丸一日ステルスを使い続けられる。
それはとんでもない状況だな・・・
姉さん見てなかったら絶望してたかもしれん・・・
「まぁ、姉さんほどじゃねえし」
「そう言えば、あのチートなあなたのお姉さまも1日中ステルスを使えるのでしたね」
「本当かどうかわからんが限界はないって話しだ」
「・・・」
高木がちょっと絶句してる・・・
「なんだか、私の山が小山に見えてくる現実ですね」
「比べる方が間違ってるんだよ。お前が山なら姉さんは宇宙だ」
「ですがあなたは砂粒です」
旋回していた鉄骨が再び動き出す。
「ちっ!」
ガバメントで牽制しながら右に左に、ワイヤーを地面に打ち込み、速度を上げながら必死に回避する。
だが、鉄骨は飛行機の中から次から次へと飛んでくる。
まるで解体ショ―のように飛行機がバラバラになっていく。
「どうしたんですか?私を倒すんじゃないんですか?」
「くそ!うお!」
ブンとバットのように横殴りに来た鉄骨をワイヤーで飛んで交わす。
戦闘狂になる余裕もねえ!
回避するだけで精一杯だ。
「所詮、口だけでしたか。信冬様が見込まれた男、期待はずれです。外すまでもない」
鉄骨の暴風のような攻撃を回避し続けるにも限界がある。
だが、攻略法が思い浮かばねえ。
「・・・」
懐に入っているものに一瞬、考えを移す。
瓶に入ったアリアの血。
緋刀の力。
緋光剣さえ使えれば勝機は見えるかもしれない・・・
出し惜しんで勝てる相手じゃねえ。
だが、こいつはアリスにこの戦いでは使うなと言われている。
本当にどうしようもなくなった時のみ使ってくださいと言われて渡されたものだ。
なら、まだ使えねえよな
走りながらガバメントのマガジンを入れ抱える。
接近できないのなら中距離戦の拳銃でやりあうしかないが弾は奴には届かない。
なら、どうする・・・
こう言う時は、こうするんだよ!
3点バーストで正面から高木に発砲する。
無論、鉄骨が防御に入るが高木の体が一瞬、揺れた。
「っ!今何をしたんですか?」
高木の肩の部分に黒い焦げ跡。
防弾制服に命中したのはガバメントの45ACP弾だ。
「教えねえ!」
べっと舌を出してから再度3点バーストで発砲。
鉄骨が再び間に割り込むが今度は高木に脇の防弾制服をかすめる。
「うっ!」
正体不明の弾丸に高木は明らかに攻撃の手を緩めた。
旋回する鉄骨の半分以上を防御のためか自分の周囲に旋回させる。
「遅え!」
ドンと単射した弾が高木の背中に命中し少し前のめりになる。
左目を閉じて痛みに耐えている奴を見てこれはいけると判断する。
まだ、奴は気付いていないがこいつは空間跳躍射撃。
鈴さんの得意技だ。
もちろん、俺にはそれ系のステルスは使えない。
種明かしはステルスを封印できる魔封弾。
こいつは、試作品だからまだ、世の中には出回っていない武器だ。
使う奴も俺の仲間内のみだから高木はこれの存在を知らないはずだ。
俺は選択肢を広げるために魔封弾を大量に受け取りステルスの知り合いに魔封弾にその力を注いでもらって大量にストックしてある。
1度部屋に戻って取ってきたのは鈴さんの空間跳躍射撃の魔封弾だ。
ありったけ持ってきた!
半分かけだったが運は俺に味方してる。
だが、この空間跳躍射撃は恐ろしく難しい。
中距離でも狙った場所に直撃させることができない。
大体の場所へは誘導できるがこれ、鈴さん長距離や乱戦でやってるんだもんな・・・
やっぱり、あの人も化け物だよ。
「うう・・・」
3点バーストの弾がついに、高木の左足の防弾ストッキングに直撃した。
激痛に高木は膝をつくがその右足はクレーターを踏んだままだ。
行ける!このまま、押し切れると思ったその時
「すみません」
地面を見たまま・・膝を屈したまま高木は言った。
「あなたを舐めてました」
「へえ、そうかよ。それなら、このまま山梨に帰れよ」
「いいえ、まだです。これまで、私はあなたの力を舐めていた。次は・・・」
目をつぶりかちゃりと高木はその黒いフレームを外した。
眼鏡を外したその表情は鋭い殺気を纏った目だ。
「・・・」
やばいと本能が告げている。
こいつは今、本気になったと思った時高木が手を空に掲げる。
その後は暴力の暴風だろう。
使うかとポケットの瓶に手をかけた。
互いに次の一手を繰り出そうとした瞬間だった。
「そこまでだ」
その声に俺ははっと風力発電の上にいる知り合いに気がついた。
土方さん!
「・・・」
高木は静かに眼鏡をかけ直すと俺と同様に上を見上げると
「・・・公安0」
「今の立場はそうじゃねえ。雪羽の夫。土方歳三としてここに来た」
防弾スーツに身を包んだ土方さんは高木を睨むように見ている。
「雪羽様に頼まれましたか? 信冬様を連れ戻すのを阻止して欲しいと?」
「残念だが不正解だ。俺は信冬が来たことを知らされてなかった。まあ、今日の夜にでも雪羽には言われたんだろうがな。俺が連絡を受けたのは優希の知り合いからだ」
アリスと秋葉だ。
「それではそこで黙って見ていてもらえませんか?私は椎名優希と信冬様をかけて勝負している途中です」
「存分に勝負するといい」
「!?」
高木が驚いたように後ろを見ると闇の中から麦わら帽子にマントの完全装備の鈴さんが現れる。
「魔弾・・・邪魔をするためにきたのですか?」
「それはあなた次第。私は頼まれてきただけ」
高木が卑怯なというように俺を睨む。
だが、俺はアリスが考えた作戦をそのまま実行に移す。
「高木、俺は1対1とは一言も言ってねえぞ。アリスもな」
そう、さきほどの会話では俺とアリスは1対1で勝負するなどと一言も言ってない。
単純に気絶した方が負けというシンプルなルールを提示しただけの話し。
俺が時間を稼いでアリスと秋葉が俺が指定した人達に援軍を要請し援軍到着後、集団でぼこって1週間時間を頂くというものだ。
そして、援軍は鈴さんと土方さん。
「約束は破ってませんよぉ」
鈴さんの後ろから秋葉とアリスが出てくる。
「・・・」
高木は引くか引かないかを検討しているようだった。
最大に警戒しているのはおそらく鈴さんだ。
空間跳躍射撃はサイコキネシスに関係なく直撃弾を与えられる。
慣れていない俺よりも実戦経験を重ねた鈴さんが相手では致命傷を避けるのは難しい。
そして、土方さんも同様。
姉さんや雪羽さんこそいないが化け物が2人もいるのだ。
それに、4対1では圧倒的に不利。
「俺達も武田や暁と今、戦争する気はねえ。1度引け。武田の山」
「ふぅ」
高木は息をはいてからゆっくりと右足をクレーターから放した。
「残念ながら勝機はないようです。ここは、あなたの作戦勝ちとしておきましょう」
アリスを忌々しそうに見てから俺に目を向ける。
「卑怯ですねあなた。大人の力で解決させようなんて恥を知るべきです」
ま、確かにかっこ悪いのは認める。
だけどな・・・
「信冬は渡さねえよ。武田と暁の2つの権力と戦うならこれぐらい必要だろ?」
「負けを認めた以上1週間時間を与えます。それまでに後悔ないようお過ごしください」
ふわりと高木が宙に浮かび上がる。
サイコキネシスによる空中浮遊だ。
「警告しておいてあげますね。次はこの手は使えませんよ」
「分かってるよ」
「・・・」
た、助かった。
高木が視界から消えたのを確認してから俺は尻もちをつくように地面に座り込んだ。
条件付きの勝負をするぞ→え?1対1なんて言ってないよ。戦うなら袋叩きね。
なんとも情けない作戦だったが今回はアリスに感謝だな。
「大丈夫ですか優君」
「ああ、っても相手は本気だしてなかったからほとんど怪我してないけどな」
「近くによってきた秋葉を見上げながら言っていると土方さんが風車の上から飛び降りてこちらに歩いてくる。鈴さんやアリスもだ。
「やぁ、袋叩き作戦大成功ですねぇお兄さん」
ぺろっと舌を出してアリスが言った。
卑怯な作戦ってもやったもの勝ち。
騙される方が悪いってか?
「今回だけは感謝だなアリス」
「今回だけってなんですか?じゃあ、10万でいいですよ」
金取るのかよ!
冗談だと思いたいね。
「だが、優希これから、どうする?あいつは1度引いただけだぞ」
「分かってます土方さん」
そう、現状は八方ふさがりな状態だ。
信冬を今のままかくまい続けることは不可能だ。
風林火山というからにはまだ、風がいるはず・・・
それも、高木より強いか少なくても同等の戦力と見るべきだ。
いや・・・風林火山には陰雷の文字もあったはず・・・
ジャンや雪村がどうしているか分からないがあいつらは敵にならないと思いたいが・・・
「暁と武田だ。公安0にも非公式ながら圧力がかかるはずだ。俺は全面的には助けられねえぞ」
それはつまり、陰ながらは助けてくれるってことか・・・
まあ、なんにせよ信冬に相談しないといけないが・・・
「戦いにおいての勝利条件は相手の大将を倒すこと」
鈴さんが無表情な目で俺を見下ろしながら言った。
敵の大将って言うと・・・
「武田信春か・・・」
確か、信冬も言っていたな・・・今の武田はそいつがリーダーだって。
「そいつをぶっ飛ばして婚約を取り消せば・・・」
「そりゃ、難しいだろうな」
「どうしてですか?そんなに強い相手なんですか?」
信冬がばあさんと言ってるんだから相当な年寄りだろう?
「分かりやすく言ってやる。あのばあさんは強い。確実に勝てる奴は希やアズマリアクラスじゃねえと無理だろうな」
おいおい、姉さんクラスの化け物かよ。
「ということはRランククラスってことですか?」
「認定はされてねえがそれクラスだ。優希、今の、お前じゃあのばあさんには100%勝てねえ。殺されるぞ」
「・・・」
最悪じゃねえか・・・今まで戦って来た連中が可愛く見える状況だ。
だが、だからといって諦めるわけには・・・
「1週間猶予はできた。それまで、考えろ優希。後悔しないお前の選択を選べ」
土方さんが背を向けて歩き出す。
その背中がまるで見放されたように見えてひどく心細い気がしてしまう。
「・・・」
その背を無言で追う鈴さん。
2人とも俺に先を示してはくれない。
信冬を守るか見捨てるかお前が選べということなのだろう。
「優君」
「秋葉・・・俺はどうしたらいいと思う?」
「優君が決めてください。私はあなたについていきます」
1週間後再び武田は攻めてくる。
おそらく、次は土方さん達に圧力をかけたり正面突破可能な戦力で来るだろう。
防御するなら姉さんに頼るしかないが・・・姉さんは・・・
それまでに信冬を守るなら決着しなければ・・・
そもそも戦って勝てるのか?椎名の本家の力は望めない。
それをやれば文字通り戦争になってしまうからだ。
極東戦役の最中、日本の裏でごちゃちゃになれば卷族の連中も介入してくるかもしれない・・・
治めるのは信冬を差し出すことだ。
彼女は望まぬ結婚をし、不幸になるが周りは円満な日常を取り戻すだろう。
この状況を打開するには俺は無力すぎるのだ。
武偵は諦めるな!決して諦めるな!
俺の好きな武偵憲章のこの言葉・・・今回ばかりは無茶言うなと言いたくなるぜ
はいというわけで最新話です!
アリスの作戦は言ってないをいいことに強い人連れてきて負け認めないなら袋にするよ作戦でした!
なんて卑怯な(笑)
しかし、今回ばかりは優君も大ピンチです。
信冬を差し出せば解決しますがそれをすれば彼の信念は尽きます。
しかし、化け物の巣窟たる武田に攻め込めば間違いなく殺されます。
今回ばかりは優は一人ではなく人脈駆使したり優に興味を持ってくれてるあの人とか利用したりしないと即BADENDです。
頑張れ優!ハーレム状態なんだから少しは苦しめ(笑)