緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第59弾 潜入護衛

うおおお! なんでこんなことになったんだ・・・

あの後、食事をとる時も理子が運転する車でこの学校にくるときも奏ちゃんは俺と目を合わせず位置も一番遠い場所に取り続けている。

理子が女装の説明はしてくれたが印象は最悪を通り越してマイナスになったようだった。

その奏ちゃんは今も俺を軽蔑しきった目で見ている。

とはいうのも・・・

 

「せ、千堂 キンジだ。 両親の都合で引っ越してきた」

 

千堂と名前を変えてクラスの前で自己紹介をしているキンジ。

大丈夫か?3才も年下の連中だがミスるなよ。

よし、次は俺だな

 

「せ、千堂 優です。 これからクラスメイトとしてよろしくお願いします」

 

と、理子に教えられた満面の笑顔をクラスに振りまく。

おいこらそこの男子! 顔を赤くするな!殺すぞ

 

「し、質問いいですか?」

 

顔を赤くした男子生徒が手を上げる。

 

「はい、川上君」

 

ショートカットの先生が生徒を指さす。

 

「ゆ、せ、千堂さんはどこから来たんですか?」

 

「東京です」

 

めんどいから簡単に答えておこう。

 

「じゃ、じゃあ趣味とかは・・・」

 

「おいおい川上! 転校生を質問攻めにするなよ」

 

「うるせえ!」

 

ぎゃははとうるさくなりかけた教室を先生が教科書を丸くしてぱんぱんと手で叩く。

 

「はいはい、騒がない! 名前からわかるように千堂 キンジ君が兄で優さんが妹だからね。 2人の席は・・・」

 

「はい!はい! ここあいてます!」

 

川上が手を上げるがお前の席は奏ちゃんから遠すぎる。

 

「先生、私たちあそこがいいです」

 

前にアリアがしたみたいに指したのは奏ちゃんの後ろと左横だ。

奏ちゃんが心底嫌そうな顔をした。

そんな顔するなよ・・・俺だってこんな格好やだよ。

 

 

 

 

 

 

次の時間の休み時間、転校生の宿命というべき質問攻めに合う。

俺は男子に、キンジは女子にたまらないので逃げたくなりお昼休みは奏ちゃんの手を引いて屋上に逃げ出した。

鍵がかかっていたがそこは武偵、ピッキングで開けてから鍵をしめる。

ここなら誰もこないだろう。

 

「ああ! もう! うぜええええ」

 

大声で叫んでから屋上に寝っ転がる。

 

「大丈夫か優?」

 

キンジが少し面白そうに言うので俺はキンジをにらみつつ

 

「大丈夫じゃねえよ。 女装して潜入なんて俺の人生で初めてだ!」

 

虎児とかいなくてよかったぜ本当に・・・

 

「変態」

 

ぼそりと、奏ちゃんが理子作の弁当を広げながら言うので俺の精神は大打撃を受ける。

いっそ、殺してください・・・

泣きなら理子の弁当を開く。

ご飯にLOVEの文字が書かれていたが即効でかき消して口にいれる。

うん、美味しいな。

定時連絡の時間になったので俺が理子に電話を入れる。

しばらくしてから

 

「あなたのりこりーんでーす。 くふっ、ユーユー理子のこと忘れられなくて電話しちゃった?」

 

「してねえよ! 定時連絡だろうが!」

 

いつものお馬鹿キャラで言ってくる理子の言葉を聞きながら

 

「で? アリアの方はどうなんだよ?」

 

「問題ありません」

 

5人同時通話でレキの声がした。

 

「アリアさんは周りに対して関係は良好ではありませんが護衛に問題はありません」

 

そりゃ、小学校に潜入してるんだもんな・・・それに違和感がないというのはある意味すごい・・・

 

ぶつんと言う音がして

 

「り、理子おおお! あんた帰ったら風穴あけてやるんだから!」

 

アリアのアニメ声だな

 

「くふ、アリア小学生姿似合うよ。 むしろ、高校生なんて嘘なんじゃない?」

 

電話の向こうからがるるると言う声が聞こえてくる。

ま、まずいこのままでは俺が風穴だ。

 

「れ、レキと理子はどこにいるんだ?」

 

話題を変えるようにキンジが言うと

 

「キンジさんから右に見えるビルの屋上です」

 

あ、あれか。

小学校と中学校がどちらも狙える位置にあり狙撃にはむいている場所だ。

だが、2キロぐらいは離れている。

 

「本当に狙撃できるの?」

 

と奏ちゃんが聞いてきたので俺は無言でボールペンを取り出すと

 

「レキ、これ狙撃してくれ」

 

と上へポーンとなげる。

奏ちゃんが上を見た瞬間、ヒュンと風邪を切る音と共にボールペンがばらばらに砕け散った。

奏ちゃんが目を丸くする。

まあ、レキならこれぐらいはできるよな。

 

「とまあ、変わったことはこっちもない。 引き続き護衛を継続だな。 じゃあな」

 

俺とキンジが電話を切ると今度は、マリから電話だ。

 

「もしもし」

 

「椎名先輩ですか?」

 

「ああ」

 

「家の方は問題ありません」

 

そう、マリはアリアに言われてキンジの部屋の時のように藤宮家の要塞化を図っているのだ。

デュランダル事件のように襲撃してくるかどうかもわからない相手だがアリアの部屋の要塞化がデュランダルを躊躇させたのは紛れもない事実だ。

まあ、俺的には襲撃してきた奴をぼこぼこにして黒幕を吐かせて逮捕が一番手っ取り早いんだが・・・

 

「じゃあ、引き続き頼む」

 

「はい! 椎名先輩が寝ている部屋の監視カメ・・・いえ、間違いました監視カメラもっと付けときますね」

 

大丈夫なのか?

少し不安になるが

 

「じゃあよろしく頼む」

 

電話を切る。

と、奏ちゃんが俺を見ていた。

 

「ん? どうした?」

 

「今の子、アミカなんでしょ?」

 

誰からから聞いたのだろう。

 

「よくアミカのことを知ってるな」

 

キンジが目を丸くしていった。

確かにアミカなんて制度があるのは武偵だけだ。

 

「お父さんが武偵だったからアミカの話は聞いてるの」

 

と、少し寂しそうに奏ちゃんは言った。

が、すぐに俺を見て

 

「変態のアミカなんてあの子かわいそうね」

 

「ハハハ・・・」

 

苦笑いをしながら俺は思う。

東京に帰りてえ・・・

 


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