ルルーシュと麦わら海賊団   作:みかづき

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完全なる勝利

 

 

「うオォォーーーーーッ!」

 

 

“ナイト・オブ・セブン” 枢木スザクは、“CP9リーダー”ロブ・ルッチが

“鉄塊”を繰り出しているのを承知で、全力の廻し蹴りを右横腹に叩き込む。

 

悪魔の実の力により、2mを超える獣人となったルッチに

本来ならば、人間の蹴りなど通じるはずはない。

それも、最強の体術“六式”の防御技“鉄塊”の上からとなれば、尚更のこと。

だが、対する枢木スザクは人間でありながら、もはや人間ではなかった。

“ギアスの呪い”により、本来引き出せるはずがない

人間の潜在能力を100%近くまで引き出している。

そこらから生み出される力はおよそ人の理を遥かに超える。

そしてそれが武術の天才と呼ばれ、

最年少の海軍中将であり、ラウンズの第七席に座る男の蹴りならば尚のこと。

まさに想像を絶する威力となるに違いない。

その蹴りが脇腹に叩き込まれた瞬間、船上を突風が駆け抜け、直後、“メリリッ”という

特有の嫌な音色と共に、スザクの足に、ルッチの脇腹の骨にひびが入った。

 

「グッ――ッ」

 

口泡を噛み締めながらルッチはたまらず後方に飛び距離を取る。

 

「グルル…!」

 

獣のような低い唸り声を上げながら、ルッチはスザクを睨む。

ロブ・ルッチに変身直後にあった枢木スザクに対する余裕はもはや存在しない。

その獣の身体と同様に、その精神まで獣となり、全力でスザクの命を狩りに行く。

 

「指銃”斑”…!」

 

腕を左右に大きく広げ、ルッチはスザクに向かって駆け出し、指銃を繰り出す。

まだスザクとの距離はあるが、何発もの指銃を撃ち、それが次第に加速していき、

ついには、その腕が何本にも見えるほどの速度に達した。

 

単発でさえ一撃必殺となりうる指銃を斑状に連撃する六式の上級技・指銃“斑”

 

獣の身体能力でより完成度を増したルッチの斑はまるで“阿修羅”の如し。

それは進行を妨げるものを一瞬で蜂の巣と化すであろう死の暴風。

まさに死神となった獣人は、スザクの命を刈り取ろうと加速する。

迫り来るルッチはスザクにとってはまさに免れることができない死の具現化。

それに対してスザクは敢えて前に進む。

それは何らかの策があったからではない。

それは、勝負をあきらめて自暴自棄になったからではない。

いや、むしろ今のスザクにそのような思考は全て邪魔なものでしかない。

今、必要なのはこの状況を打開できるかもしれない安い希望ではない。

今、必要なのはその真逆。決して助からないという絶望。圧倒的な絶望が必要だった。

だから、スザクは何も考えず前に進む。何も考えず死の暴風に向けって駆け出す。

その瞬間、スザクの瞳が赤く輝く。

 

“ギアスの呪い“

 

絶対遵守の魔眼により、生きることを強制されたスザク。

その力は、この絶望的な状況からスザクを救うため、その潜在能力を極限まで引き上げる。

 

「枢木流“廻し受け”!」

 

自分に襲い来る数十発に及ぶ指銃に対して、スザクは腕を円状に回転させてそれを捌く。

空手の“前羽の構え”から繰り出される防御技。

それは攻撃を弾くというより柔らかく逸らすことを目的とする。

この技の連撃に対する効果の高さは、先の“麦わら”のルフィとの戦いにおいて

ゴムゴムの“マシンガン”を完全に防いだことで実証している。

 

「ッ…!」

 

だが、それをもってもルッチの“斑”は捌ききれない。

前腕を切り裂かれ、肩を抉られ、鮮血が噴出す。

血の霧が2人を包む。

その血の霧の中をスザクを進む。

急所への致命傷を避けながら、死の暴風の中心に向かって突き進む。

そして中心目掛けて強烈な前蹴りを放った――

 

「ガあッッ!」

 

常人では、口から内臓が飛び出るほどの蹴りがルッチの腹部に直撃する。

その瞬間、黒い巨体はまるで弾丸のように弾き飛ばされた。

 

「ギギ…ッ!」

 

海に向かって一直線に飛ばされる最中、ルッチは即座に爪で船の床を掻き毟る。

悪魔の実の力は利点ばかりではない。

海に落ちれば、その呪いにより、永遠に浮上することはない。

それを防ぐため、ルッチは死に物狂いで床に爪をたて、海への落下を避ける。

爪からは火花が飛び、床にその軌跡がはっきりと刻まれた。

 

「クッ…!」

 

海への落下を辛くも阻止したルッチは、目の前の光景を前に呻いた。

前蹴りの後、即座に疾走を開始したスザクはすでにルッチの前にいた。

懐に深く入り込み、あの構えをとる。

 

拳を引き、体勢を低く構え、それはまるで虎のように――

 

「“枢木流”―――」

「“鉄塊”―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      “白虎”    

 

 

 

 

              “空木”

 

 

 

 

 

 

 

バギィィィ―――

 

ルッチの腹部に正拳を叩き込んだ直後、

拳が砕ける音と共にスザクは後方に弾き飛ばされた。

 

六式の防御技・鉄塊“空木”

 

攻撃してきた相手を逆に破壊する鉄塊のカウンダー技。

その効果により、攻撃したスザクの拳は破壊された。

スザクの拳が砕けた音を聞き、ルッチは快心の笑みを浮かべる。

 

「!?ッ―――」

 

だが、その直後だった。

追撃に出ようと歩を進めたルッチの視界が突如ズレた。

2mを超える黒い巨体がぐらり揺れ、ずしりと地面に片膝をつく。

 

「う…ウガァッ」

 

突如、襲い来る嘔吐感に耐え切れず、ルッチは床に血を吐き出した。

血はどす黒く濁っていた。

それは、内臓に深刻なダメージを負ったことを意味する。

 

枢木流“白虎”

 

枢木流奥義“四神”が一つ。

正拳に“覇気”を込めて敵を打ち抜くこの技は

外部ではなく、その内部を破壊することを目的とする。

白き虎の爪は、たとえ砕けようとも、黒き獣の内部に確かな爪あとを残した。

 

 

 

「ハア、ハア」

「ゼェ、ぜェ」

 

 

 

死闘―――

 

 

 

“ナイト・オブ・セブン”と“CP9リーダー”

若き海軍中将と最強の暗殺者の殺し合いはついに極限に達した。

ラウンズとCP9、本来なら有り得ぬ組み合わせ。

この光景を、ルッチの同僚である他のCP9達、

盟友であるカクであれ、ライバルを自称するジャブラであれ、

目の当たりにしたならば、きっと驚愕の表情で絶句するに違いない。

 

相手がラウンズであれ、海軍中将であれ、たとえ何者であっても、

 

こと“迫撃戦”において、

 

あのロブ・ルッチが…

 

地に片膝をつき、見下ろされている―――

 

 

 

 

 

「フフフ、フハハハハ―――」

 

それでも尚、この劣勢においてロブ・ルッチは笑う。凄惨に嗤う。

牙を剥き出し、口を血で濡らしながら。

それは、怒りで気がふれたのではない。

それは、皮肉の笑みではない。

それは、勝利の確信。

己が勝利の姿をはっきりと描いた故の笑みであった。

ルッチは、床に飛び散った己が血を凝視した後、ゆっくりと枢木スザクを見上げる。

スザクの騎士の白き正装は、血によって赤く染まっていた。

指銃によって貫かれた胸の傷からは、今も赤き鮮血が流れ続けている。

“斑”によって引き裂かれた前腕や肩の傷も深く、白地を赤く染める。

 

(枢木スザク…悪魔の実の能力か何かは知らんが、お前が人の理を超えた力を持ったこと

 を認めよう。だが、だからと言ってお前が“生物”を超えたわけではあるまい)

 

 

致命的な出血量―――

 

それが、ルッチの勝利の確信だった。

たとえ、人の理を超えた存在であろうとも、生物である以上、それが保有する血液量は

その身長と体重によっておおよその察しはつく。

これまでの戦闘においてスザクの流した出血量から計算すれば、

枢木スザクの行動限界まで、5分を切る。

つまりは、ただ5分だけ戦闘を長引かせるだけで勝利することができる。

それに気づき、ルッチは笑う。凄惨に嗤う。

 

「ハア、ハア」

 

肩で息を弾ませながらスザクも現状を理解する。

自分が動ける時間は残り少ないことを。

流れ落ちる血はまるで砂時計の砂にように感じる。

たとえ“ギアスの呪い”の力をもってしても、生物の理を超えることはできない。

この絶望的状況を前に、スザクはふと笑った。

あの雨の中、“第一次ブラック・リベリオン”において、

ゼロに…ルルーシュにかけられた“ギアスの呪い”

ずっと憎んできたその呪縛によって、いま自分は生かされている。

 

 

 

 

 

 

      スザク、死ぬな! お前は生きろ!!

 

 

 

 

 

 

あの言葉をずっと憎んできた。ずっと恨んできた。

この力を“呪い”だと忌み嫌ってきた。

だけど、今ならわかる。

あの言葉は…この力はルルーシュの“願い”だったと。

だから、自分は生きている。

だからこそ、戦うことができる。

最強の敵を前に“正義の味方”になって友達を守ることができる。

 

(ルルーシュ…ありがとう)

 

そう呟き、スザクは駆け出す。

残り時間―――5分。スザクは最後の勝負に出た。

 

 

 

 

 

 

「!?――」

 

顔面に襲い来る“指銃”を掻い潜ったスザクは反撃することなくそのまま直進する。

 

 

 

―――逃走!?

 

 

スザクの反撃に備え、即座に防御をとっていたルッチは、

その行動に驚き、防御を解き、離れ行くスザクの後姿を目で追う。

スザクの向かう先にはマストがあった。

マストとは帆を張るために甲板に取る付けられた帆柱である。

マストに向かって一直線に走るスザクはそのまま加速し、マストを駆け上がっていく。

そしてその頂上まで駆け上がると、

宙返りした後に自ら高速回転し、ルッチ目掛けて落ちていく。

 

「…くだらん」

 

太陽の中、ルッチに高速回転しながら向かってくるスザク。

それを見上げながら、ルッチは吐き捨てるように呟いた。

 

 

 

 

  人間の構造的弱点に真上からの攻撃に対処できないというものがある。

  そのためにマストを利用したか枢木スザク。

  なるほど、このまま戦闘を継続しても勝ち目なしと判断し、

  落下による重力と回転による遠心力を利用した一撃に全てを賭けたか。

  最後に頼ったのが拙い人の理とはな…失望したぞ枢木スザク!

  数多の常人どもならいざ知らず、我らは“六式”を極めしCP9。

  そのような弱点はすでに克服している。

  そして、今の俺はもはや、“人”ですらない。

  この至高の戦いの結末が、よもやこのような陳腐なものになるとはな。

  本当に残念だ。

 

  だが、枢木スザク、それでもキサマを“敵”と認めよう。

 

  久しく出会わなかった強敵と認めよう。

  本当に強かった。

  変身が遅れていたなら、敗れていたのは俺かもしれない。

  そう思うほどにな…。

  だからこそ、キサマにこの技を捧げよう。

  この至高の戦いの結末はこの技こそがふさわしい。

 

  喰らえ…枢木スザク。

 

  “六式”を極めし者のみが持つ奥義―――

 

 

 

 

 

       “ 六 王 銃 ”

 

 

 

 

 

 

ルッチは天に向けてゆっくりと両腕を掲げた。

太陽の中、落ちてくるスザクを両の眼でしっかりと捕らえ、その時を待つ。

息を殺しながら、足を踏みしめ、その時を待つ。

枢木スザクが攻撃してくる瞬間を。

その直前に、その胴体に“六王銃”を叩き込む瞬間を。

 

時間にしてはほんの一瞬。だが、両者にとっては永遠ともいえる静寂の中

 

ついにその瞬間は訪れた――

 

「死ねぇ枢木ィ――ッ!」

 

高速回転するスザクの胴体を完全に捕られたルッチは、両の手を天に向かって突き上げた。

踏みしめた床はその衝撃によりひびが入り、

ルッチの身体を中心に発生した衝撃波が船を揺るがす。

 

六式・最終奥義“六王銃”

 

最強の体術“六式”を極めし者のみが使用するこの技は

枢木スザクの“白虎”と同様に相手の内部を破壊する。

両腕を使用することにより、衝撃を相手の内部に集約させるこの技の威力は絶大。

それは、後の“麦わら”のルフィとの戦いにおいて、“ゴム人間”であるルフィを

瀕死の重傷に追い込んだことにおいて実証される。

“悪魔の実”の能力者すら、打倒し得るこの技が常人に炸裂したならば、

その瞬間より、その身体は衝撃により四散する。

“ギアスの呪い”により、超人と化した枢木スザク。

だが、それは“ロギア”のように状態変化が可能となったわけではない。

その身体は、強化されてはいるが、普通の人間と変わらない。

 

ならば、“六王銃”をまともに受けたスザクの身体は分断されて―――

 

 

 

 

 

 

「何ッ!?」

 

その直後、勝利を確信した“最強の暗殺者”は声を上げた。

それもそのはずだ。

分断されたはずのスザクの身体は、ルッチの両腕の先にいまだ存在していたのだ。

 

(馬鹿な―――ッ!?)

 

この現実を前にして、ルッチは心中で驚愕する。

己が切り札である“六王銃”の不発。

絶対の自信を持った放ったその一撃は枢木スザクのわずか5cm前で止まった。

 

(この俺が距離を誤っただと!?そんな馬鹿なことが―――)

 

タイミングは完璧だった。

高速回転する枢木スザクの胴体を完全に捕らえた。

万が一にもミスなど有り得ない。

 

(いや…違う)

 

焦りと困惑の中、ルッチは思い出す。“六王銃”を放った直前のことを。

 

(コ、コイツ―――)

 

両者が激突するその直前、スザクは回転しながら空中に蹴りを放った。

その瞬間、まるでそこに見えない壁があるかのように

スザクの身体は反発し、空中に浮遊した。

その直後、先ほどスザクの胴体のあった箇所を目掛けてルッチの両腕が打ち込まれた。

 

(いつの間に―――)

 

この技は、ブルーノがスザクから距離をとるために使用した技。

それはルッチとの激闘の最中、スザクは何度もその動きを目で追ってきた技。

空手と柔術を“六式”と同等の高みまで練り上げた類まれな才能の持ち主。

その武術の天才に、人の理を超えた力が加わった今、それができないはずがない。

目で見ただけだとしても、今のスザクにできない道理はない。

そう…この技の名は―――

 

 

 

 

         (“月歩”を―――ッ!!)

 

 

 

 

 

“六式”が一つ“月歩”

 

素早く空気を蹴り、空中に浮遊する六式の基本技。

この技を使用することにより、スザクは“六王銃”をギリギリのところでかわしたのだ。

それは、スザクにとって危険すぎる賭けだった。

ほんの少しでもタイミングが遅れたならば、“月歩”を失敗したならば、

スザクの身体は今頃、バラバラになり、海に四散したに違いない。

だが、スザクは賭けに勝った。そして、闘いはまだ終わっていない。

 

「“枢木流”―――」

「ハッ!?」

 

全てを理解し、現実に戻ったルッチは、目の前の光景に絶句する。

一瞬の思考の刹那、その隙を突き、

スザクは再びルッチの頭上で高速回転を始めたのだ。

 

「クッ!!」

 

もはや避けることはできない。

ルッチは、“六王銃”を解き、相打ち覚悟で“指銃”を放った次の瞬間―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             “ 朱雀 ”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッァ―――!?」

 

“指銃”が決まった手ごたえと同時に脳天に強烈な衝撃が走り、視界が回転する。

 

枢木流“朱雀”

 

枢木流奥義“四神”最後の聖獣は奇しくも自分と同じ名である“朱雀”

高所から獲物に襲い掛かるが如き、空中落下式の回転踵落とし。

それを脳天にまともに受けたルッチの身体はその場で一回転した後、

顔面から船床に突っ込んだ。

 

 

 

―――バギィィ!!

 

 

衝撃は続く。その威力により、耐え切れなくなった船床は破れ、ルッチの身体は

船内に落ちていく。その勢いは船内でも止まらず、その床すらも破壊した。

 

「…グッ!」

 

次々に床を突き破り、落ちていく黒き獣。

その落下はついに、船の最下層に達し、船底に激突し、派手にバウンドすることでようやく終着を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウ…ウググ」

 

約十秒間の完全なる沈黙。

 

船内に轟く不気味な音と指先に伝わる違和感に意識を取り戻したルッチは

その状況を前に即座に起き上がる。

 

「か、海水が…ッ!」

 

ルッチが激突した箇所から海水が湧き出し、

船底の壁からも少しずつ海水が漏れ出していた。

それがまるで滝のような浸水に変わるのに、そう長い時間を要さなかった。

 

―――ゴ、ゴゴゴ

 

それだけではない。

船全体に鳴り響く不気味な軋みは、悲鳴のような騒音に変わった。

船底の傾斜が少しずつ急になっていき、ついに正常に立つことが困難となった頃、

すでに水はルッチの膝下まで達し、その頭上には次々と木片が降り注いでくる。

 

「クッ!」

 

木片を腕で弾き飛ばしながら、ルッチは“月歩”による脱出を試みる。

木片の雨を掻き分けながら、自分が作った大穴を駆け上がっていく。

ついに船上に辿りついたルッチは、その勢いのままスザクに襲い掛かろうとした。

だが、決着をつきるべき敵の姿は船上のどこにもいない。

“指銃”の手ごたえは確かにあった。だが、その程度で倒せるような相手ではない。

 

ではどこに――!?

 

 

 

 

 

 

「グ…ッ!」

 

その光景を前にルッチは呻いた。

 

船上から姿を消した枢木スザクは海の上にいた―――

 

全ての力を振り絞り、“指銃”で吹き飛ばされたスザクは海へと落下し気絶した。

だが、その身体はそのまま海の底へ落ちていくことはなかった。

“ギアスの呪い”…いや、“願い”は意識をなくした主の身体を支配し、

その命を守るべく、脅威となるルッチから逃げていく。

呼吸ができるように、背泳ぎでバシャバシャと船から離れていく。

 

「グ、グルルッ…!」

 

海の彼方へ消え行くスザクの姿を、

ルッチは牙を剥き出しにしながら、ただ睨むしかなかった。

まだ“月歩”で追えないことはない。

だが、枢木スザクに攻撃した次の瞬間、海に落下し、二度と浮上することはない。

“悪魔の実”の能力者は海に嫌われる。

絶対的な能力と引き換えに得たその呪いにより、ルッチは動くことはできなかった。

 

勝負を分けたのは両者の“呪い”と“願い”そして―――

 

 

 

 

 

 

「~~~ッ!!」

 

工作船はルッチが突き破った場所を起点に大きく二つに裂け、

辛うじて海に浮かぶ孤島へと変わり果てた。

 

枢木スザクの真の狙いは、ロブ・ルッチの破壊でなく、その下にある船の破壊。

これにより、ロブ・ルッチがゼロと麦わらの一味を追うことはもはやできない。

 

 

船の走行不能―――それは、つまり“任務の失敗”

 

 

“ブラック・リベリオン”の正史に刻まれぬラウンズとCP9の死闘。

その結末は、世界政府CP9の暗殺指令を阻止し、

“最強の暗殺者”から自身が生き延びたことにより、枢木スザクが完全なる…勝利を得た。

 

 

 

 

 

 

「枢木…スザク~~~~~~~ッ!ウオオオオォォォーーーーーウオオオォォ~~ォォン!!」

 

獣の怒りの咆哮が海原を切り裂く。

その光景を海に落ちて目覚めた海イタチのネロがガタガタと震えながら見ていた。

 

 

 

後に救援きたCP9の同僚カクが

“ブラック・リベリオン”におけるブリタニアの敗北、そして、ゼロ抹殺の任務中止を伝えたのは、

 

これから5時間後のことだった。

 







土曜日の朝くらいしか書く時間がないですね。
あと3話で完結します。楽しんで頂けたら幸いです。

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