◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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俺の行動理由はたった一つだぜ

 さて、冥加ちゃんを150時間に及ぶくすぐり地獄に叩き落して、性的な意味で堕としちゃった後、俺は一旦冥加ちゃんを風紀委員長の冥利君に預けて、また靱負ちゃんと二人別の場所へ歩き出した。

 まぁ、一応引き渡す前に俺の教室で例の『サーティーンパーティ』について聞きだしたから、堕としちゃったのは別にその方が良かったのではないか? と結論付けた。なんでも正直答えてくれたしね。

 

 で、その『サーティーンパーティ』だが、どうやらこの学園の理事長である不知火袴の発案した計画の実験素体である13人の生徒の事をそう呼ぶらしい。正式な明表記は『十三組の十三人』と書いて、サーティーンパーティと読むらしい。

 で、その計画というのが、天才を人為的に作り出すという、その名も『フラスコ計画』。凡人と天才の垣根を破壊してしまおうという事らしい。

 それでその計画の素体である『十三組の十三人(サーティーンパーティ)』の強さは異常で、それはまさしく最強と呼べる物なのだそうだ。だから、冥加ちゃんはその中に入りたかったらしい。

 

 まぁそんな事はどうでもいいとして……この事件の真相は、俺の身内である安心院なじみにある。だって、フラスコ計画ってなじみ発案の計画だし、本来は天才を人為的に作るんじゃなくて、『完全な人間』を作るのが目的だったし、そもそもこの学園がなじみの作りだした物だと考えればもう決定的だよね。

 

「でもまぁ……それはそれで面白いか。なじみは今動けない訳だし、完全な放置状態のフラスコ計画がどういう風に進むのか……見てみようか」

 

「………それは面白いの?」

 

「ああ、きっと面白いさ」

 

「………なら、私も見てみたい」

 

 靱負ちゃんは本当に俺中心的な考えだな……俺が面白いと言えば何でもやりそうでおじいちゃん不安になって来たよ。まぁまだ小さい子供だし、常時俺にひっついて行動している訳だし、ちゃんと見ていれば大丈夫だろう。

 

「じゃ、行こうか。不知火袴の所へさ」

 

「………うん」

 

 そう言って、俺と靱負ちゃんは歩く速度を少しだけ上げたのだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「ほっほっほ……流石の怪物生徒会長も君達に掛かれば形無しですねぇ」

 

 理事長室では、例の不知火袴と『十三組の十三人(サーティーンパーティ)』の中の6人が話していた。少し前まで黒神めだかと話していたのだが、彼女が退室した後、部屋にいた6人と話していたのだ。まぁ、その黒神めだかはその後雲仙冥加による襲撃を受けたのだが。

 そして、そう笑った不知火袴の言葉が終わったと同時、理事長室に不敵な声が響いた。

 

 

「やっぱり、面白い事になってるじゃないか」

 

 

 その言葉は、おおよそ4000年前に珱嗄によって殺された石動弐語の様に、不知火袴と『十三組の十三人』の6人の動きをピタリと静止させた。

 

「この声は……まさか」

 

 その声の主は、当然の事泉ヶ仙珱嗄である。にたりと笑ったその顔は、まるで人を殺す事を楽しむ殺人快楽者の様でいて、また玩具を与えられた子供の様でもあった。正反対な印象を同時に感じさせるその雰囲気と、青黒く輝く両の瞳。

 そして、先程の珱嗄の言葉の三つに不知火袴を始めとする7名は完全に呑み込まれていた。

 

「―――い、」

 

『!』

 

 最初に言葉を絞り出したのは、不知火袴。息を吐く音にも似たたったの一音だったが、その一音が、他の6人の意識をハッと取り戻させた。

 

「……泉ヶ仙……珱嗄。何故貴方が此処に……」

 

「いやいや、知っているだろう不知火袴。俺の行動理由はたった一つだけだぜ」

 

 

 それは、かつて言彦が珱嗄を形容した言葉が良く当てはまった。それはすなわち―――『娯楽主義者』

 

 

 ただただ、面白い事を求めて行動する様は周囲の人々から見れば、十分に異常な事だった。珱嗄にとっては、ただアニメの世界を楽しみたいというだけの事なのだが、己と他人の判断は、必ずしも一致するとは限らない。それはつまり、見解の相違という事なだけだ。

 

「なるほど……それで、貴方はフラスコ計画に何か干渉してくるつもりなのですか?」

 

「当たり前の事言わせるなよ。ああでも安心しなよ。俺自身は干渉するつもりはないから」

 

「……というと?」

 

「この子にやらせる」

 

 そう言って、珱嗄は後ろにいた靱負を前に押し出した。彼女の姿を見て、不知火袴と都城王土の二人だけは警戒したが、他の5人はそうでは無かった。珱嗄が出てこないのなら、不安になる事もないと靱負の13歳という年齢より随分と幼く見えるその姿を見て判断したのだ。

 

 

「今、ああ良かったって思った?」

 

 

 その言葉は、珱嗄ではなく前に押し出された靱負の口から零れた。その鈴の様に良く響く声に、図星を突かれた5人は先程の珱嗄の言葉同様動きをピタリと止めた。目の前の少女から、珱嗄には劣るが自分達よりも強大な気配を感じ取ったのだ。

 一人は刀を持ち、一人は改造人間、一人は肉弾戦なら敵無しを歌い、一人は異常な解析力、一人は相手の精神を読み解く。そんな力を持つ五人の男女は、何の力も持たない小さな少女にただ圧倒されていた。

 

 

「おかしいなぁ、私みたいな貧弱な子供になんで怯えているの?」

 

 

 彼女が言葉を紡ぐ度に、5人は冷や汗を流し、一歩後ろに下がった。彼女の表情は、これまでの彼女の物とは一変し、喋り方も大きく変化していた。話す前にはかなり間を入れ、無表情に喋っていた彼女は、今では珱嗄の様にヘラヘラと笑い、その黒い瞳をキラキラと輝かせてはっきりと話していた。

 

 これは、珱嗄の一週間に及ぶ地獄の修行の成果。彼女の本来の性格を引き出した結果。以前に珱嗄と同じ中学生活を送り、途中で消えた最弱の男と同じ雰囲気。つまり、彼女は―――

 

 

 ―――過負荷(マイナス)だった。

 

 

「面白いなぁ、楽しいなぁ……本当に、面白い事がいっぱいで幸せ!」

 

 彼女は過負荷(マイナス)不幸(マイナス)な目に合い、死んでいく所を不幸にも珱嗄に拾われてしまった少女。元々、あの街で嵐など起きていない。あの街ではもっと別の何かが起きたのだ。そう、彼女とナニカがその人生の中で出会い、あの惨状を引き起こした。

 

「さて……とりあえず、用事はこれだけだ。今は一度帰るとしよう。行くよ、靱負ちゃん」

 

「………うん」

 

 珱嗄の呼び掛けで、少女は元の雰囲気に戻り、ゆっくりとした動きで珱嗄と手をつないで部屋を出て行った。彼女の変貌の切っ掛けはなんだったのか、彼女の街に何が起こったのか、それはまだ分からないが、不知火袴達7人は、確実に思った事があった。

 

 

 

 ―――あの二人は、危険だ。

 

 

挿絵:帯刀靱負キャラデザ

 

 

【挿絵表示】

 


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