緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第220弾 見えぬ闇

「被告人、神崎かなえを懲役634年の刑に処す」

東京高等裁判所800法廷に響いたその判決。

それを弁護人席で聞いた時、思ったことは怒りもだが何よりもこう思った。

ああ、やっぱりなと・・・

俺は横にいる理子と同じように検察官を睨みながらその背後にいるであろうあの男の

後姿を睨む。

シャーロックホームズ・・・アリア達には言っていないがあれが、機械の類で作られた声でないなら確実にあいつは生きている。

アリアの母親をこんな状況に追い込んだのは間違いなくあの男だ。

イ・ウーは壊滅したかもしれないがあの男が裏から手を引いたままであればアリアの母親が無実になることはありえないということだ。

かなえさんの終身刑は変わらない。

「不当判決よ!」

ガタンと椅子を飛ばすように立ち上がりアリアが金切り声をあげる。

「こんな、どうして・・・!?こんなに証言と証拠も揃っているのにどうしてよ!ママは潔白だわ!どうして!?」

「騒ぐなアリア!次の心証が悪くなる!即日上告はする!落ち着け!」

床を蹴って検察に飛びかかろうとするアリアにかなえさんの女性弁護士連城黒江がだきつくように抑える。

次か・・・もし、最高裁で有罪が確定すればもう終わりだ。

覆すことは出来ない。

「っ・・・」

人を変えて裁判をやり直せというアリアを見ていられなくなり視線を少しずらしズボンを握りしめる。

なんでだよシャーロック・・・なぜ、かなえさんをアリアから引き離そうとするんだ・・・

全てというわけではないが公安0の一部や実家の力を借りてさえどうにもならないことなのか・・・

「・・・」

これは、圧倒的な力との戦いだ。

表の最強は姉さんだろうがシャーロックは裏での力が圧倒的ということだ。

本当に生きているとすればだが・・・

「やめろアリア!まだ、最高裁がある!確定じゃない!」

連城さんの声にはっと顔を上げると2人がかりでも抑えきれずアリアが暴れている。

見れば周りの警備員達が手錠を手にアリアを囲むように迫っている。

「アリア!」

警備員を殴れば逮捕されてしまう。

俺が立ち上がりアリアを抑えるのに協力しようとした時

「アリア落ち着きなさい」

静かな声が響き渡る。

アリアははっとしてその声に暴れるのをやめて声の主・・・かなえさんの方を見る。

「ありがとうアリア・・・あなたの努力・・・本当にうれしかったわ。まさか、アリアがイ・ウー相手にここまで成し遂げるなんて、あなたは大きく成長したのね。それは親にとって最大の喜びよ。遠山キンジさんあなたにも心から感謝しています。アリアはとても良い仲間に恵まれた。直接、それを見届けられて幸せです。椎名優希さん、あなたはアリアと私のために本当にいろいろなことをしてくれました。ありがとう」

「・・・」

何も言えないな・・・結局、俺のしてきたことは意味のないことだったのかもしれない・・・

だけどそれでも・・・

「かなえさん。俺はまだ、諦めるつもりはありませんよ。そこの腐った連中を操ってる奴らをぶっ潰してあなたを助けます」

そう、裏で操ってる連中がいるなら必ず引きずり出して叩き潰してやる。

幸い、俺には裏の世界に知り合いも多い。

絶対に何とかして見せる。

「ありがとう・・・でも」

かなえさんは誰かを見るような表情になり

「こうなることは分かっていたわ」

つぶやくのだった。

                  †

                  †

                  †

アリアはかなえさんのカメオがついた銃を持ち泣き続けるアリアを乗せ俺達は連城さんの車の中にいた。

しばらく、時間を潰してから高裁を出るかなえさんの護送車を追うように連城さんが車を出した。

少しでも・・・1秒でも長くかなえさんの近くにアリアをいさせてあげたいという配慮からあろう・・・

ありがたいな。

「ママ・・・」

横を見るとアリアはまだ、泣いている。

どうすればいいんだ・・・

かなえさんの裁判には明らかな裏からの手が回っている。

土方さんや実家に調べてもらう手もあるがおそらく、それだけじゃ駄目だろう。

ある程度は俺自身も情報収集し裏で手を回している連中を見つける必要がある。

そのためには・・・

拳を握りしめつつ思うことがある。

もっと、強くならなければならない。

そして、もっと人脈を作る必要もあるだろう。

帰ったら雪羽さんと鈴さんに連絡がついたら修業をつけてもらうか・・・

それと、あいつにも連絡して・・・

ん?

違和感を感じる。

見ると信号の停止線からかなり離れた所で護送車が止まっている。

連城さんの視線の先の信号がおかしい赤・黄・青のどれもがついていないのだ。

見ると周りの建物の電気も消えているようだ。

「停電か?」

連城さんの言葉と同時に理子の様子が少しおかしいことに気付いた。

理子?

ん?護送車の下から黒い影のような何かがこっちに向かってくる。

影が俺達の車の下に入っていく。

ぞっとするような嫌な感覚。

外に出るか一瞬悩むが直感で今すぐはでるなと判断する。

同時に閃光、更に放電音がバリバリバリと当たりに響き渡る。

こいつは電気か!?

電流は車体の外を通りぬけて中は無事だが・・・ってやべえボンネットから煙!

「みんな車から出ろ!危険だ!」

連城さんの声に外に飛び出す。

「こいつは・・・」

敵の姿が見えないので銀弾を入れたガバメント、右手で安物の日本刀を引き抜いた。

護送車からも煙が出ている。

引火したら中のかなえさんも・・・

その時、バリと放電が護送車の周囲で弾ける。

「ママ!」

「アリア待て罠だ!」

キンジとアリアが護送車に走っていく。

影・・・そういや、イ・ウーで戦った中にそんな能力者もいたな・・・

だが、宣戦会議の時確か似たような・・・

「「ヒルダ」」

俺と理子が同時に言った。

奴が護送車の上に降り立ったからだ。

ふりふり日傘にゴシックロリータの黒い服。

ローズマリーの姉ヒルダ・・・

もしかしたら、ローズマリーもいるかもしれないという警戒からヒルダには近づかない。

「ヒルダ!写真では見てたけど会うのは初めてね」

アリアが拳銃を抜くのを見てヒルダがそっぽ向いた。

「いやね。粗野ね。私あんまり戦う気じゃないのよ。日の光って嫌いだし。でも、つい手が出ちゃった。だって玉藻の結界からノコノコ出てくるんですもの。それに」

ヒルダはカツンとヒールで護送車の屋根を踏み

「これあなたのママよね?お父様のカタキは一族郎党。根絶やしにしてやるわ」

「キンジ!ライトサイド!優!バックアップ!」

アリアは叫びながらヒルダに接近する。

仕方ねえか!

俺は銀弾の入ったガバメントを撃とうとした時

「ん」

ヒルダが何か力むようなしぐさし

バチイイイとスパーク音が響いた。

「うっ!」

「きゃあああ!」

キンジとアリアが同時に地面に倒れる。

「っ!」

そのまま突進しようとしたが動作を中止しその場に留まりガバメントをけん制代わりにヒルダに放つ。

「ふふ」

ヒルダはそれを微笑みながら交わす。

「だからそんな血の気の多い姿を見せないで我慢できなくなっちゃうでしょ?ああ、もう食べちゃおうかしら?お前達なんかプリモでもやっちゃえそうだし」

キンジ達は動けないのか?音と閃光。

思いだしてきたぞ。

ヒルダの能力は電気を操る能力だ。

つまり、ステルス使い。

「最悪だな・・・」

紫電無しでこいつと戦うことになっちまった。

アリアは膝をがくがくさせながら立ったが戦闘は無理

キンジもとなると・・・

「俺達だけでやるしかないな理子」

と振り返るが理子の様子が少しおかしい。

震えているのだ。

そうか・・・そうだよなお前は・・・

「あ・・・優・・・希」

その目は怯えで染まっている。

駄目だ今の理子は戦わせられない。

ブラドの時と同じだ。

俺は理子のヒーローなんだからな。やることは決まってるさ

だとすれば・・・

「おい!ヒルダ!」

戦える奴がいないなら俺がやるしかねえ!

紫電無し、銀弾もマガジン1つだけ

武偵弾はあるがさて・・・

「何かしらゴキブリ?」

本当にどうでもいいようなゴミを見るような目でヒルダが俺を見下してくる。

「宣戦会議以来だが。以前にもルーマニアで会ったこと覚えているか?」

「ゴキブリと会った記憶はないわね」

「ゴキブリいうな!俺には椎名優希って名前があるんだよ!」

「いいじゃない。地べたをはいずりまわるゴキブリ。いえ、蜘蛛かしら?あなたの場合?」

ワイヤーで飛びまわりますからね。

蜘蛛男ってのも間違っていないが・・・

「へっ、じゃあお前は蝙蝠女だな。泣けよキーキーって」

「口の減らない男。殺してしまおうかしら?」

「それは無理だな。お前は今、負けたし」

「ほ、ホホホ!頭までおかしいのかしらこの蜘蛛男は」

「後ろに水月希がいるしな」

その時の反応は本当にすさまじかった。

ヒルダが一瞬で真っ青になりものすごい勢いで後ろを振り返ったんだからな。

引っかかるなよこんな嘘に。

まあ、それだけ姉さんが恐ろしい存在と言う事だから

行くぜ!ヒルダ!

戦闘狂モードを発動し、ヒルダが後ろを振り返った直後に俺は地を蹴った。

 




次回はヒルダVS優希です!
紫電なしに戦う羽目になってしまった優希大ピンチ!

姉さんは来てません一応(笑)

ちなみに、ヒルダの章が終わったらオリジナル章をするかもしれません。
前回は準オリジナルでしたから次は神戸編以来のオリジナル章になりますね。
大体ヒロインというのは主軸となる巻というか章があるわけでしてオリジナル章では
オリヒロインの誰かか新ヒロインをメインヒロインに持ってこようと考えてます。


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