◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

34 / 89
俺は古賀じゃねぇ、雲仙冥利だ!

 番外編

 

 

 球磨川禊の生徒会戦挙が行なわれていた最中の事。珱嗄が志布志と蝶ヶ崎、不知火の三名の中身をスキルで入れ替えた事があった。その時の一部始終を今回はお伝えしよう。

 

 

 ――――

 

 

 珱嗄は心を入れ替えるスキルで不知火と志布志と蝶ヶ崎を入れ替えていた。具体的には、不知火半袖の身体には志布志の精神が、志布志飛沫の身体には蝶ヶ崎の精神が、そして蝶ヶ崎蛾ヶ丸の身体には不知火半袖の精神が入っていた。

 

「なんだこりゃ」

 

「……」

 

「あひゃひゃ☆」

 

 不知火は素っ頓狂な表情で自身の身体を見渡して驚愕し、志布志はいきなり無表情で黙り、蝶ヶ崎はおかしそうにケラケラ笑った。間違い無く精神が入れ替わっている。

 

「これで俺が精神を戻せないって言ったら……どうする?」

 

「マジですか?」

 

「嘘だよ半袖ちゃん」

 

 蝶ヶ崎が珱嗄にそう言うが、珱嗄はそう返した。あくまで例えばの話だと。

 

「てか戻してくれよ。アタシ達が入れ替わっても対して面白くないだろ」

 

「ああ、確かにそうだよね。全然面白くない」

 

 球磨川禊がこの場にいない限り、彼女達が入れ替わっていようと驚かせられる人間がいない訳だ。それに、このメンツだとあまり知り合いに驚く人間もいない。何せ過負荷が三人集まっているのだから。

 

「じゃ戻すわ」

 

 そう言うと、珱嗄のスキルが解除され、全員の精神が元に戻った。だが、この時珱嗄の口元がゆらりと吊りあがっていた。それに気付いた者はこの場には一人たりともいなかった。

 だが、その笑みの本当の意味はこの学園の中ですぐに知れる事になる。心を入れ替えるスキルは、この3人だけに効果を及ぼした訳では無かったのだ。

 

「それじゃ俺はちょっと出かけてくる。またね」

 

 珱嗄はそう言って、教室を出る。その行先は、自身の齎したスキルの影響である心の入れ替え現象を見に行く為の場所。まぁ、箱庭学園を歩くだけだが。

 

 珱嗄のスキルの影響は箱庭学園全域に行き渡っている。心が入れ替わっている物もいれば、いない者もいるだろう。さらにこのスキルの面白い所は、入れ替わった相手にスキルが備わっていた場合、それを使うことが出来ると言う事だ。例えるなら、人吉善吉が高千穂仕種の身体に入った場合、人吉善吉は高千穂仕種の反射神経を使うことが出来るのだ。

 そんな事が起きたら、面白いと珱嗄は考えたのだ。

 

「さて、どうなるかな」

 

 そう呟きつつ、珱嗄はゆらりと笑った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 まず、今回珱嗄のスキルの被害に遭ったのは、雲仙冥利、太刀洗斬子、そして古賀いたみの三名。肉体と精神の場所としては、雲仙冥利の身体に太刀洗斬子の精神が入り、太刀洗斬子の身体に古賀いたみの精神が入り、古賀いたみの身体に雲仙冥利の精神が入る事になる。

 

 その結果、怠け者の雲仙冥利、めちゃくちゃ元気ハツラツな太刀洗斬子、そしてクソ生意気な古賀いたみが出来上がった。

 それじゃあまずは怠け者の雲仙冥利から見ていこう。

 

 

 ―――

 

 

「zzz……」

 

「あのー、雲仙委員長なんで寝てるんですか?」

 

「分からないわ。なんでかさっきからこうなのよ」

 

 太刀洗斬子が雲仙冥利の身体に入ってからという物、雲仙冥利はグースカ寝てばかりいた。周囲の風紀委員はそんな彼の姿に困惑していた。鬼瀬針音もその一人であった。

 

「委員長、起きてくださいよー」

 

 何とか起こそうとするが、雲仙冥利は起きない。むしろより一層眠りを深くしていた。

 

「むぅ……」

 

「zzz……zzz……」

 

 雲仙冥利はそれ以降、風紀委員達が起こすのを諦める3時間後まで、ついぞ起きる事は無かった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 この時、別の場所では。

 

「な、なんだこりゃああ!!?」

 

 古賀いたみがわなわなした様子で驚愕していた。更に言えば、現在雲仙冥利の入った古賀いたみの身体は故障中、雲仙冥利はその故障による痛みが走った。

 

「何が起こってやがる……? これは一体何だ?」

 

 焦りから、状況判断が出来ない雲仙冥利。とりあえず自身の身体を触ったり見たりしてみると、どうやら自身の身体が古賀いたみになっていることが分かった。何故こうなっているのかも分からないが、とにかく自分の身体を取り戻すべく雲仙冥利は歩き出した、が

 

「な、なんだこれ……うまく動けねぇ……!」

 

 元々の身体とは大きさも筋力も違う身体だ。動かしにくいに決まっている。しかも、今古賀いたみの身体は故障中。より一層動かしにくいだろう。

 

「こんの……!」

 

「~♪……!? オイオイ、古賀ちゃん。無理して動くなって言ってんだろー? 何処行こうってんだ」

 

 そこに現れたのは、名瀬夭歌。黒神くじらというめだかの姉でもある人物だが、何を隠そう彼女は古賀いたみの大親友である。また、古賀いたみの異常(アブノーマル)である改造人間という物を与えた人物。簡単にいえば古賀いたみの身体を弄った人物だ。

 そして、故障中の古賀いたみの身体を直している人物でもある。

 

「名瀬……! オイ、なんだこれ! お前の仕業か?」

 

「あん? 何言ってんだよ古賀ちゃん。寝ぼけてんのか?」

 

「俺は古賀じゃねぇ、雲仙冥利だ!」

 

「……その様子じゃ嘘じゃねぇみてーだな。本当に雲仙冥利なのか?」

 

「ああ」

 

 人一倍頭の良い名瀬夭歌は古賀の様子がおかしい事に気付き、雲仙冥利である事を信じた。

 

「どうなってんだこりゃ……精神が入れ替わった、ってことなのか?」

 

「そいつはわからねーが、とりあえず古賀ちゃんの精神がアンタの身体に入ってるかどうかを確かめた方が良いだろ。アンタの身体に古賀ちゃんの精神が入ってるにしろ入ってないにしろ、古賀ちゃんの居所を突き止めねぇと」

 

「あ、ああ……そうだな」

 

 そう言って、名瀬夭歌と古賀いたみ、もとい雲仙冥利は古賀いたみの身体に入っていた元の精神の持ち主、古賀いたみを探すべく、まずは雲仙冥利の身体の下へと向かったのだった。

 

 

 

 番外2へ続く。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。