緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第56弾 神戸へ!

「うおおおお!」

 

その日、俺は全力疾走していた。

なぜなら、離陸の時間は9時で今は8時45分

 

「キンジとアリアのバカやろう! なんでおこしてくれねえんだ!」

 

9時に成田を離陸する飛行機に乗るために俺は成田空港のターミナルを突っ走る。

 

「止まりなさい!」

 

警備の人間は前をふさいでくるがしかねえ!

 

「武偵だ!」

 

と、武偵手帳を見せながら突っ走る。

見るとフライトアテンダントがドアをめようとしているところだった。

すでに、人間の脚力では飛び越せないほど距離が空いている。

 

「待ってください!」

 

そういうと俺はワイヤーを発射した。

ドカアアンとドアの隙間に挟まったワイヤーにびっくりしたのかフライトアテンダントが硬直した姿が見えた。

一気にワイヤーを巻き戻して機内に着地する。

 

「よし! 完璧!」

 

フライトアテンダントの人が硬直しているので訳を説明してから俺は部屋に向かう。

成田から大阪まで大して時間は掛からないがこの、依頼主相当の金持ちらしく、600便のような豪華な飛行機のチケットを用意してきたのだ。

いやぁ、危なかった、

これに、間に合わなかったら新快速乗り継いで神戸になんてなりかねんからな・・・

それだけはごめんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

「おい! お前ら!」

 

「あ! ユーユーだ! くふ、間に合ったんだ」

 

部屋の中央でトランプをしている理子が小悪魔めいた笑を浮かべて言った。

なんと、豪華なことか部屋の中央には座席が並んでおり、理子、アリア、キンジ、レキ、マリが・・・っておい!

 

「なんで、マリがいるんだ!」

 

「もちろん、申請したからです。 理子先輩に頼めば1発OKですよ」

 

くふっと笑う理子を見て俺はやられたと思った。

ダギュラは尋問しか今は役に立たないがまあ、この場合仕方ないのか・・・

 

「よく間に合ったな優」

 

「うるさいぞ裏切り者! 起こしてくれよ!」

 

「あんたソファーでゆっくり寝てて後で起きるから先に行っててくれってメモ書いてたじゃない」

 

アリアがむすっとして言う。

そんなメモあったっけ?

理子ががくふっと笑う。

お、お前か!

 

「理子ぉ!」

 

別に倒す気がないが叫ぶと理子は手招きしながら

 

「ユーユーもおいでよ。 ババ抜きしよ」

 

そして、6人でババ抜きが始まるがレキ・・・お前の表情はよめん・・・

最後の2枚なんだが

 

「・・・」

 

レキはまったくのポーカーフェイス。 眉一つ動かさない。

駄目だこれは・・・

 

「さっさとしなさいよ」

 

アリアの言葉を背景にやけくそ気味に1枚を引く。

結果はババだった。

 

「ユーユー10連敗!」

 

なんてこったい・・・理子の言葉を聞きながら俺は床に突っ伏した。

 

「レキ・・・お前、プロにでもなったほうがいいんじゃないか」

 

「・・・お断りします」

 

そうか・・・

即答されてしまったがその直後機内アナウンスが入る。

 

「当機はまもなく、神戸空港へ着陸いたします。 乗客のみなさまはシートベルトを付けてお待ちください」

 

俺は理子と目があったので

 

今度はハイジャックするなよとまばたき信号で送ってやると

 

くふ、やってもいいけど今回は大丈夫だよとウインクを返してきやがった。

まあ、信じるぜ

 

神戸空港と兵庫県の大都市、三宮は無人航行システムを搭載したモノレール。

ポートライナーで繋がれている。

依頼主がいる場所まではポートライナーで三宮まで出て、JRで向かう必要がある。

三ノ宮についたのは午前11時。依頼主との接触は午後6時だから数時間遊ぶ余裕があるのだ。

実の所、この遊ぶ部分は今回結構、重要らしい・・・

12時前に理子が見つけ置いた三宮の海側にあるパン食べ放題のスパゲティー屋から出るとそのあとはしばらく自由行動だ。

人ごみにまみれて4人を巻いた俺はごみごみとした三宮の街で息をすった。

 

「ああ、東京ほどじゃねえがあいからずゴミゴミしてやがるなこの街は! 適当に店でだらだらするか・・・」

 

「くふっ♫」

 

笑顔のまま、俺は固まる。

嫌な予感がして振り返ると

 

「どっか行くのユーユー?」

 

理子が立っていやがった。

赤いランドセルを身に付けているひらひらのロリータ服を来ている理子。

道行く人が美少女の理子を見て顔を赤くしている男とかが見える。

 

「どこに行きたい?」

 

理子を巻くのは無理だ・・・それこそ、直接攻撃を選択肢に入れない限りはな・・・

覚悟を決めて言うと理子が指を指す。

 

「理子、あそこ行きたいなユーユー」

 

 

そこはセンタープラザ、アニメイトやゲーマーズやとらのあな等、アニメ好きにはたまらない聖地らしい・・・

秋葉でいいんじゃないかと疑問が残るが俺達はそこに付き合うのだった。

理子は次々とゲーム等を買いあさり、15才以上、の商品は俺を遠慮なく使いやがった。

一応、学生証は持ってるけどな・・・

 

「ユーユー! 今度理子あそこ行きたいな♪」

 

こ、こら右腕に胸を押し付けるな!

アリアと同じ小柄なのに理子のその・・・胸はでかい。

白雪には及ばないが・・・

 

「優! こっちに飛べ!」

 

おきなり男しゃべりになった理子の言葉を聞いた瞬間俺は理子に引かれて移動した。

直後、猛スピードで車が通過していった。

キキキとその車、現在では大衆車となったトヨタのプリウスが道路で反転して

再び突っ込んでくる。

 

「理子!」

 

この手口に覚えがあった俺が理子に避難の声を送ると理子は焦ったように

 

「これは私じゃない!」

 

といいながらランドセルからワルサーを取り出す。

俺もデザートイーグルを抜くとタイヤに向けて発泡した。

ドオオン

迫撃砲のような轟音に道行く人々が悲鳴を上げるが直後、タイヤに命中した弾がはじかれる。

 

「!?」

 

「防弾タイヤだ優!」

 

理子がエンジンを狙いワルサーを3点バーストで6発打ち込むが同様だ。

あの車無人の上、プリウスに似てるが防弾装備されてやがる!

デザートイーグルで破壊できないなら手持ちの武器で破壊できるのは武偵弾しかない。

それを使わず、こいつを破壊するならアンチマテリアルライフルが欲しいとこだがそんなものここにはない。

くそ、とりあえず、理子を抱えてワイヤーで・・・

 

「わああああん」

 

「!?」

 

振り向くと逃げ遅れたのか子供が泣いている。

ば、馬鹿やろう!逃げろ!

 

子供に駆け寄ろうとした直後、プリウスがこちらめがけて速度を挙げた。

まずい・・・

武偵弾!

マガジンを取り出そうとするが間に合わん。

 

その直後、プリウスが大爆発を起こした。紅蓮ぼ炎と破片が周囲に飛び散る

 

「熱ぃ! 理子! 武偵弾使ったのか?」

 

「私じゃない!」

 

じゃあ、誰だ?

 

「相変わらず、戦闘狂モードにならへんと弱いな優」

 

この声・・・

俺たちが声のした方を見るとマグナムリサーチ社の拳銃マイクロ・イーグルを右手に持った俺たちと同年齢の奴が立っていた。

面白そうににやにやしながら俺を見ているこいつは・・・

 

「プリンか!」

 

「プリンいうなや! 月島 虎児や!」

 

ちなみにプリンはこいつのあだ名だ。

理由は茶髪の髪で先端だけ金髪に染めている特徴的な髪からこのあだ名がついた。

本人は虎の色を真似てると言っているがプリンだってその髪

 

「ハハハ、悪い悪い。 で、虎児? 何やってんだこんなとこで?」

 

「それはこっちのセリフや。 クエストで三宮張ってたらお前がおるんやからな。 しかも、えらいべっぴんな子つれてな。 大丈夫やったか?」

 

「理子は怪我してないよ」

 

裏理子から表に戻り明るくいう理子。

 

「ねえねえ、ユーユーこの人誰? ユーユーの友達?」

 

こら!腕にしがみつくな!

ん?なんだ虎児の奴、ショック受けた顔しやがって

 

「な、なあ優その子もしかして、お前の彼女か?」

 

なっ!

 

「そうでぇーす! ユーユーと理子は熱い恋愛の最中なんだよ」

 

「ま、待てちが・・・」

 

ありえへんと虎児は地面に手を付けてしまった。

背中に背負った日本刀が露になる。

 

「こんな天然に彼女なんかありえへん! しかも、こんな美少女となんて神が許しても俺は許さへん!」

 

「違うって!お前は誤解・・・」

 

「ねえ、ユーユー今日の晩ご飯終わったらユーユーの部屋行っていい? また、優しくしてね」

 

ウインクするな! てかお前焦っている俺見て、絶対に楽しんでるだろう。

そもそも今夜から護衛だろうが!

 

「兵庫武偵高付属の時もそうやったけどなんでお前ばっかり美少女集まるねん・・・理不尽やろ」

 

は? 何の話だ?

 

「ユーユー、中学時代は兵庫にいたんだよね」

 

わざとらしく聞いてくる理子だが、それくらいとっくに調べてるだろ?

そう、俺は中学時代はこの兵庫県の武偵高付属の中学に通ってたんだよ。

虎児とはその時、よく組んでた相棒だ。

 

「東京に行ったかと思えば彼女持ちで凱旋か? ほんまにありえへん・・・しかも、こんばフランス人形みたいな美少女と・・・く、くそう」

 

再び虎児は固まってしまった。

こいつ、彼女いない歴年齢とかぶるからな・・・いや、俺もだけど・・・

 

「おい、理子もう、これぐらいで・・・」

 

「くふっ」

 

明らかに面白そうに理子が笑った。

こ、この小悪魔め・・・

 

「と、虎児。 お前、クエストでここに来たって言ってたよな? この件関係あるのか?」

 

「ん? ああ、それやけどな・・・」

 

涙目で立ち上がった虎児は真剣な顔になり

 

「ちょっとな、今、兵庫武偵高は厄介な事件抱えてるんや」

 

「厄介な事件?」

 

「ああ、あんまり大きい声で言える話やないんやけど・・・」

 

「優、パトカーがくるぞ。 捕まるといろいろ時間を取られる」

 

遠くからサイレンの音が聞こえてきたので裏理子の言葉に従いその場を4人で離れる。

大騒ぎになっているがまあ、大丈夫だろう。

 

場所を駅から少し離れたマクドに変えてざわざわと少し騒がしい場所で俺たちはハンバーガーを頼んでから席に付く。

 

「で? 虎児? 厄介なことってなんだ?」

 

「まあ、インフォルマもまだ、完全に調査を終えたんやないんやけどな中国人の犯罪組織が兵庫県内に潜伏してるってたれこみがあったんや」

 

「中国人?」

 

理子が一瞬、顔をひきつらせたのを俺は見逃さなかった。

 

「何か心当たりでもあるのか理子?」

 

「え?なんのこと? 理子わかんない」

 

お馬鹿キャラでごまかそうとした時点で何か知ってるな・・・

となると、イ ウー関連に中国人がいるかもしれないということ・・・

ま、わかるのはそれぐらいだな

 

「で? お前らは神戸に何しにきたんや? まさか、彼女と観光旅行なんて言ったらしばき倒したるからな」

 

「ちげえよ! クエストだ。 護衛のな」

 

「護衛?」

 

虎児は怪訝そうな顔をする。

 

「なんで、俺らじゃなくて東京武偵校に依頼がいってるんや?」

 

「さあな、お前らが無能じゃないのか?」

 

「言うてくれるな優」

 

俺がにやりとして言ってやると虎児はむっとした顔になった。

 

「久しぶりに勝負するか優? お前のワイヤーはもう、俺には通用せえへんで」

 

「馬鹿か? こんな街中でやりあうわけないだろ?」

 

「兵庫武偵高でやればええやろ?」

 

兵庫武偵高か・・・もしかしたら、進学してたかもしれない武偵高だができれば行きたくない・・・中学時代の連中には嫌な思い出がある奴もいるからな

 

「クエストがあるからパスだ。 またの機会だな」

 

「ふん、逃げおったな」

 

何とでもいえ、戦闘狂モードなら買った喧嘩だろうが通常モードじゃ買わん。

 

「こら! プーリン! ユーユー喧嘩はめっ! だぞ」

 

理子が俺の頭を軽くぽかと叩いてから言ってくる。

 

「ぷ、プーリンってなんや?」

 

唖然として虎児が聞いてくる。

 

「ん? プリンみたいな頭だからプーリンだよ」

 

「ぎゃはははは! プーリンプーリン! ハハハハハ!」

 

「笑うな優! 理子さん! プーリンはやめてーな!」

 

無駄だ虎児、理子は1度つけたあだ名は取り消さん。

 

「くふっ、ダーメ」

 

「うおおお! そんなかわいいあだ名いらへん! 俺は虎のように荒ぶる名前がいいんや!」

 

なんかかわいそうになってきたな・・・

 

「おい、理子それぐらいで・・・」

 

「いたいた! 優!理子! あんたたち勝手にいなくなるんじゃないわよ!」

 

そのアニメ声に振り向くとアリアを先頭にキンジ、マリ、レキの4人が店内に入ってくるところだった。

 

「し、椎名先輩! 理子先輩とデートですか!デートなんですか!」

 

だからマリ! なんで瞳孔が開くような恐ろしい目になるんだ!

キンジ! お前もフォローしろよ!

レキは相変わらず無表情だし・・・

ん? 虎児がなんか静かなんだが・・・

詰めなさいよとアリアに言われて奥に移動しながら虎児はアリアを見てぼーっとしている。

レキがすとんと空いている虎児の横に座るが気づいていないのか・・・

 

「それで、優達は何してたの? 本当にデートなんていったら・・・」

 

ガバメントに手が行くアリア。

や、やめろ!

 

「アリア、注文をとってくる。 何がいい?」

 

キンジがフォローを入れてくる。

助かるぜ

 

「桃まんバーガー」

 

あるのか! あるのかよ!

 

「分かった。 レキとマリは何がいい?」

 

「お任せします」

 

「・・・」

 

こくりとレキは頷くだけ

 

キンジが言ってしまうとアリアが前に座る見知らぬ男を見る。

まあ、虎児な。

カメリアの目と黒い瞳が合う。

 

「あ、アリアさん!」

 

さん?

 

「え? な、何?」

 

どうしたんだ虎児の奴、いきなり立ち上がりやがって

 

「お、俺! 月島 虎児って言います! 一目惚れしました! つきあってください!」

 

「ふえ!?」

 

突然の告白にアリアがぼんと顔を赤くする。

理子がおおというように面白そうに見ていたんだが・・・

 

ドゴオとすさまじい音がし、虎児が吹っ飛んでいた。

あ、あれ? 俺がやったのか?

ぼーとしていたからか虎児は冗談のように吹き飛んで床をざざざと滑りながら沈黙した。

客が呆然とした顔になったので俺は慌てて

 

「あ、すみません。 こいつ精神異常者なんです。 ちょっと眠ってもらっただけで心配ありません」

 

と、武偵手帳を見せながら言うと客はなんだそうかといい食事に戻る。

都会だからこんなことなれっこなんだろ。

赤面してぼぼぼと火でもでそうなぐらいなアリアを見ながらマリが何やらつぶやいている。

嫉妬ですね・・・嫉妬なんですね・・・フフフ・・・

い、意味わからんが何か怖い・・・

キンジが戻ってきたので

 

「キンジ! みんなもう出よう!」

 

マックの店員さんが白い目で見てくるのでここはもうだめだろう。

キンジが持ってきたハンバーガー類を袋に入れてもらって俺は虎児を背負うと全員と店外に出るのだった。

まあ、俺がやったんだから責任があるからな。

その後、冷静になった。アリアは風穴開けてやると虎児を探したが俺が警察保護してもらった後だから虎児に風穴があくことはなかったんだが・・・

ちなみに三ノ宮を離れて電車の中で来た虎児からのメールを書くと

 

件名 死ねや優!

 

本文 何、警察に引き渡してくれてんねん! 頭下げなあかんかったろうが!

それは、そうとあの子! あの子や! アリアちゃん! 俺まじで一目惚れしてもうた!

メアドと電話番号知っとるんやろ! 教えてくれへん! 後、どんなせいか・・・」

 

メールを削除しますか? はいっと

 

「どうかしたのか優?」

 

隣で窓の外を見ていたキンジが聞いてくるが俺は携帯を閉じながら言ってやった

 

「虎の恋いは実らないもんさ」

 

「はっ?」

 

怪訝そうな顔をするキンジを横目に俺は携帯をポケットにいれた。

「次は・・・次は・・・」

 

「次の駅ね」

 

アリアが言った。

そう、次の駅で依頼主がいる街に到着する。

いよいよ、護衛のスタートだな。

でも、三宮のことといい今回もしんどいことなりそうと思うのは俺だけか?

 

「優」

 

ん?

正面のアリアがにこりと微笑んだ。

え? 何?

 

「さっきの理子とのデートの話、後でゆっくりと聞かせてもらうわ」

 

「覚悟してくださいね」

 

マリが付け足す。

ああ・・・もう、東京に帰りたい・・・

 


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