緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第92弾 クッキー爆砕

それから数日、以外に執事の才能があったらしいキンジやアリア達と小鳴先生に新聞を届けたり、電話番したり門番したりしながら屋敷のことを調べていった。

どちらかと言えばインケスタやレザドの得意分野なんだろうがキンジがインケスタで助かったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、7日目の21時30分

コンコンというノックの音に、俺はベッドから体を起こしてから

 

「はい?アリア、キンジ?」

 

「……」

 

しかし、部屋の外の気配は返事をしない。

机の上においてあるデザートイーグルを掴むとドアに慎重に近づくと一気にドアを開け放った。

 

「?」

 

誰もいない。

廊下を見渡すが誰も……いや……

 

「まさかな……」

 

一瞬、見えた銀髪が廊下を曲がるのを捉えていた俺はそちらに向かい走り出した。

あいつがこんなとこにいるわけがねぇ

そう思いながら走るが銀髪の人物はおちょくるように俺が直線で目視できる場所にくるたびに廊下の角を曲がる。

なびかせる銀髪だけを残して……

ローズマリーか?

確証はある。

廊下に漂うこの匂いはローズマリーという花から作られていた特殊な香水だ。

 

そういや、マリも最近通販で買って使ってるんですよとか言ってたな。

確か、ローズマリーの花は愛を象徴するとか言ってた気がする。

 

「!?」

 

はっとして、足を止める。

目の前でぱたんと閉じた木の扉。

逃げ込んだならここしかない。

この通路の扉はあそこだけだからな。

 

アリア達を呼ぶか一瞬迷うが、悠長に待つことが俺にはできなかった。

ジャンヌの進言に従いデザートイーグルに銀弾を込めてからドアをゆっくり開き中の様子を伺う。

ローズマリーは……いた。

いつもの黒いゴシックロリータの黒いドレスを着て窓ガラスに頭ををつけて座っている。

見た目だけならお人形を思わせるその容姿はアリアやレキ、理子といったいわゆる美人とはまた、違う美しさを兼ねていた。

 

「動くなローズマリー!」

 

デザートイーグルを向けながら俺は言った。

ローズマリーは憂鬱そうな顔を窓から離して俺を見るとにこりと微笑む

 

「こんばんわですの優希」

 

「ふん、のこのこ出てきやがって。そういや、お前、イ・ウーの関係者だったな。ブラドならいないぜ」

 

「彼に用はありませんの優希」

 

「何?」

 

「クッキーを作ってきましたの優希食べて下さるかしら?」

 

そういうとローズマリーはバスケットを取り出し床に置いた。

 

ドオオオン

 

運がいいのか悪いのか雷が鳴ると同時にバスケットがデザートイーグルの弾丸で貫かれた。

中にあったクッキーが飛び散る。

 

「ひどいですわ優希」

 

ローズマリー人差し指を唇に当てる。

たったそれだけなのに妖艶な姿に見える。

だが、俺の心は痛まない。

 

「ふざけるなよお前、毎回毎回」

 

まるでもてあそぶように現れるローズマリー。

あるときは助け、ある時は敵になる。

今回だってどちらか分からない。

 

「頭に両手を乗せてうつ伏せになれ!」

 

「優希はそんな体制が好みですの?」

 

にこりとローズマリーは微笑む。

すでに、俺の体は汗びっしょりだった。

底知れない化物。

それがこの女だ。

準備は万端ではない。

やり合って勝てるのか?

 

そう考えていた時、ローズマリーの姿が消えていた。

陽炎のように部屋が揺れている。

しまったこいつは炎か幻覚

 

「優希」

 

「うっ!」

 

優しい聖母のような声は後ろから

 

ふわりと俺の背中からローズマリーは両腕を首に巻き付けてきた。

締め付けるのではなく優しく母が子供を抱きしめるように

部屋にある鏡越しに俺たちは目が合う。

 

赤い瞳のローズマリーはクスクス笑いながら

 

「捕まえましたわ」

なんて失態だ。

ローズマリー相手にろくに準備もせずアリア達に援軍要請しなかった俺の致命的なミス。

殺される。

この女がその気になれば俺を焼死させるなど赤子の手を捻るより容易いだろう。

 

「……」

 

打開策を探る中でローズマリーは微笑みながら

 

「優希ブラドと戦うんですの?」

 

ここは会話で時間を稼ぐしか……

 

「だったらなんだ?」

 

「そうですの?では、言いこと教えてあげますの」

 

「くっ!」

 

ぞくりと背筋が凍るような感触。

ローズマリーが俺の首筋をなめたのだ。

ドオオオオン

 

再び雷がなった瞬間俺は渾身の力でローズマリーを背負い投げる。

だが、ローズマリーはふわりと地面に着地するとまるで俺の首の味を楽しむように人差し指で自分の舌を舐めてから。

 

「優希、死なないでくださいましね。私の騎士様」

 

窓が開け放たれて雨が振り込んでくる。

 

「ま、待ちやがれ!」

 

雷と同時にデザートイーグルをフルオートで撃つがローズマリーは蒼い炎に包まれながら窓から落ちていった。

窓に駆け寄って辺りを見るがローズマリーの姿はなかった。

逃げたか……

多分、追っても無駄なので窓を閉めて廊下に出た時、着信があった。

 

「ん?アリアか?」

ディスプレイに表情されたアリアの文字を見ながら通話ボタンを押す

 

「はい」

 

なるべく平静を装って俺は電話に出た。

「ゆ、優あんたもきなさい!アプリで遊ぶわよ!遊戯室であたしもキンジも待ってるわ」

 

アプリで遊ぶは以前に決めた暗号で理子との連絡を意味する。

だがあれ深夜2時からだぞ

 

「まだ、早いだろ」

シャワー浴びたいしな

ドオオオオン

 

再び雷が落ちた音。

近いな

 

「ひゃああ!」

 

ああ、そういや……アリア

 

「い、いいからすぐ来ること!あたしが来いといったらすぐ来るっ!こなきゃ風穴」

 

「了解。今から行くよ」

 

苦笑しながら切れた電話を見ながらローズマリーに舐められた首筋を撫でるとネトリと粘膜が感じられた。

 

いいこと教えてあげますの。

これだけでは分からない。

あいつは何が言いたかったんだ?

アリアの電話で気持は晴れたがその疑問だけは考えなければならないだろうな……

そんなことを考えながら俺は遊戯室を目指すのだった。


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