◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、箱庭学園を徘徊していると、昔の上司である人吉瞳センパイに出会った。白衣にランドセルというあからさまな小学生スタイルを貫き通している彼女は、こちらをマジマジと見ながら上目使いで近寄って来た。
でも、此処で考えて欲しいのは彼女の実年齢が42歳という所。42歳の伯母さんが、その幼児体型を使って若さを示したいのかランドセルまで背負い、かつ大人びた所は欲しいのか白衣を着るあさましさ。
痛々しいにも程がある。
伯母さんよぅ、ちょいとばかり常識とモラルという物を考えていこうぜ。面倒な輩が寄ってくるんだからさぁ……ロリコンとはペドフィリアとか変態とか変態とか変態とか……。
「うーん……珱嗄君。貴方、全然変わってないわね……その若さを保ってられる秘密は何?」
「アンタが言うな、ロリ子」
「ロリッ……!? 貴方ね、もう少し年上を敬っても良いんじゃない?」
「白衣を着てランドセルを背負った痛々しい奴を年上とはいえ敬うのはちょっとなぁ」
「………orz」
四つん這いで落ち込んでしまった人吉瞳42歳。自覚はあったんだろうなぁ。
「さて、それでアンタは何しに来たわけ? やっぱアレか、球磨川君の件ですか」
「うぅ……そうよ。球磨川君が私の息子の近くにまた現れたからね。それに、あの子には昔嫌になる位辛酸を舐めさせられたからね。そのお返しも兼ねて」
「うっわー、自分より遥かに年下の子供に10年以上前の仕返しに来る大人とかー、マジありえないんですけど―」
「ぐっ……」
「まぁ、いいや。それはそれで面白いし、俺も一枚噛ませろよ」
俺はそう言って、瞳センパイを脇に抱える。向かう先は生徒会室、フラスコ計画がどう終結したのかも含めて、
球磨川君を上手い事どうにかすれば、なじみも物語にまた入って来るだろうしね。彼もなじみの復活に危機感を感じてまた面白いメンバーを集めて来たようだしね。
また面白い展開が尻尾を見せたんだ、逃がさない手はないぜ。
そう考えて、ゆらりと笑いながらフラフラと生徒会室へと脚を進めた。
◇ ◇ ◇
「で、球磨川先輩よー。理事長に言ってた
珱嗄達が生徒会室へと向かう中、球磨川達
で、その具体的な案を考えているのだ。
「『うん』『まぁアレだよ。』『どーしよっかなー?』」
なんでもかんでもその場凌ぎで何か考えている様で何も考えていない頭おかしい男。それが球磨川禊だ。当然の様に、今回も何か策を持っている訳じゃない。ただ方法はどうあれ結果を述べただけだ。
「『まぁあれだよ』『敵はめだかちゃん達だけじゃないんだよねー』『珱嗄さんもいる事だし』」
「珱嗄さん?」
「『うん』『多分この箱庭学園の教師及び生徒全員で掛かっても』『問答無用』『無傷で勝っちゃう様な人だよ』」
「マジかよ」
「『うん』『それにあの人は今みたいな面白い事がだーいすきだから』『まず間違いなく絡んでくるよ』『全く、困ったもんだ』『まぁどちらにせよ、彼を引き込んだ方が勝つんじゃないかなぁ?』」
そう、球磨川にとっての珱嗄の評価は安心院なじみと同じく人外で負け無しの男。勝つ事を決定づけられた様なそんなキャラだ。週刊少年ジャンプで言うなら、主人公というより最終ボスか伝説上の存在とかそんな感じ。
「それって、どんな奴だよ……」
そう呟いたのは、球磨川の連れて来た仲間の一人、志布志飛沫。派手な容姿に露出の多い服装で、一昔前のヤンキーのような雰囲気を感じさせる。そして、その隣に静かに座っているのは蝶ヶ崎蛾々丸。そしてその後ろで包丁の刃の部分を不気味に笑いながら撫で続ける少女、江迎怒江。これが今居る
「『まぁ、とりあえず』『どうしようかな?』」
球磨川が笑いながらそう言うと、他のメンバーは考える素振りもなく笑いつつ何も言わなかった。
「『あはは、やっぱ何も出ないか~』『まぁいいや』『それはさておき、何時までもこんな空き部屋を使うのもなんだし』『まずは教室を確保しようぜ』」
「教室?」
「『そう、理事長は好きに教室を確保してくれ』『って言ってたし』『僕達-13組の教室を手に入れようよ』」
そう言うと、球磨川は立ち上がって江迎に手を向けてこれまた不気味に笑って言った。
「『そう言う訳だから江迎ちゃん』『お願いして良いかな?』」
「……良いですよ。とはいえ、何処に行けばいいんですか?」
「『適当でいいんだよ』『例えば……』」
球磨川は窓の外、遠くに見える軍艦塔―――黒神真黒の居るゴーストバベルを見る。すると、そのへらへらした笑みを浮かべた口元を、更に吊り上げらせて言葉を紡ぐ。
「『あそこがいいなぁ』『江迎ちゃん、あそこをジャックして来てよ』」
「……はぁい。それじゃあ行ってきますね」
そう言って球磨川同様笑いながらそう言う江迎、そして両手に包丁を携えて、空き部屋を出て行った。
「『よし』『それじゃあトランプでもしようぜ』」
◇ ◇ ◇
「はい、という訳で。やってきました生徒会室」
「いい加減降ろしてよ! こんなお荷物みたいに抱えないでくれない?」
「うるさいチビッ子だ。はいはいお邪魔しや~す」
そう言って、俺は生徒会室に入った。中に居たのは、黒神めだかに人吉善吉、喜界島もがなに阿久根高貴。まぁとどのつまり今の生徒会メンバー全員がそこにいた。
俺はそのメンツを確認し、瞳センパイを下におろす。自分の足で立った瞳センパイを、放置して、とりあえずは善吉君達に話し掛けた。
「やぁ、めだかちゃん御一行。泉ヶ仙珱嗄だよ、面白そうな匂いにつられて……やってきてやったぜ」
「お、珱嗄先輩」
「とはいえ、大体は理解してるんだけどさ。球磨川君、戻ってきたんだって?」
俺は、既に知っている事を言って反応を窺う。すると見事に全員はっとした表情を浮かべてくれた。やはり、彼との接触はすでに終わっている様だ。まぁ、それはおそらくフラスコ計画の終わった後にあったんだろうけど、まぁ結局その時は何の展開もなく終わったんだろうな。
「で、また球磨川君と一発やりあうんだろ? 俺も混ぜろよ」
「はぁ……珱嗄先輩。これはゲームとは違うのです。球磨川は躊躇なく人の命を奪う。面白半分で介入されては困ります」
「馬鹿だなぁめだかちゃん。俺にそんな事言うのは無駄だと学ばなかったのか?」
「………はぁ……でも、先輩は一般生徒でしょう?
あ、そういえばめだかちゃんの前じゃ何のスキルも使った事無かったっけ? ってことは俺はそこそこ尊敬出来たけど、結局は普通の人……と思われてた訳か。心外だなぁ心外だなぁ……心外すぎて……面白いわ。
「おいおい、めだかちゃん。何か忘れてるだろう? 俺は
―――スキルの一つや二つ、持っていないわけがないだろう。
俺はそう言って、ゆらりと笑って見せた。