◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

17 / 89
死ねこのクソ野郎ぉおおお!!!

 靱負ちゃんと一緒に帰った後なじみと一悶着起きたのだが、とりあえずは落ち着きを取り戻し、靱負ちゃんは俺達の家に置いて上げる事になった。

 そして翌日、俺は靱負ちゃんと共に登校したのだが、そこには昨日とは違う物があった。それが―――

 

 

「『あっれー?』『そこにいるのはもしかしなくても珱嗄さんじゃない?』」

 

 

 ―――球磨川禊。

 俺の中学時代の同級生にして、俺に生徒会長を押し付け去って行った張本人。

 

 さて、ここで思い出して欲しい事がある。俺はこの語りの部分で生徒会長を引き継いだ辺りでこんな感じの事を言った。『球磨川禊……覚えとけよ、次会った時が貴様の命日だ』と。

 そして、一つ俺に付いて一つ教えておこう。

 

 ―――俺、泉ヶ仙珱嗄は……案外しつこく昔の恨みを覚えている。

 

「死ねこのクソ野郎ぉおおお!!!」

 

「『げぶるぁああああ?!』」

 

 スキルによる全力の身体強化を行ない、その場からノーアクションで動き出す。そして、動いた時には既に全力で振りかぶった俺の拳が、球磨川禊の顔面を撃ち抜いた。

 

「安心しろ。スキル無効化は行なわないでおいてやるよ」

 

 その言葉と共に、上半身が拳の威力の前に消し飛んだ球磨川禊の死体がどちゃりと倒れる。

 

「さて……良くRPGゲームとかでダメージを受けると若干の硬直時間があるんだけど……それが終わる直前に攻撃の予備動作を終わらせて、硬直時間が終わると同時に更に攻撃を与える、という無限ループが出来たりするんだけど……現実でも出来るんだよね」

 

「『全く』『痛いじゃn――――ぶぐぁ!?』」

 

 例のスキルで復活する球磨川禊だが、二の句を告げる前に頭を踵落としで破壊する。二度目の死を迎え、また倒れ伏す球磨川。だが、こんなもんじゃ済まさない。なんせ2年間も待ったんだ、まだまだ付き合って貰う。

 

「さっさとしろ。あとがつかえてんだ」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「『あー、痛かった』『全く……珱嗄さんは―――』『ごめんよ、僕が悪かったよだからその拳を下ろして!』」

 

 球磨川君を計13回程殺した後、大分恨みも発散できたので虐殺タイムは終了となった。その間、ずっと横で見てた靱負ちゃんはやはり無表情で、顔色一つ変えない所はやっぱり過負荷(マイナス)だなぁと思わせた。

 

「お前が俺に会長を押しつけたのが悪い」

 

「『いやいや』『僕が推薦した訳じゃないし』『珱嗄さんに会長を押しつけたのは実質教師達でしょ?』」

 

「原因はお前だけどな」

 

 そんな風に会話しながら校門をくぐる。無論靱負ちゃんも一緒だ。というか、さっきから靱負ちゃんの方をちらちら見ている球磨川君は大分ロリコンに見える。

 そういえば、瞳センパイの事が一時期好きだったんだっけ? ロリコン疑惑が浮上してきたな。ああでもなじみの事が好きだった時もあったし、単にストライクゾーンが広いのかね?

 

「『果てしなく失礼な勘違いを受けている様な気もするけど』『僕は悪くないからね』」

 

「ふーん……で、お前なんで此処にいるわけ?」

 

「『いやー、前通ってた学校が廃校になっちゃって』『教室の真ん中でどうしようか考えてたら』『窓ガラスを突き破って僕の頭に靴が飛んできたんだ』」

 

「靴?」

 

「『うん、これだよ』『どうやら女の子の物の様だったから』『持ち歩く事にしたんだ』」

 

 そう言って見せて来たその靴は、確かに女子生徒のサイズ。それも、片方だけじゃなく両足どちらも揃っていた。そして、その靴にはかなり見覚えがあった。

 

 あ、これ冥加ちゃんの靴だ。

 

 黒神めだかに冥加ちゃんが襲撃掛けた時、俺は彼女の靴を脱がせて窓の外にぶん投げた。あの時の靴がまさか巡り巡ってこんな事態を招くとは……世界は本当に狭い物だね。やっぱり面白いな。

 

「これ、俺が投げた靴だよ。とりあえず返せ」

 

「『えー……僕の事が好きな女の子が』『僕の気を引く為に靴を投げて来たのかと思って』『運命を感じていたのになぁ』」

 

「とんだ運命だったな。ざまーみろ」

 

 そう言うと、球磨川君は靴を大人しく俺に返した。そういえば、こいつ何故か俺の言う事にはやけに素直に従うんだよね。なんでだろうね。

 

「『まぁいいや』『それで、靴の飛んできた方向を辿って見たら箱庭学園があったから』『転校先はここでいいやって』」

 

「へぇ、なるほど」

 

「『で、こっちも聞きたいんだけど』『彼女は?』『どうみても小学生か中学生にしか見えないんだけど……』」

 

 球磨川君がそう言う。多分、俺が靱負ちゃんにあった当初の頃なら確実に球磨川君は小学生にしか見えないと言っただろう。

 この一週間での修行の内容のおかげで随分と大人びて見える。とはいっても中学生に見える位の物だけど。その原因は、伸びた髪にある。

 彼女の髪は、元々肩より短めのショートヘアーだったのだが、今ではかなり伸びてしまい結ばないと地面に着く位になっている。とりあえず、簡単にツインテールにしているが、それでもギリギリだ。

 

 まぁここまで髪が伸びた原因である一瞬間の修行については今度番外でやるとしよう。これが空白の一週間という奴か……。まぁ黒神真黒君が一晩でめだかちゃんを全盛期に戻せるのなら、一週間で俺が靱負ちゃんを人外レベルに育て上げる事も出来る訳だ。

 

「………帯刀靱負」

 

「『へー、靱負ちゃんかぁ』『うん、可愛い名前だね』『ところで、君過負荷(マイナス)だよね?』」

 

「………そうとも言う」

 

「『なるほど、自覚はあるんだ?』『まぁ』『いいけど』」

 

 そう言った球磨川君は螺子を取り出して靱負ちゃんを攻撃した。とりあえず、心配する点は無いので放っておく。

 

「―――あはっ♪」

 

 小学一年生の女の子の様に純粋に笑った靱負ちゃんは、全ての螺子を躱し、弾きとばしていた。俺の教えた近接格闘での手刀技術。今や彼女の両の刃は鉄でさえも砕く。流石に切り裂くなんて化け物染みた事は出来ないよ。人間の手はそこまで鋭くない。まぁスキルを使えば俺は出来るけど。

 

「『!』『へぇ、今までそんな対処をする子はいなかったよ』」

 

 そう言って、球磨川君は靱負ちゃんの両手を見る。その両手は血だらけになっていた。無論、迫りくる螺子を手刀で叩き落すには、いくら手刀技術が優れているとしてもその両手は柔らかすぎた。女子特有の肌の柔らかさは、その螺子の前に簡単に傷ついた。

 だが、これがいけなかった。球磨川禊が最弱(マイナス)である様に、帯刀靱負もまた純粋(マイナス)なのだから。

 

「―――面白そうな玩具、みっけ♪」

 

「『あれ?』『身体が動かない』」

 

「それじゃあ遊ぼう? お兄ちゃん♪」

 

「はい、ストップ。面倒だから此処で終了な」

 

 珱嗄が間に入って止める。すると、少し不満気だが、靱負はスキルを解いて元の無表情に戻った。球磨川君も、身体が動く様になり、少し首を傾げていたが、もうこれ以上何かするつもりはない様だ。

 

「『なんだったんだろう?』『今のスキル』」

 

「ま、いいだろう。こんな所でネタバレしたら週刊少年ジャンプ的に言っても面白くない」

 

「『それもそっか』『じゃあ珱嗄さん。僕はこっちだから』『またね』」

 

「おー、またな」

 

 そう言って球磨川君は小走りに去って行き、俺と靱負ちゃんはいつも通り面白い事を探して校舎を徘徊するのだった。

 

 

 しかし、それも今し方別れた球磨川禊の居るこの学園で、見つからない筈はなかった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。