緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

63 / 261
第62弾 襲撃

護衛も4日目になってくると暇に感じてくる。

 

潜入の時はなるべくめだたないほうがいいからな

アリアの方も同様らしく、今では近寄ってくる人も限られてるそうだ。

ていうかあの、性格で小学生の友だちが出来るのかね・・・

 

そうして、今日の学校生活も何一つ起こることなく終を告げる。

だが、今日の護衛任務はこれだけに終わらない。

 

「え? 寄りたいところがある?」

 

防弾車の中でのことである。

情報収集のため理子やレキ、アリアがいないため、俺、キンジ、マリ、千夏ちゃん、奏ちゃんというメンツで俺が運転する状態で奏ちゃんが話しかけてきたのである。

 

「ダメかな?」

 

「どうしても、今日じゃないといけないんですか?」

 

マリが後部座席から聞いてくる。

 

「はい・・・」

 

どうすると? キンジが俺に視線を向けてくるので

 

「その用事ってのはなんなんだ?」

 

「今日はお父さんの誕生日なの・・・だから・・・お墓参りしたいなって・・・」

 

両親か・・・

俺はいい思いがないんだがアリアの母親のかなえさんを思い出す。

あの人は、免罪だ。

それは間違いない。

イ・ウーが免罪を着せているのならそれを潰す。

 

「いいじゃないですか。 行きましょうよ椎名先輩、遠山先輩」

 

援護するようにマリが言った。

 

「椎名先輩も遠山先輩もSランクですし、少しぐらいなら大丈夫ですよ」

 

「おい、マリ俺はEランク武偵だぞ?」

 

キンジが言う。

 

「いや、お前はSだよ。 心配しなくても俺がいるじゃねえか」

 

正直な話、周囲警戒には視力6.0のレキが居てくれればいいんだがそう甘くはない。

 

「どうなっても知らないぞ・・・」

 

キンジが諦めたように言った。

 

「ありがとう」

 

奏ちゃんと千夏ちゃんは笑顔で言うのだった。

うん、女の子は笑うとかわいいよな。

レキにも見習わせたいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、やってきたのは集団墓地だ。

お墓が並ぶその光景は一言いうなら不気味とも言えるが藤宮家のお墓は霊園の奥にあった。

線香をあげながら手を合わせている千夏ちゃん達を見る。

かわいそうに思う。

中学生と小学生で両親を亡くし、今命を狙われる立場にあるのだ。

過酷な運命とも言える。

 

「?」

 

奏ちゃんが俺を不思議そうに見てくる。

ああ、命を狙われてるのかなんて変わらねえよ。

でも、護衛の期間ぐらいは守ってあげるからな・・・

そう、思った時だった。

周囲から殺気を感じる。

目をつぶり、キンジに小声で話しかける。

 

「キンジ、敵だ。 複数に囲まれてる」

 

「何?」

 

キンジはそれに初めて気づいたように警戒感を強める。

ヒステリアモードじゃないとだめだな・・・だが、ここにはアリアも理子もいない。

ヒステリアモードにする条件が整わない。

マリや奏ちゃん達を条件にできるかといえば難しいだろう。

年下はキンジには射程外なのだ。

 

「マリ、キンジ2人を守れ。 あいつらは俺が仕留める」

 

返事を待たずに戦闘狂モードになった俺は地をかける。

木の影に隠れていたクロボシを持つ2人を発見する。

2人は俺に銃を撃とうと慌てている。

 

「遅え!」

 

右手と左腰から飛び出したワイヤーが男2人の眉間に直撃する。

悲鳴を上げるまもなく倒れる2人。

直後、背後に感じた殺気にガバメント2丁を抜くと発砲、悲鳴をあげて5人の襲撃者が肩を抑えてのたうち回る。

よし、この程度なら1人でも・・・

 

「きゃああああ!」

 

「何?」

 

見ると千夏ちゃんが不良っぽい男に首を腕に抱えられて悲鳴を上げている。

 

「千夏!」

 

奏ちゃんが悲鳴をあげているがキンジとマリに抑えられる。

 

「やめろ、行っちゃ駄目だ」

 

「でも、千夏が!」

 

「ちっ!」

 

舌打ちしながら地をけろうとした瞬間

 

「おっと動くなよ」

 

「う・・・」

 

止まらざる得ない。

男が千夏ちゃんの首にナイフを突きつけたからだ。

 

「ひっ」

 

泣きそうな顔で千夏ちゃんが凍りつく。

 

「ハハハ、いい顔で怯えるねえ。 俺はそんな顔大好きだよ」

 

鼻にピアスをつけた不良が千夏ちゃんの頬を舌で舐める。

 

「てめえ!」

 

怒りが感情を支配するが動けない。

 

「きたねえ言葉遣いの女だなまずはてめえだな」

 

背後に不良の仲間が立つ。

 

「つっ・・・」

 

「お前ら、そいつを痛めつけろ」

 

千夏ちゃんを抑えている男が言った瞬間、俺の頬に衝撃が走る。

 

「ぐっ・・・」

 

頬を抑えた瞬間、男が蹴りを放つ。

おせえよ!

 

「よけるなよ?」

 

後ろから聞こえた声に俺の動きが止まる。

腹にもろに不良の蹴りが決まる。

 

「ごほ・・・」

 

劇痛に腹を抑えながら膝を地面に付ける。

ちくしょう・・・

 

「さっきまでの勢いはどうしたんだ?」

 

モヒカンの男が蹴り始めたのを始め周囲から殴打の嵐が俺に吹き荒れる。

俺にできるのは痛みに耐えることだけだ。

 

「ハハハ、どうしたんだ? Aランク武偵ってのはその程度なのかよ?」

 

こ、こいつら・・・知ってやがる俺達が護衛についてることを・・・

打開策をさぐるがちょっと、力を込めるだけで殺せる位置にいる男を無力化させることなどそれこそ紫電の雷神とか言われるぐらいの技量がなければ不可能だ。

キンジもまた、機会を伺っているようだが、俺が気絶したら今度はキンジ、そして、マリだろう。

 

「おら!」

 

「ぐっ!」

 

胸に蹴りを受けて俺は顔をしかめる。

 

「も、もうやめて!」

 

千夏ちゃんが泣きそうな声で言う。

 

「ああん?」

 

「ね、狙いは。 わ、私達じゃないの? し、椎名さんたちは・・・」

 

震える千夏ちゃんに男は興奮するのかにやにやしながらその光景を楽しんでいる。

 

「おい、お前らもういい。 殺せ」

 

殴打の嵐が止まるが俺の目に飛び込んできたのはくろぼしを俺の頭に向ける男。

終わるのか・・・

こんなクズのような奴らに殺されて・・・

俺はまだ、仇を討ててないのに・・・

ちくしょう・・・

男の引き金に力がこもる。

 

「優先輩!」

 

「変態!」

 

マリと奏ちゃんの悲鳴をあげた瞬間

 

ガアアン

 

クロボシが男の手から吹っ飛ぶ。

狙撃?

レキなのか?

断続的に銃撃が続き、俺の周りの男たちが悲鳴をあげて倒れていく。

 

「ぎゃあああああ!」

 

声のした方を見ると千夏ちゃんを抑えていた男の両腕から金属の刃が突き出ていた。

男の両手が千夏ちゃんから離れる。

素早くキンジがそれを保護した瞬間、串刺しにされた男は後ろに倒れる。

あれは痛いぞ。

両腕を串刺しにされてるんだから痛みで傷口を抑えることすらできないんだからな。

 

「串刺しのその格好犯罪者にはお似合いですよ」

 

そう言いながら奴は姿を表した。

兵庫武偵高校の制服に身を包み、糸のような細めを男に向けると剣を腕から引き抜いた。

 

「ぎっ!」

 

劇痛に男が悲鳴を上げるが兵庫武偵高の男はゴミを見るような目で血を払ってから腕の中に剣を戻した。

折りたたみ式の刀身を腕の中でワイヤーと直結させてやがる。

 

「春蘭? ミンそっちはどうです?」

 

インカム越しに誰かと話しているようだった。

 

「問題ないシン。 もう、近くまで来ている」

 

「周りの連中はのうたうち回ってるわキャハ」

 

すっと、墓の影からポニーテールの小柄と髪を赤く染めた少女が現れる。

ポニーテールが肩に背負っているのは狙撃銃だな。M700か・・・

赤い髪のミンは大きな槍を持っている。

相変わらずだなこいつら

シンと呼ばれた俺と同年齢ぐらいのやつが俺と視線を合わせる。

糸目だが、その目からは軽蔑が見て取れた。

 

「護衛対象をこんな襲撃しやすそうな場所にまで連れてきた挙句、人質を取られ、各個撃破されてしまう状況。 東京の武偵というのは素人集団の集まりみたいですね」

 

「ぐっ・・・」

 

言い返す言葉がない。

シンが言うことは正しい。

これは、俺なら大丈夫という過信から来た明らかな失敗だ。

どうしても、くるのならアリアたちと合流してからにするべきだった。

 

「あ、あの・・・」

 

奏ちゃんが泣きついている千夏ちゃんを撫でながらシンを見る。

シンは口元に笑を浮かべ

 

「ご心配には及びません藤宮さん。 今から僕らがあなたの護衛に付きますから」

 

「・・・」

 

春蘭と呼ばれたポニーテールの少女が頭を軽く下げる。

 

「え?」

 

「無能な東京武偵じゃなくあたしらがあんた達の護衛してあげるって言ってんの」

 

髪の赤いミンが言う。

戸惑ったように奏ちゃんが俺を見てくる。

 

「久しぶりだなシン、ミン、春蘭」

 

「?」

 

春蘭が軽く首をかしげる。

 

「どこかでお会いしましたかね?」

 

シンも聞いてくる。

ああ、あまり言いたくはないがお前らが俺の前に出てくるなら話は別だ。

 

「このままじゃわからねえか?」

 

俺はかつらを右手で掴むと一気に外す。

 

「!?」

 

3人の目が大きく見開かれた。

 

「優希君ですか?」

 

「ああ、卒業式以来だなシン」

 

シンの言葉に俺は怒りを込めて返答してやった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。