ルルーシュと麦わら海賊団   作:みかづき

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白騎士の襲撃 ルフィvsスザク開戦!

 

 

 

 

 

 

「オハヨウゴザイマシタ」

 

「お、おう…。」

 

オレンジのように輝く太陽を背景に船の上から満面の笑みを浮かべる

ジェレミアの挨拶にゾロは若干ひきながら応える。

“魔王”ゼロことルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの処刑までおよそ10時間。

今、出航すれば、時間的には余裕が持てる。

しかし、正確な処刑執行時刻はブリタニアの上層部以外しらない。

彼らの意向次第では、いくらでも変更可能なことを考えれば、

余裕などないと考えるのが妥当であろう。

 

「・・・本当に大丈夫なんだろうな?ナミ」

 

荷物を運びながら、ゾロは小声でナミに今回の救出作戦について念を押した。

あの決意の夕暮れからナミが考えた作戦はあまりにも大胆なものであった。

いや、もっと的確にいえば、一か八か。

悪くいうならやけっぱちに近い。

ゾロの質問にナミは瞬間、暗い顔になり、涙を浮かべ、笑顔になり、また普通の顔に戻る。

わずか0.5秒のことだが、ナミのここの至る苦心が伝心した。

ナミほどの策士をもってしても、

一味がブリタニアの全勢力を相手にルルーシュを取り戻す方法を考えるのは至難の業だ。

いや、無理といっていいだろう。

それでも辿りついた答え。

この拙い作戦の成功をナミはその顔に確信と笑みを浮かべて答える。

 

「これ以外方法はないわ!今回の処刑場の場所、ブリタニアと黒の騎士団の配置の予想。

 何よりも、ジェレミアさんの悪魔の実の能力があればね…。

 今日は頼んだわよ!ジェレミアさん!」

 

「任せろ!ロロノア!」

 

「え…?!」

 

覚悟と自信を満面の笑みに乗せてジェレミアはゾロに“グッ”と親指を立てる。

 

(え、あの距離から聞こえてたの?なんで俺に?何、その笑顔?)

 

ゾロはそう心の中で自問し、困惑した。

なにやら気に入られてしまっているようだ。

 

荷物を積み終え、一同は、甲板に集まる。

出航の用意は万全…といいたいところだが,

ジェレミアの荷物だけ、明らかに異彩を放っている。

その荷物の全てはオレンジ。

広大なオレンジ畑のおよそ4分の1をアーニャが前夜にリヤカーで運んでいた。

アーニャは相変わらずの無表情を通しているが、瞳はやや赤かった。

その傍らでジェレミアは一心不乱にオレンジを食べ始め、

ゾロはその姿からあえて目を逸らす。

 

「全員そろったか?」

 

「い、いつでもOKだ!」

 

「ルフィ、お前、肉持ち込すぎだ!」

 

「ジェレミアのおっさんだってオレンジいっぱい持ち込んでるじゃん!」

 

「あれは必要なの!いいわね、ルルーシュ助けたら、即、逃げるのよ!

 絶対、ぜーたいに戦わないでね!戦ったら私が殺すから!」

 

「え~」

 

「残念そうに答えるなー!」

 

「おい、本当にだいじょ…いやもういい」

 

本来、決死隊にあるべき、重苦しい雰囲気はここにはない。

ここにあるのは、いつもの雰囲気。

この大事を前に、まるでピクニック前の子供のようにハシャギ、笑う。

ルフィがボケてナミが怒り、ゾロ、ウソップ、サンジがツッコミ、みんなで笑う。

海賊界の新星“麦わらの一味”まさにここにあり。

 

 

 

「今から行くぞー!待ってろルルーシュ!」

 

 

 

天高く、両の手を上げてルフィが叫ぶ。

 

 

 

 

 

  ドボォンッ!!

 

 

 

 

直後、ルフィの声に呼応したように起きた騒音。

それは、仲間の歓声ではない。

それは、カモメの鳴き声でもない。

それは、カイオウ類が跳ねた水しぶきでもない。

 

それは、大砲の音。

出航を控えるメリー号の眼前に向かってくる船団。

その帆に掲げられるは「MARINE」の文字。

その船団の中心の一際大きい軍艦に、一人の男が立っていた。

荒くれ者の猛者が集う海兵を従えるその男はまだ少年と言っていい顔立ちだった。

男の背中には海兵の誇りである「正義」の文字が背負われている。

男は海軍ブリタニア支部における最高権力者。

ブリタニア帝国における最高戦力“ナイト・オブ・ラウンズ”が第7席。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麦わらの一味…お前達の願いは叶えてはいけない…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海軍中将“白騎士” 枢木スザク、ここに見参―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーテス、テス。こちらは海軍中将・枢木。

 麦わらの一味!君たちは完全に包囲されている。すみやかに投降しなさい。

 君たちは航海法第23条、海賊行為禁止法違反、並びにブリタニア帝国憲法第156条…」

 

マイクのテストの後、投降を促し、その海賊の罪状を述べ始めるスザクの定番の行動に

海兵はうんざりといった表情でその行為を見つめる。

他の海ならともかく、

このグランドラインにおいて降伏する海賊など皆無に近い。

それでもスザクはこの行動を止めることはない。

海兵にはそれはもはや偽善にすら感じられた。

 

「航海法第33条、無断航海禁止法違反、並びにブリタニア帝国憲法…」

 

麦わらの一味の罪状を述べながら、

スザクはシュナイゼルとの会話を思い出していた。

 

 

 

 

「麦わらの一味の捕縛…ですか?」

 

「そうだスザク君、君には処刑当日、麦わらの一味の捕縛を優先して欲しい」

 

「しかし、海軍として自分には処刑場の警備をする任務が…」

 

「スザク君、処刑場には、ブリタニア軍と黒の騎士団が配備されている。

 海軍の兵力は不要だよ。

 当日のブリタニア軍の指揮は“ナイト・オブ・ラウンズ”

 第10席のブラッドリー卿が、黒の騎士団においては扇君が担当する。

 また、政府の知人が”ある人物”を派遣してくれることになっている。

 ゼロの逃亡に関する対策は何の問題もないよ」

 

シュナイゼルはいつものように微笑を浮かべ、話を続ける。

 

「それより、君たち海軍には一時期、

 ゼロと行動を共にしていた麦わらの一味の捕縛を担当して欲しい。

 麦わらの一味は現在、ゼロの隠れ家に潜伏しているとの情報が入った。

 麦わらはゼロの“ギアス”にかかっている可能性がある。

 麦わらが“億超え”のルーキーである以上、この件を軽視することはできない。

 スザク君、頼まれてくれるかな?」

 

シュナイゼルの話は理に適っている。

しかし、ゼロというこの国の歴史に名を残すほどの存在、

世界政府から次世代の脅威と目されるほどの大物の処刑当日、

このブリタニア支部の最高責任者であるスザクが現場を離れ、

大物新人とはいえ、一海賊に過ぎない麦わらの一味の捕縛を優先させられるのは

違和感を禁じない。

 

(…外されたか)

 

スザクはそう直感した。

いや、むしろ処刑場から遠ざけられたと言った方が適切だろう。

ルルーシュとの対面において、シュナイゼルは、自分に不審を抱いた。

もっと具体的に言えば、裏切る可能性を考慮したのだ。

ゼロの奪還を考えるならば、この厳重な警備を外から破るより、中からの方がたやすい。

海軍中将のスザクなら、移動に制限は少なく、警備の配置も把握できる立場にある。

ならば、その脅威は排除するのが望ましい。

おそらく、それが答えに違いない。

 

「…イエス、マイロード」

 

もとより、答えは決まっている。

海軍として、またブリタニアの騎士として、

帝国宰相であるシュナイゼルの要請を断ることなどできない。

ブリタニア式の敬礼をした後、スザクはシュナイゼルに背を向け、歩き出す。

運命は決まった。

ルルーシュは死ぬ。

自分は海兵として、ただ正義のために生きる。

 

もうあの夏の日には戻れないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第257条ブリタニア入国法違反、並びに航海法第…ん?」

 

麦わらの一味の罪状を読み上げながら、

回想していたスザクは部下の“中将!中将!”という叫び声に現実に引き戻される。

 

「中将!奴ら話を聞いていません!こっそり碇を上げています!」

 

「え(ガーン!)」

 

見ると羊頭の海賊船は碇の引き上げ作業をほぼ半分をほど終了させていた。

それはスザクの降伏の勧告の直後、

いや、その開始と同時にその作業をはじめたことを意味していた。

つまり、話をまったく聞いていなかった。

 

「ッ…!許しは請わないよ!」

 

どんな海賊でも、降伏はせずとも話くらいは最後まで聞いていた。

それを、1秒たりとも聞くことはなかった麦わらの一味にスザクは

若干マジキレしながら、砲撃の合図をする。

 

「ばれたか!ウソップ達は碇を上げろ!ルフィ、マリモ、俺たちで船を守るぞ!」

 

サンジはそう言って走り出し、大砲の弾を蹴り落とす。

ゾロが後に続き、玉を真っ二つに切り、ルフィは砲弾をはじき返す。

ウソップとチョッパーは必死で碇を上げ続け、ナミは叫ぶ。

その最中でもジェレミアはオレンジを食べ続け、アーニャは心配そうにそれを見つめる。

 

「なんだありゃ?」

 

砲弾を蹴り落としていたサンジが叫んだ。

砲弾の雨の中、明らかに違うものが混じっていたのだ。

 

それは―――人間。

 

スザクがその並外れた身体能力をフルに生かし、発射された砲弾に飛びついたのだ。

砲弾を片手で掴みながら、砲弾とともに飛ぶのは並外れた握力とバランスが必要になる

それをさも当たり前のようにスザクは実行し、メリー号の眼前で手を離し、

身体を回転させる。

 

「うわッぁ――!」

 

回転の勢いをそのまま加えたスザクの蹴りをまともに喰らい、

ルフィはメリー号の外に飛び出した。

 

「ルフィ!野郎…!首肉(コリエ)シュート!!」

 

「枢木キック!!」

 

吹き飛ばされるルフィを見て声を上げるサンジに、それを実行したスザクが向かってくる。

それに気づきサンジは撃退すべき、跳び上がり、必殺の蹴りを放つ。

それに対してスザクは同時に跳び、回転蹴りを撃つ。

 

空中で激突する両者。

技の威力はほぼ同じであり、空中で停止し、両者は睨みあう。

 

「ぐわあッ!」

 

その直後、スザクはさらに回転し、サンジを床に叩きつけた。

それは、蹴りではなく、足を使った投げ技に近いものであった。

 

「チィッ!」

 

それを見てゾロを駆け出す。

侵入者であるスザクに居合いの一閃を喰らわすために。

しかし―――

 

「なッ?ぐはぁ!!」

 

着地したスザクが即座に跳び上がり、ゾロの刀の柄に横蹴りを当て、抜刀を防いだ。

そしてそのまま、刀を踏み台に駆け上がり、ゾロに飛び膝を決めた。

 

 

もし、海軍・ブリタニア支部の海兵に枢木スザクに関するインタビューを行えば、

おそらくはありとあらゆる罵倒が帰ってくるだろう。

しかし、生粋のブリタニア人であり、

差別主義者である彼らをして悔しさを滲ませながら言う枕詞がある。

 

「実力は確かなものだが…」

 

枢木スザクの中将昇格はシュナイゼルの政治的策略であることは確かである。

しかし、それだけで海軍の中将が務まるわけがない。

枢木スザクが持っていたのは確かな実力。

海軍本部の中将達に比肩する才能があった。

ブリタニア支部の最高権力者は同時にブリタニア支部の最高戦力。

それを証明するかのように、“海賊狩り”のゾロと“黒足”のサンジは床に倒れ、

スザクは冷たい目でそれを見下ろしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麦わらの一味…君たちを逮ほ―――ホグッ!」

 

過去多くの海賊たちを前にこの台詞を述べてきたスザク。

しかし、今回は違う。

その言葉の完遂直後に、わき腹に何かが直撃して声を上げる。

 

「ゴムゴムの“ロケット”!!」

 

飛び込んできたのは“麦わら”のルフィ。

この船の船長。億超えのルーキー。

 

スザクに蹴り飛ばされ、海に落ちたと思われていたルフィは腕を伸ばし、

船の端にしがみつき、パチンコ玉のように反動をつけ、スザクに突っ込んできたのだ。

二人は絡まりながら、砂浜に落下する。

そのまま、数メートル、ごろごろともつれながら転がった後、

下の体勢になったスザクは蹴り飛ばすべく、ルフィの顔面に向けて蹴りを放つ。

蹴りをよけて、その勢いのままバク転し、距離をとったルフィ。

そして、麦わら帽子をかぶり直し、メリー号に背を向けたまま大きく叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

        「船を出せ!こいつは俺が倒す!!」

 

 

 


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