緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

66 / 261
第65弾 遊園地に行こう

護衛5日目の朝、不機嫌目にリビングでシンたちを含めた全員で朝食をとっているところだった。

今日の料理担当は俺なので無難にトーストを焼いてトーストの上に目玉焼きを載せてある。

シン達の分は作りたくなかったがな・・・

 

「え? でかけたい?」

 

コーヒーを飲みながら眠気を消す努力をしていると奏ちゃんがいきなり口を開いたのだ。

今日は土曜日、学校は休みの日だ。

護衛の観点で言うなら要塞化しているこの家で過ごすのが1番安全なのだが・・・

 

 

「うん、動物園に・・・ダメかな?」

 

おそるおそる言う奏ちゃん。

 

「護衛の観点からいえば賛成できませんね」

 

「・・・」

 

おずおずといった感じだが、俺たちの方を見てくる奏ちゃん

賛成に回ってほしいんだな

 

「無茶苦茶なことを言ってるのはわかってるの。 でも、今日は前からお父さんと行く約束してた日だから千夏のためにも言ってあげたいなって・・・」

 

「ちーも無理してるからね」

 

理子がまだ、寝ている千夏ちゃんがいる2階を見上げる。

護衛にはレキが付いているはずだ。

 

「学校ではどうなんだアリア?」

 

キンジが食パンを手に取りながら言う。

 

「孤立してる」

 

アリアが口を開より先に言ったのはポニーテールの狙撃手春蘭だ。

3人の中で主に千夏ちゃんの護衛を担当している。

とはいえ、千夏ちゃんの小学校を狙い打つのに最適な場所で監視ているだけだが・・・

まあ、春蘭の腕は確かだ。絶対半径(キリングレンジ)は非公開だが2000以上確実である。

つまり、レキと同等の実力者ということになる。

レキが狙撃戦で負けるところは想像できんがレキ以上の狙撃手がいることに不思議はない。

世界には化け物のような連中なんざ、ざらにいるからな

 

「正確には、千夏のお父様が亡くなってからね。 家では明るくしてるけど学校では半分いじめられてるみたい」

 

 

アリアが補足を入れる。

聞くにそのいじめをアリアが撃退しているためにアリアもまた、孤立しているんだそうだ。

そりゃ辛いだろうな・・・家族を失ったんだから・・・

 

「だから、気分転換も兼ねて連れて行ってあげたいの。 お願いします」

 

頭をさげる奏ちゃん。

 

「いいわ」

 

「本当ですか!」

 

アリアの言葉に奏ちゃんがぱっと顔を輝かせる。

 

「待ってください」

 

そこに口を挟んできたのはシンだ。

 

「失礼ですが先日の優希君達の失態をお忘れですか? 彼女たちは狙われている。 幸い我々には要塞かしたこの家がある。 防御に徹するのが得策でしょう」

 

「それは・・・」

 

正論にキンジが唸る。

 

「大丈夫よ。 優だけじゃなくてあたし達も行くんだから」

 

まあ、入れたくないが俺たちを倒そうとするならシン達を入れれば選りすぐりの精鋭を何個中隊も投入しなければならない。

そんな、大戦力を動物園で投入することは難しいだろう。

 

「仕方ありませんね」

 

シンは諦めたように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっわいいい! ほら! 優、キンジ!千夏!見てみて!うさぎうさぎよ!」

 

「おい、アリア! あんまりうさぎを抱きしめるな潰れるだろ」

 

「もふもふです」

 

千夏ちゃんも嬉しそうだ。

すっかり体験コーナーでうさぎにでれでれのアリアを見ながら俺は柵の中で苦笑していた。

 

「よし、俺も」

 

手を伸ばすが黒のうさぎは逃げていってしまった。

なぜなんだ・・・

 

「ほらレキ! お前もだっこしろよ」

 

こんな場所に来てまでもドラグノフを背負っているレキは首を少し下げてうさぎの大群を見ていたが興味は薄いらしく再び視線を虚空に戻してしまう。

 

「ん?」

 

見ると理子がそーとアリアの後ろに歩み寄ったかと思うと耳に・・・

うさぎ耳をつけた。

しかし、うさぎに夢中のアリアは気づかないらしく耳をぴこぴこ揺らしながらうさぎをもふっている。

だ、駄目だ。

なんていうか可愛すぎるだろその格好。

猫耳が強力なアイテムだと理子に前に力説されたがうさぎ耳でもそれは同じらしい。

加えてアリアは小柄で可愛いので余計に破壊力を増加させるのだろう。

 

「いけないうさぎちゃんだ」

 

横を見るとキンジがヒスっていた。

おいキンジヒスするなこんな時に・・・

まあ、止めるのが俺の役目だろ?

と、キンジに声をかけようとした時だった。

 

「ありがとう」

 

横を見ると奏ちゃんだった。

清楚なワンピースに白いポシェット

何か香水でも付けているのか獣臭いこの場所でほんのりいい香りがした。

 

「何がありがとうなんだ?」

 

「反対しなかったじゃない。 東京武偵高の人達。 あなたがリーダーだからあなたにお礼を言おうと思って・・・」

 

ああ、そのことか・・・

俺は柵に背をあずけながら

「なんていうかさ・・・千夏ちゃんも心配だったけど。 奏ちゃんも無理してただろ?」

 

「私も?」

 

「肉親を失って悲しくない奴なんていないからな・・・」

 

「変態に家族はいるの?」

 

「ま、俺の家族はいろいろと複雑だし俺は嫌われてるからな」

 

嫌われて当然んことをしたんだ俺は・・・

恨まれてない訳がない。

 

「変態?」

 

はっとすると奏ちゃんが心配そうに俺の顔をのぞき込んでいた。

いけないいけない。

 

「ど、どうしたんだよ奏ちゃん」

 

「なんか変態元気がないから私悪いこと言ったのかなって・・・」

 

「違う違う。 そんなことより、うさぎだ! よし! こいこいうさぎ!」

 

奏ちゃんは何か考えるように俺を見ていたが

 

「行こ変態」

 

突然俺の右手を掴むと歩きだした。

 

「へ?」

 

「千夏はアリアさん達に任せてちょっと私の気分転換に付き合ってよ」

 

え?え?どういうことなの?

レキと目があったがその表情は無表情。

どういうことなのレキさん教えてください!

心の中で悲鳴をあげるがレキはただ、静かに俺たちを見送るのだった。

そう、これって奏ちゃんとデートなの?

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。