緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第215弾 宣戦会議後編ー砕けた殻金

「希ちゃんだぁ♪」

姉さんから見えない位置にいるひょっとこの仮面が喜んだように言った。

この場にいる全員ど真ん中に現れた姉さんに視線が釘付けになっている。

「やっときやがったか」

土方さんが言った。

やっぱり、来ることを知ってたのか・・・

まあ、こない方が不自然だもんな

「どうやら、全員揃ったようだな。水月希。事情は分かってるだろう?あなたの、立場の表明は必要不可欠だ。師団か眷族どちらか。あるいは、中立か」

ジャンヌが姉さんを見ながら言った。

「うーん」

姉さんは値踏みするように丁度別れている師団を表明した組織と眷族を表明した組織を見比べる。

そして、ローズマリーと目があった。

ローズマリーは微笑を崩していないが内心はどうだろう・・・

ヒルダや他の連中もいい顔はしてないな・・・

バチッと火花が一瞬散った気がしたが姉さんは次に俺を見てきた。

その目は味方になってほしいだろ?と言っている気がする。

ぜひ、お願いします!

姉さんが仲間になるなら土下座だってするよ。

「ジャンヌ私は中立だ」

その瞬間、眷族サイドからは心底ほっとしたような空気を感じた。

反面、師団側からは残念そうな空気流れたが・・・

「ただし、どちらかと言えば師団よりということは覚えておくんだな」

絶望的なまでの戦力差があるだけに眷族側はこの場で負けを認めたりしてと思ったが不思議と眷族側はそれ以上に空気が変わることはなかった。

どういうことだ?中立とはいえ姉さんが敵になるかもしれないのに・・・

「ホホホ、水月希。遠まわしに眷族に降伏でも勧めているのかしら?」

ヒルダが日傘をくるくるとまわしながら言った。

「ブラドの娘のヒルダか?別にそうはいってない。私は中立だからな」

「全世界のRランクが束にかかっても勝てる可能性はないと言われてるだけに厄介ですの」

そう言ったのはRランクでもあるローズマリーだ。

そう、正直な話敵のサイドにどれほどの戦力があろうが姉さんを除いてもこちらには明確な味方のRランクが1人いる。

おまけに姉さんも師団よりとなれば戦力が師団に集中し過ぎている。

戦いは質だけじゃないが総力戦でない以上この点はでかい。

眷族は何かを隠しているのか?

「何か切り札でもあるんだろ?見せてみろ」

姉さんが言った瞬間俺の後ろからすっとひょっとこの仮面の少女が金髪ウェーブを揺らしながら前に進み出た。

姉さんの視界に入りながらジャンヌに向かい

「私の組織は眷族に入るよ」

「・・・」

姉さんはその仮面の少女を見ているが特に何も言わない。

「さてと、これで全部済んだね」

ひょっとこの仮面は右手で仮面を外した。

ライトの光できらきら光るウェーブのかかった金髪。

典型的な西洋人のイメージが具現化したような存在。

あの子は確か東京駅で・・・

姉さん?

「・・・」

あの姉さんが何も言わない前みたいに切れるのかと思ったが・・・

「なっ・・・」

声の主は土方さんだ。

少女を見て土方さんが驚愕している。

知り合いか?

他にも何人か・・・月詠も驚いたような顔をしてる。

「初顔も多いから先に言っておくね。私はアズマリアじゃなくその娘だからママのやったことで恨まれる筋合いはない」

アズマリア・・・聞いたことがある。

俺が生まれて間もない時代、最低最悪の魔女として大アルカナという組織を率いて裏の世界で暗躍し人類滅亡寸前まで追い込んだ。

とはいえ、このことは表裏の両世界でも限られた人間しか知らないことだ。

俺も断片的に姉さんや土方さんに聞いだけだからな。

姉さん達の高校生時代最後の年、その事件に挑み姉さん達は仲間の1人を失った。

あの金髪の子は娘らしいが姿はどうやら、本人に容姿は瓜二つということか・・・

「世界を滅ぼそうとしたママは鈴・雪土月花の水月希に確かに殺された。この姿は遺伝なんだ。私の一族では女は1人しか生まれず姿は母親と瓜二つになる。どんな男の遺伝子を組み合わせてもね」

年齢は多分、俺達と同じか少し下くらいか?

「その証拠がどこにある!てめえの姿は忘れねえ!」

土方さんは刀に手をかけるが抜かない。

最後の最後で自制している。

「歳、こいつはアズマリアじゃない。私が前に確認した」

前に確認・・・そうか、東京駅で遭遇した時のことか?

「なんなら、ステルスで調べてみる?歳さん?」

少女は手を後ろに組んで笑って言った。

「いや・・・」

土方さんは刀から手を離して少女を見ながら

「希が言うんだ。それが事実なんだろう」

「分かってくれてうれしいなぁ」

「・・・」

土方さんはまだ、完全には納得してないようだがとりあえず話に決着はついたようだ。

場に沈黙するとジャンヌが口を開いた。

「では、最後にこの闘争は・・・宣戦会議の地域名を元に名づける慣習に従い極東戦役―FEWと呼ぶことを定める。各位の参加に感謝と武運の祈りを・・・」

「じゃあいいのね?」

ジャンヌが言い終わるより前にヒルダが口を開いた。

「・・・?―もう、か?」

「いいでしょ別にもう始まったんだもの」

「待て今夜は戦わないと言ってなかったか?」

「そうねぇ。ここはあまりいい舞台ではないわ。高度も低いし天気もいまいちよ。でも、気が変わったの。折角だしちょっと遊んで行きましょうよ」

そうですよね・・・これだけの面子揃って何にも怒らないなんて考え甘すぎたわけだ。

ヒルダとジャンヌに見られている現状。

「逃げるぞキンジ。こんなとこいたら命いくらあっても足りねえよ」

小声でキンジに言う。

「賛成だ」

とキンジが冷や汗をかきながら言った。

とはいえ、簡単には動けない。

こんな入り乱れた場所で背中を見せるのは危険すぎる。

「先手行くよ!」

声の方を見ると最初に動いたのはあの金髪の少女だ。

向かった先はなんと姉さんだ。

拳を振りかぶりそれを姉さんに叩きつける。

ドオオンと姉さんがやる時のように爆音がして姉さんが2歩後退する。

「一の太刀水神!」

少女の手に突然、水色の刀が現れた。

刀は周囲の海から水分を吸収しているのか?

「よいしょ!」

圧縮された水の剣になったものを少女は姉さんに向けて振りかぶった。

それは水滴となりチェーンガンのように嵐のような水滴を姉さんに向けて放つ。

あれは、沖田が使ってるの見た事あるぞ。

鋼鉄の塊でも粉砕する超圧縮された水だ。

「おおっと!」

姉さんはそれをなんなくかわしていく。

そして、その一発が姉さんの真横を通り過ぎ地面に直撃した瞬間、爆音と共に空き地島に穴があいた瞬間、少女が水の刀を手に姉さんに切りかかった。

一瞬見えたが水の刀身は恐ろしく細くなっている。

脳裏にダイヤモンドでも切断するウォーターカッターというものを思い出した。

「姉さん!」

思わず叫ぶが

「なるほど、やはりあの女の能力は遺伝してるのか」

姉さんはそういうと水の刀を自分の刀で受け止めると水の剣は無散し、消滅した。

姉さんの刀、震電は紫電と似ており、更に高等の力がある。

「あれ?」

少女が首をかしげる。

姉さんが刀を抜いたのを直接見るのは久しぶりだ。

中東のRランクと戦った時以来かもしれない・・・

それほどの相手かあの子は・・・

「白羽取りしてくれると思ったのになぁ・・・」

少女が口元をゆるめて言う

「そうすれば感電してたんだろう?」

姉さんが言うと少女はぱっと離れると放電している剣を手に笑った。

稲妻の剣か?

「半分正解」

ぺろりと少女が舌を出した瞬間、姉さんの肩から血が飛び散った。

「三の太刀風神」

名前からしておそらくは風の剣。

超高速の斬撃を姉さんを切ったのだろう。

「ほう」

姉さんは傷口を見て刀を構えなおす。

同時に傷口がふさがっていく。

「それ卑怯だなぁ」

少女が姉さんの回復のステルスについて文句を言っているがあれを見て戦意喪失しない奴初めて見た。

姉さんと少女は空に飛び上がり戦いは続くが俺は周りにも気を配らないといけなかった。

全員が一斉に行動を始めたからだ。

その瞬間、俺が見えた光景をざっと言えばあの黒いぼろぼろの服を着た老人が恐ろしい形相で

「土方ぁ!」

と飛びかかる。

「ちっ!」

舌打ちする土方さんだが、俺もそれ以上そっちに意識を向けていられない。

「椎名、遠山逃げろ!30秒は縛る!」

影に入ったヒルダにジャンヌはデュランダルを突き立てるがその影縫いは不完全らしく影は動いている。

「加勢しますジャンヌさん!」

信冬がジャンヌの方に走り手に持ったお札を放るとそれは空中で分解し針のようにヒルダの影に突き刺さると動きが更に鈍った。

「まだ、動きますか」

 

信冬は更ににお札を取り出そうとしている。

「ぼっちゃま、遠山様。ここは、危険です。そろそろ、お帰りになったらどうでしょう?」

背後からいつの間にか回り込んだ月詠が言った。

キンジがびっくりしたというように月詠を見るが俺は特には驚かない。

「鏡夜は?」

「すでに、退避していただいてます」

確かに、今日は様子見という点が強いのだろう。

そういう意味では・・・

「よし、月詠お前のステルスで・・・」

と俺が言いかけた時だった。

ドルルルというエンジン音が海の方から聞こえてくる。

この場の組織の連中も戦いを中断しその音の方向を見ている。

誰だ?

空き地島南端にボートをつけた音がし上がってきたのは・・・

「SSRに網を張らせといて正解だったわ! あたしの目の届くところにでてくるとはね。その勇気だけは認めてあげる!そこにいるでしょ!パトラ、ヒルダ」

んげ!アリア!なんで、来たんだ!い、いや理由は分かるんだがまずいぞ

「イ・ウーの残党セットで逮捕よ! 今月のママの裁判にギフトができたわね」

「優希!遠山!神崎を下がらせろ!」

土方さんが猿のように軽快に切りかかる老人と戦いながら怒鳴った。

「LOO」

ぎゅいんとLOOが動いたのを横目に俺が口を開くより先にアリアがガバメントを抜き放つ

「手下を連れてきたのね!? キンジ、優!いるなら援護しなさい!」

銃弾数発が風車のプロペラに辺りもろくなっていたのか羽の1枚がLOOに向けて落下する。

「LOO!」

LOOは避けようとしたのかどうか知らんが上を向いた瞬間、数tあるプロペラに押しつぶされた。

はいつくばるような無様な格好になっているが起き上がれないようだな気の毒に・・・

「あらあら」

月詠も後ろで右手を口に当てている。

「来ましたの」

そう言ってアリアを見たローズマリーに俺は嫌な予感を覚える。

「月詠! 俺たちはいい。ローズマリーを抑えてくれ!」

悔しいが準備不足でローズマリーと戦いたくない。

ステルスに圧倒的に優位に立てる紫電がない以上、この混戦状態で月詠しか、ローズマリーと渡り合える戦力がないのだ。

「かしこまりました」

月詠はそういうとローズマリーの前に現れると薙刀を構える。

「ぼっちゃまの命令です。止めさせていただきます」

「椎名の近衛。邪魔ですの」

ローズマリーは不機嫌な顔になり、ごぅと周りに青い炎が巻き上がった。

銀色の髪が揺れ赤い瞳が妖艶に輝いた。

「参ります」

2人の戦いが始まった。

空中に飛び上がり蒼い炎が連鎖的に爆発し夜空を照らす。

「あは!あはは!きたきた!」

どたどたとガニ股でぐるぐる回っているのはハビだ。

潰れたLOOを爆笑するカツェにメーヤさんがそーと回り込んでよいしょっと巨大な十字剣を振り上げ。

「厄水の魔女打ち取ったりぃ!」

と情け容赦なくカツェの脳天に叩き落とす。

だが、カツェも気づいていたようで柏葉の彫刻とダイヤモンドで飾られた西洋剣で切り結んだ。

「あー、メーヤ。お前本当に死なないと治らねえなそのアホさ」

メーヤさんの十字剣が地面に落ちて突き刺さる。

重いんだよなあれ・・・

「お、大人しく切られないとは・・・ああ、神よ。この者の罪をお許し・・・いえ、許さなくて結構です。神罰代行謹んで務めさせていただきます!」

息を切らしながら剣を下段に構えるメーヤさんだがカツェはぱしゃんと水を2人の間に弾けさせてそれを目くらましに距離を取るとローブの中から拳銃を取り出してメーヤさんに発砲するが9メートルほどの距離でも当たらない。

直接、教えてもらったわけではないがおそらくメーヤさんには銃は効かない。

「チッ、やっぱり駄目かよ。とことん運のいい奴だな」

カティが俺の考えを補足してくれるようなことを言っている。

カティは銃が意味がないと判断したのか短剣を取り出すとメーヤさんに突撃する。

その間にカナさんが割り込み鎌を使い互いの武器に上手く当てて2人を転ばしてしまった。

 

「お二人さん。もう、帰りましょ。ね」

キンジに目配せしてカナさんが霧の中に消えていく。

「キンジ!優!ジャンヌもいるの!?それに・・・どういう事?」

アリアがマガジンを入れ替えながらこっちに走ってくる。

「アリア!撤退だ!ここはまずい!見てわからねえのか!」

「キンジの言うとおりだ。とりあえず逃げようぜ」

「どうやら、そうらしいわね」

周囲を見回したアリアはオープンアームで銃を威嚇するように突き出し、一瞬Rランク達が戦っている空を見上げた。

「パトラはあんたのお兄さんと一緒みたいだしヒルダは逃げたみたいだし、優の知り合いも大暴れしてるみたいだし」

何?ヒルダが逃げた?

信冬達と戦っていた方を見ると影は見当たらない。

リバティー・メイソンの使者もいつの間にか消えている。

先ほど、アリアが倒したLOOの中から女の子が飛び出してきた。

潰れたPADもどきを見てるぅるぅと嘆いている。

なんか、かわいそうだな・・・

水着着たいな服を着た小さな女の子だし。

お、アリアを見て怒ってるぞ。

と逃げるのか?

水着のバッジをじゃらじゃらと・・・ってあれアメリカ軍の大佐の階級章じゃなかったかなぁ・・・

アメリカ軍には下手したら俺も恨まれてるかもしれないからこれは、ますます恨まれたかも・・・

「アリアさん!ヒルダはまだ、撤退していません!あなたはすぐに撤退を!」

信冬が駆け寄ってきてアリアに手を伸ばす。

「長距離の空間転移します。優希と遠山さんも・・・

「武田!後ろだ!」

「っ!?」

ジャンヌの警告は一瞬、間に合わずバチンと閃光がまたたき、信冬が崩れ落ちるように前によろめいた。

「信冬!」

俺はとっさに信冬を片手で支えながらとっさに抜いたガバメントを発砲した。

ビシュンと相手の肩をかすめた銃弾だが相手はひるんだ様子もなく

「ホホホ、油断したわね武田の姫」

ヒルダが勝ち誇ったように笑う。

ステルスが相手なら法化銀弾だが残念がら通常弾と武偵弾しか持ってない。

信冬を抱えながら後退するとヒルダの額が打ち抜かれた。

レキの狙撃だ。

ヒルダはにいいと笑いとぷんと水に潜るように影の中に消えた。

逃げた?いや、違う油断するな。

信冬を抱えたまま周囲を警戒する。

「優希!神埼を守れ!」

土方さんが戦闘を続けながら怒鳴った。

「アリア!」

俺が振り返った瞬間、アリアの影の中から出てきたヒルダがアリアの首を右手で掴んだ。

アリアは振りかえろうとするが首を掴まれているためできない。

「くそ!」

ガバメントを向けるがこの位置からじゃ・・・

それに、額を撃ち抜かれて生きてるとなると跳弾を使っても・・・

 

ヒルダは風車の上のレキと俺を見てから俺を見て

「バァーン」

と左手人差し指を伸ばし自分の額を打つ仕草をした

ここに紫電があればまた、違ったのかもしれないが・・・

「愚かな武偵娘にはお仕置きよ」

ヒルダは口を開くと緋色の金属をかぶせた歯でアリアの首筋にかみつこうとしている。

「やめろ!」

俺が怒鳴るのとヒルダがアリアの首にかみついたのは同時だった。

痛みにカメリアの目を見開いたアリア。

同時に、銃声と共にヒルダがアリアから離れた。

見ると土方さんが拳銃でヒルダをけん制したらしい。

反応からして法化銀弾を使ったのだろう。

だが、老人を倒したわけではなかったらしく土方さんは再び刀で老人と激突している。

「嫌な匂い。銀ね。でも、構わないわ。私は第一形態のままもう、殻を外せるなんて。ほほほ。おーっほほほほほ」

アリアは傷口を左手で押さえて致命傷じゃないことを確かめてからヒルダに銃を向けようとしたががくっとその場に膝をついた。

「毒か!」

キンジがアリアに駆け寄る。

「くそったれ!」

ヒルダがアリアから離れたので俺はデザートイーグルを引き抜くとヒルダに発砲する。

轟音と共に炸裂弾がヒルダに直撃したがブラドと同じと考えれば時間稼ぎにしかならねえ。

「キンジ!アリア連れて逃げるぞ!急げ!」

信冬をお姫様だっこで抱えて俺が立ち上がりキンジもアリアを抱えようとしたが

「待て椎名の!遠山の!」

足元に転がってきた手毬から玉藻の声が聞こえてきた。

「待たねえ!ここは逃げる!」

俺が怒鳴った瞬間、目に激痛が走った。

「ぐぅ・・・」

思わず片目を閉じてしまうがもう一方で俺が見えたのはアリアの体が発光している姿だった。

緋色の輝き・・・

そして、俺の内部から感じるのは緋刀の共鳴だ。

「いけない・・・」

意識を取り戻したらしい信冬が言った。

「なんだ、どういうことだ信冬」

今や緋刀の力が引き出されている俺が言うと信冬はまだ、ダメージがあるのか俺が下ろすとなんとか立ち上がり

「う・・・」

「おい!」

信冬を支えながら俺は何が起こってるのか判断できなかった。

≪これは、まずいね≫

スサノオか?どういうことだ?

≪紫電があればよかったんだけどどうしようもないね≫

どういう・・・

「アリア!大丈夫か!アリア!」

キンジがアリアの肩をつかんで声をかけているがアリアは無言のまま、キンジをぼーっとした目で見ている。

「ヒルダめ!殻金七星破りまで知っておったか」

「光栄に思いなさい。史上初よ。殻分裂を人類が目にするのは」

「優希!私はいいですからアリアさんから出てくる殻金の回収を!」

「殻金?」

信冬にそう言った時、アリアの体から発行していた緋色の光が四方に飛び散った。

そのうち2つは人間の姿に戻った玉藻、メーヤさんがアリアの中に戻すが残りが

眷族についた連中に飛んでいく。

「くそったれが!」

土方さんが諸葛に向かい銃を向けたが老人がそれを阻んだ。

「ひひ、ひひひひひ」

老人は舌打ちしている土方さんを見て笑いながら光の一つに手を取った。

「優希!あれを渡したら駄目です!」

「なんかよくわからんが分かった!」

立つのが精いっぱいの信冬から離れて俺は光を手に取ろうとしていた一番近くにいたハビに突撃する。

なまくらの日本刀で刺突に構える。

「きゃはは!」

ハビは俺が突撃捨て来るのにも慌てずに斧を振り上げた。

ぶおんと空を切る斧だが動きが単純なんだよ。

「それ返せよガキ」

構えを下段に変えてハビの手に向かい日本刀を叩き落とした瞬間、横から飛び出してきた誰かが手を下に振りおろした。

やばいと直感的に感じた俺は攻撃をやめ横に飛んだ瞬間、俺が居た場所の地面が陥没した。

ステルスか!

飛びざまにワイヤー仕込みのナイフをそいつに投げる。

牽制になればいい

しかし、ナイフは相手に届かずに地面に吸い込まれるように落下した。

得体が知れない相手なので後退する。

「きゃは、きゃはは」

その間にハビは光を口の中に入れてしまい四つん這いになると霧の向こうに走り去ってしまった。

一瞬、目に映るが脅威の優先度は目の苗の奴だ。

「これは有難い。計画以上の手土産です。すぐにランパン城に戻って調べさせていただきましょう」

諸葛も竹筒に光を入れて懐にしまいこむ。

くそ、状況がほとんどつかめないが嫌な感じだ。

「ほほっ。ヒルダ、お前達親子にはイ・ウーを紹介してやった借りがあるでのこれは遠慮なく貰っていくぞ」

何かはわからんがパトラにも渡ったか

「メーヤまた会おうぜ」

カツェも同様に光を手に霧の中に消えていった。

「ヒヒヒ、土方これは、もらっとくぞ。悔しいかヒヒヒヒ」

あの老人も霧の中に消えていく。

「土方苦しめ!ワシ最高傑作を奪った貴様は苦しんでいけ!ヒヒヒ」

「・・・」

土方さんは追撃しようとせずにそれを見送っていた。

「取り損ないましたの」

ローズマリーは残念そうに言いながら地面に降り立った。

ドレスはズタズタであちこちが破れており月詠との戦いがいかに激しかったかが分かる。

「やー、戦った戦った。希ちゃんには勝てないねぇ」

眷族達が撤退していく中上空で戦っていた連中が降りてくる。

「まあ、ぼろくちゃですのね」

「にゃはは、そだね。ローズも手ひどくやられたねぇ」

「そろそろ決着をつけますか?」

そう言いながら月詠が2人の前方に薙刀手に現れた。

無傷ではない。

だが、あちこちに焦げ跡も存在しているが苦戦したという印象を受けない。

「椎名のRランク。ここは、舞台じゃないよ」

「舞台ですか?そんな、都合のいい場所を用意させるとでも?」

月詠はそういうと1歩右足を滑らせる。

「それでも、私たちが決着をつけることはない」

そう言いながら少女が取りだしたのはアリアの光の1つだった。

「それは!?」

少女はぺろりと舌を出すと

「偶然飛んできたんだよ。はい、ローズにもあげる」

少女は光をパンを割るようにに2つに分けて1つをローズマリーに渡すと自身の分は懐に入れる。

「さて、そろそろ帰らないと希ちゃんが来ちゃうしね。 分身じゃそろそろ限界だろうし。ローズは?」

「ここは、邪魔連中が多すぎますの。優希いずれ迎えに行きますわ」

にこりと微笑むローズマリーとアズマリアの娘と呼ばれる少女が霧の中に消えていく。

追撃はできない。

得体がしれないというのもあるが下手に攻撃したら逆に殺される。

「ああ、そうそうみなさん。私の名前は母とは違うけど名前は同名アズマリア。大アルカナと関係ない私の組織は『ガイア騎士団』、ではまったね!」

これで、ヒルダ以外の眷族は全員居なくなった。

こいつ一人ならやれるか?

「あら、みんな欲のないこと。じゃあ私も帰るわ」

そういいながら、ヒルダが影の中に沈んでいく。

これ以上攻撃するのは危険だ行かせろと俺の直感が告げている。

「ま、待て!」

アリアを抱き寄せるようにしながら、キンジが銃を向けるが発砲はしない。

勝機が見えないんだろう。

「バイバイ。また、遊びましょ」

日傘をくるくる回しながらヒルダは消えていった。

ヒルダの気配は消えた。

これで、周りは味方だけか

俺はダメージが抜けていない信冬に駆け寄る。

「大丈夫か信冬」

「ええ、情けない姿を見せてしまいました」

そう言いながらも信冬は立ち上がろうとせず片膝をついたままだ。

「アリア・・・」

ジャンヌが言いながら走り寄ってくる。

「ジャンヌ・・・」

キンジが少し責めるような声で言ったがあれは仕方ないだろ。

「あれは、俺達の共通の失敗だ遠山。そいつを責めるな」

「土方さん」

振り向くと土方さんと月詠が並んで歩いてきた。

信冬が顔を土方さんから背けた。

「そんなつもりは・・・」

キンジがそう言っていると玉藻が歩いてきて気を失っているアリアを覗き込みそれから、ジャンヌの方を振り向く

「ジャンヌ、土方の言う通りじゃ。多少の小競り合いになることは読めておったが、この小娘が来たこと、ヒルダが殻金七星破りまで使いよったことどちらも予想外過ぎたのでな」

「彼女が緋弾のアリアなのですね」

メーヤ―さんも剣を背負いなおしてやってくる

「どう見るメーヤ、土方、武田」

「気を失っているように見えます。命に別条はありません」

「見立ては俺も同じだ。俺より希の方が知ってるだろうがな」

「ええ、緋弾に精通しているわけではありませんがおそらく命は大丈夫でしょう」

メーヤさん、土方さん、信冬が意見を述べる。

「儂の見た手も同じじゃ。緋殻は2枚でも機能せんことはないからな。弱まりはするがしばらくは大丈夫じゃろう」

ぴこぴこと狐耳を動かしながら玉藻は

「動けるなら追ってくれ。レキはもう、行ったぞ。1枚でも多く殻金を取り戻してきてほしい。ただし、深追いするでないぞ?儂は鬼払い結界で守りを固める」

「はい」

ジャンヌは年下に見える玉藻に頭を下げると俺達を方を見て

「遠山、椎名謝罪する。アリアの容体については残る者に聞いてくれ」

そう言ってジャンヌは空き地島の東側にかけていく。

「待ってくださいジャンヌさん私も行きます!」

立ち上がった信冬がジャンヌの方に向かう。

「お、おい信冬」

怪我は大丈夫なのかと言おうとするが先に土方さんが答えてくれる。

「心配ねぇよ。回復系のステルスを使ったんだろう」

その言葉にむっとした顔になった信冬はあなたには関係ありませんと言うように土方さんから顔を背け俺を見て

「心配ありません。だからこそ、ジャンヌさんと共闘するんです」

と一瞬、微笑んでから霧の中に消えていった。

「ではぼっちゃ・・・優希様。私も行きます」

「ああ、頼む」

「かしこまりました」

振りかえらずに言ったがもう、月詠はいないだろう。

「お前は行かんのか土方?」

玉藻が土方さんに聞くが首を横に振り

「鈴と雪羽が予想進路に回り込んでる。そこで仕留められるならいいが、多分無駄だろうな」

そう言って土方さんもその場から追撃のためかは分からないが去っていった。

いつの間にか霧は晴れかけており周りには壊れた歩行戦車や残されたライトが見えた。

残ってるのはキンジ、アリア、俺、メーヤ―さん、玉藻だけだ。

いろんなことありすぎて頭痛い・・・

≪一息はつけそうだ≫

うるさいぞスサノオ

そう言いながらも俺の体から熱が引いていくような感覚がするから多分大丈夫だろう。

だがまあ、一つだけ言えることがある!

また、俺巻き込まれたよな厄介事!

しかも、超がつくほどの!

勘弁してください神様

 

 




遅くなりました!

ちょっと補足しますがこの話に出てくる話は土方歳三の武偵高時代
水月希と同じチームだった人々の物語と重なります。
なろうで削除された作品ですがいずれは書く予定です。

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