかいつまんで話出した。

 

「アレはたしか5000年前の事、なじみと一緒に暮らしてたんだけど……アイツが言彦の下に何回も何回も通うようになってな……最初は放っておいたんだけど、1億回を超えると流石に変だなぁって思って付いてったんだよ。そしたら、言彦に負けたなじみがいた」

「………」

「でだ。その時はまぁ戦うつもりもなくなじみをただ回収しようと姿を現したんだけど……まぁ言彦に眼を付けられてね。面白そうだったから喧嘩することにしたんだよ。まぁスキルが効かない事とか回復不可とかはなじみの戦いである程度理解してたし、そのつもりで挑んだんだけどさ」

「『え?』『それじゃあ安心院さんがやられるのをただ見てた訳?』」

「そうだよ。その頃は特に親密な仲でも無かったしね。続けるよ。それで、結構長い時間掛かったけど、戦い続けて俺圧勝。無傷のまま疲労もなく言彦を地に沈めてやった」

 

 珱嗄はそう言って、少し勝ち誇った顔をしながら話を終えた。

 

「という訳で、言彦にはスキルは効きません。回復も出来ません。かといってフィジカルでの殴り合いはめだかちゃんでも全力以上振り絞ってなんとかって所です。基本打撃も効きません。まぁ俺ならちょちょいと一捻りだけどね!」

 

 珱嗄の言葉に反応したのはまたも球磨川禊。やはり過負荷の彼としては言彦をちょちょいで一捻りに出来る珱嗄の言葉を目聡く受け取った様だ。

 

「『じゃあ珱嗄さんが倒せばいいじゃん』『獅子目言彦をさぁ』」

「まぁそれも有りだよね。でも、俺としてはそんなの面白くないんだよね。ほら、俺って娯楽主義者な割にめんどくさがりじゃん? めだかちゃんが倒した所でなじみの恨みを晴らそうかなって。まぁ無理そうだったら俺が殺すけど」

 

 珱嗄の言ってる事は簡単。もしもの時は俺がどうにかするから取り敢えず試してみ? という事。あの獅子目言彦相手に随分と軽く出た物だ。正直なところ、これまでの戦いでここまでプレッシャーを感じない戦いが有っただろうかと珱嗄を除く全員が思った。

 例えるなら命綱を付けてそれなりに高い段差から飛び降りる様な感じだ。しかもその挑戦の前にスタイル習得という事前授業までやってくれるというのだ。安心感が半端無かった。

 

「さて、それじゃあ行こうか。鶴喰梟の居場所にして不知火半袖の次の仕事場、そして俺が前働いてた場所、箱庭病院に、さ」

 

 珱嗄は停車する電車から降りて、ゆらりと笑った。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。