遅れて申し訳ありません
これはまずい!非常にまずいぞ!
「優君?どうしたんですか優君?」
固まる俺だが携帯からは秋葉の声が聞こえてくる。
信冬がすっと動いて固まる俺の手から携帯電話を手に取ると
「突然失礼します。私、椎名優希の知り合いの武田信冬と申します。優希が固まってしまったため後ほどかけなおしていただきますか?」
ちょっ!慌てて手を伸ばそうとするが後の祭り!
「信冬様?」
「そういうあなたは優希の近衛ですね。ならば話は早いですね。後ほどかけなおすように」
「あ・・・」
秋葉の返事も待たずに信冬は電話を切ってしまう。
そして、俺の方に顔を向けると
「跡取を残すという言う意味で近衛に手を出す椎名の人間は過去にいましたが優希は随分と近衛の子と仲がいいんですね」
「そ、そりゃ秋葉は近衛であると同時に俺の友達でもあるからな」
より正確に言えば恋愛という意味ではない大切な存在なんだが・・・
「ふむ」
信冬の周りの空気が冷えたような錯覚そして・・・
「友達と逢引・・・デートですか?」
「そ、それは違うって!」
ま、まずいぞ!秋葉には後で謝るとしてこの状況は非常にまずい!
逃げても無駄だ!状況が悪化するのは目に見えてるし突破口にはならない
なんか転校してきたとか言っちゃてるし
「そ、そのだな・・・そうだ!秋葉とは今度やる武偵校の行事のことを話しあうために電話してたんだ」
「それでなぜ、デートと話になるんですか?」
その笑顔が怖い!信冬は見る人が見れば天使のような笑顔だが今の、俺には後ろに悪魔が見える!
「本当だって!」
あれ?なんで俺こんなこと言ってるんだ?正直に言えばいいじゃないか・・・
この前ヒルダと戦った時のお礼にでかける話してただけだって・・・
だが、既に後の祭り・・・このまま押し切るしかない。
信冬は一瞬、間を作ってから小さく息を吐く。
「優希がそう言うなら信じましょう。私も優希の浮気調査しに来たわけではありませんからね」
よ、よし何とか乗り切ったぞ。
基本的に信冬は白雪系統、つまり大和撫子系だから俺を立ててくれるようだ。
信冬と中に入ると綺麗に片づけられた部屋にキンジが疲れたようにソファーに座っていた。
恨みがましく俺の方を見ると
「おい優!なんで、電話とメール無視するんだ!大変だったんだぞこっちは!」
「いや、なんかすまん」
信冬が襲来しヒステリアモードの危機を抱えるキンジは大ピンチを味わったんだろう。
とはいえ、白雪みたいにキンジが好きなわけじゃないんだからそこまで問題だったのか?
まあ、迷惑掛けたのは事実なわけだが・・・
「ちょっとこい!」
腕を掴まれベランダに連れ出されて窓を閉めるとキンジがため息をついた。
「どう言う事だ!あいつ合宿の時やイ・ウーで会ったお前の婚約者だろ!新婚生活やりたいなら他でやりやがれ!」
ここに住むという信冬の言葉はキンジには悪夢の一言だろう・・・
アリア達が半分すみついてるのに女成分が更に上がるのだ。
まあ、一部は俺のせいだがキンジもキンジだぞ・・・
「今さらッて気もするがな・・・アリアや理子達も半分住みついてるし白雪だって時間があれば来てるじゃないか」
そう、2段ベッドの空きを使って泊っていってるので1人増えるのは今さらと言えば今さらなのだ。
「それに、極東戦役的には悪いことばかりじゃないぞ。信冬は強いし武田家のバックアップもあるだろうしな」
ある意味では俺より強い。
国家権力にすら影響力を持つ本家の力を借りられるのはかなり大きい。
戦役は雑兵を戦いに使ってはならないがバックアップは問題がない。
日本国内では俺達は圧倒的に外国の勢力よりは有利に戦えるのだ。
武田家当主である信冬が近くにいれば連絡も迅速だ。
でも、なんで当主である信冬が山梨から出てきたんだ?
戦力を集中させるならもっと早い段階でもできただろうに・・・
「くそ、あいつの面倒はお前が見ろよ。俺は知らん」
「ああ、まあそれは引き受ける」
キンジを頼ってきたわけじゃないのにキンジに信冬の対応を任せるには間違ってるしな
「それにしても、なんで信冬はこっちに・・・」
窓の向こうを見るとソファーに座っている信冬がいる。
「お前に話があるみたいだぞ」
「俺に?」
「詳しくは俺も知らん。お前の実家・・・椎名のというかお前を頼ってきたんじゃないのかあいつ」
それなら、信冬と少し話そう。
「キンジ、ちょっと信冬と2人にしてくれるか?」
「分かった。ここで携帯いじってるから話がすんだら呼んでくれ」
「悪い金に余裕がある時なんかおごる」
キンジの了解を取ると部屋の中に入ると信冬が俺の方を見て微笑む。
「遠山さんと話はすみましたか?」
俺は信冬の前のソファーに座りながら
「ああ、俺に頼みがあるそうじゃないか」
おそらくは裏の仕事だろうと思う。
紫電はないが閃電等の刀を武田家に無償でもらった以上、婚約者をうんぬんを除いても武田家の依頼は俺は断りにくい状況にある。
思えば俺、借り作りまくりだからな多方面に・・・
「ご迷惑なら断ってもらっても構いません。ですが私には他に頼れる方がいないのです」
信冬がソファーから降りて床に正座する。
おいおい、そんなに重大なことなのか?
「言ってみろよ」
大概の事なら聞きいれるつもりでいる。
信冬とは婚約者うんぬんはともかく幼馴染だしな。
信冬は真顔で俺を見ると言った。
「私の護衛を優希に依頼したのです」
「護衛?」
「はい、護衛です」
「具体的に何からだ?」
「武田本家からです」
今何て言った?
「え?」
「ですから武田本家の刺客から私の護衛をお願いしたいのです」
「おいちょっと待て!」
頭が痛くなってきたなんで信冬が武田本家に狙われるんだ?
「どういうことだ!なんでそんな状況になってるんだ!」
しゃれにならんぞ武田家の戦力を詳しく知ってるわけじゃないがうちにも月詠や秋葉がいるようにちんぴらとはレベルが違う連中がごろごろいるはずなのだ。
そんなのに全員に一斉に襲いかかられたら誰でも・・・あ、いや姉さんに助けを求めればなんとかなるなうん。
まあ、助けてくれるかは分からないが・・・
「それは当然の事でしょう」
信冬は黒い瞳をまっすぐに俺に向けて少しいたずらっぽい笑顔で
「家出してきちゃいました」
ととんでもない事を言い放つのだった。
†
サイド??
その場所は薄暗く畳が敷き詰められた巨大な空間だった。
その部屋だけで一戸建ての住宅が立ちそうな大きさだがその部屋には今は2人の存在しかない。
「それで、あの子は今東京かい?」
年若い10代前半と言った少女である。
着崩した着物を改造した服を着ており手にはキセルが握られている。
「はい、無事に転校の手続きを終えたと先ほど『風』から報告がありました」
「素早いもんだ。まあ、約束は約束だからねぇ」
キセルから煙を吸い込み吐き出して灰皿にカーンと打ち付け
少女は興味深そうに風林火山『風』からの報告の書類の束をめくっていく。
そして、ある場所で止まるとそのページの少年の写真に笑みを浮かべる。
「椎名優希だったね。今じゃ楽しい存在になったじゃないか。なあ、信秋」
「・・・」
信秋と呼ばれた少女は一瞬黙って口を開く。
「極東戦役の最中です。おばあさまが一時、当主に復帰されたとはいえ師団内部で亀裂が起こるようなことはやはり、避けるべきではないでしょうか?」
「先に亀裂を入れたのはあの子だよ」
「信冬姉様はそんなつもりは・・・」
「いずれにせよ。私はもう後戻りするつもりはないよ。あの子が反抗するなら反抗できないうように屈服させて言う事を聞かせる。それだけさ」
「・・・」
やはり、私では無理だと少女は思った。
目の前の存在には私の言葉だけではどうにもならない。
彼女が信冬に課したものはとても厳しいものだ。
そして、今信冬の近くにいるあの少年。
椎名優希に課せられた試練も果たして乗り越えられるものか・・・
だけど、信冬が絶大な信頼を寄せる彼の事を話す時の姉の優しい表情。
そんな彼なら・・・試練を乗り越えてくれるかも知れない。
その場を退席し廊下に出た彼女は周りに誰もいないことを確認し小さくつぶやいた。
「優希お兄様、信冬姉様を頼みます」
その瞬間、彼は・・・椎名優希は巻き込まれた。
武田家の闇。
それは同時に椎名優希の周りの人間も巻き込んでいく新たな物語に繋がっていくのだ。
はいというわけで今回のオリジナルの主旨は信冬を守る護衛です。
敵は分かりやすくも椎名と並ぶ武家武田家。
優\(^o^)/
武偵、優ですから当たり前ですが戦いはありますよ!
ちなみにネタバレ武田のお婆さまはロリババアですw
もちろんアリアやキンジ、レキ達も関わらせます。
さあ!優!今回も巻き込まれたぞ!
新章よろしくお願いします。
できればやる気の元の感想も欲しかったり…
それでは次回は早めに書き上げ…たいなぁw