◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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久しぶり。元気にしてた?

 さて、それからしばらく面白い事を探して歩き続けていた俺。球磨川君が此処に来たのならすぐにでも問題を起こしそうな物だが、未だ何も問題らしい問題は起こっていなかった。

 ちなみに、今近くに靱負ちゃんはいない。元々彼女は13組に入る予定だったのだが、俺の過去を改竄するスキルは違和感の感じない程度に改竄する物であり、何でもかんでも改竄出来る様な物ではないのだ。元よりそんな風には創られていない。どうでもいいスキルならそこそこの欠点とか抜け道があった方が面白いという考えである。

 

 まぁ、そんな感じで3年生として扱うにはいささか容姿が幼かった彼女は、最大限の譲歩として、1年生の1組に入る事になった。まぁ善吉君達と同じクラスである。一応球磨川君辺りが新しいクラスを創って過負荷(マイナス)だけを集めそうだが、そうなったら靱負ちゃんにも勧誘が来るだろう。

 

 という訳で、現在靱負ちゃんは1年1組で授業中。学校には小学校卒業以来来ていなかったらしいから、精々学校生活を楽しむと良いだろう。まぁ、学力には些か問題がありそうだが、頭は良いし、必要最低限の知識は直接頭に叩き込んで(スキルでインストール)ある。すぐにでも授業に付いていくだろう。

 

「さて……それじゃあ現永久自習生の俺はどうしようかね」

 

 靱負ちゃんもおらず、ただなんとなく歩いている訳だが、視界にあるのはただ伸びている廊下のみ。あーあ、こんなことならフラスコ計画もっと関わっとくんだったなぁ

 

「―――ん?」

 

 そんな事を考えていると、通りかかった一つの空き教室。授業にも使われない様な教室で、椅子も机もない何の特徴もない教室。強いて言うのなら床に畳が敷かれているくらいか。

 だが、そんな教室の中にたった一人の人間の気配。授業にも行っていない生徒となれば、13組生か……特例で免除されている生徒位だろう。または先生かな。

 というか、この学校先生の姿を一切見ないよね。生徒が濃すぎるんだよ。先生の面目丸つぶれだぜ。

 

「じゃあ、俺の作ったことわざを色々曲解して今に伝わった言葉に従って……入りますか」

 

 俺の作ったことわざ、『好奇心猫の如く従うべし』。これをスキルで昔の日本に伝えたのだが、それは間違っているとか言い出したアホのせいで『好奇心猫を殺す』という物になってしまった。

 元々は、好奇心には気まぐれでも従えという物だったのだが、今では好奇心は時に猫を殺してしまうという物になってしまった。

 

「おじゃましやーす」

 

 そう言って、中に入る。そこには、上半身裸のぼけぼけした雰囲気を纏った薄ピンク色の髪をツインテールにした少女がいた。どうやら、着替え中の様で、すぐに上半身にも寝間着を着た。

 寝間着は、子供の着る様な綿100%の上下セット。その容姿の幼さから、無駄に似合っている。

 

「おやすみなさ~~い」

 

 そう言って、着替えを済ませた少女は畳の上に置かれた等身大枕にぽすんと倒れ込み、すぐに寝てしまった。お前はどこぞのの○太君か。

 

「ふむ……これは面白いな。珍獣だ」

 

 見れば、見る程その少女の特異性が良く分かる。というか、異常(アブノーマル)という訳ではない物の、少女の変人性はずば抜けていた。まさしく珍獣。面白い。

 

「さて、まずは何をしようか………観察か解剖か……スキル薬投与か……むーん」

 

 しばらく考えて、決める。

 

「よし、全部やろう。とりあえず、観察→スキル薬投与、観察続行→解剖の順だな。起きちゃったら止めよ」

 

 そう言って、スキルを使いスケッチブックと鉛筆、解剖セットにスキルで作った不思議薬を取り出す。さて、始めようか。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 太刀洗斬子side

 

 

 私は眠気眼を擦りつつ、半分眠った様な状態の中、着替えを済ませて教室の中で眠っていた。ここは私が愛用するお昼寝教室であり、毎日の様に来る場所。

 この教室は授業では使われないし、殆ど人も来る事はない。半ば倉庫の様に扱われているけど、選挙管理委員会の面々を使って運ばれてくる荷物は他に移動しているから、まさしく私専用の昼寝部屋。

 

 そうして、いつもの様にしばらく寝ていたのだけど、身体がぽかぽかと温かくなってきた。これは、この教室の場所の特性にある。この教室はある時間帯になると、日光が長い間差し込んでくる場所にあるので、その間は温かい昼寝に最適な空間になるのだ。だからこそ、この空間は私だけのお昼寝空間なのだ。

 

 だけど、しばらく寝ていたら、眠気半分のまどろみの中、誰かの声が聞こえて来た。

 

「―――此処は―――っと」

 

 でもこの教室には人は来ないし、今は授業中だからきっと夢だろう。うっすらと目を開けて常時着けているアイマスクの裏から目の前を見る。起き上がるのは面倒だし、夢だから体勢はこのまま。

 すると、そこには着物を変な風に着流した男子生徒? がいた。

 

「うーん、まぁこんなもんか」

 

 そんな風に呟く彼の手には、鉛筆とスケッチブック。どうやら私の事をスケッチしているようだった。でもまぁ昼寝の邪魔という訳ではないし、その絵をどうこうする訳でもなさそうだし、気にしない事にした。

 すると、また眠気が襲いかかって来て、私の意識はふわふわとしたまどろみの中に沈んで行った。

 

「―――さて、次はスキル薬か」

 

 意識の落ちていく寸前、そんな言葉が聞こえた。そして――――

 

 

 

 ぞわっ……

 

 

 

 身体を駆け巡る電流の様な刺激。足が痺れている時にその足を触られた時の様な、強い刺激が、私の身体を支配した。

 私の意識に関係なく痙攣する身体。この時点で、私の意識はまどろみの中から一気に現実へと引き戻されていた。既に眠気はなく、どんどん刺激と共に身体が熱くなっていく。

 

「あ、ふ……あっ……」

 

 吐息と共に、声が漏れる。何故だか、意識しても声が出てしまう程の刺激。初めての感覚に戸惑ってしまう。

 

「なに……これ」

 

「あ、起きた?」

 

 私の疑問に、目の前にいた彼が相槌を返してくる。どうやら彼がなにかしたという事は私でも分かった。

 

「今どんな感じ? 苦しい? 痛い? 気持ちいい? 気持ち悪い? どれ?」

 

 彼の言葉の中から選ぶのなら、苦しい訳でも痛いわけでもないし、気持ち悪い訳でもなかった。かといって、気持ちいいかと問われれば、そうでも………あれ? なんか、気持ちいい?

 

「気持ち……いい…~」

 

 刺激が無くなり、じわじわと身体が更に熱くなる。そして、その熱さが段々と私の身体に快感を運んできた。

 

「ふむ……って事は今回は媚薬の効果があった訳か」

 

「び、やく?」

 

「そう。俺がお前さんに投与した薬は効果がランダムでね。即効性なんだけど、発動する効果は4種類の中からバラバラに選択されるんだ。苦毒・苦痛・快感・吐気の中の一つがね。で、今回はその中の快感が発動した訳」

 

「どう……なるの…~?」

 

 そう、問題はこのままこの段々と強くなっていく快感はどうなってしまうのか、この効果は最終的にどうなるのかという事だ。

 

「んー……前に試した時は、最終的に白眼剥いて痙攣しながら最終的に狂ってたっけ」

 

「! や、やだよ~~……んっ……はぁ…はぁ……」

 

「まぁ、起きた事だし。止めとくとしよう」

 

 彼がそう言った瞬間、私の身体にあった快感がパンッという感覚と共に消えた。息も絶え絶えという感じだけど、しばらくすれば落ち着くと思う。

 

「さて……お前、誰?」

 

「君こそ誰なのさ~~」

 

「ん、俺は泉ヶ仙珱嗄。面白い事が大好きな男だよ」

 

「へぇ~~。私は太刀洗斬子、選挙管理委員長だよ~~」

 

 少し快感の名残が残っているが、これ以上醜態をさらすわけにはいかないので、意地で普段通りに取り繕う。

 

「なるほど……うん、そういうキャラか……」

 

 彼は顎に手を当ててうんうんと唸りながら何か結論を出したようだ。

 

「おっけー、もういいや。それじゃあもう行くよ。またね斬子ちゃん」

 

「………何しに来たのさ~」

 

 そう言いつつ彼を見送って、彼が部屋を出て扉を閉めた瞬間糸が切れた様に枕に倒れ込む。

 

「あ、はぁ……はぁ……んんっ……ふー……ふー……」

 

 快感の名残が未だに身体を駆け巡り、段々と落ち着いて行く。それでも、吐息が漏れて声が若干漏れてしまう。下腹部にじゅんとした熱い感覚を覚え、着替えたばかりの下着が汗やらで湿って気持ち悪い。

 

「あーあ……着替えなおさなくちゃ~~」

 

 眠気が戻ってきた中、私はまた着替えを始めるのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「珍獣じゃなかったなぁ……」

 

 まぁ、見ればわかるだろうと思うけど。変人には片っ端から関わって行った方が得だろう。いつかは当たりに辿り着くかも知れないのだから。あれだよ。ドラクエでいう宝箱。

 

「さって……何処に行こうか」

 

 そう言って、歩くのは外。校舎の中にはめぼしい物は無かったので、外にやって来たのだが、やはりというか……何も無かった。

 だが、そこへ鴨がネタを持ってやってきた。

 

「あれ? 珱嗄君?」

 

「んん? おー、久しぶりだねぇ」

 

 

「瞳センパイ」

 

 

 そう、そこに居たのはかつての上司……人吉善吉の母。人吉瞳であった。

 

 

「うん、久しぶり。元気にしてた?」

 

 

 

 

 

 


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