◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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善吉、私と結婚してくれ!

 人吉善吉は、黒神めだかの幼馴染である。そしてまた、黒神めだかの初恋の相手でもあった。

 

 幼い頃……そう、黒神めだかが箱庭病院で生まれて来た意味も分からずただ漠然と診察を受けていた、二歳の頃の事。彼女は人吉善吉に出会った。その出会いは特になんのドラマもなく、ただ偶然出会ったという風な普通の出会いだった。

 診察に飽きた黒神めだかが逃走し、逃げこんだ場所に人吉善吉が居たのだ。そして、そこで人吉善吉に生まれてきた意味を与えられた。

 

 今でこそ、その人吉善吉によって与えられた純粋かつ残酷な言葉で植え付けられた黒神めだかの生まれてきた意味は、同じく人吉善吉によって打ち壊された訳だが、その話には続きが有るのだ。

 幼いめだかが幼い善吉に生まれてきた意味を与えられた事で感動し、人吉善吉に恋をするのはそう難しくは無かった。また、当時のめだかは二歳、感情表現は多少大人びていようが幼子同様ストレートだった。

 

「善吉、私と結婚してくれ!」

 

 二歳でプロポーズ。それは驚くべきことだが、そこは流石の黒神めだか。通常では考えられない行動を幼い頃よりして来たのだ。今更驚く事でも無い。

 だが、そんな異常な行動に普通の平凡な二歳児である人吉善吉が同様に答えられる筈もない。故に、善吉の返事はこうだ。

 

「えー、無理だよぉ」

 

 こうして黒神めだかの、傍から見たら唯の子供の戯言の様な、されど本人にとっては確かに初恋だった物が、失恋した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そして現在。人吉善吉は黒神めだかに勝利し生徒会長の器に収まった。それはかの人外、安心院なじみによって気付かされた黒神めだかへの恋心や黒神めだかの間違いといった要素が有った故の勝負だったが、黒神めだかに人吉善吉は圧倒的な差を付けて勝利し、結果的に幸せな展開として収拾を付けた。

 

 さて、ここで残ったのは人吉善吉の黒神めだかに対する恋心という要素だ。黒神めだかは確かに人吉善吉が好きだ。それは今でも変わらない。だが、先の通り黒神めだかは善吉に対する恋を終えてしまっているので、結果的に両思いなのに片やヘタレ根性で、片や勘違いで、告白出来ないでいるのだ。何と滑稽な事だろうか。

 そしてそんな二人に訪れた事件、漆黒宴騒ぎ。黒神めだかが婚約者達をどうにかする為に出張していったのを知った人吉善吉は当然動き出す。生徒会のメンバーを引き連れ、黒神めだか達が最初に居た船へとやってきたのだ。

 

 そこに居たのは、初戦で敗退した婚約者候補の一人、贄波生煮。珱嗄に名前を付けられた少女だ。

 

 少女は人吉善吉との一騎打ちの末、またも敗北。結果的に二次会の場所である南極黒神基地の場所を吐くのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 と、ここまでをスキル映像で見た珱嗄と鶴喰鴎は一旦CMとばかりに息を吐き、ソファに背を預けた。今まで映像を見ていた間に、不知火半袖も食事を終え、安心院なじみの眼を覚まし、観賞に参加していた。

 

「なんというかまぁ……恋する男は一直線だね。善吉君だったらなおさらだ」

「あひゃひゃ☆まぁアイツは馬鹿ですからねぇ!」

 

 不知火半袖と安心院なじみの二人がそう言うと、他のメンバーも頷いて無言のまま肯定した。

 

「でもさ、正直女の子の首筋に噛み付くってセクハラじゃね?」

「珱嗄、その辺気にしちゃ駄目だよ。球磨川君なんて女子中学生を壁に磔にしてパンツを眺めでドヤ顔曝したんだぜ?」

「それもそうか。俺も昔なじみが風呂に入ってる中突撃したことあるし」

「あの時は流石の僕も羞恥心を覚えたね」

「その後なんやかんやで一緒に入ったけどね」

 

 良い思い出とばかりに昔話を語る珱嗄となじみ。やはりお互い長い付き合いという事も有ってその分作って来た思い出の量も多い様だ。

 そして、その話を聞いていた不知火半袖や鶴喰鴎も思い出話が気になった様で、興味津津といった様子で聞きにいる。

 

「そういえば安心院さんと珱嗄さんの馴れ初めってどんな感じなの?」

 

 鶴喰鴎がふとそう聞いた。すると、なじみは少し照れくさそうに、珱嗄は少し面白そうに笑って、自分達の出会いの話をし始めた。

 

「あれは歴史をたどれば氷河期位の頃かな。僕が生まれてから随分経った後の話だけど、その頃に珱嗄と出会ったんだ。まだ氷で地表が覆われていた中、自我を持った人間もまだいなかったから自由気ままに旅してたんだけど……」

「俺が空から落ちてきて、なじみの頭を踏みつぶしたんだよ。着地しようとしただけなんだけどね」

 

 ゆらゆらと笑ってそう言う珱嗄に若干笑えない鶴喰鴎。それもそうだ、人外であるなじみの実力は影武者を倒した時や様々な所で垣間見ているので知っているが、それは凄まじいものだ。反面、珱嗄も人外と聞いている物の、その実力を見た事は無いのでいまいち凄さが分からない。そんな人物が、人外であるなじみの頭を着地ついでに踏みつぶしたと来た。あまり、笑えない。

 

「まぁ最初の出会いからして普通じゃなかったわけだ。で、当時はまともに会話できるのが俺となじみしかい無かったから必然的に一緒にいるようになってな……俺もやる事無かったから暇潰しついでになじみの「出来ない」事探しを手伝ってやった訳だ。ま、その過程で言彦と戦ったり、昔の英雄と戦って見たりとかしたけどね」

「!」

「昔の英雄か……例えば?」

「んー、三国志に出てくる武将とか、西洋の騎士王とかそんなん」

「へぇ……」

 

 珱嗄の言葉に不知火が驚いた様な反応をし、鴎が感心したような声を上げた。

 

「ま、色々と面白おかしく過ごさせてもらったよ」

「その分僕が苦労したことも多かったけどね!」

「特に傑作だったのはなじみにちょっとドッキリ仕掛けた時の話なんだけど――」

「わー! わああああ!!!」

 

 珱嗄が何かをしおうとすると、なじみが大声を上げてその言葉をかき消した。珱嗄はそんななじみを面白そうに見てくつくつと含む様に笑った。

 

「ま、色々有ったんだよ」

「うぅ……珱嗄、あの時の事は絶対内緒だからね!」

「はいはい」

 

 なじみの必死な様子は、不知火達にとって少し新鮮であったという

 


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