「誰だよ」
「私です♪」
俺が振り返ると見覚えのある少女が武偵高の制服を着て笑顔で立っていた。
「あ、お前・・・」
「椎名君の彼女かな? 神崎さんがいるのに隅におけないなぁ」
おい、にこりとして言うな不知火!
「残念だけど違います! 私、先日、椎名先輩に助けてもらったんです」
「そうなのか?」
完全に話題が飛んだのでキンジが言ってくる。
いまが話題を変えるチャンスだとか思ってんだろキンジ!
「護衛のクエストの帰りにな。 あり得ないモヒカンの連中に絡まれてたから助けただけだ」
「もう! 椎名先輩かっこよかったんですよぉ! 相手の首を絞めて生きるか死ぬか選べって!」
ぶんぶんと右手を振りながら言う少女
いちいち動きがでかいなこの子
「ゆ、優お前こんな可愛い後輩と!」
「椎名先輩! お弁当作ってきたんです! どうぞ!」
「え? 俺、焼肉定食食い終わったばか・・・」
「どうぞ!」
ずずいと可愛いバラのマークが入った弁当箱を渡してくる。
助けてくれとアリアを見るがアリアは俺を睨んでいる。
ももまんを口にしながら・・・
「あ、ああ・・・」
退路は断たれた。
俺は弁当箱を受け取りながら
「所でお前、名前は? 」
よく聞いてくれましたとばかりに栗色の右のサイドテールを揺らしながらびしと生徒手帳を見せてくる。
「1年B組 ダギュラ! 紅 真里菜です! マリって読んでくださいね椎名先輩♪」
ダギュラっていや尋問科だ。
あの科は犯人を自白させるのにあらゆる技術を叩き込む。
俺は教師の綴梅子のことを思い出しながら
「じゃあ、マリお礼ならいらないぞ? ああいう、クズを倒して報酬もらってたんじゃ俺の部屋弁当だらけになっちまうよ」
そういいながら弁当箱を開いた。
「う・・・」
「うわ、すごいね」
「これは・・・」
不知火とキンジが絶句している。
アリアも覗きこんでボンと顔を赤くする。
「なんだよ。俺にも見せろって・・・おお」
武藤でさえ目を丸くしているぞ。
何せ、ノリでLOVEの文字がごはんにのってやがるんだからな。
公開処刑なのか?
「ま、マリなんだこれは?」
「私の気持ちです。 あ、全部食べてくれないと嫌ですよ♪」
いやあん恥ずかしいと呟きながら両手で頬を触るマリ
その間で俺は一気に御飯をかきこんでLOVEの部分をかき消す。
普通にうまいんだがなんか悲しい・・・
「お、おいしいぞ」
なんとかそれだけ言うとマリはにこにことして不知火が開けてくれた椅子に座る。
「よかったぁ。 椎名先輩にまずいって言われたらどうしようかと思ってました」
「思い出したわ」
唐突にアリアが口を開いたので見ると最後のももまんを手にしながらアリアがマリを見る。
「ダギュラで今年、唯一の1年のSランク武偵がいるって。 名前は紅 真里菜」
「私も先輩達のこと知ってますよ。 ロジの武藤先輩にアサルトの不知火先輩。同じくアサルトの神崎先輩、そして、インケスタの遠山先輩、そして、椎名 優希先輩♪」
な、なんで俺だけフルネームなんだ?
「そのあなたがあたしの奴隷になんのようなの?」
「ど、奴隷ですか!?」
マリは俺とアリアを見て頬に両手をあてて真っ赤になる。
「椎名先輩ってそんな遊びが好きなんですか・・・でも、椎名先輩なら」
「待て待て待て! アリア! 後輩に変なこというな!」
「何よ! 優とキンジはあたしの奴隷よ! どういおうが勝手じゃない」
がぅと犬歯をむき出しにしていうアリア
「し、しかも3Pですか!」
「ば、馬鹿! キンジも黙ってないで何か言え!」
普段俺にからかわれることが多いためかキンジも何も言わずに成り行きを見守ってやがる。
武藤も不知火も見てるだけだしちくしょう。
「誤解だ! アリアとキンジはパートナーなんだ!」
「なんだ・・・よかった」
ほっとしたようなマリ。
なんで、ほっとするんだ?
「じゃあ、椎名先輩」
真剣に俺の目を覗き込んでくる。
な、なんなんだ?
そして、この子はとんでもないことを言ってきたんだ。
「私の戦兄妹(アミカ)になってください」