◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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とりあえず、僕から一点取る事。話はそれからだね

 さて、過負荷(マイナス)組へと無事に入りこんだ俺は現在、自宅に居た。

 

「へぇ、それでその飛沫ちゃんはそう言われてどうした訳?」

 

「ああ、傷を負った事が無いって言ったら言葉を失ってたね。あの表情は中々面白かったよ」

 

「なるほど、それは僕も見てみたかったなぁ」

 

 相も変わらず自宅ではその髪を白髪から焦げ茶色に戻していて、今日は内職やってる人みたいに半纏を着てこたつに入っていた。今はまだ冬では無いのに何故こたつなのかと言うと、なじみの気分だ。この家はセキュリティーを俺が担当している半面、内装空間の方はなじみが担当しているので、室内気温なんかは全てなじみの思いのままなのだ。今日はなじみの気分的に冬気分だったようで、こんなことになっている。

 

 全く、半纏を背後に立たせて半纏着てるってどう思ってんだろうか?

 

「あ、珱嗄そのみかん美味しそう。僕にも頂戴」

 

「これが最後だから諦めてくれ」

 

「えー……じゃあそのみかん一房でいいから譲ってよ」

 

「仕方ないなぁ……ほら、あーん」

 

 なじみが何時になくあまえたがりモードなので、とりあえず可愛がってやる。このモードになると下手に動けば面倒な事になるから、無碍に出来ないのだ。

 

「あー……むっ! うまーい♪」

 

「なじみ、お前キャラが最初の頃より大分ずれてるぜ」

 

「知らねーな、そんな事。僕は面白ければそれでいいんだよ」

 

「俺とキャラが被る。止めろ」

 

「珱嗄とおそろいぃ~」

 

 本当に、彼女はどうしてしまったのだろうか? 当初に会った頃はかなりクールで余裕のある出来る女オーラバリバリ出てたのに、どうして今はこうなったんだろう?

 

「……まぁ、それも面白いからいいか」

 

 俺はそう呟いて、疑問を宇宙の彼方へと放り投げた。

 

「はむっ……っくん……さて、靱負ちゃんもそろそろ帰って来るだろうし、夕飯でも作るかねぇ」

 

「じゃあ、冬に合わせて味噌煮込みうどんが良いなぁ」

 

「はいはい。それじゃあ味噌煮込みうどんな。ちょっと待ってろ引きこもり」

 

 後ろでぷりぷり文句を言うなじみを放って、俺はキッチンへと向かったのだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ―――翌日。

 

 珱嗄はなじみに見送られて家を出た。なじみは玄関で珱嗄に笑顔で手を振って、扉が閉まるとその笑顔をふっと消してつまらなそうにリビングに戻った。

 

「……という訳で、今回は僕の日常回だぜ。最初に言っちゃうと、この話で僕があれこれやってる表で珱嗄達は、日之影空洞を物語に組み入れて球磨川君がボコボコにされた後、不知火半袖を取りこんで作戦を立てた……という感じだ。だから次回からはその続きからになるからね?」

 

 嘘である。ちゃんと本編は本編でやるのである。嘘を言うな、安心院なじみ。

 

「さて、珱嗄もいなくなった事だし……僕は僕で平平凡凡な日常を謳歌するとしようかな」

 

 安心院なじみはそう言って、こたつを消した。室内温度を冬から現在の季節に戻して半纏も仕舞った。そして取りだしたのは、珱嗄が少し前に一度だけ似合うじゃないかとゆらゆら笑いながら言った服。

 所謂、巫女服。

 

「さて、それじゃあ珱嗄から前に暇潰しに使えって貰ったスキルで文字通り暇を潰そうかな」

 

 珱嗄特製、なじみ用暇潰しスキル。異世界へ一時的に跳ぶスキル【原典回帰(リグレーションオリジン)】を発動。

 このスキルは、珱嗄がなじみの為にわざわざカスタマイズしたスキルで、かなり細かい設定がされている。

 まず、跳ぶ事の出来る世界は、週刊少年ジャンプの漫画の世界のみ。跳んでられる時間は、こちらの時間で1時間。跳んだ後の世界で1日となる。それを過ぎると強制的に元の世界に戻ってくる事になる。

 また、転移後の世界での自分の立ち位置も弄ることが出来るので、結構色々なことが出来る。

 

 なじみはこれで最近暇を潰している。とりあえず封印が解けないと動けない訳だし、それに関しては珱嗄が球磨川に接触した事を知った時にそろそろ封印解けそうだなぁと思ったので、最早珱嗄頼みである。

 

「さて、それじゃあ今日はどの世界に入ろうかな?」

 

 なじみはそう言いながら、ジャンプを取り出して目次欄を見る。

 

「うん、それじゃあ今回は―――『黒子のバスケ』かな」

 

 そう言って、なじみは黒子のバスケの世界へとその姿を消したのだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「さて、と。今回は主人公、黒子君の高校……誠凛高校にやって来たぞっと」

 

 なじみは転移後、誠凛高校のバスケ部マネージャーとして物語に介入するよう設定した。監督の相田リコとは対象的な徹底した実力による実力アップを図る、実践的マネージャーである。

 とりあえず、今いる場所は部活中の体育館である。

 

「あ、安心院さん。ちょっといい?」

 

「んん? おや、リコちゃんじゃないか。どうしたんだい?」

 

「今度の練習試合で海常高校と組んだんだけど、ハッキリ言ってまだ勝てる段階じゃないのよ……だから安心院さんには火神君と黒子君の連携と実力アップを任せたいの。悔しいけど、安心院さんのトレーニングメニューは大幅に実力アップするには打って付けだから」

 

「なるほど。いいよ、それじゃあリコちゃんは他の皆を見ていてくれ。火神君なんかキセキの世代ぶっちぎる位強化してあげるよ」

 

「じゃ、じゃあ頼んだわね」

 

 そう言って、相田リコは日向率いる部員達の所へ行って指示を出していく。すると、話を聞いた火神君と黒子君がなじみの下へとやってきた。

 

「あ、あの安心院先輩。監督から俺らは先輩に教わる様に言われたんだ……ですけど」

 

「うん、そうだよ。じゃあ僕が次の海常高校戦まで君達のコーチをする安心院なじみだよ。巫女服はおしゃれだから気にしないでね」

 

「おう、じゃなくて……はい」

 

「それで、僕達はどうすればいいんですか?」

 

「ああ、そうだったね」

 

 安心院なじみはかの泉ヶ仙珱嗄の様に、口元を吊り上げて笑った。

 

 

「とりあえず、僕から一点取る事。話はそれからだね」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「っ……クソッ……!」

 

「んー……まだまだだね」

 

 それからという物、火神と黒子は自分達の出来得る限りの連携で安心院なじみを攻めたが、その実……点は一切入らなかった。火神がドリブルで抜こうとすれば、カットされるし、黒子との連携で抜こうとすれば黒子のパスをスティールされボールを奪われるし、逆に安心院なじみがドリブルすれば火神は何が起こったのか分からないまま抜かれたし、次々と点を入れられていた。

 

「はぁっ……はぁっ……! なんでそんなに強いんだよっ……!」

 

「あはは、それは教えてあげない。女の子には秘密が多いのさ」

 

「それにしても………汗一つ掻いてませんね。安心院先輩」

 

「それはそうだよ。だって準備運動にすらなってないじゃないか」

 

 なじみのその言葉に火神達は驚愕の顔を浮かべて床に寝っ転がった。既に体力は無く、勝てない事が分かったからだ。

 

「さて、まずは火神君だけど……随分とムラが目立つね。荒削りなプレイじゃキセキの世代には勝てないよ?」

 

「うす……」

 

「次に黒子君だけど……まぁ君のスタイルはキセキの世代にも通じるだろうね。でも、多分すぐに破られる。君はこれから自身の能力で出来るプレイスタイルを確立させないといけないね」

 

「分かりました」

 

「それじゃ、今回はここでおしまい。お疲れ様」

 

 安心院なじみはそう言って、巫女服を翻し、体育館を出て行ったのだった。

 


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