◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、俺ら過負荷メンバーと生徒会チームが行なう事になったのは、生徒会選挙ならぬ生徒会戦挙。庶務、会計、書記、副会長、会長の全役職に就いている生徒がそれぞれルールに則って戦い、勝ち数の多いチームの勝ち。また、挑戦者である球磨川君チームは引き分けでも勝利となる。
で、さっそくだけど本日はその試合の内の第一戦。役職【庶務】の試合だ。
出場者は生徒会チームの庶務職である、人吉善吉。対して球磨川チームの出場者は、生徒会長に立候補した筈のリーダー、球磨川禊。
なんともまぁ奇抜な組み合わせであるが、勝てる所で勝っておこう、という目論見で球磨川君が立候補したのだ。まぁ生まれながらの敗北者とか言う
「『それにしても、だよ』『珱嗄さん』『他の
「嫌われてんじゃね?」
「『そう言う珱嗄さんはどうなの?』」
「嫌いではないぜ」
俺と球磨川君は、庶務戦会場である場所で生徒会チームがまだいない中雑談を交わしていた。何分、かなり早くに此処に到着したもんだから、随分と待っている。
ちなみに、会話の通り現在ここには俺と球磨川君以外存在していない。志布志ちゃんや江迎ちゃん達はこの夏を謳歌する為に遊んでいるのだ。
「あ、来た」
「『やっとか』」
そう言って振り向くと、そこにはやっとやってきた生徒会チームが見えた。こちらと違って随分とまぁぞろぞろ観客も多い。黒神めだかや人吉善吉、黒神くじらに人吉瞳、そして古賀いたみが凛々しい雰囲気を醸し出しながら歩いて来ていた。
「やぁめだかちゃん。待ちくたびれたぜ」
「……一体どれくらい待ってたのだ?」
「ざっと12時間くらい?」
「『いやぁ』『珱嗄さんが寝ていた僕を叩き起こして』『ここに連れてきたから』『正直眠くて堪らないよ』」
まぁ嘘である。実際は20分位しか待っていない。
「そ、それはまた……待たせたな」
「『まぁ嘘だけどね』」
「球磨川ァ!」
これは漫才かと思わせるめだかちゃんと球磨川君のやり取りを傍目に、俺はちょうど登場した人物に眼を向けた。
「―――それでは定刻になりましたので始めさせていただきたく存じます、まずは皆様、本日はご多忙の中こうしてお集まりいただき有難うございます」
現れたのは、アイマスクを着けた怪しげな男。制服のデザインからして、選挙管理委員会の人間だろう。スキルで視た所、名前は長者原融通。異常なまでの公平さを持った男、か。
「わたくしめは僭越ながら今回の生徒会戦挙を管理させていただく選挙管理委員会副委員長ニ年十三組長者原融通と申す者にございます、ほんの一夏の間ではございますが、どちら様もよろしくお願いいたします」
「……久しいな長者原二年生、四月の総選挙以来か」
どうやらめだかちゃんは彼と知り合いの様だ。多分生徒会長になった時にでも会ったんだろう。
「これはこれは黒神様……私の様な者をご記憶頂けていたとは恐悦至極にございます。しかし生徒会執行部や風紀委員会と違い、選挙管理委員会はご存知のとおり日陰の身、選挙が終わればどうか我々の事はお忘れいただきたく思います……」
……そういえば彼らは目を隠してるけれど、目は見えているのかな? マジックミラーみたいに透けて見えているのかな。
「そもそも―――」
めんどくさいよ、もう聞いてないよ? 俺。
それで、しばらくそんな事務的な会話が続いていたのだが、球磨川君がちゃんと審判するに値するのか? とか良いだした。
「球磨川様も勿論、わたくしめに不満がございますれば善処いたしますので忌憚なきご意見を頂戴願いたく存じます」
「『んー』『不満ねえ』『いきなりそんなことをいわれても――ね!』」
球磨川君の不意打ち攻撃。螺子を長者原君の頭へと螺子込もうとしたのだが、長者原君はそれを指二本で止めて見せた。
「へぇ、球磨川君の攻撃を止めるか、中々やるじゃないか。委員長あんなのなのに」
「『まぁこれならいいかな』『ごめんね、試す様な真似して』」
「いえ、御理解いただけたのなら結構です」
そう言って、長者原君は全員に向き直った。
「こほん!では、まずは勝負を行うフィールドを決めたいと思います。この13枚のカードの内から選んでいただきます。選ぶのは挑戦者側である球磨川様です。どうぞ」
俺の目の前にはカードが置かれ、十二支の文字がそれぞれ書かれている。余りの1枚は人と書かれている。何あれ、面白そう。
「『んー…んじゃ巳で!』」
球磨川君はそう言った。んー、俺の勝負の時に人選ぼうかな.…ん、止めとこう。球磨川君あたりが最後に選んでくれるだろう。
「さすがは球磨川様。初戦でこのカードを選ぶとは…この巳のカードは最も残酷なステージになっています。では、庶務戦のステージは巳のカード。その名も【毒蛇の巣窟】となります!対戦カードは球磨川禊様対人吉善吉様となります!」
そして、やってきたのは毒蛇の巣窟なる場所。正方形の形に空いた地面の穴。底には毒蛇がうじゃうじゃといる。そして蓋をするように金網が置かれた。
しかし、金具で留められてはいない。つまりはこの上で動けば少しずつ毒蛇に近づくわけだ。まぁおもしろい。
「では、開始してください」
そんな言葉とともに、球磨川君と善吉君は金網の上に立った。
「『やぁ善吉ちゃん』『久しぶりだね』」
「ああ、そうだな球磨川。俺はお前と会いたくは無かったぜ」
「『酷いなぁ』『まぁいいけどさ』」
球磨川君と善吉君は随分と仲良さげに話をしていた。そして、言葉を交わした後は早々に構えた。球磨川君は何時もの通り螺子を両手に、善吉君は武器は持たずに何時でも動きだせる体勢を作った。
「『行くよっ』」
球磨川禊が人吉善吉に跳びかかった。その表情は随分と余裕そうだ。
だが
「『がふっ!?』」
「俺はお前と会いたくなかった……だが、俺はお前に会いたかったぜ! 球磨川ァ!!」