ルルーシュと麦わら海賊団   作:みかづき

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麦わら邂逅編
麦わら帽子と仮面の魔王


ブリタニア諸島における内戦の終結。

 

エリア11における長きにわたる戦いもついに今日終わりを迎えることとなる。

最大の反ブリタニア勢力である”黒の騎士団”は名ばかりの同盟という形をとり、ブリタニアに降伏した。

その調印式において、内戦の終結を証明するための一つのイベントが行われる。

 

”魔王”ゼロの処刑。

 

”ブラック・リべリオン”を引き起こしたテロリスト。

ブリタニア海を支配した”大海賊艦隊”黒の騎士団の元団長。

”世界最悪の犯罪者”ドラゴンの優秀な部下。

 

そして今ここに”魔王”と呼ばれた仮面の海賊は、処刑台に立つ。

黒覆面の処刑執行人がゆっくりと斧を振り上げ、それをブリタニア軍に、黒の騎士団、そして集まった民衆たちが見つめる。

 

「オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・ブリタニア!」

 

ブリタニア兵達は高らかに謳い、団員達は目を背け、民衆は悲鳴を上げる。

その混沌の中、目の前に現れた麦わらの一味に向かって、ゼロは・・・ルルーシュは言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ”撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――数週間前。

 

コバルトブルーの景色が広がるブリタニア諸島の近くの海に一隻の船があった。

ウォーターセブンに向かうその羊の頭を持った船に乗るのは、一億の賞金首“麦わら”のルフィと仲間達であった。

 

「サンジ~腹減って死にそうだ!飯はまだ~?」

 

「うるせい!もう少しまってろ!」

 

いつも通りのやり取りを横目に航海士のナミは新聞を見つめていた。

新聞を読むのは彼女の日課である。

 

グランドラインではほんの少しの情報不足が命取りとなる。

情報収集という言葉を他のメンバーが知らない以上、ナミの日課は必然の作業となっていた。

そのナミの関心を引いたのは一面に載っていた“黒の騎士団”のニュースだった。

 

 

捕縛された"黒の騎士団"の団長が護送中に逃亡したという。

 

“黒の騎士団”といえばこの海域を支配する大海賊だ。

この海賊団の規模は"海賊艦隊”と呼ばれたドン・クリークを超え"大海賊艦隊"と呼ばれている。。

その団長の逃亡劇となれば、追う海軍と奪還に来た部下との間で大規模な抗争になるのは必定だ。

――早いうちにこの海域を出た方がいいわね

 

そう思案しているナミの後ろから、ルフィの声が聞こえる。

「スッゲー!!変態仮面が釣れたぞ!!」

 

釣りをしていたルフィの針にかかったのは一隻のボートだった。

そこに乗っていたのは栗色の髪をした少年。緑色の髪をした少女。

そして変態仮面?だった。

 

「あわ、あわわ~」

 

新聞を握り締め、ナミは卒倒しそうになる。

握り締めたその新聞の一面の写真。

そこに載っているのはまさにその変態仮面。

 

黒の騎士団団長“魔王”ゼロ。2億6千万の賞金首だった。

 

 

 

 

 

 

「いいから捨ててきなさい!!」

新聞を片手にナミは叫んだ。

「捨て犬じゃねぇんだぞ…。」

メリー号に救助した3人を前に尻目にゾロはごく当たり前の突っ込みをいれる。

チョッパーの診断では栗色の髪の少年と緑色の髪をした少女はすでに息絶えていた。

少女の横ではサンジが「運命は残酷」だの「もう少し早く出会ったいれば」だのと 一人嘆いている。

 

「あんた達、事の重大性に気づいてないの?そいつはあの“ゼロ”なのよ!!」

 

 

"魔王”ゼロ

 

その存在を世に知らしたのはブリタニア領エリア11による独立戦争。

俗にいう「ブラック・リベリオン」だった。

 

エリア11(日ノ本)の解放を唱えるゼロは"革命軍"と結託しブリタニアに決戦を挑んだ。

戦いは黒の騎士団の優勢に進んだ。

しかし劣勢のブリタニアは海軍に援軍を頼んだ。

海軍が出した答え。

 

それは"バスターコール"

 

その虐殺と混乱の中、黒の騎士団とゼロは海に逃れ,海賊となった。

 

「バスターコール…。」

その言葉にロビンは肩を震わせた。

「わかった?“ゼロ”は革命軍と繋がり、

 世界政府からも目をつけられるほどのヤバイ奴なのよ!!

 その正体はまったくの謎。知った者は例外なく殺されると聞いているわ。

 そんな奴と関わったら命がいくつあっても?!」

「やったー!やっと取れたよこの仮面!!」

 

熱弁を止めナミは固まった。

 

「おもしれー!この仮面」

「あんた!!あたしの説明聞いてなかったの?!!」

鬼のような形相で詰め寄るナミを前にルフィはしり込みする。

「しょうがないだろ。脱がせなきゃ治療にならないってチョッパーが」

 

「チョッパーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

「ぎゃー鬼が出たー!!」

 

「ちょ、落ち着けナミ」

 

一同の喧騒の中、ロビンはゼロを見つめる。

まだ少年の面影がのこる黒髪の青年。

海賊でありながら生まれ持った高貴さを感じさせる。

 

「この人…どこかで」

自分の記憶を遡ろうと思案に入るロビン。その横で

 

 

 

  ・・・ここはどこだ?

 

 

 

ゼロは目を覚ました。

 

 

 

 

 

ここはどこだ?

頭がひどく痛い。そうだ。俺はブリタニアに捕まり海軍に引き渡された。

 

 

インペルダウン行きの幽閉船に乗り込む最中、突然首から血を流す海兵たち。

一秒たりとも狂いのないその出血は公園の噴水を連想させた。

 

 

  兄さんは僕が守る!

 

 

 

「やめてくれロロ!その力はお前の心臓を」

 

 

  はやくこいルルーシュ!私との契約を忘れたのか?

 

 

「ああ、わかっているさC.C。」

 

 

 

  ゼロ、いやルルーシュはギアスを使い人の意思を捻じ曲げるペテン師だ!

 

 

「扇…キサマ!?」

 

 

 

  ルルーシュ。まさか君がゼロだったとはね

 

 

 

「シュナイゼル!これはあなたのチェックか!!」

 

 

 

 

  お兄さま! お兄さまーーーーーーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

「ナナリーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

  ・・・そうだ!俺は―――ッ!

 

 

 

 

「海賊仮面!!参上!!」

 

「ぎゃはははw」

 

ゼロの仮面を被り遊ぶルフィを見てウソップとチョッパーが盛大に笑う。

目の前でゼロな仮面で遊ぶ男達。何が起こったのかは明白だった。

 

 

―――正体を知られた。

 

 

意識が急速に回復し、コンピューター並みのその頭脳がフル稼働し、ルルーシュは自分が取べき行動を即理解した。

その答えは一つしかない。

 

「ん、気がついたか?」

 

ルフィの声で一同は視線をルルーシュに向ける。

 

「あの~私たちはですね~」

 

「顔色が悪いな。何か暖かいものを持ってきてやろうか?」

冷や汗をかきながら愛想笑いを浮かべるナミとサンジの言葉を無視し、

ルルーシュはゆっくりと立ち上がる。

そのただならぬ雰囲気にゾロは無言で刀に手をかける。

「お前たちには感謝する。ありがとう。そしてさよならだ。」

 

「あん?」

 

近寄ろうとするサンジの足が止まる。ルルーシュの両目は赤く光っていた。

 

 

――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。

 

 

 

 

 

 

 

           「お前たちは死ね!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは今から死ぬぞーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「オーーー!!!」

船首に飛び乗り麦わらの男と狸はそう高らかに宣言し、海に向かってダイブする。

ルルーシュの瞳に紋章が浮かび上がりそこから赤色の光が放たれた直後のことだった。

 

「さて、逝くとするか」

「あの世にはカワイイお姉さまはたくさんいるかな?」

 

侍もどきとホスト風の男はそれぞれ海に向かって歩き始めた。

 

「…あの世でもお金は必要ね…。」

 

「死ぬ前に本を整理しなくては…。」

騒がしい女と長身の女は自分達の部屋に歩を進める。

 

 

  そうだ。それでいい。ゼロの秘密を知った者は生きてはいられない。

  この世界の心理。絶対の事実。

  オレはそうやって生き延びてきた。今までも、そしてこれからも。

 

 

「フフフ…フハハハハハハハ!」

 

 

 

  そうだ!俺はゼロ!オレが“魔王”。世界を破壊し、世界を創造す…ん?!!

 

 

 

「…え?」

 

勝利を確信し高笑いを始める仮面の魔王。

それを呆然と見つめる長鼻の狙撃手。

ほぼ同時に二人は互いを見て驚愕した。

 

 

  何故ギアスが効かない?!

 

ルルーシュは思考の世界でキーボードを叩き出し、数秒で125通りの回答を導き出した。

 

何らかの悪魔の実の能力者。

生まれつきの特異体質。

改造人間。

ブリタニアの血族。

 

しかし、その数秒間の思考の旅は徒労に終わった。

正解は一目瞭然だ。

ゴーグル。

 

ウソップが海中で、砂漠で、雪原で、ありとあらゆる困難な状況下において

狙撃の視界を確保するために、改良に改良を加えた自信作。

マニア以外の人間が見たらシニカルな笑いを浮かべるそのゴーグルが

偶然にもギアスから送られる視覚情報を防いだのだった。

 

 

ウソップは呆然とルルーシュを眺めていた。

この男の目が赤く光り、「死ね」という一言の直後、仲間達は奇怪な行動を取り出した。

ルフィとチョッパーは海に飛び込み、ゾロとサンジはその後を追う。

ナミとロビンは自分達の部屋に向かう。ほんの数秒間の出来事だった。

ナミの話が脳裏をよぎる。

 

“魔王”ゼロ。2億6千万ベリーの賞金首。

黒の騎士団の団長。この男が何かしたのは間違いない。

(悪魔の実の能力か?なんでオレだけ無事なんだ?)

 

ウソップは全身から嫌の汗が流れるのを感じた。

仲間の援護はない。

戦うのは自分一人。

目を赤く光らせ睨みつける青年はまさに悪魔の化身に見えた。

その時ウソップが連想したのは 絶望・敗北・死亡 だった。

「長鼻―――――――ッ!!」

 

「ゼ、ゼロ――――――!!」

 

ルルーシュが銃を構えるのに呼応し、ウソップ反射的に構えた。

直後、両者が放った弾丸が交錯した。

 

弾丸がウソップの頬を掠めた。その衝撃でウソップはほんの少し体勢を崩した。

 

絶望的だった。

 

しかし、それにも増してウソップの集中力は過去に例がないほど高まっていた。

逃げ場のない海の上、頼れる仲間は誰もいない。だからこその“抗い”だった。

崩れた衝撃を利用し、床を回転する。相手は2億の賞金首、“魔王”と呼ばれる男だ。

おそらく「火薬星」はかわされる。いや、喰らっても平然と笑っているに違いない。

 

 

 楽しい海賊人生だったなぁ。でもまだ足りねえよ…。

 

 

胸が熱くなった。

時間にするとほんの一秒ほどであったが、いままでの冒険が頭を過ぎった。

手で回転を止め、体勢を整える。覚悟は…決まった!

「ぐわぁッ!!」

 

「…え!?」

 

火薬星を派手に喰らい、崩れ落ちるゼロをウソップは呆然と眺めた。

 

「ぎゃーーーおぼれるーーー助けてーーー」

「ブクブクブクブク…。」

 

水しぶきを上げながらルフィを助けを求めた。

「なんでオレは海に落ちてんだ!?」

 

「知るかそんなこと!それより二人を助けるぞッ!!」

 

状況がつかめないゾロにサンジは檄を飛ばす。

 

「あれ…なんでお金なんて数えてるのかしら?」

 

「あら…私?」

 

ナミとロビンは自分達が何故部屋にいるのかさえわからない。

そんな仲間達の喧騒がどこか遠い、自分とは関係ない事のようにウソップは

気絶している青年を、2億の賞金首を、“魔王”ゼロを見つめていた。

 

 

 

 

――これがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと麦わら海賊団との出会いだった。

 

 

 

 






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