◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、その後の事。なじみの病治っちゃってるぜ宣言を聞いた後、黒神めだかは安心院なじみのフラスコ計画が珱嗄によって既に頓挫している事を知る。そして、今まで後継者云々で動いて来て、最終的には今期中に安心院なじみを叩き潰すとまで気合を込めて宣言した自分はなんだったのかとその場でorzのポーズをとって落ち込み、作業的な感じで生徒会長の座が黒神めだかから人吉善吉に受け渡された。
人吉善吉もそのめだかの様子にとても同情し、生徒会長としての座に着いた。
その後、人吉善吉はすぐに他の生徒会員を勧誘。結果的に第100代生徒会のメンバーは、善吉、黒神くじら、江迎怒江、鰐塚処理、そして虎居砕というフラスコ計画の第一検体生徒になった。
そして、委員会連合に合併した球磨川禊達裸エプロン同盟は目的も果たしたので解散、委員会連合からも分離した。今では球磨川達も生徒会役員では無くなったのでとても自由に生活している。
最後に、珱嗄となじみはどうなったかというと―――
◇ ◇ ◇
「で、なんでなじみはそんなイマドキな格好してんの?」
「似合ってないかな?」
「いやまぁ似合ってるけどさ」
珱嗄はいつも通り面白い事を探してフラフラと歩きまわり、なじみは自分の恋の為にいろいろと手を尽くし始めた。
具体的に言えば、現在のなじみの格好は制服というよりは私服といった方が正しいのだ。膝上位の黒いワンピースに黒いニーソックスワンピースの上からは明るい色のジャケットを着ていた。そして髪型は何時もの様に珱嗄のあげたリボンを使って縛っている。ただちょっと違うのは前髪やや右を髪留めで留めている事。いつもと違って少しだけ印象が違う。
「そう? ふふふ、なら良いんだ」
「?」
珱嗄はそんななじみの様子に頭上に?を浮かべて首を傾げる。やはりというか、珱嗄にも乙女心は理解出来ないものだった。
なじみはそんな珱嗄の様子に満面の笑みを浮かべて足取り軽く珱嗄の先を歩いている。珱嗄はその後ろをふらふらと気だるそうに着いていっている。
「ん?」
「どうかしたのかい?」
珱嗄が声を上げて窓の外を見る。なじみは珱嗄の声に立ち止まり、同じ様に窓の外を見た。
「ああ……めだかちゃんか」
「なんでちょっと不機嫌そうなんだよ」
「君がめだかちゃんを見てるからだよ」
「ふーん……」
珱嗄はそう言いつつ、やっぱり意味分からないという顔を浮かべながらめだかを見る。黒神めだかはその視線の先で様々な運動部を相手に無双していた。
「最近じゃめだかちゃん変わったねぇ」
「そーだねー、髪型も短くなったし。珱嗄はあーゆー髪型の方が好き?」
「いや、別に。どっちかというとなじみくらい長い方が良い」
「そ、そう! それは良かった!」
なじみは突然の珱嗄の何気ない言葉に頬を少し紅潮させて喜ぶ。だが、珱嗄はテンション高いななじみ、と思う位でその理由までは理解していなかった。
いや元々珱嗄は人の気持ちには敏感だし、恋愛に疎いわけでもないし、鈍感なギャルゲの主人公みたいでもない。だが、かなり昔から一緒にいる珱嗄的の安心院なじみに対する印象は恋愛するキャラではない、というものなのだ。
よって、恋する乙女みたいだなぁと思い付いたとしても、マジで恋する乙女になっているとは思えないのだ。
結果、珱嗄は安心院なじみに対してのみ、鈍感ギャルゲ主人公と化してしまうのだ。
「さて……そろそろ面白そうな事件が起きてもよさそうだけど、どうなるかな」
珱嗄はそう呟き、めだかへの視線を切る。そしていつものように、ゆらりと笑ってまた歩き出す。
「ねぇ珱嗄、僕といるのは面白くないのかな?」
「お前といるのは何と言うか……日常の一片みたいな感じになってるからなぁ」
「……そう、まぁいいかな」
なじみはその珱嗄の答えに少し不満気に、そして少し嬉しげな表情を浮かべる。そうしてまた歩く珱嗄の隣で一緒に歩くのだった。
―――だが、こんななじみと珱嗄のこの関係は長くは続かない。珱嗄がなじみの気持ちを知るその時、既に二人は手遅れの所までやって来ているのだから。
そして次なる事件は起こる。黒神めだかに絡みつく、漆黒の花嫁がすぐそこまで迫って来ていたのだから。