◇3 めだかボックスにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、演説やら風紀委員長の邪魔やら色々と面白い事が起きた後の事だが、その後は淡々と俺のクラスである3年13組の教室へやってきた。まぁ、俺としては永久自習で何も起きる訳もない教室に長居する理由もないので、早々に出て来た訳だが。
空洞君はあのまま教室に残る様で、放課後まで座っているらしい。何がしたいんだアレは。面白みも何もないな。
で、なんやかんやでやって来たのは1年13組。つまりはあの新生徒会長黒神めだかの教室。やはり永久自習の様で、中にはだれ一人として生徒はいなかった。まぁ当たり前か。
となると、黒神めだかの向かい先として挙げられるのは、生徒会室か……おそらく入学しているであろう彼女の幼馴染、人吉善吉のいる1年1組。彼は平凡な
「そんじゃまぁ……1組から寄りますかぁ」
生徒会室より断然早い。なにせ、廊下を真っ直ぐに歩いた先にあるんだから。
「……それにしても、目立つなぁこの服装」
歩きながらそう呟く。殆どの生徒が白い制服を着ているのに対し、改造制服ですらないただの着物を着ている奴がいれば、まず間違いなく目立つ。それはもう亀が大量にいる所に一匹だけウサギがいる様な感じに目立つだろう。
まぁ気にしないんだけどさ。
そんな感じで俺は歩き、1組の教室に辿り着いた。中からは13組とは違い、新入生達の騒々しい話し声が聞こえて来た。その中でも、大きく良く通る声が二つ。
「―――あいつは人前に立つのに慣れてんじゃねぇ、人の上に立つ事に慣れてんだ!」
「あひゃひゃ☆そうだよねーそうでもなけりゃ支持率98%なんて出せる訳ないか♪」
中から聞こえてくるまだ高い子供の様な声とハキハキとした男の声。その内の片方は以前に聞いた事のある声だ。無論、言うまでもなく……人吉善吉の声だった。
それを聞いた俺は教室の扉を開き、中に入る。全員が入って来た俺へと視線を向けた。ある者は好奇の視線で、ある者は嫌悪の視線で、ある者は好意の視線でと色々な感情の籠った視線が俺へと注がれた。
「―――やぁ新入生諸君。面白い事はあるか?」
俺はそんな視線の中、不敵に笑ってそう言った。
◇ ◇ ◇
「珱嗄先輩!」
「おー善吉ちゃん。久しぶり~」
「いや、先輩なんでこの学校に? 先輩がこの学校に来たことなんて知らなかったですよ」
入って来た俺に駆け寄り、話しかけて来た人吉善吉。一応この子とも面識がある。俺とめだかちゃんのみの生徒会だった頃にちょいちょい生徒会室にやって来たのだ。目的はめだかちゃんのお出迎え。やっぱりパートナーとするならとてつもなく最適な性分をしている。
「それにしても……いやはや全く変わってないなぁ善吉ちゃん。全く、つまらないな……変化が無いって事はとてもつまらない」
「いや、そんな事言われても……」
「おっと、そうそう。めだかちゃんはどこかな?」
「先輩もアイツに会いに来たんですか?」
「いや違うな。俺はめだかちゃんを見に来たんだ」
「何か違うんですか?」
「違うなぁ、大きく違う。全く、全然なってないぜ。決まってんだろうが、めだかちゃんみたいなのについてりゃ面白い事が起こる物だと決まってんだよ」
そう、なじみ風に言わせるのなら……彼女の様な主人公体質のキャラクターの傍にいれば、間違い無く何かしらトラブルが起きるだろ。それはきっと、俺にとって面白い事極まりない展開に違いない。
「ああ、そうだ。それはそうと……善吉ちゃん。お前、生徒会に入れ。これは命令だ」
「ええ!? そんな、嫌ですよ。先輩に言われたからといって、これだけは譲れないです。俺は……俺は絶対生徒会には入らない!」
「うん、とりあえず後ろの子を見てからそう言う事言おうか」
「え?」
振り向く善吉ちゃん。そこには、こちらに指をさす彼と同ポーズをとる黒神めだかの姿があった。彼女はこちらに気付いてぱっと表情を輝かせた。
「珱嗄先輩ではないですか! お久しぶりですね、御無沙汰しております!」
「ああうん久しぶり。そっちも随分と高校生活をエンジョイしてるね」
「いえ、珱嗄先輩ほどではありません」
なんというか、会話しているとこの子がかなり変わった事が分かる。中学時代は卒業式の時を除けばかなりツンケンした態度だったのに、随分と丸くなったというか……素直になったね。
「それで、今回は善吉ちゃんの勧誘かい?」
「はい。善吉、行くぞ! 貴様には私の生徒会に入って貰わねばならんのだからな!」
めだかちゃんの理不尽すぎる言葉。善吉にとっては随分と身勝手な言い分だろう。俺からしたら微笑モノの言葉だけど。
まぁソレは良いとして……生徒会か。今の俺ならまだ入れるんだよね。入っといた方が面白そうという意見もあるのだが、いまいち入るような踏ん切りはつかない。正直、俺が入って課せられる仕事と面白いイベントを天秤に掛けると、生徒会に入るよりゲリラ参加した方が早そうという感じにも思えるのだ。
「どうしたものかな……」
そんな風に考えていると、めだかちゃんと善吉ちゃんは既にいなくなっており、恐らく生徒会室へと向かったのだろうと辺りを付けた。
すると、そんな俺の目の前から最初に聞こえた幼い声が響いた。
「あひゃひゃ☆あのお嬢様はいつ見てても面白いですねー。で、泉ヶ仙珱嗄……なんで貴方がこんなところにいるんですか?」
「おう、半袖ちゃんじゃないか。いつ見てても惚れ惚れする位の役者根性だな」
「………まぁいい。私の邪魔だけはするなよ。でないと、喰らうぞ」
「クハッ! いいねぇ、出来るものならやってみるといい。それはそれで面白いし」
「……じゃ、私は食堂にでも行きますんで! さよならです珱嗄先輩! あひゃひゃ☆」
そう言って、半袖ちゃんは去って行った。まぁ、あの子とは少なからず因縁的な物があるのだ。その事はまぁ……もう少し先に話すとしよう。
「さて……それじゃあ帰るとしますか」
今日はそんなに面白い事なさそうだしね。あってもめだかちゃんと善吉ちゃんがどこかの部活の更生活動に勤しむ程度だろう。ソレ位ならまぁ……見る必要はないしね。
この後、珱嗄が家に帰った時安心院なじみが凄い勢いで抱き着いてきたのは、言うまでもない。