緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

54 / 261
第53弾 りっこりこにしてやんよ

屋上に逃げた理子を追う途中、キンジとばったりとあった。

どうやら、アリアと戻ってきていたらしい。

いや、正確に言うなら理子はまず、キンジにアタックをかけ、アリアの乱入でその場は逃走し、俺のいる場所を強襲してきたらしい。

やっぱり、本気じゃなかったんだな・・・

密かに背中に残る柔らかい感触を思い出し・・・い、いや思い出すな!

今は理子だ!

1度は勝ったとはいえ、油断大敵だ。

 

「―理子!」

 

屋上のドアを蹴飛ばしてあけたアリア

そこで理子は屋上のフェンスに腰掛けて子供のようにぷらぷらさせていた。

夜空に輝く満月が理子の笑を妖艶に見せている。

 

「ああ、今夜はいい夜。 オトコもいて硝煙の臭いもする。 理子どっちも大好き」

 

理子の目がすっと細まった。

ハイジャックで俺たちと戦った時と同じ眼だ。

 

「峰・理子・リュパン4世。 今度こそ逮捕よ! ママの冤罪償わせてやる」

 

アリアはガバメントを理子に向ける。

そう、グリップにかかれているアリアの母、神崎 かなえさんは冤罪を着せられて刑務所にいる。

イ ウーという集団がそれをしているのだ。

そして、理子はその一員。

 

「待てよアリア。 こいつは俺の獲物だ」

 

戦闘狂のモードが理子との再戦を望んでいる。

ワイヤー、ガバメント、デザートイーグル。

右手も全快している。

引き分けでなく今度こそ勝利してやる。

 

「ダメよ優! こいつだけは譲らないわ! あんたは見てなさい!」

 

「なら、どっちが沈めるか勝負するか? キンジもどうだ?」

 

「優、女の子の戦いに男が出るのは野暮だ」

 

「あ?」

 

あ、そうかヒステリアモードか・・・

確かにアリアが戦いたいと言っているのにねじ曲げるのはモードが許さないだんだろう。

 

「ちっ、譲ってやるよ」

 

俺が一歩下がった瞬間、アリアが動いた。

 

「やれるもんならやってみなライミー」

 

にやぁと白い歯を見せてフェンスから飛び降りた理子が言った。

 

「言ったわねフロッギー!」

 

2人はイギリス人とフランス人の蔑称を口にする。

まあ、アメリカ人が日本人をジャップといったり、日本人が中国人をチャンコロや支那、朝鮮をチョンと言うのと同じ意味だ。

つまり、悪口。

 

アリアが2丁拳銃を発射しながら突っ込んでいく。

ああは言ったが、アリアが不利になったりしたら乱入させてもらうからな。

 

「くふっ」

 

初弾を側転でかわした理子は屋上の中央でアリアと交差した。

たん!

その場でムーンサルトを切り、アリアの頭上を飛び越える。

がちゃりと理子の背負うランドセルが開いた。

その中から2丁のワルサーP99が出てきて理子の小ぶりの手に握られる。

バ!

ババ!

 

理子とアリアの銃弾が互いに交差する。

防弾制服を前提としたアル=カタ戦。

銃が一撃必殺にならない以上、これは打撃戦と言っていい。

 

「くふふっ、鬼さんこちら」

 

再びムーンサルトを決める。

理子

 

振り向きざまにアリアがガバメントを撃つ。

だが、同時にアリアのガバメントがスライドをオープンさせてしまう。

ガバメントはパワーは勝るが装弾数がワルサーに劣るのだ。

アリアは新体操の選手のようにとびのきざまにガバメントの弾倉に再装填する。

 

「かわいい!戦うアリアってかわいいい! アリアかわいいよアリア」

 

早口言葉でまくしたてる理子

どうでもいんだがその言葉変態みたいだぞ・・・

理子は笑いながら戦っている。

戦闘狂だなあいつも・・・

アドレナリンによったような表情・・・俺も、戦ってるとき似たような表情してるからなぁ・・・

 

 

「遊ぼ遊ぼおちびちゃん! もっと遊ぼ! くふふふ」

 

「こ、このぉ・・・」

 

互いを射線に収めようとせめぎ合う。

めちゃくちゃ、高度なアルカタ戦だ。

俺のようにワイヤーもないから純粋な銃対銃の戦い。

動物番組見てぽんぽんはねていたアリア、教科書にギャルゲーの同人誌を重ねて読んでいた理子と同一人物とは思わんよな普通・・・

 

 

「互角だな。 どっちが勝つと思うキンジ?」

 

アル=カタ戦を見ながらキンジに尋ねる。

ヒステリアモードのキンジは目をすっと細めると

 

「そろそろだな」

 

発泡音がやんだ。

互いに弾を切らした2人は距離を取ると小太刀とナイフを抜く。

 

「あんたブサイクだから今気づいたんだけど」

 

アリアはちょっと背をそらし無理やり理子を見下すように言う。

 

「髪型元に戻したのね」

 

さっきのおちびちゃんと言われた仕返しだろう。

皮肉で返すことにしたようだ。

アリアがハイジャックで切断した理子のツーサイドアップのことを持ち出して・・・

今の理子は改めて髪を結、元に戻している。

 

「よく見ろオルメス! テールが少し短くなった! おまえに切られたせいだ」

 

男しゃべりで言った理子にアリアはほほほとわざとらしく笑った。

 

「あら、ごめんあそばせ」

 

「言ってろちび!」

 

「なによブス!」

 

「チビチビ」

 

「ブスブスブス」

 

お前ら小学生か!

と突っ込みたくなるほどの喧嘩だなこりゃ・・・

 

「チビチビチビチビ」

 

「ブスブスブスブスブうっぷえ!」

 

ハハハ!アリア舌かみやがった。

 

「優」

 

キンジが俺を見てくる。

一瞬で、理解した俺たちは風のように2人の間に割り込んだ。

キンジのバタフライナイフがアリアの小太刀を受け止め。俺は右のワイヤー発射機構でナイフを受け止めるとデザートイーグルを理子の胸に向けた。

アリアは犬歯をむいて目を見開き、理子は俺と戦闘狂同士の目を合わせながらふんと鼻を一つ鳴らす。

 

「悲しいよ」

 

低く憂いを帯びた声を後ろに聞きながら説得はこいつに任せるかと俺は考える。

だって、女の子の扱いはヒステリアの時のキンジの方が俺より上だからな。

 

「き、キンジあんたまた・・・?」

 

「今はこらえてくれアリア。 それに愛らしい子猫同士の喧嘩を鑑賞するのは俺の趣味じゃない」

 

俺は理子とにらみ合いながら、状況的に振り返れんがアリアは真っ赤になってんだろうなたぶん・・・

 

「・・・こ、こね、こね、ね・・・」

 

ほらな

 

「―理子」

 

次にキンジは理子の説得を始めるが理子は答えない。

 

「本気じゃない恋も、本気じゃない戦いも味気ないものだとは思わないかい?」

 

まあ、確かに理子はハイジャックで使った髪を使ったカドラを使わなかった。

あれを使えばアリアを圧倒することも出来たはずだ。

理子は少し寂しそうな目をするととんと後ろの1歩下がるとぽんぽんとナイフを頭上に投げる。

戦意が消えたな。

俺はデザートイーグルを下げる。

 

「半分ハズレ、理子キー君とユーユーには本気なんだもん」

 

理子は背中のランドセルを振ってカバーを開け落ちてきたナイフを身もせずにカバンに入れてカバーを閉じた。

ゆるい天然パーマの髪が揺れる。

 

「でも、半分あたり、今の理子は万全じゃない。 だから、今のアリアとは決着を付ける時じゃないんだよ」

 

「そうかい」

 

キンジはそう言うとバタフライナイフを腰に収めた。

俺もデザートイーグルをホスルターに戻した。

ああ、なんとなく分かった。

理子は・・・

 

「アリア理子とはもう戦えねえよ」

 

「ゆ、優! あんた理子に何されたのよ! 

 

俺が寝返ったって思ってるのか?

それは、たぶん・・・絶対にないよ

 

「アリアを犯罪者にしたくないからさ」

 

キンジが補足を入れてくれる。

 

「さすがキーくん、ユーユー分かってくれちゃった?」

 

理子は手をぽんぽんと叩きながら1回転した。

 

「理子とキー君とユーユー体だけじゃなくて心も相性ぴったりだね」

 

アリアは俺たちの間に流れる妙な空気に焦りを覚えたようで

 

「犯罪者ってなによ?」

 

ぎろりとカメリアの目を向けてくる。

 

「司法取引だろ理子?」

 

「あったりー! そうでぇーす! 理子4月の事件についてはとっくに司法取引済ませてるんですよきゃは」

 

司法取引っていうのは犯罪者が共犯者の情報を渡したり、事件を解決する情報を渡すことで成立する制度だ。

まあ、犯罪者を法の外に出すようなこの制度は近年の日本で導入されている。

 

「つまり理子を逮捕したら不当逮捕になっちゃうのでーす」

 

ちっちっちっちと人差し指を左右に振る理子

アリアはそれをぎりぎりと歯を噛みながら小太刀を怒りに震わせる。

 

「嘘よ。 そんな手にあたしが引っかかるとでも?」

 

「嘘かもしれないが本当かもしれない。 俺たちはここでそれを確かめられない」

 

アリア、ここはキンジの言うとおりだ。

理子を捕まえればお前は不当逮捕などの罪で捕まりかねない。

ただでさえ、日本の上層部はおかしなことが多いんだ。

かなえさんの濡れ衣だがあれは正規の捜査だけでなったものではないだろう。

それに、公安0課の沖田ははっきりと免罪と言い切った。

これは、上に何かがあると見ていい。

アリアがつかまれば冤罪をかぶせられかねない。

冤罪を証明するため間違っても公安の連中とはやり合いたくないからな。

ぐぬぬとアリアは歯ぎしりするがなんとか飛びかかることは避けてくれた。

だが、アリアは小太刀を理子に向ける。

 

「でも、ママの武偵殺しの冤罪をきせたのは別件よ! 理子!その罪は最高裁で証言しなさい!」「いーよ」「嫌というなら力づくでも・・・え?」

 

「証言してあげる」

 

「ほ、ほんと?」

 

疑いの目を向けながらもアリアは嬉しさを隠していない。

基本的にアリアは人のことを疑わないんだよな・・・

悪い男につかまれば落ちるとこまで落ちるだろうな・・・

そこを含めて守らないとな依頼の間ぐらいは・・・

 

「ママ、アリアもママが好きなんだもんね。 理子はお母様が大好きだからだからわかるよ。 アリアごめんね。 理子は・・・理子は・・・」

 

そこまでいうと理子は顔を伏せ

 

「お母様・・・ふぇ・・・う・・・」

 

涙を流し始め

 

「ふぇえええええ」

 

理子が泣き出した。

 

「えっ? え? えええ!」

 

そんな理子にアリアはあたしがなかしたのという感じでオロオロしている。

「ちょ、ちょっと何泣いてるのよ! ほら、ちゃんと話しなさい」

 

小太刀をしまいながらアリアは理子をなだめにかかる。

おいおい、アリアお前本当に騙されやすいな・・・

理子の口みたらにやりとしてるのわかるぞ・・・

にしても、なんで理子はここに戻ってたんだ?

理子は泣きながら語りだした。

 

「理子・・・理子、アリアとユーユー達のせいでイ ウー退学になっちゃったの。 しかも、負けたからって、ブラドに理子の宝物取られちゃったんだよぉ」

 

周囲の空気が張り詰める。

見るとアリアが殺気を目に宿らせていた。

 

「ブラド?無限罪のブラド? イ ウーのナンバー2じゃない」

 

「そーだよ。 理子、ブラドから宝物取り戻したいの。 だから、アリア、キー君、、ユーユー、理子を助けて」

 

「助けろってなにすりゃいいんだ?」

 

俺が聞くと理子はわざとらしく

 

「泣いちゃダメ、理子は本当は強い子、いつでも明るい子、さあ、明るくなろう」

 

などといい満月を背に

 

「キー君、ユーユー、アリア、一緒に・・・」

 

にやりと笑顔になり

 

「ドロボーやろうよ」

 

と、とんでもないことを言ったんだ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。