◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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いらっしゃい生徒会長失格の馬鹿野郎

 さて、後継者候補性5人がやって来てから、珱嗄が開戦の狼煙として数十人の生徒を撃ち殺してから、おおよそ1週間が経った。その間に球磨川禊が後継者候補達に襲撃されて返り討ちしたり、帯刀靱負が後継者候補の研修を監督したりしていたのだが、その裏では珱嗄による生徒の大量虐殺が行なわれていた。

 スキルによる殺人故に、誰がどうやったかも分からない犯行。既にその殺人数は560人に及んでいた。無論、その事は黒神めだか率いる生徒会メンバーも全校生徒も聞き及んでいた。

 

 寧ろ、問題なのはその560人の中に登校すらしていない13組の生徒も混ざっている事だった。精確な生徒の住所情報を掴んでいる者は生徒会含めても理事長の不知火袴位の物だ。だが、不知火袴がそのような犯行をする必要性とメリットが無いことから容疑者は全く分からなくなっていた。

 黒神めだかは生徒会長としてこの事件を解決すべく手を尽くすのだが、それでも生徒は次々と殺されて行った。一応遺体は蘇生の可能性がある為、保存しているのだが球磨川の【大嘘憑き(オールフィクション)】は珱嗄の指示でバレない様に言われている為、使えない。

 

 解決手段もない中、黒神めだかは同時進行で後継者の育成にも務めていた。誰がどうして事件を起こしているのかは分からないが、安心院なじみという脅威が存在しているのも事実。手を抜くわけにはいかないのだ。

 

「さて、それでは今回の体験入学生による研修プログラムを開始する。まず、貴様達には私の後継者になるに当たって言っておくことがある」

 

「?」

 

「私の様にはなるな! これだけだ」

 

 黒神めだかはそう言って、プログラム内容を説明する。内容は宝探し、学園中の何処かに隠された宝を見つけた物が勝ち、という物だった。そしてめだかは最初のヒントとして一枚のプリントを全員に回した。書いてある内容は面倒なので書かないが、変な文章だった。

 

「『えーと何々……』『第一関門、次の文を読んで解き明かし示される場所へ向かえ。』

『ライオンは、死を縫合する

 渓谷で新たなる思想に出会

 うだろう。もしも視界の外

 で縫針が親子を支え始めた

 ら帰れ。試み施す指を止め

 て糸通しを示す姿が私の死

 だ。雌の支柱獅を司る銃は

 青く、紫の指の熾烈さに過

 ぎず、天使も私の着物では

 ない。人は仕える相手を間

 違えたい。抜糸するのは着

 替えたあとになりそうだ。』『か』」

 

 と言いつつ書いちゃったよ。とても面倒な作業ではあったが、とりあえずこの様な文章だった。球磨川達はその文章を見て首を傾げるが、そんな中候補生の一人、喜々津が言った。

 

「あのー、宝探しはいいとして。勝ったら何か景品はないのかにゃー?

 

「景品、か……なるほど。それでは勝ったら何か欲しい物をやろう」

 

 めだかはそう言ってふんぞり返る。

 その様子に各々欲しい物を言った。結構偏った形になったのだが、善吉や候補生の面々は別の腕章を要求。他は考えておくと言って、球磨川は女子の裸エプロンを要求した。ちなみに此処には監督である帯刀靱負もいる。彼女は別に欲しい物は無かったのだが、とりあえず男子勢がこれからの学校生活を女装して過ごしてという過酷すぎる要求を出した。

 これにより、球磨川、善吉、阿久根の三人は負けられねぇと燃え始めた。

 

「まぁいいだろう。それではその問題を解いて宝を探すが良い。5分掛けても解けない場合は帰ってよいぞ」

 

 黒神めだかはそう言って、下がるのだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「ふぅ……さて、始まったか育成プログラム」

 

「そうだね」

 

「それじゃそろそろ俺も本腰入れて動くとしよう。次で全校生徒を殺すぞ」

 

 珱嗄はそう言ってゆらりと笑った。

 

「はいはい」

 

「といっても? 生徒会メンバーと候補生以外はもう――――死んじゃってるんだけどね?」

 

 珱嗄はそう言って時計塔の上から下を見下ろした。そこから見える光景はまさしく地獄絵図。真っ赤に染まった学園がそこにはあった。剣道場もプールも柔道場も校庭も中庭も全ての教室もテニスコートもバスケコートも草も木々も全てが赤く染まり、その赤の中には先程まで元気に動いていた生徒の死体がごろごろと転がっていた。

 この犯行は全て珱嗄がめだかの説明中に行なった事。

 

 珱嗄式殺人系スキルの一つ、指定範囲内の生物を全て殺害するスキル【身塵斬り(ブラストインフェクション))】

 

 このスキルは自身の指定した範囲内にいる生物を有無を言わさず殺害するスキルだ。無論、殺害しない生物の指定も出来るので、自身となじみ、黒神めだか達は指定外に設定してある。また、これから彼女達が関わるであろう時計塔内の委員長達も指定外だ。

 

「真っ赤真っ赤、真っ赤っかだ」

 

「うん。やり過ぎだよ珱嗄」

 

「くひひ、まぁあれだ。此処までやればいい加減俺の犯行だって気付くでしょ。さて、この時の為に球磨川君達を残しといたんだ。いっちょ派手に死んでもらうとしよう」

 

「あれ? 球磨川君達は味方じゃないの? ほら、地の文でも言ってたじゃないか。『黒神めだかの心を球磨川が、肉体を帯刀靱負が破壊する』とかなんとか」

 

 安心院なじみはそう言った。週刊少年ジャンプの展開を読んでいるかのようなメタ発言をするが、珱嗄はそれに対していつものようにゆらりと笑った。

 

「知ってるか? (てんかい)を騙すならまず味方(どくしゃ)から、だ」

 

「君は何様だよ」

 

「俺は俺だ。なじみ曰く、『最強無敵の馬鹿』とか検体名『逸孤軍隊(パーソナルソサエティ)』って奴だよ」

 

 珱嗄の言葉に、なじみはくすりと笑った。そんなに前に言った検体名の事を今出してくるとは思わなかったからだ。

 

「それじゃ、なじみはやるつもりだった行動を取ってくれ。俺はとりあえず……生徒会を殺して黒神めだかに敗北を思い知らせてやる」

 

 その言葉と同時、安心院なじみはその場から消え、珱嗄は時計塔の屋上にやってきた黒神めだかに向かい合った。

 

 

 

「いらっしゃい生徒会長失格の馬鹿野郎」

 

 

 

「珱嗄さん……!? なるほど、この事件の犯人は貴方ですか」

 

 

 

 笑う珱嗄に構えるめだか。珱嗄と黒神めだかは誰も知らない、見ていない中、衝突した。

 


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