緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第22弾 武偵は諦めるな!決して諦めるな

機長と副操縦士は麻酔弾を撃たれたらしく昏倒していた。

 

「遅い!」

 

犬歯をむき出しにして言ったアリアは操縦席に座る。

 

「アリア―飛行機操縦できるのか?」

 

「セスナならね。 ジェット機なんて飛ばしたこともない」

 

アリアがぐっと操縦悍を引くと機体が水平に保たれる。

窓の外を見ると海面からそう遠くない。

あぶねえ

高度は300というところか

 

キンジが無線機を探し当てて羽田に連絡を取ると管制塔から問いがあり、この機の状態をト伝えた。

俺は、その間に機長から拝借した衛星電話を操作する。こいつは、どんな速度でとんでいようが電話回線につながるすぐれものだ。

スピーカ―モードにする

 

「誰に連絡してるの?」

 

アリアの問いに向こうが答えてくれる。

 

「もしもし?」

 

「よう、武藤俺だよ優だ」

 

「ゆ、優! お前ハイジャックされた飛行機にいるんじゃ! お前とキンジの彼女が大変だぞ」

 

「彼女じゃねえよ。 キンジとアリアなら隣にいるぜ」

 

「ちょっ・・・お前ら何やってんだよ」

 

「か、かの・・・かの・・・」

 

自分が彼女扱いされてることにアリアはぼぼぼぼとまた、赤面癖を発揮した。

キンジが渡せと手を出してきたので俺が渡す。

 

「武藤、よくハイジャックのこと知ってたな。 報道されてるのか?」

 

「とっくに大ニュースだぜ。 客の誰かが機内電話で通報でもしたんだろ? 乗客名簿はすぐにコネクトが周知してな。 アリアと優の名前があったんで今、教室に集まってたところだ」

 

キンジはエンジン2基が破壊されたことや犯人が逃亡したことを伝える。

 

「安心しろ武偵遠山 その飛行機は最新技術の結晶だ。 エンジン2基でも飛べるし悪天候でもその状況は変わらない」

 

羽田コントロールの声にアリアはほっとした顔になる。

 

「それより、キンジ、破壊されたのは内側の2基っていったな。 燃料計の数字を教えろ」

 

「数字は今540だ。 535になった」

 

「くそったれ! 盛大に漏れてるぞ」

 

「ね、燃料漏れ! 止める方法を教えなさいよ」

 

「方法はない。 わかりやすく言うと機体側のエンジンは燃料系の門も兼ねてるんだ。そこを破壊されるとどこを止めても露出は避けられない」

 

「あ、あとどれくらいもつの?」

 

「残量はともかく露出の速度が速い。 いいたかないが後15分といったとこだ」

 

「さすがは最先端技術の結晶だな」

 

ぐちりたくもなるよなキンジ。

残された手はすくないか・・・

 

「キンジ、さっきコネクトに聞いたがその飛行機は相良湾上空をうろうろ飛んでたらしい。 今は浦賀水道上空だ。 羽田に引き返せ、距離的にはそこしかない」

 

「元からそのつもりよ」

 

アリアが武藤に返す

 

「操縦はどうしてる! 自動操縦は決して切らないようにしろ」

 

「自動操縦なんてとっくに破壊されてるわ! 今はあたしが操縦してる」

 

くそ、理子め! 自動操縦まで破壊することないだろ!まずいぞこの状況は

 

「というわけで着陸の方法を教えてもらいたいんだが・・・」

 

「すぐに素人ができるようなものではないのだが・・・現在近接する航空機との緊急通信を準備している。 同型機のキャリアが長い機長を探して・・・」

 

「時間がない近接する航空機との全ての通信を開いてほしい。 できるか?」

 

「い、いやそれは可能だがどうするつもりだ?」

 

「彼らに着陸の方法を1度に言わせるんだ。 武藤も手伝ってくれ」

 

「一度にってキンジ聖徳太子じゃないんだから」

 

「できるんだよ。 今の俺には! いいからやってくれ」

 

アリアが驚きの様子でキンジを見ているのが分かる。

ああ、キンジお前はやっぱりすげえよ。

お前は武偵になるべくして生まれてきたんだからな

やめるなんていうなよ。

 

一気にしゃべる機長達の言葉は俺はわずかに拾っただけだがキンジは理解したらしかった。

こいつなら羽田に着陸は可能だろう。

ああ、疲れた。

 

俺がそう思った瞬間

 

「こちらは防衛省。 航空管理局だ」

 

な、何!防衛省だと!

 

「羽田空港の使用は許可しない。 空港は現在自衛隊により閉鎖中だ」

 

「何いってんだ!」

 

叫んだのは武藤だ。

 

「誰だ?」

 

「俺は武藤剛気! 武偵だ! 600便は燃料切れを起こしてる! 飛べてあと10分なんだよ! ダイバードなんてどこにもねえ!羽田しかねえんだよ」

 

「武偵武藤。私に行っても無駄だぞ。 これは防衛大臣の決定なのだ」

 

嫌な予感がして横を見ると俺は絶句した。

F15イーグル。

F22を除けば最強クラスの戦闘機が横を飛んでいる。

 

「おい、防衛省。 あんたのお友達が横を飛んでるんだが・・・」

 

「それは誘導機だ。 誘導に従い千葉にむかえ。 安全な着陸場所を指定する」

 

キンジが通信を切る。

 

「海に出るなアリア、あいつらは嘘をついている。海に出たら撃墜するつもりだ」

 

 

 

「向こうがその気ならこちらも人質を取る。アリア、地上の上を飛ぶんだ」

 

だが防衛省を排除しないと危険は付きまとう。

嫌だが頼るしかなさそうだな・・・

 

「キンジちょっと電話するぞ」

 

「優?」

 

俺は副操縦士の衛星電話を使い電話する。

コールは3

 

「はい、椎名でございます」

 

懐かしい声を聞き俺は口を開いた。

 

「俺だ。 椎名 優希だ」

 

「ぼ、ぼっちゃま!?」

 

電話の向こうから驚愕したような声が帰ってくる。

スピーカーモードなのでアリアとキンジもこちらの声を聞いている。

 

「時間がない。 かあ・・・志野さんはいるか?」

 

「当主様は今、部屋にいらっしゃいます。 しかし、ぼっちゃまとは・・・」

 

「代われ! 時間がない! 東京のハイジャックの飛行機に俺がいると伝えろ!」

 

「え? は、はい!」

 

時間にして30秒。

もう、2度と会いたくないと思っていた声が聞こえてくる。

 

「何の用です?」

 

「お久しぶりです。 志野さん。 時間がないので手短にいます。 羽田の自衛隊と隣接するイーグルの退去をお願いします」

 

アリアとキンジが目を見開くのが見えた。

電話の相手はそれほどの権力者なのか・・・

 

「椎名面汚しが・・・」

 

吐き捨てるような声が電話のむこうから響いた。

 

「俺が死ぬとあなたたちには不都合でしょう? 大丈夫。 東京に突っ込むなんてことにはなりませんよ」

 

「イーグルの退去はすぐに可能ですが自衛隊の退去は20分ほどかかります」

 

その数字に俺は絶句する。

間に合わない。

 

「この飛行機は後、10分しか飛べないんだ!5分でなんとしてほしい」

 

「不可能を可能とは言えません。 努力はしましょう」

 

電話が切れる。

ちくしょう。

俺は衛星電話を叩きつけて隣をみた瞬間、F15が遠ざかっていくのが見えた。

 

「あんた何者なのよ? 自衛隊を下がらせるなんて・・・」

 

「そんなことは今はいい。 羽田は駄目だ。 キンジ何か案はあるか? 武藤、なんとか20分以上飛ばせる方法はないのか?」

 

「ない、10分しか飛べねえよ」

 

「武藤、滑走路にはどれくらいの距離が必要だ?」

 

「まあ、2450メートルだな」

 

「そこの風速は分かるか?」

 

「風速? レキ学園島の風速は?」

 

「私の体感では南南東の風風速41.02」

 

レキいたのかよ

 

「じゃあ、武藤、風速41メートルに向かい着陸すると滑走距離は何キロになる?」

 

「まあ、2050ってとこだ」

 

「ぎりぎりだな」

 

「おい、キンジまさか・・・」

 

「違うよ優。 浮島だ」

 

「できるのかキンジ?」

 

俺が聞くとキンジは頷いた。

 

「できるさ優の好きな武偵憲章の通りさ」

 

「へっ、武偵憲章第10条、諦めるな!武偵は決して諦めるな!だな」

 

そうだ。

俺は死ぬわけにはいかない。

アリアもだ。

俺達は諦めるつもりはないんだ。

 

「あんたちなんかと心中なんてお断りよ」

 

アリアはべーっと舌をしだしてくる。

 

「待て、キンジ空き地島は雨でぬれてる! 2050じゃ着陸できねえぞ」

 

「そこはなんとかする」

 

「か、勝手にしやがれ! しくじったら引いてやるからな」

 

叫ぶと武藤は切れたのか教室のみんなにわーわー叫ぶと電話を切ってしまった。

 

俺は死なない。だから、キンジ、アリア、お前たちに俺の未来を預けるぜ

 


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