ルルーシュと麦わら海賊団   作:みかづき

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決着ブラック・リベリオン!俺達の勝ちだ!!

―――ギア3

 

自ら指に傷をつけその傷口から直接体内に

空気を送り込むことで身体の一部を巨大化させるギア2に続くルフィの奥の手。

“ゴムゴムの実”の伸縮の特性を

最大に生かしたこの技を見た者は、“巨人族”の腕を連想する。

その腕は見掛け倒しではない。

後のエニエス・ロビーにおける“オハラの悪魔”ニコ・ロビンの奪還戦において、

あのCP9最強の戦士であるロブ・ルッチがこの技を受けた際に、

“鉄塊”で身を固めた状態で、部屋ごと海上に吹き飛ばされ、一瞬ではあるが

気を失わせるほどの威力を示した。

あの“頂上戦争”では、兄“火拳”のエースを助けに行く途中で、

その行く手を阻む巨人の中将をこの技で吹き飛ばし、戦場に鮮烈なインパクトを残した。

 

詰まるところ、後の“麦わら”のルフィの代名詞となる技である。

 

その威力は絶大であり、

 

その技は今…まさに――――

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

「ぴィぎゃぁあああああああああああああああああああああ―――――ッツ!!」

 

 

扇要の目前に迫っていた。

 

 

「ピぎェエエええェエエエエエエ!!ジィネェエエエエエムギュワラァアアアアア!!」

 

 

扇は半狂乱になりながら、レバーのボタンを連打する。

そのボタンはあの“フレイア”のボタン。

ナイトメアの砲台から放たれた破壊の閃光は、あの巨大戦艦斑鳩を半壊させた。

砲台は、迫り来る“麦わら”のルフィに向けられ、

その直線上には半壊した斑鳩の姿があった。

“フレイア”の破壊の閃光により、麦わらのルフィと斑鳩に乗っている麦わらの一味を。

そして、あの忌々しいゼロをこの世界から一掃する…それが扇の脳裏に刹那、

過ぎったシナリオであった。

事実、ナイトメアの砲台は、奇跡的にゴムゴムの“JET”ガトリングの猛攻を耐え、

完全な破壊を免れていた。

“フレイア”に必要な波動のゲージは“MAX”を示している。

“フレイア”発射の条件は全てクリアされていた。

この土壇場において、逆転の条件を備えることができただけでも、

扇を支え続けた“悪運”の強さに感嘆を禁じえない。

さすがは“英雄”ゼロを陥れ、

ブリタニアの盟主までもその毒牙にかけようとした男だけのことはある。

大したものだ。

だが、忘れてはいないだろうか?

この世界に存在する以上、全ては有限であり、必ず限りがあるということを。

それは扇の怪物めいた“悪運”ですら例外ではない。

この戦いの結末を運のみで語るなら、それはいつ決まったのだろうか?

 

藤堂と四聖剣が敗れた時か?

ロブ・ルッチが任務に失敗した時か?

ナイト・オブ・テンがこの世界から消失した時か?

シュナイゼルの変わらぬ微笑が消えた時だったのだろうか?

 

いや、全ては、あの時…仮面の魔王と海賊王を目指すルーキーが邂逅を遂げた瞬間に。

あの時にこの結末は決まっていたのだろう。

海賊王の高みを目指し、襲い来る困難を恐れることなく向かっていく強靭な意志。

その意志を前にして、たかが悪運如きが勝てる道理などあるはずないのだ。

 

詰まるところ、この状況を敢えて言葉にするならば

 

 

――――悪運、今ここに尽きる…である。

 

 

「…ふえ?」

 

扇は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして眼前を見つめる。

“フレイア”のボタンは押された。

ならば、なぜ未だにこのような光景が目の前にあるのか?

“フレイア”の破壊の閃光により、

麦わらとゼロ達はこの世界から蒸発し、塵一つ残らないはずだ。

眼前にあるのは、ただ大海原のみ…そのはずだ。

 

 

(じゃあ…なんで麦わらの野郎がいるんだぁあああああああああああ!?)

 

 

扇は心の中で絶叫した。

ルフィも仲間達が乗っている斑鳩も何一つ変わることなく存在していた。

それどころか、ルフィと扇の距離はどんどん狭まっていく。

巨人族の腕を掲げて向かってくるルフィの姿は、

扇にはまるで死神が巨大な鎌をもって迫ってくるかのように錯覚した。

 

 

「キョェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ~~~~~~ッ!!」

 

 

扇は半狂乱になりながら、“フレイア”のボタンを連打する。

 

 

(消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!この世から消えろ麦わら~~~~ッ!!)

 

 

砲台から“フレイア”が放たれ、破壊の閃光が“麦わら”のルフィを飲み込む姿を

夢想しながら、扇は必死でボタンを連打する。

そして、その過程である異音に気づいた。

 

 

ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ。

 

 

「ホゲ…?」

 

 

はじめは何の音かわからなかったその異音。

だが、それがボタンを押す度に発せられることに気づき、扇はゆっくりと自分の指を見る。

そして絶句した。

扇の指は…根元からぽっきりと折れており、辛うじて皮だけで繋がれている状態だった。

ナイトメアの砲台が軽症であるならば、

あの“JET”の暴風は一体どこに向かったのであろうか?

その全ては扇のいるコックピットに叩き込まれた。

あの暴風の直撃により、全身の骨が砕かれる中で、

扇は急所を守るために己が両手を盾にした。

その為に両手のほぼ全ての指がヘし折れれてしまうという結果に至った。

その手はもはや、箸を握ることすらできない。

 

ならば“フレイア”のボタンを押すことなどとても…

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

 

扇が残酷な真実を知った間にも、ルフィはさらに距離を詰めてきていた。

 

 

ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ、ぺシ。

 

 

コックピットにはただ皮が叩きつけられる乾いた音だけがこだまし、現実を告げていた。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

「ピィギュエァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――ッツ!!」

 

 

そして・…扇はついに失禁した。

 

 

「ヒィひぎィ~~~~~~~~~~~~~キュンッ!!」

 

 

突如、扇は白目を向いて倒れた。

死んだフリではない。本当に失神したのだった。

獣の中には、危機を前に、自ら仮死状態になることで難を逃れるものがいるが、

これはそれに該当しない。

扇はただ、逃げただけだった。

敗北から、痛みから、戦いから、己が人生の結末から。

ただ、肉体を捨てて、精神のみ全てから逃れるつもりなのだ。

扇は、いや、扇要を飲み込んだ我欲の怪物は、

主である扇とその最後を共にすることを拒み、精神の闇の中に閉じこもった。

もはや、野望の達成は不可能だと知り、痛みから逃れるためだけに。

それだけのために、怪物は精神の闇の中に逃げこんだ。

それは、この戦いに関わった者全てに対する侮辱であった。

 

 

だが、そうはいかない。

そう、上手くいくはずがないのだ。

今一度言おう。

 

悪運、今ここに尽きた…のだ。

 

今まで守ってくれた悪運が消えた今、襲いくるのは…

 

 

 

―――超ド級の“不運”である。

 

 

 

 

「ハア、ハア、ハア」

 

 

闇の中で怪物は息を整える。

ここは精神の奥底にある扇の心の闇。

怪物が生まれ育った場所であった。

その生まれ故郷に戻った怪物は息をしながらほくそ笑む。

 

 

「クズどもが…誰が最後まで付き合ってやるかよぉ~~~~~ッ!!」

 

 

もはや、敗北が確定した以上、現実の世界になどいる理由はない。

わざわざ激痛の果てに息絶える必要性などありはしないのだ。

そんなものは扇要にでも任せておけばいい。

もはや、扇要と怪物は完全に別人格であった。

怪物は都合の悪い現実を全て扇要に押し付けてここで安寧な最後を遂げるつもりだった。

そう、この闇は怪物にとって最も安全な場所。

 

ここには誰一人いるはずもな…

 

「ん…?」

 

闇の中で扇は違和感に気づく。

眼前の暗闇で何かが動いているのだ。

それはまるでこの闇を擬人化したような漆黒の影。

それが1歩1歩と自分に近づいてくるのだ。

 

「んん…?」

 

怪物は目を凝らして漆黒の影を見つめる。

ここに自分以外の人間がいるはずはなかった。

気のせいに決まっているはずだ。

だが、酷く…嫌な予感がしていた。

 

その時だった。

 

「扇…」

 

「な…!?」

 

漆黒の影は言葉を発した。

それは影が人間であることの証明であった。

それだけではない。

影は自分の名前を呼んだのだ。

つまりは、影は自分が知っている人物…!?

怪物の額に大量の汗が流れ落ちる。

この安寧の闇の中、自分以外の人間が存在している。

そしてその声はどこかで聞いたことがあるような…?

そんなことを怪物が考えている間に、

怪物と影との距離はついにその姿を確認できるほど接近した。

刹那、怪物は絶句した。

 

漆黒の闇の中から、あの仮面が現れたのだ。

 

その仮面は大ブリタニアに反逆した男の象徴。

数多の犠牲を超えて、ついにブリタニアに勝利した奇跡の証。

 

あの男が被っていた仮面だった。

仮面の男はマントを翻しながら、ゆっくりと歩いてくる。

扇に向かって1歩1歩進んでいく。

戦場でこの男の姿を見たブリタニア兵は一斉にその男の名を叫ぶ。

 

その男の名は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼ、ゼゼゼ、ゼゼゼゼゼゼ、ゼ―――ゼロ~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の中、怪物の悲鳴が響き渡った。

 

 

「ギョエアワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

怪物は現実の世界に帰還した。

安寧だと思った精神の闇の中になぜあの男がいるのだ!?

怪物は驚愕しながらも、その謎について考えようとした。

 

「…ん?」

 

だが、現実は厳しい。

怪物にそれに費やせる時間はなかった。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

 

ルフィとの距離は気絶した前よりずっと狭まっており、

その覇気が傷口に響くほど接近されていた。

 

 

「ぴィぎゃぁああああああああああああ―――――キュンッ!!」

 

 

その絶望的な光景を前に、怪物は再び精神の闇に逃亡した。

 

しかし―――

 

 

「扇…」

 

 

「うびゃァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

闇の中では、今度はゼロとの距離が狭まっていた。

 

「ヒ、ヒィイイイイイイ~~~~~~~~~ッ!!」

 

怪物は腰を抜かし、地面を這いながら、ゼロから逃亡しようと試みる。

もはやその脳裏からは

“なぜ、ゼロかここにいる!?”という謎の解明が完全に消失していた。

怪物はまるでゴミ虫のようにノロノロと地面を這っていく。

 

この状況において、もはや怪物からの意見を聞けそうにない。

よって代わりにこの謎に対して私見を述べてみることにしよう。

この謎が起きた原因には、その直前…つまり、ルフィとの戦いの最中に

起きた出来事が大きな要因ではないかと推測する。

それは、怪物の回想。

“モジャモジャノーム”を放って、ルフィを洗脳しようとした時に、

怪物はルフィの夢が海賊王になることを思い出した時に、

一緒に思い出してしまったのだ。

 

ゼロに対する身体に刻み込まれた恐怖を。

あの赤い目を輝かせて自分を睨む魔王の姿を。

 

それが精神の闇の中で、ゼロの姿となって具現化したのではないだろうか。

 

最も、これは私見であり、真実はまさに闇の中だろう。

ただ一つだけ言えることは、

 

この状況が怪物にとっては、まさに…

 

 

―――超ド級の“不運”に違いない。

 

 

 

「フギュィイイイ~~~~~~ヒギィ~~~~~~~~~」

 

 

怪物は逃げる。

ノロノロとゴミ虫のように。

何が起きているかまるでわからない。

だが、今はあのゼロからなんとしても逃げ延びるのだ。

だが、今の怪物にそれすらも叶うことはなかった。

ただ逃げる…それすらも不可能だった。

 

「な…ッ!?」

 

怪物は小さな悲鳴を上げる。

何かに両足が絡まって、前に進めないのだ。

両足に絡みつくこの感覚。

それはまるで人の腕のようだった。

怪物は恐る恐る後ろを振り返る。

 

そして、絶叫した――――

 

 

「う、卜部~~~~~~~~~~~~ッ!?ナ、ナオト!?お前まで~~~~~ッ!?」

 

 

そこにいたのは、かつて自分が謀殺した卜部とナオトであった。

ナオトは“サギサギの実”を手に入れるために。

卜部は手駒にならないという理由で殺した。

その二人が、今まさに、自分の両足をしっかりと握っている。

それだけではない。

地面やゼロの後方には、自分が出世のために利用し、

殺めてきた無数の人間達の姿が見えた。皆、冷たい瞳で自分を見ている。

 

 

「ピィギュエァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――ッツ!!」

 

 

怪物は爪を地面に突き立てながら前進する。

卜部とナオト、そして怪物が殺めてきた人々の幻影は、

まだ怪物に完全に飲み込まれる前の扇要が

心の中に押し込めてきた罪悪感の具現化であった。

それが最後を前に、その枷を解かれ、怪物に襲い掛かってきたのだ。

 

 

「キィアアアアアア!!ギュゲェエエエエエエエエエ!!!」

 

 

だが、怪物はあがく。最後まで見苦しく。

爪を突き立てながら、卜部とナオト諸共、前進を開始する。

 

その怪物の背中に何者かが覆いかぶさってきた。

 

 

「今度は誰だぁ~~~~~~~~~ッ!?また殺してやるどぉおおおおおおお」

 

 

ついに怪物は逆ギレした。

もはや誰が来ても恐れることはない。

所詮は過去に、自分に殺された程度の輩だ。亡霊め、再び殺してやる…!!

 

 

「ブッ殺してや…なッ!?」

 

 

白目を剥き出しにして振り向いた瞬間、怪物は絶句した。

 

 

 

 

―――――そこにいたのは、扇要だった。

 

 

 

 

扇要は、しっかり怪物の背中を抱き、動かない。

その扇要は、扇要の心に残った最後の善意“きれいな扇さん”だった。

“きれいな扇さん”は扇の心が怪物に喰われる寸前のその姿を

精神の底に隠し、難を逃れることに成功した。

だが、その間、精神を乗っ取られた自分が行った凶行を

ただ見ていることしかできないことをずっと後悔してきたのだった。

そして彼は決意した。

この最後の瞬間において、精神の闇が生み出した怪物に一矢報いようと。

それを叶えることが出来て、きれいな扇さんは微笑を浮かべる。

 

 

 

         “もう、いいんだよ”

 

 

 

まるでそう言っているかのように優しい笑顔で怪物に微笑んだ。

 

 

 

「い、嫌ぁああああああああああああああああああああああ~~~~~~~~~ッ!!」

 

 

 

怪物は再び失禁した。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

「ぴィぎゃぁあああああああああああああああああああああ―――――ッツ!!」

 

 

再び現実の世界に逃げた怪物の前にルフィが迫る。

 

 

 

「扇…」

 

「うびゃァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

精神の闇の世界に戻っても今度はゼロが迫ってくる。

現実と精神の世界を行ったり来たりしている内に、

怪物はもはや、自分がどこにいるのかわからなくなっていた。

ただ、一つだけわかることは、

 

現実だろうとも…

精神の闇だろうが…

 

 

この世界に――――

 

 

 

 

 

 

          怪物に逃げる場所なし!

 

 

 

 

 

 

 

 

「扇…俺はお前に忠告したはずだ」

 

「ヒ、ヒィイイイイイ~~~ッ!!」

 

 

精神の闇の中、その目前まで迫ったゼロがゆっくりと仮面を脱いだ。

両目に“ギアス”の赤い光を輝かせながら、再び魔王は語る。

 

 

 

―――扇、お前が何を企もうとも、どんな手段を使おうとも無駄だ

 

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

「ぴィぎゃぁあああああああああああああああああああああ―――――ッツ!!」

 

 

 

アイツは…ルフィは――――

 

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ」

 

 

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 

 

 

 

 

 

 

         “海 賊 王” に な る 男 だ!!

 

 

 

 

 

 

 

       

      “ゴムゴムの巨人の回転弾(ギガント・ライフル)”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――あべし!!

 

 

 

ゴミ虫が“ブチリ”と潰れた音がした後、

ナイトメアを岩ごと上空に吹き飛ばされた後、大爆発を起こした。

それは、まるで夜空に煌く汚い花火のように。

 

 

「ハア、ハア、ハア、ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ」

 

 

ルフィは砂浜に大の字になって倒れ、全身で息をする。

その身体は、まるで子供のように縮んでいた。

それはギア3の後遺症。

巨人の力と引き換えに、しばらくの間、戦闘不能になるのだ。

 

「ハア、ハア、ハア」

 

地面に寝たまま、ルフィはゆっくりと右腕を空に伸ばし、拳を固める。

そして空に向かってありったけの声を上げて叫んだ。

 

 

 

―――聞こえるか、ルルーシュ!!この戦争(ケンカ)…

 

 

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         俺達の勝ちだ―――――ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?」

 

「ぐぅあ…!?」

 

 

第二次ブラック・リベリオンの終わりと共に戦場で気絶していたカレンは目を覚ました。

頭を上げた拍子に、背中合わせで座っていたC.C.の後頭部に頭突きした形になり、

C.C.も目を覚ました。

 

「痛いぞ、一体何が起こったのだ?」

 

「うん…」

 

逆上したブリタニア兵の襲撃だと思ったC.C.が銃をとるも、

カレンはまるで聞いていなかった。

 

「おい!だから一体…」

 

「誰かの声が聞こえた気がする」

 

そう言ってカレンは空を見る。

いや、カレンだけではなかった。

戦場にいる誰もが、黒の騎士団もブリタニアも革命軍もレジスタンスも

誰もが空を見つめていた。

空は夕焼けに染まり、オレンジ色の光が眩しく輝いていた。

 

 

 

 

第二次ブラック・リベリオンの終戦によって、首都ペンドラゴンに戻るため、

ブリタニアの高官達が飛行艇に乗り込んでいく。

その中には、ブリタニアの事実上の盟主であるシュナイゼルが。

そして、次期皇位継承者であるナナリー・ヴィ・ブリタニアの姿が見えた。

その中で異彩を放つのが、ナナリーの車椅子を押す人物。

その頭には「MARINE」の帽子を被り、身長は高いが華奢な外見から察するに、

海軍の新兵と思われる。

だが、この人物こそ、この戦争の勝者であり、大ブリタニアをついに打倒した

反逆のカリスマ“英雄”ゼロその人であった。

そして、ゼロの正体は、神聖ブリタニア帝国の正当な皇位継承者である

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであった。

 

ルルーシュは思う。

第二次ブラック・リベリオンの終戦に伴い、戦局は新たなステージに移行した。

ゼロの勝利…それはつまり、革命軍勢力が世界政府屈指の大国を打倒したに他ならない。

その事実はこの諸島にとって最悪の事態を引き起こす。

捕縛された時のシュナイゼルとの会談が脳裏を過ぎる。

 

シュナイゼルの懸念。

それは、ブリタニアの次期皇帝がドラゴンの部下であるという事実。

それを口実とした世界政府によるブリタニアへの侵略であった。

ブリタニアは世界政府屈指の大国に成り上がったが、あくまで新興国の一つに過ぎない。

少しずつ力をつけてきた新興国の中においてブリタニアはその象徴といえるが、

それは、天竜人を中心とした旧体制側から見れば、煙たい存在に違いない。

それは4年に一度開かれる“世界会議”において、ブリタニアの発言が限定されて

いることから見ても明らかである。

世界政府は神聖ブリタニア帝国をその巨大な軍事力から潜在的脅威として認識している。

そのブリタニアが革命軍勢力であるゼロに敗れる。

それは、ブリタニアの次期皇帝が

ドラゴンの部下であるという事実と同等…いやそれ以上の意味を持つ。

 

 

      “革命軍勢力からブリタニアを解放する”

 

 

それを大義名分として、世界政府の侵略が始まるだろう。

 

だからこそ―――“先手”を打たなければならない。

 

もはや、一刻の猶予もない。

早急に首都ペンドラゴンに出向き、ブリタニアの中枢を掌握しなければならない。

目に映る全てを守る…そう決めたのだ。

これまでの戦いで失われた数多の命に報いるために、立ち止まるわけにはいかない。

そう、必要なのは“覚悟”だ。

 

天竜人よ、生まれ持った強者達よ、貴様らにその覚悟はあるか?

 

 

「世界政府の老人どもよ、貴様らに思い出させてやる。

たとえ世界の玉座に座っていようとも、どんな巨大な力を持とうとも…」

 

 

 

 

 

    ”撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ!”

 

 

 

 

その覚悟を胸に、ルルーシュは飛行艇に乗り込もうと歩を進めた。

 

その時だった―――

 

 

「お兄様…?」

 

 

突然、車椅子が止ったことを不思議に思ったナナリーが振り返った。

ルルーシュは立ち止まり、空を見ていた。

誰かに名前を呼ばれた気がしたのだ。

あの空の下では、ルフィ達が扇達と戦っているはずだ。

正直、気にはならないというのは嘘になる。

だが、心配などしていない。

アイツらが扇などに負けるはずがない。

 

 

だってアイツは“海賊王”になる男なのだ。

 

 

 

 

 

――――なあ、そうだろ?ルフィ。

 

 

 

 





お久しぶりです。本当にお久しぶりです。
やっと決着を書くことができたので、投稿させて頂きます。
VS扇はなんとこ今年中にと考えていたので、書き上げただけで嬉しいです。
完全に自己満足です。
いろいろ紆余曲折をして、
まさか”きれいな扇さん”を書くことになるとは思いませんでしたw
そしてタイトルが「城之内死す」並みにw


残り2話となりましたが、
個人的に募集したいことがあります。
時間がある方はお付き合いして下されば幸いです。

[募集]

”魔王”ゼロと”紅月”カレンの最終懸賞金額。

現在は

ゼロ 2億6千万ベリー
カレン 9千万ベリー

ですが、この戦争の勝利によって、どれくらい上がるか、を考えてくれる方を募集します。
”最悪の世代”との比較して・・・などの自説を下さると嬉しいです。

採用されたら次話でその金額が反映されます。


完全に遊びですw
あまり人気のない作品ではありますが、
作者として思い入れがあるので、ちょっと企画してみました。

意見は作者にミニメールでください。
万が一、多数下さった場合、活動報告にまとめようと思います。


(年末、年始は返答が遅れます。あしからず)


誰もこなかったら、3億6千万ベリーくらいにしようと思いますw


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