◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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この学園が滅ぶくらいの覚悟はしておいてね?

 さて、現在珱嗄は球磨川禊の生徒会業務が終わるまでの間暇していた。とは言っても安心院なじみが箱庭学園に今日やってくるのは知っているし、これから色々と面白くなりそうだなぁとは思っているが。

 また、ソレとは別に珱嗄には一つ思い付いた事があった。球磨川禊を黒神めだかに勝たせるために手を出した結果を思い出して思い付いた事。それは、黒神めだかが完膚なきまでに敗北する姿が見たい、という物だった。 なじみ曰く、珱嗄と黒神めだかは1000年に一人存在する勝利を約束された主人公体質を持った人間。珱嗄もソレは知っているし、自覚もしている。自分は主人公に向いてはいないと思っているが、そうなんだろうと思っている。

 

 同族嫌悪の様な物なのかもしれないが、珱嗄には黒神めだかを敗北させたいと思ったのだ。とはいっても、その実珱嗄に同族嫌悪なんて高尚な物は無いのだが。結局はいつもどおり、『面白そうだから』という理由からの思い付きだ。

 

「さーて……どうしようかなぁ……なじみを利用してこの機会にちょっと動いてみようかな」

 

 珱嗄はそう言ってすくっと立ち上がる。今珱嗄がいる場所は3年13組の教室。

 

「どうした珱嗄?」

 

「いや、ちょっと面白い事考えついたんだよ。ふひひっこの学園が滅ぶくらいの覚悟はしておいてね?」

 

「待てやコラ」

 

「冗談だよ空洞君。でも死人は出るかもね」

 

 珱嗄は相変わらず教室の中央に鎮座する空洞にゆらりと笑ってそう言い、教室を出る。その足取りは軽い。改造された和風制服の裾をひらひらとたなびかせながら、歩く珱嗄の表情を見た生徒は後にこう語る。

 

 

 ―――まるで災厄が歩いている様な寒気がした

 

 

 と。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 珱嗄はしばらくして、生徒会室の様子を別の場所の光景を見るスキル【進光景(プレイバック)】を使って見た。結果、なじみが既に箱庭学園にやって来ているのが分かったし、黒神めだかに遠回しな喧嘩を吹っ掛けている事も分かった。

 現在はなじみが珱嗄を探して学園をさまよっているのも知っているし、黒神めだかが安心院なじみ対策に後継者を育てようと動きだした事も分かった。

 

 故に珱嗄は笑う。名づけるなら安心院なじみのフラスコ計画編とか悪平等(ノットイコール)編とかそういう感じだろうが、珱嗄はその件を潰して自分勝手に動かす事を決めた。今更なじみがどう動こうが、黒神めだかが後継者を立てようが関係無かった。

 

「まずは外堀から埋めるとしようかな?」

 

「『なにが?』」

 

 そうして珱嗄が状況を把握した結果、会いに来たのは球磨川禊。

 

「球磨川君。なじみの奴がお前らんトコ来ただろ?」

 

「『え?』『まぁ来たけど』」

 

「俺ちょっと思い付いた事があるからさ。ちょっとなじみのやってる事全部潰して俺のやりたい放題やろうと思うんだ」

 

「『え』」

 

 球磨川禊は、珱嗄のその言葉に動きを止めた。何故なら、珱嗄が動くと言ったからだ。選挙管理委員長である太刀洗斬子は普段怠けている故に、自分から動きだす事は奇跡に等しい。それと同様、珱嗄が事を起こすのは同じ位に奇跡と言って良い。いや、寧ろ災厄と言って良い。

 その理由は、珱嗄の性質にある。『面白い』事が好きな珱嗄は、基本的に起きるイベントには不干渉だ。流れる様を眺める様に、起きる展開を見守りつつ笑っている。

 

 あたかもバラエティ番組を見ているかの様に、いつもいつも起きる展開を見守るスタンスを持っている。

 

 今までは最低でも球磨川に助力した位しか手を出さなかったし、その助力も最低限だった。修行法を提案してただやらせ、後は勝負に平等性を齎した位だ。

 

 だが珱嗄は動きだした、動きだしてしまった。これまでの様に誰かが何かを起こして珱嗄が笑って見るのではない。誰かが何かを起こしているのに少し手を加えるのではない。珱嗄が自分から、事を起こすのだ。

 

「何か問題でも?」

 

「いやいや、待ってよ珱嗄さん。落ちつこう、一旦落ち着こう?」

 

 その事実の重大さは、球磨川禊が思わず括弧付けるのを止めてしまう位大きかった。

 

「いや、落ち付いてないのはお前だよ」

 

「こほんっ……『えー…それで』『なんでまた?』」

 

「ちょっと球磨川君が色々とやってるのを見てて、ちょっと動いてみるのも面白いかなって」

 

 その言葉を聞いて、球磨川は頭を抱えた。

 

「(『僕のせいかぁああああ!!!!』)」

 

 括弧をふんだんに使って心の中で嘆く球磨川禊。珱嗄はそんな球磨川禊の様子をやはり笑って見ていた。

 

「それで、ちょっと球磨川君に手伝って貰いたいんだよ。というかこちら側に付いてもらいたいんだよね」

 

「『オッケー何でも言って!』」

 

 球磨川禊は0.5秒で黒神めだかから泉ヶ仙珱嗄に寝返った。球磨川禊はその0.5秒の間に頭の中で珱嗄が動いた結果起きるであろう災厄から逃れる方法を考え、最終的に珱嗄側に付いていれば問題ないんじゃね? という考えに思い当たり、寝がえりを即決したのだ。

 

「『で』『具体的に何をするの?』」

 

「うん、目的は球磨川君と同じだよ。黒神めだか、潰す、皆幸せ」

 

「『……』『それって僕いらないんじゃ……』」

 

「いやいや。今までいろんな奴らの心を圧し折って来た嫌われ者の力は必要だぜ」

 

「『言ってくれるなぁ』」

 

 珱嗄はそう言って、球磨川禊に笑い掛け、球磨川はそんな珱嗄に苦笑した。

 

「さて、それじゃあまずはなじみをどうにかするとしよう。何、簡単だよ。なじみ程度なら口先三寸で丸めこめるさ」

 

 珱嗄は舌舐めずりしていつもとは違って、にやりと笑みを浮かべた。

 

 


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