ルルーシュと麦わら海賊団   作:みかづき

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ブラック・リベリオン

 

「ビぎゃーッ☆○#б%ж★χ◆ムキーッ★☆○#б%ーーーーッ!!」

 

 

 

扇は叫ぶ。

ゼロの、麦わらの、黒の騎士団に対する有らん限りの罵倒を。

それを少し離れた場所から、

シュナイゼルが相変わらずゴミを見るような目で見つめている。

だが、あの”変わらぬ微笑”はその顔からついに消えた。

 

 

 

 

 

「ししし、なんだよルルーシュ。お前、仲間いっぱいいるじゃん」

 

麦わら帽子を被り直しながら、ルフィはルルーシュに笑いかける。

 

「ああ、俺にはもったいないくらいだ」

 

その問いかけに、ルルーシュは仮面の中で静かに笑った。

 

ルルーシュは、再び戦場と化した処刑場を見つめる。

 

刃が激突し、銃弾が飛び交う戦場。

銃声と悲鳴が鳴り響く中、カレンと黒の騎士団達は、

数倍の数のブリタニア軍を相手に決死の戦いを続けていた。

 

ゼロは戦場を見つめる。

 

カレンを、団員達を、日ノ本の民達を、そしてナナリーを。

全てを救うために、頭の中のスーパーコンピューターが唸りを上げる。

戦略も、戦術も、演出も、策謀も、そしてゼロという存在も

全ては今日のために。

目の前にある全ての者を守るためにこそあり!

 

答えは出た。全てに決着をつけるための解答が。

ルルーシュは後ろを振り返る。

そこには、自分を命懸けで助けに来てくれた仲間達がいる。

ルルーシュは目を瞑り、そしてゆっくりと開いた。

 

 

 

 

 

「作戦を考えた。ルフィ…みんな、力を貸してくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

黒の騎士団の団員達の決意。

その気高き魂が、黄金の意志が、灼熱の風に乗り広場を吹き抜ける。

その熱に当てられた人々は、警備兵を殴り倒し、武器を奪う。

 

ここは、エリア11。

ブリタニア諸島における最大の激戦地。

ブリタニアに反逆するレジスタンスの最後の砦。

ここに、生きる人々は、親族関係に、商売関係に、生活の上で

なんらかの形でレジスタンスと繋がりを持つ。

そして、この広場に、ゼロの最後を見ようと来た者は、

元レジスタンス、現レジスタンスが大半を占める。

彼らを、黒の騎士団を援護するために、鉄柵の一部を破壊し、

戦場と化した処刑場になだれ込んだ。

 

「発砲用意!かまわん!イレブンどもを殺せ~!」

 

広場の警備隊長が叫び、警備兵たちは一列に並び、銃を構える。

その最初の標的となったのが、

 

「うう、ママ…。パパ…どこに行ったの?」

 

騒乱の中、両親とはぐれてしまった小さな女の子だった。

その光景を目のあたりにした人々は声にならない叫びをあげた。

 

 

行政特区・日ノ本における虐殺の再現。

 

 

警備隊長は腕を振り下ろす。

警備兵たちは同時に引き金を引く。

銃弾は、向かっていく。

小さな女の子に。最初の標的に。試し撃ちをかねて。生贄の意味を込めて。

 

その時だった―――

 

 

群集の中から全身を黒いローブで纏った人物が飛び出してきた。

黒いローブの人物は、女の子の前に着地し、両腕を広げた。

直後、十数発の弾丸が、黒いローブに突き刺さり、ローブから鮮血が噴き出した。

黒いローブの人物はそのまま、大の字に倒れ、ピクリとも動かない。

その周りはあふれ出た血によって赤い水溜りができた。

あっけに取られる警備兵たち。

その隙に、両親と思われる男女が女の子を連れてその場から走り去った。

数秒間の沈黙の後、

再び、警備隊長が檄を飛ばし、警備兵たちは銃を構える。

 

つまらんイレブンの自己犠牲。

 

それが、彼らが出した結論。

再び、彼らは新たな生贄を探そうとする銃を前に向けた。

そして、直後、驚愕した。

 

黒いローブの人物が…あの死体が“バッ”と飛び起き、こちらに向かって来るではないか。

 

 

  ローブの下に防弾チョッキを着ていた!?

  いや、では、あの血の量は何だ!?

  致死量をとっくに超えているはずだ!

 

 

刹那の間、驚愕ともに彼らのこれまでの軍人としての経験からの推理が生まれる。

しかし、目の前に迫り来る現実は、そのどれにも当たらないものだった。

 

「う、撃て!撃ち殺せ――!」

 

隊長の叫び声で我に返った警備兵たちは引き金を引いた。

再び、黒いローブに突き刺さる弾丸。

だが、もはや、その中には何もなかった。

 

その本体は遥か上――太陽の中にいた。

 

太陽の光ともに放たれた銃弾は、警備兵たちの心臓を正確に射抜き、

十数人の警備兵たちは、一斉に倒れた。

 

その人物は…女は大地に降りる。

太陽の中から現れたのは、緑髪の少女。

全身を黒で染め、その両の手には、黄金の拳銃が握られていた。

 

その黒き衣は魔女の正装。

 

“革命軍”・幹部。“魔王”ゼロの共犯者。

 

“魔女” C.C.

 

ブリタニアに伝わりし、”不老不死の魔女”の伝説はここに再び幕を開ける―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、革命軍の”魔女”…!」

 

「宰相閣下の仰られた通りだ!馬鹿が!わざわざ捕まりに来るとは!」

 

暴徒鎮圧のため、広場に援軍に来たブリタニア兵たちが口々に叫ぶ。

 

「撃ちまくれ!奴は不死身と聞いている!動けなくなった後で捕縛する!」

 

その一軍の上官と思われるブリタニア兵の言葉に従い、

ブリタニア兵は銃を構える。その数はおよそ50人ほどだ。

C.C.は黄金の拳銃を両の手で持ち、黙ってそれを見つめている。

 

「撃てーーーーーーーーーーーッ!!」

 

およそ50の弾丸が、C.C.に向けて一斉に発射された。

 

「なッ!?」

 

「はあ!?」

 

その直後、ブリタニア兵たちは驚きの声を上げた。

 

不死身の魔女。

革命軍の幹部。

 

その肩書きから考えれば、C.C.はそれなりの実力者であることは疑いがない。

この銃撃に対してもそれに見合う反応をするはずだ。

 

地を側転しながら避ける。

空を飛び、バク転しながら避ける。

 

それが、ある程度、実力がある者の反応だろう。

 

――だが、C.C.は違った。

 

“ヒョイッ”と擬音が付くかのように横にステップしただけだった。

ただ、それだけだった。

だが、それだけで、C.C.は全ての銃弾をかわしていた。

 

そして――

 

 

 ドサッ!

 

 

一番右端にいたブリタニア兵が倒れ、絶命した。

 

「う、撃って!とにかく撃ちまくれ!」

 

ブリタニア兵は再び引き金を引く。

叫びながら、何度も、何度も。

しかし、その度に、C.C.はステップを奏で銃弾をかわしていく。

 

それは、まるで踊りのように。

それは、まるで演舞のように。

 

華やかで、美しく、見ている者を魅了した。

 

 

 

         “ガン=カタ”

 

 

 

東洋の武術の型を元に軍事考案された対銃撃戦用の型。

それは、相手の銃の角度、人数から、瞬時にそれに対応する型を選択する。

その型は、銃弾をかわすと同時に、こちらからの銃撃に転じる。

理論上では、可能とされるこの新しき武術は、すぐにその存在を歴史から消した。

この武術を体現するには、高い反射神経、冷静さ、なにより、膨大な経験が必要だった。

それ故、およそ常人では、この武術の完成前にその命は戦場の露と消える。

 

C.C.がこの武術の存在を知ったのはおよそ50年前。

そして“ガン=カタ”を完成させるべく、選んだ練習場所は戦場だった。

全てが本番。

繰り返される失敗。死。死。死。

 

不老不死の魔女。

彼女のみに許された特権。狂気の人体実験。

その果てに完成を向けえた“ガン=カタ”

 

C.C.が50人からの一斉銃撃に対応できるようになったのはおよそ10年前。

魔女は舞う。華麗に。魔女は踊る。妖艶に。

ブリタニア兵の銃声をバックミュージックにしながら。

革命軍の魔女は踊る。

銃撃ごとにブリタニア兵はC.C.の銃撃で倒れていく。

その踊りに魅入られたように次々と。突如、戦場で開催された死の狂宴。

 

「ヒ、ヒヒヒヒヒ――ッ」

 

恐怖に耐えかねた狙撃兵が狂気の声を上げる。

その声を聞き、その狂宴を目の当たりにしたブリタニア軍に動揺が生まれた。

 

その瞬間を、その隙を見抜いたC.C.が空に向かって発砲する。

 

それを合図として、黒いローブの集団がC.C.の横を走り抜けていく。

次々とローブを脱いでいく屈強な男達。

その手には武器が握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

「か、“革命軍”だ~ッ!!」

 

それが、そのブリタニア兵が発した最後の言葉だった。

革命軍は次々とブリタニア兵を倒し、レジスタンス達もそれに続く。

 

C.C.は広場からメリー号を見つめる。

そこには、仲間達が、自分の“共犯者”がいる。

 

「お前を死なせはしないさ、ルルーシュ。まだ“契約”は果たしてもらっていないぞ」

 

 

 

  もう忘れてしまった。本当の名前も、そんな感情も―――

 

 

 

あの日、そう言った私に向かって、真っ赤な顔をしながら小さな黒髪の皇子様は宣言した。

 

「僕は君と契約する!僕は君に―――」

 

 

 

バァン!

 

 

 

後ろから襲ってきたブリタニア兵を振り向くことなく撃ち抜く。

 

 

 

 

「私に“笑顔”をくれるんだろ?」

 

 

 

 

銃口から出る煙を吹き消しながら、C.C.は小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…扇君、あとは任せたよ」

 

「シュ、シュナイゼル様…!」

 

戦場に向けて罵倒を叫び続ける扇にその言葉を残し、

シュナイゼルはナナリーの車椅子を押しながら基地の中に消えていった。

その姿を、扇は呆然としながら見つめる。

 

扇は本能で感じ取った。

先ほどのシュナイゼルの言葉は自分に対する最後通告であることを。

黒の騎士団の反乱、そしてゼロの逃亡。

これら全ての失態は、間違いなく扇の責任となる。

 

その責任の帰結は――処刑。

 

“サ――ッ”と血の気が引いていくのを扇は感じていた。

目の前にいる大軍が、世界においても屈指の大国が、神聖ブリタニア帝国が敵となる。

その事実の前に扇は失禁しそうなのを必死で堪えた。

 

扇の能力――“モジャモジャノーム”は相手の心の隙につけこみ、徐々に洗脳していく。

 

だが、その能力はあの男には効かない。

シュナイゼルには…“エリアの半分を落とした男”には。

あの冷酷で非情な男は、自分をゴミのように処分するだろう。

扇は頭を抱える。

 

 

  なぜ、こんなことになった…そうだ!アイツだ!アイツらのせいだ!

  “魔王”ゼロ…そして“麦わら”のルフィ。全てアイツらのせいだ!

 

 

扇は羊頭の海賊船を睨む。

そこには、船の中に姿を消したゼロと麦わらの一味が再び船上に戻ってきた。

ゼロはまた、羊頭の上に乗り、様々なポーズをとる。

それを麦わらの男が笑ってみている。

船は港を離れ、ゆっくりと沖の方に進んでいく。

奴らはここから脱出する気だ。

このまま逃がすわけにはいかない。

もはや、自分が助かるには、コイツらを殺すしかない。

奴らを自らの手で仕留め、その首をシュナイゼルに差し出すしかない!

 

「藤堂!斑鳩を出せ!」

 

「…承知」

 

扇の頭から黒い霧が発生し、辺りを包む。

扇の後ろには、“将軍”藤堂と“四聖剣”そして、幹部たちが空ろな目をして集う。

 

 

 

「殺してやるぜ!麦わら~!そして・・・ゼローーーーーーーーーーーッ!」

 

 

 

常に後ろに隠れ潜んでいた男。

その男が・・・扇は自らの命を賭けてついに戦場に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車椅子を押しながらシュナイゼルは基地の中を歩いていた。

ナナリーの不安そうな表情を気にも留めず歩を進める。

シュナイゼルは考えていた。

この黒の騎士団の反乱をどう政治利用するかを。

 

そうだ…こうしよう。

 

この反乱、いや、扇のクーデター自体が、ゼロとドラゴンが策謀した罠だった。

平和を愛する我々ブリタニアは、その罠に嵌り、同盟条約を結ぶ。

そして、今日の調印式において、黒の騎士団とゼロは再び、牙を向ける。

ブリタニアは、危機に陥るも、ゼロを倒し、騎士団を全滅させることに成功した。

そして、ブリタニアは、黒幕であるドラゴンと革命軍の打倒を再び誓う。

 

まあ、落としどころはこんなところか。

これで、革命軍打倒を口実としたブリタニアの世界進出の計画に支障を出すことはない。

扇は…あのゴミの始末はどうしようか。

そうだ…ゼロの“忠実な部下”として後を追わせよう。

ゼロはその寸前で逃げられたが、あの処刑台はまだ使える。

観衆の見つめる中で、扇の首と胴体は海に落ちていく。“魔王”ゼロの忠臣として。

ゼロをあれだけ、憎んだ男にとっては最大の屈辱だろう。

あんな男の心情などどうでもいいことだが・・・。

 

しかし、ルルーシュ様、あなたには驚かされてばかりだ。

 

「え…!?」

 

驚きの声を上げて、ナナリーはシュナイゼルの方を振り向く。

かすかだが、あのシュナイゼルが笑う声を聞いたからだ。

名門貴族の出身。若き天才宰相。

あらゆる成功と名声を手中におさめてきたシュナイゼル。

 

その彼が人生で初めて“チェック・メイト”を返された――

 

 

ルルーシュ皇子。

認めよう。あなたが本物であることを。好敵手にふさわしいことを。

だが、あなたは、一時的に投了を免れたに過ぎない。

あなたの持ち駒は、キング(王)と数少ないボーン(兵士)のみ。

こちらには、その数倍の兵士とナイト達。

首都ペンドラゴンには、主力である”ナイト・オブ・ラウンズ”がいる。

その力の前にボロボロの王と兵士だけで何ができようか。

そして、最強の駒である“クイーン”(ナナリー)は、我が手の中に!

それだけではない。

私には切り札がある。絶対のカードがある。

扇は無能でも、獲物を追い立てる猟犬の役ぐらいは演じられるだろう。

あなたの逃げたその先には、あの者がいる。

チェスの駒にはない役柄――“暗殺者”

ロブ・ルッチ…“最強の暗殺者”があなたを待っている。

 

ゲームは次の1手で決まる。

 

シュナイゼルは笑う、静かに、冷酷に、凄惨に。

そこあるのは紛れもなくレジスタンス達を恐怖させた“エリアの半分を落とした男”の顔。

 

 

 

 

 

    「さあ、決着をつけよう、ルルーシュ皇子…いや”ゼロ”!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロの処刑によって止まるはずだった“大反逆時代”の時計の針は再び音を立てて動き出した。

 

時計は回る。

ルルーシュの決意、ゼロの戦略、シュナイゼルの策謀を飲み込みながら。

 

時計は回る。

カレンに、C.C.、騎士団の団員たちの思いを乗せて。

 

時計は回る。

クルクル、くるくると。

ブリタニア諸島に生きる全ての者達の運命とルフィ達を巻き込みながら。

 

そして、針は止まる。

 

ブリタニア諸島における内戦の決着。

長きに渡るブリタニアと黒の騎士団の最終決戦。

 

針が指し示すは、あの灼熱の刻―――

 

 

 

 

今日、ここに・・・

 

 

 

 

 

        第二次“ブラック・リベリオン”開戦―――

 

 

 

 


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