ルルーシュと麦わら海賊団   作:みかづき

36 / 37
都合のいい世界

(ギヒッヒ、勝った…!勝った!)

 

心の中で扇は笑う。扇要を喰らいつくした我欲の怪物は高らかに嗤う。

扇の髪から発生した黒い霧は、ルフィの周りを渦巻き始める。

 

「ハア、ハア」

 

だが、ルフィはそれに気づくことはない。

手を膝に置き、苦しそうに地を見つめる。

 

それは“ギア・セカンド”の代償。

 

身体能力を飛躍的に高め、超人の力を得る代償は、極度の披露であった。

野生の獣並みの体力を持つルフィが、

わずか数分でもはや立つこともままならない状態であることを見れば、

それがどれほど身体の負担を強いるか想像に難くなかった。

 

その間に、どんどん黒い霧はルフィの身体を取り巻いていく。

その霧は扇の悪魔の実の能力。

多くの仲間達を己が欲望の海に陥れてきた扇の切り札だった。

 

「ヒヒヒ、麦わら様~~~さすがでございます!さすがは1億首のルーキー!

この扇め、あなた様の強さに感服致しました」

 

猫なで声を用いながら、扇はルフィに語りかける。

 

「あなた様の強さはお聞きしていましたが、まさかこれほどとは!

いや~~凄い!私など相手になるはずがなかった。

これなら、ラウンズも…あの“ナイト・オブ・ワン”も目ではありませんよ!!

麦わら様、最強!グランドラインいち~~~~~~~~~~!」

 

下卑た笑みを浮かべながら、扇はあからさまに媚へつらう。

だが、それが不自然に見えないのは、この男がいかにそれを

日常的に行っていたかの証左かもしれない。

それと同時に始めた揉み手は、だんだんと速度を速め、もはや

煙を出してもおかしくないほどの勢いに達する。

 

「ハア、ハア」

 

「…チッ」

 

だが、ルフィの態度に変化はない。

いまだ苦しそうに地を見つめたままである。

 

「…麦わら~~~俺は待っていたんだよぉおお~~~お前のような男に出会う日をよぉ」

 

 

誰―――ッ!?

 

 

先ほどのやりとりを見ていた者でさえ、瞬間、その言葉が浮かんだ。

それほどに扇の態度は180度の変貌を遂げたのだった。

 

「俺は、ずっと待っていたんだよぉ~~~ゼロの部下になるフリをしながら、

こんな日が来るをずっと…アンタのような本物の男に会える日をずっとよぉ!

うう…やっと俺の旅も終わる」

 

媚へつらいでは効果なしと判断した扇は、即座にキャラを変えた。

今度の設定は、ルフィに会うまで、ゼロの下で耐えていた男、というものらしい。

その過程を旅に例えている…何の旅かはよくわからないが。

 

「ああ、嬉しいな…今日は何て嬉しい日なんだぁ。な、涙で前がよく見えねぇよ」

 

扇はそう言って、顔を覆った。

その指の間から、涙が溢れ出てきた。

 

「こ、こんなこと今さら無理だってわかってる…恥の上塗りだってこともよぉ。

だ、だけど、この思いを抑えることはできねぇ…言わせてくれ、麦わらさん!」

 

 

 

 

 

俺を…俺をお前の仲間にしてくれ~~~~~~~~~~ッツ!!!

 

 

 

 

 

 

仲間。

扇は恥も外聞も忘れて叫ぶ。

“麦わら”のルフィにとって掛替えのない言葉を。

どんな財宝も及ばない大切な存在を。

 

「…。」

 

その問いに対してルフィは答えない。

ただ、無言で地を見つめ続ける。

 

「あ、ありがてぇ…ありがてぇ、麦わらさん!こ、こんな俺を仲間に…うう」

 

ルフィのその態度を無言の肯定と曲解した扇は、歓声を上げる。

顔を覆った指からはとめどなく涙が流れ落ちる。

 

これは扇が改心した証拠なのだろうか?

あの男が本当に野望を諦め、ルフィに負けを認めたのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…なわけねーだろ、バ~~~~~~~~~~~~~~カ)

 

 

 

 

そう、そんなはずはなかった。

扇が…この我欲の怪物がこの程度で己が野望を手放すはずがなかった。

手で覆ったその下は、これまで見せたことがないほど邪悪な顔で歪んでいた。

その指の内側には数本の目薬が挟まれていた。

あの一瞬で、これを仕込むのはまさに神技といっていい。

そう呼んでも差し支えないほど、扇は過去、この技を使ってきたのだろう。

 

(てめーの仲間になるくらいなら、ゴキブリの仲間になってゴミを漁った方がマシだぜ!)

 

心の中で扇は吐き捨てる。

扇にとって、仲間とは利用して捨てるもの。ゴキブリ以下の存在であった。

 

(もう十分時間は稼いだ…そろそろ仕上げといくか。

ククク、クソゴム野郎、お前は自らの欲望によって地獄に行くんだよぉ~~~)

 

扇は顔を覆った手をゆっくり下ろす、その下には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

「ヒッヒヒ、麦わらさん。アンタと俺が手を結べば、このブリタニア海に敵はいねえ。

日ノ本どころか、シュナイゼルとラウンズをブチ殺して、ブリタニアを手に入れること

だって簡単だ。だが…あんたの望みはそんなちっぽけなもんじゃねえだろ…?」

 

扇はそう言って、一呼吸置く。

その目には、獲物を眼前に置く蛇のように細い。

口から涎を垂れ流し、扇は放つ。

必殺の言葉を。ルフィの欲望を解き放つ一言を――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンタ…“海賊王”になりたいんだろ…?

 

 

 

 

 

 

「…。」

 

無言で下を向いているルフィがピクリと反応した…ような気がした。

それだけで扇は快心の笑みを浮かべた。

 

(やったか!?そうだ、それがお前の野望だもんなぁ!ヒヒヒ、感謝するぜ、ゼロ~~~)

 

昨晩の地下牢におけるゼロとの対面を思い出す。

赤い目を光らせ自分を睨む魔王。

底知れぬ恐怖と共に思い出す。ゼロが語った麦わらの野望を。

 

“海賊王”――――

 

あろうことか麦わらの野郎はこの海の頂点を目指しているらしい。

真正のクソ馬鹿野郎だ。

だが、奴の野望がなんであれ、この情報は使える…そう、扇はほくそ笑む。

 

(ゼロ~~てめーのおかげで、麦わらの欲望を解き放ってやったぜぇ~~!

最後の最後で、お前は結局、俺に負ける運命なんだよぉ~~~)

 

仮面の魔王を罵倒しながら、扇はルフィに目を向ける。

 

「海賊王…麦わらさん、それがアンタの野望なんだろ?

いいぜ、俺がアンタを海賊王にしてやるよ!

アンタの力と俺のナイトメアがあれば、恐れるものは何もねぇ!!」

 

扇は吼える。

それに呼応するように黒い霧は渦巻き、人の形を成し始める。

それは、まるで扇要そのものだった。

 

「俺とアンタが力を合わせれば、海軍なんて相手にならねぇ。大将だって倒せる。

いや、七武海も四皇も全員、ぶっ殺して俺達で全ての海を支配しようぜ!」

 

扇は語る。黒い霧はルフィの耳元で騙る。

 

「それだけじゃ終わらねえ!最後に世界政府もぶち壊して、世界の全てを手に入れよう!

お前が世界の王になるんだよぉおおおおおお~~~~~~~~~~ッ!!」

 

薔薇色の夢を。偽りの未来を。

扇は手を広げ、高らかに謳った。

 

黒い霧の扇に絡みつかれたルフィはただ地を見続ける。

 

 

(ヒヒヒ、完全に妄想の世界に陥ったか。もう好きなように洗脳できるな)

 

 

その様子を見ながら、扇は涎を垂らす。

 

(今から、自分の仲間とゼロをその手で殺させるのも面白そうだな。

いや、海軍や四皇との戦争において鉄砲玉として使い捨てるのもいいな)

 

操られたルフィが仲間達やゼロを惨殺する姿や、大将や四皇に無残に殺される

ルフィの姿を想像して、扇はクスクスと笑う。

 

 

 

 

 

 

(だが、ダ~~~~~メだぁ!!

俺は、お前がこの世界に存在することが1秒でも許すことはできねえんだよ!!

死ね、いますぐ殺してやるよ)

 

 

 

 

少し歪に曲がった鼻をさわりながら、扇は復讐心に燃える。

それ顔は、まるで悪鬼羅刹の類であった。

その目に“フレイア”のゲージが映っていた。

斑鳩を半壊させたあの悪魔の光。

そのゲージの値はMAXを指し示した。

 

「キャハッ」

 

あまりの嬉しさに声が漏れてしまった。

扇は慌てて口を押さえる。

それはまるで、小悪魔が純情な人間を罠に嵌めた時に出すような、

もはや、人間が放つ笑いではなかった。

 

(麦わら~~~海賊王でもなんでも好きなものになりな…あの世でな)

 

ゆっくりとフレイアの発射ボタンに指を近づける。

ナイトメアの直線上には、半壊した斑鳩が存在する。

ルフィと共にゼロとその仲間を殺すつもりだ。

 

 

 

「死ねえ!!麦わら~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」

 

 

絶叫の中、扇はボタンを押し―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクリ―――――

 

 

 

 

 

 

 

「…な、なんだ?なんだァ~~~!?」

 

 

扇は目の前で起きたことに驚愕した。

ナイトメアは“フレイア”を発射しなかった。

刹那、扇は故障を疑ったが、そうではないことにすぐ気づく。

ナイトメアの周りには光りの壁が発動していた。

 

それは紛れもなく最強の盾“絶対守護領域”

 

扇は“フレイア”ではなく“絶対守護領域”のボタンを押してしまったのだった。

 

「何で?ナンデ!?」

 

扇は小さなパニックを起こす。

扇は何が起きたのか理解できなかった。

だが、感覚は覚えている。

あのボタンを押す瞬間に全身を駆け巡った感覚を。

まるで、死神に抱かれたような本能的な恐怖。

それに襲われた瞬間、

扇は本能的に身を守るために“絶対守護領域”のボタンを押したのだった。

それは扇の持つゴキブリ並みの防衛本能。

それが正しかったことがわかるのは、その直後だった。

 

 

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ!!!

 

 

 

 

雄たけびと共に、ルフィは地を見つめていた顔を天に向かって上げ吼えた。

 

「ヒッ!?」

 

その雄たけびはナイトメアの中にいる扇にも響き渡る。

 

「フンッ!!」

 

ルフィは片足を上げ、地面に叩きつける。

あまりの勢いにより、足は地面に突き刺さり、衝撃により、膝から血が吹き出る。

 

「フンッ!!」

 

ルフィはさらに残された足も地面に突き刺す。

それは、まるで衝撃に備えるように。自らが吹き飛ばされてしまわないように。

 

「ヒギッ!?」

 

その様子に扇は小さな悲鳴を上げた。

嫌な予感が極限まで高まっていくことを肌で感じる。

そして、ルフィの行動はもう一つの真実を扇に告げていた。

 

 

 

 

麦わら…こ、この野郎…

 

 

 

まったく、操られていない――――――ッ!?

 

 

 

 

“戦場では何の役にも立たない、扇に相応しいカス能力”

 

かつて扇と戦い、その能力をそう評したのは、5番隊“隊長” 卜部巧雪だった。

扇の能力は無敵ではない。

人の心の隙をつかなければ発動しない使い勝手の悪い能力。

戦場では不向きである、と卜部は断言した。

その証拠に、卜部は、己が腕に刀を突きたてた痛みによって能力から逃れた。

また、シュナイゼルは、その野心のなさによって、その能力にかからなかった。

 

では、今回、ルフィはどのようにして、扇の能力を防いだのか?

 

 

答えは“聞いていなかった”…ただそれだけだった。

 

 

ルフィは体力の回復に全てを集中して、扇の戯言全てを聞いていなかった。

話を聞いていないのだから、欲望の解放の何もない。

ルフィは体力の回復に全てを賭けた。

それは、次の攻撃で全てを終わらせるため。

この第二次“ブラック・リベリオン”の決着をつけるため。

 

 

溜めに溜めた力は爆発する。

 

 

 

 

次の瞬間…

 

 

ルフィの両手が消えて、

 

 

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

空気が裂ける音が聞こえた―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒ、ヒィイイイイ~~~~~~~ッ!!」

 

“絶対守護領域”に十を超える拳が張り付いた瞬間、ナイトメアは

“絶対守護領域”ごと後方に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ!!

 

 

 

ルフィは最後の力を振り絞り、渾身の“JET”ガトリングを放つ。

その威力は音速の壁を引き裂き、ナイトメアを吹き飛ばした。

ナイトメアは、大岩に叩きつけられ、“絶対守護領域”ごと岩に埋め込まれていく。

 

「ギヒィイイイ~~~~~~~ギョェエエ~~~~~~~~~」

 

扇はその光景を前にありったけの絶叫を上げた。

 

「ウピュエエ~~~~~~ギェエエエエエエ~~~~~え、アレ?」

 

絶叫の中、扇は気づく。

ナイトメアは先ほどのように、右へ左へピンポン玉のように吹き飛ばされていなかった。

徐々に大岩に埋め込まれているために、コックピットの中は、安定していた。

 

 

 

「ハ、ハハハハ、ヒャハヒャヒャ―――――――ッ!!」

 

 

 

扇は笑う。我欲の化物は嗤う。

それは勝利の確信。この戦いに最終的に勝つ自分の姿を思い浮かべたためだった。

麦わらの最後の攻撃は事実上、失敗に終わった。

先ほどの様子を見れば、麦わらは疲労により、当分動くことはできないだろう。

ならば後は簡単だ。

 

 

“フレイア”のボタンをポチッと押すだけでいい。

 

 

それだけで全てが終わる。

ちょうど直線上に、斑鳩がある。あそこには忌々しいゼロもいる。

 

(麦わらが力尽きた時…それが俺の勝利の瞬間だ!)

 

“JET”の暴風の中、扇は足を放り出し、口笛を吹く。

後は、麦わらの攻撃が終わるのを待てはいいのだ。

簡単なことだ。

結局は俺が勝つのだ。

扇は思う。

この世界は、自分にとって“都合のいい世界”であることを。

 

 

親友のナオトを謀殺した時も世界は俺を許した。

ゼロを陥れた時も世界は俺を許した。

成り上がっていく過程で多くの仲間を殺してきたが、全て世界に許された。

 

 

 

 

(そうだぁ~~~~この世界は、俺にとって都合がよくできてるんだぁ)

 

 

 

 

涎を垂らしながら、怪物はほくそ笑む。

眼前には、“絶対守護領域”が麦わらの攻撃を防いでくれている。

ラクシャータ曰く“最強の盾”

四皇“白ひげ”クラスの攻撃力がなければ破壊できない代物らしい。

その光の壁は、まるで“都合のいい世界”を具現化しているかのようだ。

 

その光りは美しく、シミ一つなく…

 

「ん…?」

 

その時、扇は気づく。

美しい光の壁の一点に黒いシミが浮き出ていることに。

そのシミはまるで、ゼロを麦わらを具現化したように…ひどく邪悪なものに感じた。

扇は身を乗り出して、食い入るようにそのシミを見つめる。

そのシミは麦わらの拳がぶつかるのに呼応するかのように拡大していく。

 

「そ、そんなはずはねえ…」

 

扇の顔から滝のように汗が流れ始める。

扇の本能はこれから起こることを予期していた。

扇の経験がこれから起きる最悪の未来を想像させた。

 

「こんなはずは…こ、この世界は俺にとって都合がよくできてんだ!

だから、こんなはずはねぇ…!こんなことが起こっていいはずがねえんだぁあああ!!」

 

 

 

 

次の瞬間…

 

 

 

 

“絶対守護領域”に…扇にとって“都合がいい世界”に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ヒビ”が入った―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおお!?やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

扇は絶叫した。

 

「やめろぉおおおおお!麦わら、やめてくれぇええええええええええええ~~~~!!」

 

ありったけの声を上げ、扇は叫んだ。

“絶対守護領域”のヒビは徐々に拡大していく。

それは扇の都合のいい世界の崩壊を具現化したようであった。

音速を超えた拳の暴風は止むことを知らない。

 

「な、なんでもする!か、勘弁してくれぇええええええええ~~~~~ッ!!」

 

扇は後ずさりしながら、叫ぶ。

扇にとってこの光景は現実に思えなかった。

まるでそれは悪夢を見ているかのようで。

どこか現実感がなかった。

だが、その間にもヒビは拡大し続ける。

 

 

「もうやめろぉおお!そ、そうだ!お、女は好きか?ブリタニアの女は好みか?

お、俺の女をくれてやるぞ!ヴィレッタって名だ。へへへ、好きに使ってくれよぉ」

 

 

もはや下衆の極み。

己が命のために、自分の女?すら差し出すこの外道ぶりに乾いた笑いも出ない。

 

 

 

 

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ

 

 

 

「ヒッギ…!」

 

その返答として、ルフィは雄たけびを上げて、ガトリングの威力を上げる。

その衝撃が扇を更なる絶望に誘った。

 

「う、うえ~~ん、ゴメン、ゴメンよ~僕が悪かったよ。もう許してよぉ~」

 

今度は子供の真似をしてメソメソ泣き出してみた。

顔を手で覆いながらも、チラ、チラとルフィを見る。

 

 

 

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ

 

 

その様子にルフィはさらにガトリングの勢いを増した。

 

「く、クソが!いい加減にしろ、麦わら~~~~ッ!!」

 

少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら、扇は邪悪な正体を曝け出した。

 

 

「こ、こんなはずはねぇ…!」

 

 

“ナオト~~~お前は、俺の駒として死ぬ運命だったんだよぉ~~”

 

 

「こ、この世界は俺の都合のいいように出来てるんだ…!」

 

 

“ヒャハハハ、ゼロを陥れてやったぞ!黒の騎士団は俺のもんだ!”

 

 

「お、俺はこの世界の支配者になる男だぞ!!」

 

 

“ゼロが麦わらの一味と?知らねえ名だな、ヒヒヒ、一緒にブチ殺してやるよ”

 

 

 

 

 

「麦わら~~俺の名を呼んでみろ!俺は、おう――――――オビュッ!?」

 

 

 

 

 

 

最初の一撃は、扇の前歯全てをへし折った―――――

 

 

 

「ホギョエエエエエ―――――――ッ!?」

 

 

 

続く連撃は、扇の肋骨の全てを粉砕した。

 

 

 

 

“ドッドッドッドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド――――――“

 

 

 

 

 

ウォオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――ッ

 

 

 

 

ギョゲァアアア――――ヒギャァアアアア――――ブヒィイイアア

アアアア――――――――――アアア――――………………………

……………………………………………………………………………

……………………………………………………………

……………………………………………

…………………………………

……………

 

 

 

 

“絶対守護領域”の光の壁は粉々に消し飛んだ。

そして、ジャスト5秒。

千を超える拳が音速を超えて、ナイトメアと扇に突き刺さった。

 

 

 

「ハア、ハア、ハア、ゼエ、ゼエ、ハア、ハア、ハア」

 

ガトリングを撃ち終わり、前のめりに倒れたルフィは激しく息する。

 

“JET”ガトリング。

 

半壊し、完全に岩に埋め込まれたナイトメアとルフィの疲労に、

その威力と代償の高さを見ることができよう。

 

 

「ア、アガガア…」

 

その中で…半壊したナイトメアの中で、息をするものがいた。

 

「ム、ムギュワラ~~~~」

 

その男は扇要だった。

いや、扇要だった何かだった。

外見だけは扇要であった我欲の怪物。

だが、その外見は“JET”ガトリングによって、

撃ち壊され、元の外見をほとんど保ってはいない。

全身の骨を折られ、自慢のリーゼントは全てそぎ落とされ、

その顔はコブで覆われていた。

それは、まるで地球外生命体のように。

もはや扇要は存在しない。

そこにいるのは、身も心も完全なる怪物。

 

そしてその指は、フレイアのボタンに向かっていた。

ナイトメアの砲筒は、破壊されず、まだルフィと斑鳩を向いている。

そのゲージは未だに“MAX”を指していた。

 

「ご、ゴロ…じでやる…ムギュワラ…」

 

プルプルと震える指をボタンに近づけていく。

これほどの容姿に成り果てながらも、怪物は何ら殺意を衰えていない。

 

「ゴロじでや…いッツ――――ッ!?」

 

 

ボタンに指を触れた瞬間、勝利を確信して顔を上げた扇は絶句する。

扇はここに決してないものを見た。

それはここに存在するはずのない代物。

 

 

扇要であった怪物がこの世界で見た最後の光景。

 

 

 

 

それは―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     “ 巨人族 ”の右腕――――――――――――ッ!!

  

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです。
かなりいい場面で終わってしまいましたが、
これ以上、待たせられないのと、扇さん(であった怪物)が予想を超えてしつこいのが原因ですw

次話でブラック・リベリオンは決着をつけます。
今度こそ、あと3話で完結させます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。