◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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隙もなければ弱点も無しかよ……!

 番外編

 

 

 

「マヤ文明?」

 

「『そうなんだよ』『2012年12月21日』『世界が滅ぶんだって!』」

 

「へぇ」

 

 珱嗄は球磨川禊とそんな話をしていた。だが、対して興味を持たなかった。

 

「『反応薄いね?』」

 

「だって世界滅亡位、俺やなじみ、お前の【大嘘憑き(オールフィクション)】でだって起こせるだろ?」

 

「『……うん』」

 

 

                       終わり。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 そんな番外編は置いておいて、アレからという物、安心院なじみは何処か吹っ切れた様な表情で日々を過ごしていた。珱嗄から見ても、一般生徒から見てもその表情はとても清々しい物で、黒神めだかすらもその様子に眉を顰めて困惑し、球磨川禊も目を見開いて驚愕する程だった。

 だが、珱嗄としては最近ずっと難しい顔をしていたなじみが吹っ切れた表情になった事が良い事だと思っているし、悩みが無くなったのならそれでいいかとまた笑うのだった。

 

「で、善吉君の修行はどうなの?」

 

「まぁ順調だよ。半纏のスキルで善吉君のスキルも出来たし。【愚行権(デビルスタイル)】って言うんだけどね」

 

「ふーん。まぁ善吉君の提案なんだろ、そのスキル。なら……まぁ効果は予想付くな」

 

 珱嗄はなじみの言葉にそう返し、また笑った。なじみはそんな珱嗄の様子にくすりと笑い、珱嗄の腕を取る。

 

「ん?」

 

「どうせまた面白い事を探してフラフラ歩くんだろ? 暇なら僕に付き合ってよ」

 

 珱嗄はなじみの言葉に少し考えた後、口端をまた吊りあげる。

 

「いいよ。付き合ってやる」

 

 珱嗄はそう言って、なじみと歩き出すのだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「で、なんで今日は珱嗄さんが?」

 

「ちょっと暇そうにしてたからさ」

 

「そういう事だよ、善吉君」

 

「はぁ……?」

 

 なじみとやって来たのは、人吉善吉の所。ここ2ヵ月の間、善吉はかなり成長していた。選挙までの残り2ヵ月、善吉は更に自身の研磨に身を費やすだろう。

 現時点で善吉は、【愚行権(デビルスタイル)】並びに、身体能力の強化、一種のカリスマ性の会得、一定の体術の会得等々色々と出来る事を増やしている。

 また、不知火半袖のスキル【正喰者(リアルイーター)】を使った強化もいずれ行なわれるだろう。

 

「で、今日は何をするんですか?」

 

「今日は戦闘スキルを上げて貰うよ」

 

「じゃあいつも通り安心院さんと模擬戦ですか?」

 

「違うね」

 

 なじみはそう言ってちらりと珱嗄を見た。珱嗄はその視線の意図をすぐに察してまた笑う。そして一歩前に出て善吉の前に立った。

 善吉は自分より少し背の高い珱嗄の顔を見上げ、その笑みを見た瞬間に状況を察した。そして次の瞬間顔を青ざめた。

 

「いやいやいやいやいやいや! 無理に決まってんじゃないですか!?」

 

「そんなの知らないよ。さぁやろうぜ、全校生徒を殺した事のある俺としては―――殺してやるくらいしかしてやれないぜ?」

 

 そう言って珱嗄はゆらりと笑ってバキッと素手を鳴らした。それと同時、無意識に構える善吉。だが、構えを取るまでの時間が、決定的な隙になる。一瞬というには随分と短い一瞬だったが、珱嗄はその一瞬を衝くことが可能。人吉善吉の構えが構え終わるその寸前、善吉の両拳が善吉の胸の前に置かれるその寸前、珱嗄の手刀は善吉の両拳の間を通り抜け、善吉の喉へと突き刺さる。

 

「ガッ……ふ…!?」

 

「ほらほら、動きが鈍い」

 

 珱嗄は善吉の喉を手刀で貫いた後、時間を巻き戻すスキル【跡戻り(バックトラック)】を使って善吉の怪我を巻き戻す。そして一度即死した事で失った意識を、意識を回復させるスキル【二度寝出来ない忙しさ(モルティブルディスパンスディビィリィ)】を発動して強制的に回復させる。

 

「はっ……!?」

 

「さぁて、続けようぜ」

 

「くっ……このっ!」

 

 善吉はとりあえず距離を取ろうと蹴りを繰り出すが、珱嗄はその蹴りを自身の手刀を善吉の脚が通る箇所に置くだけで対処する。珱嗄の手刀が善吉の蹴りに当たる。すると―――

 

「がァああ!?」

 

 善吉の脚には珱嗄の手刀が深々と突き刺さっていた。

 

「俺に肉弾戦を挑むのは得策所か……悪手だぜ」

 

 善吉はそんな珱嗄の言葉に歯を食いしばりながら脚を引っ込め、バックステップで距離を取った。

 

「くっそ……隙もなければ弱点も無しかよ……!」

 

「さてね。俺にも弱点くらいはあるかもしれないぜ? それじゃあ続けようか。今から1時間が俺の授業時間だ。必死で喰らいついて見せろ?」

 

 珱嗄はそう言ってゆらりと笑った。それに対し、善吉は歯噛みし、どうすりゃいいんだと内心で泣いた。

 

 

 そして珱嗄の授業が終わるその頃には、善吉は身も心をボロボロになって床に這い蹲っているのだった。

 


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