◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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君程度が珱嗄の何を知ってるって言うのさ

「……まさか珱嗄さんがここまで飽きっぽいとは思わなかったぞ」

 

「君程度が珱嗄の何を知ってるって言うのさ。たった2,3年の付き合いで知った風な口をきくなよ」

 

 黒神めだかは手を差し伸べる珱嗄に対し、そう言って少しだけひきつった笑みを浮かべた。そして安心院なじみは少しだけ不服そうにしながら黒神めだかの言葉に喧嘩腰の言葉を返した。

 珱嗄はそんな二人のやり取りに心底どーでもいいという態度を取りながら欠伸を一つ。ちなみに言っておくが、ここは風呂場であり、珱嗄の目の前ではめだかとなじみが裸で風呂に使っている状態だ。傍から見れば唯の覗き魔だ。

 

「で、景品は?」

 

「あ、ああ。実は此度の企画の景品は仲間と協力して得た友情や絆、という物だったのだ」

 

 黒神めだかが言い終わるまえに、その言葉を止められた。珱嗄が黒神めだかの口にその手刀を突っ込んだのだ。

 

「オイオイオイオイオイ、そりゃあねーんじゃねーの? じゃあなにか? 此処までの苦労は水の泡か?」

 

「むぐむが……」

 

「それは割に合わねーよ」

 

 珱嗄はそう言って手刀を顎の方へと力を込めることでめだかの頭を風呂の中へと沈めた。ゴボゴボと抵抗する黒神めだかだが、肺活量で言えばかなりの物を持つめだかだ。一日やそこらなら普通に耐えられる。

 

「まあ、いいんだけど」

 

 珱嗄はそう言って黒神めだかを開放する。

 

「ぷはっ……げほっごほっ!」

 

「で、副賞は有るんだろ?」

 

「あ、ああ」

 

「じゃあ貰おうかな。不知火半袖を」

 

「「え?」」

 

 珱嗄の言葉に、めだかもなじみも目を点にして呆然とするのだった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「で、なんであたしが貴方の物にならなきゃいけないんですか?」

 

「いやいや、俺の物になれというわけじゃない。ちょいと今日一日付き合えって事だよ」

 

 珱嗄はあの後、黒神めだかによって連れて来られた不知火半袖と共に学食に来ていた。不知火は珱嗄の提案に少し不満そうにしながら学食のメニューを喰い漁っている。珱嗄はそんな不知火半袖の体面に座っていつものようにゆらゆらと笑っていた。

 

「で、何の用ですか?」

 

「んー……最近、なじみが色々と起こしているんだけど……それもネタバレしてて詰まらなくなったし、一個先の展開に期待しようかなぁって思ったりして」

 

「一個先? なんですか、未来でも見えるって言うんですか?」

 

「未来位なら簡単に知れるだろ」

 

 珱嗄はそう言った。未来が見えるなら珱嗄にどうやって勝てというのだと思うのだが、珱嗄の見える未来はかなり漠然としている。故にあまり期待出来るものではない。

 

「で、その未来に何が有ったって言うんです?」

 

「そうだなぁ……ハッキリとした未来じゃないし、何がどう動くのかも分からないけど……一つだけ、分かってる事が有るんだよ」

 

「それがあたしに関係してると?」

 

「そう。それが、獅子目言彦」

 

「!?」

 

 珱嗄の言葉に、不知火は驚愕の顔を浮かべて食べるのを止めた。何故なら、その名前は珱嗄にとっても馴染み深い物であり、不知火半袖に対してもとても馴染みのある人物だったから。

 

「なんで言彦の事を知ってる?」

 

「そりゃあ知ってるよ。俺はなじみ同様、随分と昔から生きてる男だぜ?」

 

 初めて会った時、珱嗄と言彦は戦った。二度目以降は友人関係として色々な苦楽を共にした。たまに喧嘩して珱嗄が言彦をフルボッコにした時もあった。珱嗄の未来知識を利用した料理を振る舞って笑いあったこともあった。

 だが、それは結局5000年前の話。珱嗄やなじみの様な人外でない限り生きている筈が無い。それなのに、獅子目言彦が生きている。それは何故なのか、珱嗄もまだ把握していない。スキルを使って知っても良いのだが、答えを知るスキルは以前封印したし、ネタバレ続きな最近だったから知るのも気が引けたのだ。

 

「なるほど」

 

「で、お前がその件の引き金っぽいからさぁ……ちょっと興味が湧いたんだよ」

 

「ふーん」

 

「ま、何も話さなくていし、聞きたくもないから……別に何かしようという訳じゃないんだけど」

 

 そう、珱嗄は何か用があった不知火半袖をめだかに希望した訳じゃない。ただ単に、少し興味が湧いただけなのだ。

 

「さて……そろそろなじみもちょいちょい活動を始めるだろうし、お前も善吉推しのキャラだろ? 精々善吉君のサポートをしてやると良い」

 

 珱嗄はそう言って立ち上がり、学食を去った。そしてその後ろ姿を眺める不知火半袖は、手に取った骨付き肉の骨をバキッと噛み砕く。

 そして、それと同時。半袖の前に安心院なじみが現れた。

 

 

「やぁ不知火ちゃん。話が有るんだけど」

 

 

 全ては珱嗄の知る所による。不知火半袖は何もかもが泉ヶ仙珱嗄の掌の上で転がっている様な気がして、少しだけ不気味になるのだった。

 


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