緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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今回でヒルダ戦はおしまいです!
強すぎて嫌になるヒルダもおしまい!
さあ、第四形態を優達はどう倒すのか!
そして理子は!
どうぞ!


第234弾 死に際のプロポーズ

サイドヒルダ

 

死にたくない死にたくない死にたくない・・・

雷鳴が遠くに聞こえる。

450メートルの高さから落ちて生きているのはドラキュリアといえど奇跡としか言いようがない。

体中に空いた無数の穴。

魔臓は全て破壊された。

私は負けてみじめにこのまま死ぬのだろう。

嫌だ・・・まだ、死にたくない。

おかしいわ・・・なんで、私が地に落ちされ空を見上げているの?

なんで、私がこんな目に合うの?

理子・・あの女のせい?シャーロックを殺したトオヤマ?緋弾を持つアリア?

あの風使い?それともワトソン?

いえ、違うわ・・・全部あいつが悪い・・・椎名優希のせいだ・・・

あいつはことごとく私を邪魔して私を地に落とした。

憎い・・・憎い・・・あいつを殺したい・・・でも、私は・・・

 

「あらあら無様ですのねお姉さま」

 

横に立った影をなんとか目を動かしてみるとそこにいたのは形だけの妹・・・

 

「ローズ・・・マリ・・-」

 

「はいですの」

 

ローズマリーはにこりと微笑みながらしゃがみ込むと仰向けに倒れる私の顔を覗き込む。

 

「優希に負けましたのね」

 

「・・・」

 

「がっかりですの。もう少し絶望的な状況を演出してくださらないと困りますわ」

 

何を・・言ってるの?

そう言いたくても声が出ない。

 

「ねえお姉さま」

 

にこりとローズマリーは微笑んだ。

 

「死ぬたくありませんの?」

 

「死に・・たく・・・ない」

 

それだけは言えた。

無様と言われてもこれだけは・・・

 

「フフフ」

 

ローズマリーは手に持っていた黒いポーチから宝石のようなものを取り出した。

紫色に輝く怪しげだが綺麗な宝石だ。

 

「でしたらこれを差し上げますの。どうぞ、存分に暴れるとよろしんですの」

 

ローズマリーが宝石ごと手を振り上げそれを叩きおろす。

ぐちゅと内臓に異物が入った感覚と同時に全身に電流が走った。

 

「が・・あああ!ああああああああああ!」

 

全身が痙攣し体が肥大していく感覚。

第2形態?違うこれは・・・別の・・・

 

「あ!ああああああああ!ろ、ローズマリー・・・何を・・・あああああああ!」

 

「潜在能力解放ですの。傷も治り戦闘も可能。まさに、便利アイテムですの」

 

ビキビキと体の中の魔臓が動いているそれが1つになっていく。

 

「ああでも」

 

くるくると広げた黒い傘を回しながら彼女は楽しそうに

 

「理性はぶっ飛びますの。その真魔臓を破壊されるか死ぬまで暴れ続けてくださいなお姉さま。そして、優希に絶望をですの」

 

ふふふと無邪気な子供のようにローズマリーは笑う。

そして・・・

 

「ぐ・・うううう」

 

理性を失った化け物・・・いや、彼女には1つだけ感情が残っていた。

椎名優希に倒する憎悪だ。

 

「じいだ・・・ゆうぎいいいいいいいい!」

 

ばさりと黒い翼を広げた化け物は猛烈な勢いで空を飛んでいった。

 

ローズマリーも翼を広げながら

 

「フフフ、楽しみですの」

 

彼の絶望を願いながら彼女は笑う。

 

 

 

 

 

 

サイド優希

 

 

さて、どうするか?

目の前には第4形態とかいう化け物ヒルダ。

刀気で切りあえるとはいえ・・・

散弾銃の弾の予備は理子が隠していた場所にまだあり装填してキンジに渡してある。

もう1度散弾銃で魔臓同時破壊がベストだろうがあの、ヒルダの体の中央の巨大な心臓のようなものは魔臓とすればなぜ見える?

あれも4つのうちの1つなのかまた、別の・・・

そこまでしか考えられねえ!

ヒルダが憎悪の瞳で俺に突撃してきたからだ。

 

「がああああ!」

 

「っ!」

 

閃電と天雷をクロスさせ同時に刀気状態でヒルダの拳を受け止める。

ズンとすさまじい重力に押しつぶされそうになるがとっさに受けるのをやめ、受け流す。

ズンと拳が地面に叩きつけられる。

振動がスカイツリ―全体を揺らすかのような音があたりに響き渡る。

後方に少し下がるモーションから左手を前に右手を少し下げる。

弱点ぽいのためさせてもらうぜ!

 

「滅壊!」

 

新撰組直伝の突きを俺流のアレンジした技だが貫通能力では最強クラス。

ヒルダの透けて見える。中央の魔臓らしき場所に向けて繰り出す。

ギイイイイン

鋼鉄を突いたような感覚と手がしびれそうな感覚。

ヒルダの体に阻まれた。

なんつう固さだ!

 

「優君!」

 

秋葉の竜巻がヒルダに直撃するがヒルダは足の爪を立ててその場から動かない。

秋葉の風を耐えた!

 

「うがああああ!」

ぶんとヒルダの腕が振るわれる。

横殴りのその一撃を俺は天雷で後方に飛びながら受け流したが狙いは秋葉だった。

手から発せられたバリバリと猛烈な電撃が放射状に延び防御しようとした秋葉に直撃した。

 

「きゃああああ!」

 

秋葉の悲鳴が煙の向こうから聞こえる。

 

「秋葉ぁ!」

 

「優どけ!」

 

横からのキンジの声に俺はとっさに後退する。

 

「っ!」

 

ガウンと散弾が至近距離に接近したキンジから放たれるが弾丸は全て火花を散らして弾かれた。

皮膚がダイヤモンド並みに硬化してるのか?

驚くキンジにヒルダが腕を叩きつけようとしたが俺の横から弾丸のようにアリアがガバメントを連射しつつ叫んだ。

 

「キンジ!1度引きなさい!」

 

だが、ガバメントの弾は全て火花を散らすようにヒルダの体を貫通しない。

 

「くっ、弾が通らない」

 

ブンと再びヒルダが雷撃を放つがアリアはだんと横に飛んでそれを交わすがヒルダの追撃はやまない。

120%といっていた大きさの雷球を一瞬で5つ周囲に展開させるとアリアに向け放った。

逃げ場がないアリアは後退するしかないがその先は展望台の端だ。

 

「っ!?」

 

端に追い詰められてアリアが雷球を受ける覚悟をした瞬間

 

「アリアさん!飛んでください!」

 

「!?」

 

声に迷わず展望台から飛び降りるアリアを秋葉が風で飛びながらキャッチして離脱する。

雷球はそのまま雲に飛び込み轟音を立てて消滅した。

秋葉は無事か。

あちこち焦げており服もずたずただったが防御には成功したらしい。

 

「ありがとう。秋葉、助かったわ」

 

「いえ」

 

展望台に秋葉は降り立つが明らかに苦しそうだ。

秋葉の限界は近い。

秋葉に無理はさせられねえか・・・

 

「キンジ!時間がねえから単刀直入に言うぞ!俺が合図したら桜花で俺の背中の中央を殴れ!突きであの弱点ぽい魔臓に一撃入れる」

 

これはかけだがおそらく、あの中央の魔臓があのヒルダの莫大な力を生み出している。

散弾で破壊した魔臓が全部回復してたら終わりだが・・・

 

「桜花でか!?」

 

「心配済んな。背中のワイヤー装置を殴ればいい」

 

キンジの手には平賀彩特性グローブオロチがあるようだし手は砕けないだろう。

タイミングを合わせれば・・・

キンジも意図を理解したらしい。

ずんずんと歩いてくるヒルダの前で時間がない。

 

「行くぞ!優!」

 

「おう!1、2の3で行くぞ!」

 

ぐっと滅壊の構えと同時に足に力を入れる。

 

「1!」

 

「2!」

 

「「3!」」

 

背中に衝撃を受けるタイミングで同時に地面を蹴る。

マッハ1のキンジの桜花による加速。

そして、滅壊のマッハ1。

合わせてマッハ2の滅壊だ。

 

「ぐああ!」

 

ヒルダに叩きつける寸前ヒルダは両手を前に出したかと思うと放電を開始する。

構うな!いけ!

電流の固まりに刀気を纏った滅壊を叩きこむ。

だが、その瞬間に見えた光の壁に俺達の合体技は跳ねかえるように弾きかえれた。

嘘だろおい!これでも駄目か!

ヒルダはバリアのようなものを両手で展開したらしい。

電磁バリアみたいなもんだろうが・・・

 

「がああああ!」

 

ドオオンと雷がスカイツリ―の俺達の周囲に立て続けに落ちてくる。

冷や汗をかいたが直撃はしていない。

だが・・・

勝てない・・・こんな化け物どうすりゃいいんだよ

切り札に近い技も防がれた。

攻撃が通らないんじゃ・・・

 

「・・・」

 

エルに支えられ展望台の端で上半身だけを起こして俺を見ている理子。

そうだ、負けられねえ!理子のために絶対に負けられねえんだ!

折れそうな心に火を入れ天雷と閃電を構えてヒルダに対峙する。

 

「俺には!守らなきゃならねえもんがある!てめえなんかに負けてられねえんだよ!」

 

「ぐああああああああああ!」

 

ヒルダが咆哮し雷球を10個作り上げる。

さばきれるか?いや、さばき切る!

 

振り出された雷球をかわし、刀気を纏った刀で切りさき後2つと言うところで致命的なミスを知る。

しまっ!

11個目が10個目の真後ろにいたのだ。

避けられない位置だったがそう思った瞬間、雷球が爆発し、衝撃で吹き飛ばされる。

あち!

何箇所か火傷したが今のは武偵弾の炸裂弾か?

誰が・・・

 

「何を苦戦しているのですか?」

 

展望台の階段にいたのは1階で気絶したはずのリゼだった。

ぼろぼろだが普通に立ってるぞ。

 

「リゼ!優希達に加勢してやってくれ!」

 

「了解しましたワトソン」

 

たんと地面を蹴ると俺の横まで達小太刀を抜く。

気絶から回復したから後を追って来たのか

 

「悪いな助かる」

 

横に並んだリゼを見ると笑みがこぼれるな。

こいつには苦しめられた分味方になったのが心強い

 

「誤解しないよう。私はワトソンの頼みを聞くのです」

 

「へっ、そうかよ」

 

それを合図に俺とリゼは逆側に走った。

ヒルダを挟撃する形だ。

リゼは小太刀を構えつつ短機関銃をばらまきながらヒルダに接近する。

 

「がああああ!」

 

電流の嵐がヒルダの周囲を埋め尽くす。

 

「なるほど、厄介ですね」

 

リゼは電撃を見えているように信じられないような速度でかわしつつ懐から何かを取り出すとヒルダに投げつけた。

それはぱりんと割れヒルダの頭にかかった。

 

「ぎ、ああああああああ!」

 

ヒルダの頭から煙のようなものが上がったかに見えたがそれは再生されてしまった。

だが・・・

 

「硫酸です。どんな装甲だろうと皮膚である以上効くようですね」

 

硫酸か、えげつないもんを容赦なく顔にとか・・・

怖いな

 

「飛龍二式!双雷落とし!」

 

リゼの硫酸で苦しんでいるヒルダの上部に飛ぶと上段から最大の2刀の叩き落とし。

ずぶりと頭に刀が僅かにめり込んだ気がしたが弾かれてしまい後退する。

双雷落としでも駄目か・・・

緋刀さえ使えれば装甲なんて関係なく貫けるのに・・・

 

「さてどうする?」

 

再び後退してきたリゼに聞いてみる。

 

「あれだけのエネルギー。まともな手段で得ているとは思いません」

 

「ていうと?」

 

「あのヒルダの透けている魔臓。あれさえ破壊すればあるいは」

 

「どうやって?最大の攻撃は弾かれたんだぞ」

 

「知りません。あなたが考えてください」

 

つまり、リゼにも現状打つ手なしってことか・・・

 

「3分だけ持たせます。その間に作戦を」

 

「あ!おい!」

 

だんとリゼが疾風のようにヒルダに攻撃を仕掛ける。

その攻撃はまさに、嵐のようだが決定打がない以上いずれ、押し負けるのはリゼだろう。

リゼがくれたこの時間で奴を倒す手段を考え付くんだ。

キンジ、アリア、秋葉、理子、エルと同じ場所に行き作戦を考える。

 

「厄介なのはあの、皮膚の固さと電磁バリアだ」

 

「だが、優あいつは俺達の合体技をバリアで防いだってことは皮膚の固さには有効だったんじゃないのか?」

 

「かもしれねえ。だが、電磁バリアをなんとかしないと通らないぞキンジ」

 

「そうだな・・・」

 

「アリア、緋弾は使えないのか?」

 

あれならもしかしたらという可能性はある。

だがアリアは首を横に振る。

 

「無理よ。出し方が分からない。優も緋刀はもう無理なの?」

 

「無理だな」

 

即答だ。

現状の体力ではもう、アリアの血を飲んでもおそらくぶっ倒れて終わりだ。

そう、全員体力も限界が近い。

1つだけ手はあるがあれが破れれば全てが終わりだ。

リゼが押し負けて作戦もないまま戦っても俺達は・・・

 

「電磁バリアは・・・多分だけど・・・連続した負荷に・・・弱いよ」

 

理子・・・毒が完全に回ってしまうのも近い。

この3分だって本来ならとるべきじゃない。

だが・・・

 

「理子、喋らないで!あんた毒が・・・」

 

「クフ・・・アリア私の心配してくれるんだ?」

 

「いいから黙りなさいよ!」

 

「黙らないよ・・・ヒルダが・・・昔、電磁バリアを試してるの見た事あるんだ・・・電磁バリアは張るだけで相当な負担がかかるみたいで長くははれないから実戦じゃ使えないと思ったんじゃないかな・・・耐えられる攻撃の・・・回数にも・・・限界が・・・」

 

はぁはぁと理子は苦しそうに言う。

これ以上喋らせるわけにはいかない。

だが・・・理子のおかげで勝機は見えた。

 

「サンキュー理子。勝機が見えたぜ」

 

「うん。信じてるから・・・」

 

「ああ」

 

俺は頷くと作戦を全員に通達する。

 

「それにかけるしかないか」

 

キンジが頷いて立ちあがる。

全員が頷き

理子とエル以外が立ち上がり俺は腕時計に向かって叫んだ!

 

「こい!烈風!」

 

スカイツリ―の端まで走りそこから飛び降りると京菱のトラックの中で待機し、飛んできた京菱重工製試作型PAD烈風に体を固定させる。

その見た目はレキと共に空を飛んだ時のスマートな印象からはかけ離れずんぐりとした大きさのものとなっている。

ヘルメットをかぶり視界の情報がバイザーに表示される。

 

「椎名君。君の要望通りの兵装だ」

 

ヘルメット越しに入ってきたのは京菱の烈風の開発主任天城さんだ。

 

「ありがとうございます。ちゃんと6門ですね」

 

「我々だけでは1門が限界だった。だが、京菱のお嬢様が力を貸してくれてね」

 

「ありがたいですね」

 

「力を貸す代わりに撃つ瞬間に音声を叫ぶ事を強要させられた。いいかな?言うよ」

 

天城さんからそれを聞いてそんなことならお安い御用だとスカイツリ―上にのヒルダがいる場所の高度まで飛ぶ。

射線から仲間を外してか。

 

「リゼ!」

 

俺が叫ぶとぼろぼろになりながらなんとか押さえてくれていたリゼが後退する。

射線外だ!

ヒルダが俺を見上げ何かを察したのか両手を前に出して電磁バリアを展開させた。

これで駄目なら本当に打つ手なし!最後の賭けだ!

全弾持ってけ

ピーとヒルダにロックオンされた音を聞いてすべての銃身がヒルダに向く。

そして俺は叫ぶ!

 

「PAD烈風ショータイム!」

 

叫んで引き金を引いた瞬間、PAD烈風に搭載された6門のM134ミニガンが一斉に火を噴いた。

分速3000発。秒速100という7.62ミリ連装機関銃6門の恐ろしいまでの轟音と閃光と共にヒルダの電磁バリアに分速3000の7.62ミリ×51ミリNATO弾の嵐を叩きつける。

その光景は流星群のようだ。

 

「ぐううう」

 

ヒルダが1歩また1歩と下がっていく。

この烈風の装備はヒルダを最後にどうにもならなくなった時、魔臓ごと消し飛ばすために天城さんに頼んでおいた烈風のバリエーション烈風D装備。

ミニガン、別名無痛ガンの情け容赦ない弾丸の嵐で魔臓をまとめて薙ぎ払うためのものだ。

烈風がミニガンの発射の勢いで後退しそうになるが背部のノズルからの推進力でそれを押しとどめる。

見る見るうちに弾数を示す数字が減っていくが伊達にデブ装備じゃないぞD装備はチェーンガンを撃ち続けるために弾を収納するスペースが設けられてるんだよ!

夜の闇の中に火を吹いているようにしか見えないすさまじい弾丸の嵐にヒルダが咆哮した。

 

「が、があああああ!」

 

バリインと砕けるようにヒルダの電磁バリアが消滅した。

恐ろしいまでの負荷に電磁バリアを維持できなくなったらしい。

これが最後にして最大のチャンス!

丁度、ミニガンの弾数が100を切った。

 

「PAD烈風!D装備パージ!」

 

叫ぶと烈風のD装備のミニガンの弾倉部分や余計な部分が強制的に排除され落下していく。

残されたPAD烈風は鎧のような背部の推進ユニットのみ

背部から噴射しキンジ、秋葉の元に降り立つ。

 

「行くぞ!」

 

「はい!」

 

秋葉、キンジ、俺という順番で並ぶ。

閃電と天雷を構えると同時に秋葉の暴風がキンジの背後から恐ろしいまでの速度でぶつかる。

桜花の構えを取っていたキンジはそれを俺の背部、つまり、烈風の背後に叩きつける。

秋葉の暴風でマッハ1、キンジの桜花でマッハ2、そして!

 

「うらああああ!」

 

烈風の最大出力の推進力そして、2刀の突き双滅でマッハ4の破壊力。

 

音速の4倍の速度で振るわれた攻撃!

ヒルダの化け物じみた姿がみるみる迫ってくる。

 

「じい・・・だ・・・ゆう・・ぎいいいい!」

 

憎悪に満ちたその感情を受けながら俺は思った。

いい加減に沈みやがれ!

そして叫ぶ

 

「桜花烈風砲!」

 

稲妻のように突っ込んだ俺の・・・いや、俺達の合体技がヒルダの腹の魔臓に激突する。

そして、それはヒルダの硬化した皮膚を貫き中央の魔臓を貫いた。

 

「あ?」

 

後ろにぶっ飛びながら化け物とかしたヒルダはありえないというように空中で俺を見た。

そして・・・

 

「あ、ああああああああああ!」

 

柱に激突し柱が少し折れ曲がるがヒルダはずるずると床に滑りやがてどさりとその巨体を床に沈めた。

周囲には血溜まり。

 

「はぁはぁ・・・」

 

左膝をついて天雷と閃電を杖代わりにしてヒルダの動向を探る。

もう、動けねえ。

これで動かれたら勝ち目なんてねえ・・・

すでにぶっ倒れそうな状態だし足も笑ってる。

今の攻撃で全てを使いきった。

だが、心配は無用だったらしい。

ヒルダの体から白い煙が立ち上りその姿は人間と同様のものに変わっていく。

そして、煙が張れるとそこには一糸まとわぬヒルダの姿があった。

血だまりに倒れる彼女はピクリとも動かない。

勝った・・・

このまま、ぶっ倒れたかったがローズマリーは?

 

「残念ですの」

 

こいつが戦闘に加われば全て終わり。

秋葉が横で倒れていくのが見えた。

力を使い果たしたんだろう。

キンジも立ってはいるがぼろぼろに変わりない。

それは全員同じ。

その視線にローズマリーは気付いたのかにこりと微笑んだ。

 

「心配ありませんの優希。今日は引きますわ」

 

「そりゃ、どういうことだ?俺達を倒せるチャンスじゃないのか?」

 

「お姉さまが負けた時点で終わりですの。これ以上は闇の公務員が厄介しますの」

 

つまり、ヒルダが負けた時点で俺たちに戦いを挑めば公安0が出てくる。

これだけ、暴れまわってスカイツリ―も傷つけたんだから当然といえば当然か。

 

「ですので。今回は終幕。ばいばいですの優希。また、会いに来ますわ」

 

ばさりと翼を広げ空へ飛び立つローズマリー。

遠ざかっていくが追撃する力はない。

それを見届けるより先に俺は走った。

 

「理子!」

 

戦闘は10分以上立ったはずだ。

だからもう・・・

 

「もうすぐヘリが来る!」

 

エルが叫んでいるが待ってる時間が惜しい

 

「俺が運ぶ!」

 

「ゆ、優!」

 

アリアが叫ぶが俺はぐったりして目を閉じている理子をお姫様だっこしスカイツリ―から飛び降りる。

烈風で飛行し目指すのは武偵病院だ。

バイザーからエルが受け入れの準備を整えていると連絡が入る。

最大だ!速度もっとでろ烈風!

早くしないと理子が!

烈風なら数分でつくはずだがその時間が永遠に思えてくる。

ヒルダとの戦いで不具合が出たのかスピードが思ったより出ない。

くそ!くそ!くそ!

 

「ゆう・・・き・・」

 

か細い声だったが確かに聞こえた。

 

「理子!今、病院に連れてく!がんばれ!」

 

「ヒルダに・・・勝ったん・・・だね」

 

「ああ!ブッ飛ばしてやったぞ!みんなの協力でな」

 

「フフ、しんじて・・・たよ。優希・・なら・・・勝ってくれる・・・って」

 

「今度こそ本当の自由だ。遊びにでもデートでも付き合ってやる!だから頑張れ!」

 

「うれしい・・・な」

 

理子の顔は毒が回りきったように見える。

もう、間に合わないんじゃいのかという嫌な予感がする。

いや、考えるな!病院に急ぐんだ!

 

「最後に・・・ひとつ・・・わがまま・・・いいかな・・・」

 

空の闇は晴れ眼下には停電から復旧した東京の街灯り、そして、空には月と星空。

その下を俺達は飛ぶ。

 

「最後なんて言うな!何してほしいんだよ?」

 

「ずっとね・・・うらやましかったんだ・・・レキや・・・信冬の2人・・今回はリゼって子も・・・」

 

「何をいって・・・」

 

「私・・・優希と再会してうれしかった・・・最初は・・・憎んだけど・・・やっぱり・・・理子のヒーローで・・・ブラドの時も・・・今回も助けてくれた理子の王子様」

 

「そんなこと当たりまえだろ。俺達は・・・」

 

友達なんだからと言おうとしたが理子の言葉に遮られる。

 

「ウェディングドレス・・・来たときね・・・ああ、これを着ることはないんだろうなって・・・思った・・・でも、もし着ることがあるなら・・・私は優希と・・・だからね・・・理子の最後のお願い・・・」

 

必死に目を開けようとしているがその声はもう、本当に小さいものだ。

くそ!病院はまだか!

 

「私と結婚してください」

 

どきんと心臓が跳ねた気がしたレキが言って来たあの時とは違う真剣な死に際の言葉。

真実の言葉だ。

軽々しく答えていい場面じゃない。

だが、自然とその言葉は出ていたんだ。

 

「分かった。だから死ぬな絶対にだ」

 

「・・・約束・・・だよ」

 

理子は・・・本当にうれしそうに笑顔で目を閉じた。

 

「理子!おい!理子!」

 

理子は答えない。

眼下に武偵病院の灯りが見えてくる。

屋上のヘリポートには看護師や医師、アリスがここだと手を振って待機している。

降下しながら俺は叫んだ

 

「死ぬな理子!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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