緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第206弾 優希VS水〜そして東京へ

暴風を感じながらも右手に紫電、左手に冬雷を手に水に俺は突っ込む

水は槍を横に振りかぶるとそれを力任せに振るった。

食らえば人間の胴体なんか真っ二つになるであろう破壊力の槍を左手の冬雷で受ける。

受けきれねえかやはり

想像していたので俺は刀で受けるのではなく受け流しつつ下に屈んだ。

ゴウゥと空気が切り裂かれて頭上を槍が通り抜ける瞬間俺は紫電を水の胴体に叩き込もうとする

「なっ!」

俺は舌打ちして後退しようとしたが水の右手から出てきたダガーの投擲が俺の防弾制服をかする。

振りかぶる動作から隠し武器を一瞬の判断で水は投擲したらしい。

さすが、万武ってことか・・・

ならよ

後退しつつ紫電を上空に放り投げるとデザートイーグルを引き抜く

水は槍を引き戻そうとするだろうがこちらのほうが早い

舞姫のおかげでデザートイーグルの衝撃も緩和されている。

3点バースト、全てが跳弾だ。

新幹線の暴風のせいで普段どおりの迎撃ができるか?

「・・・」

水はにやりと笑いながらそれを紙一重でかわす。

一瞬、水の長い髪に弾がかすった気がしたがそれだけだ。

だが、俺は攻撃を緩めない。

デザートイーグルを撃つと同時に俺は銃をしまい落ちてきた紫電を掴むと水に突っ込む。

避ける動作をしていた水は幾分かバランスが崩れているはずだ。

蒼龍2式双牙!

簡単に言えば上段からの二刀の叩き落し。

雷落としのように跳躍はしないが舞姫の状態であれば破壊力はそれを上回る上に隙も少ないのだ。

「っと!」

幾分かバランスが崩れていた水が槍で双牙を受け止める。

俺は渾身の力で押し込みつつ右足のワイヤーを水に向けて放った。

ズンと水の体に球体がつい

たワイヤーが激突するが水はひるまない。

「少し痛いなぁ」

水は更に力を込めて押し合いを続ける。

力じゃ圧倒的に俺が不利だ。

「ほらどうしたの椎名の後継!」

水は俺のことを優希と呼ばずに椎名の後継と言ってくる。

なんだよなんか腹立ってきたぞ

「何があったのか話しもしないくせに人に恨みぶつんな!」

「話してほしいなら倒すんだね!私・・・を!」

ぐっと水が再び力をこめてくる。

 

次第に俺が押され始める。

くそ、馬鹿力め!

《あれを使えばいいじゃないか》

スサノオの声が頭に響く

「分かってるよ」

俺が紫電に意識を集中するとポゥと刀身に緋色の光が広がっていく

「!?」

水はその兆候を感じたのか押し合いをやめて蹴りを俺の体に叩き込んでから後退する。

俺も水の蹴りを後退しながら緩和させると水と距離が出来た。

「それチートだよね。打ち合うもの全て触れた場所消滅させるなんて」

「そういうなってお前の存在そのものがチートなんだから」

そういいつつも俺はやはりと舌打ちする。

発動させたわけじゃないのに使おうとしただけで多少の疲労が増している。

殲滅式の極光は1発。武器消滅型の名前無しはせいぜい1〜2分ぐらいが限界だ。

体力の低下を考えるならそこまで使えないだろうが・・・

「優!今から16号車以降の後ろを白雪に切ってもらう!そいつは任せたぞ!アリアも早く行くんだ!お前には

かなえさんの裁判もある。優を援護してやってくれ」

「そ、そんなあたしは・・・」

インカムからキンジとアリアの声って・・・おい!

「待てキンジ!お前らだけ行く気かよ!」

水を警戒しつつインカムに怒鳴る

「そうしないと新幹線が規定の速度に到達しないかもしれないんだ」

そういうことか。後ろの車両を切り離して軽くするわけだ。

「というか待て!俺も連れてけ!」

「そこからじゃ間に合わないだろ!切り離してもらうぞ!白雪やれ!」

「っこの!」

俺と水が戦っていたのは14号車だ。

先頭車両は遥か彼方だ。

どうやら白雪のステルスを使うらしい

「やべっ!」

俺が走り出したのと白雪の声がインカム越しに聞こえたのはほぼ同時だ。

「星伽候天流−緋緋星伽神・斬環!」

前方から緋色の光が見えがくんと後部の、つまり俺達が乗る新幹線の速度が落ちていく。

「くそったれがぁ!キンジもっとはやくいえええ!」

全速力で走るが白雪が切った車両についたときにはキンジたちの乗る新幹線は遥か先を走っていた。

「お、置いてかれた」

新幹線が見る見ると速度を落としていく。

もはや、追いつく方法もないわけだ

俺は振り返ると追撃を加えずに槍を手にゆっくり歩いてくる水に向き直る。

「ココ達を排除して爆弾を止める。リュパンの子孫があの状態じゃ無理だね」

「そうでもないさ。武偵憲章通りさ。仲間を信じ仲間を助けよだ」

見る見る速度が落ちていく新幹線。

俺はそれを目に入るのを見てにやりと口が緩むのを感じた。

「それにまだ、合流できるみたいだしな」

「え?」

横の線路から新幹線がこちらに向かってきているのを俺は目にしていた。

こんな状況で新幹線が東京方面に行くわけがない。

つまり、キンジ達の新幹線を追っている何者かが乗っていることになる。

追いつくならこれが最後のチャンスだな

「決着つけるなら追って来い水!」

俺は新幹線が向かってくるので携帯式のワイヤーを斜め上の鉄棒に撒きつけると跳躍し手を放すと丁度、下を通った新幹線の

天井に着地する。

ワイヤーを打ち込んで転がるのをなんとか避けた。

最初に乗ってた新幹線が完全に止まってなかったから出来たが怖い怖い。

水も同じように動く新幹線にワイヤーを使い飛び移ると俺達は再び暴風の中互いの武器を手に対峙した。

互いに対峙が合図のように天井を蹴ると槍と刀が再び火花を散らし激突した。

それかから数合、果てることない高速の打ち合いは続いた。

技もないいかに相手の武器を払い体に刃を届かせるかの勝負だ。

集中力を切らせばそれは敗北に繋がる。

どれほど、打ち合っていたか分からない。

素人目には火花が散ってるだけに見えるだろうな

不意に、水が後ろに飛んだ。

「?」

それを追撃することはしない。

ふと、気づいたことがあるからだ。

すでに、新幹線は都市部を走っている。

つまり、東京駅まであと少しか?

「今回はランパンの負けみたいだね」

そういいながら水は俺の後方を指す。

見ると今にも並走しそうになっているのはキンジ達の新幹線だった。

やはり、追いかけてたんだなこの新幹線は

見れば無効化されたのかココ達がキンジ達に抑えられている。

レキや秋葉も無事のようだな。

「優!」

アリア達が俺の姿と水を見て声を上げる。

「来るなよお前ら!爆弾なんとかしろ!水とは1対1で決着つけないと行けないんでな」

「でもあんた怪我が・・・」

アリアが心配そうに言ってくれている。

ありがたいが・・今は

「行きましょうアリアさん。優さんはそれを望んでいる」

「レキ・・・分かった」

「大丈夫です優君なら」

仲直りしたらしいアリア、秋葉、レキが互いに言葉を交わし俺をちらりと見てから車内に戻って行った。

チューブのようなものが俺がいる新幹線の中から伸びそれを伝って平賀さんが向こうの新幹線に渡っている。

多分、この新幹線は減速するんだろう

「水、向こうの新幹線に渡るぞ」

「いいよ」

水と俺はそういって新幹線を再び移動し誰もいなくなった新幹線の上で再び対峙する。

ココ達は車内にアリア達が運び入れたらしいな。

「優!390キロだ!」

キンジの声がインカムから聞こえてくる。

つまり、後6分ほどで東京駅に突っ込むことになる。

ガクンと速度が上がるのを感じながら平賀さん達が爆弾を解除しなかったら死ぬなこれと思いながら

幾度も刃を重ねた水を見る。

暴風に髪をばたつかせながら水はすっと槍を上に掲げた。

ビリと皮膚が切り裂かれたみたいな濃密な殺気が水から発せられる。

ヒュンと槍が回転し始める。

それは力をためるように回転数が上がっていく。

「決着つけようか・・・優希」

「水・・・」

椎名の後継ではなく俺の名前を水は呼んだ。

「このまま東京駅に突っ込んで心中も悪くないけどやっぱり、私の手で殺したい。だから見せてあげるよ私の最強の

破壊力を持つこれを」

な、なんて殺気だ。

それに、あの回転に込められた力を解放されたら

《ダイヤモンドでも両断されるぞ。いや、粉砕か?》

分かってるよ!

スサノオに心の中で怒鳴ってから対処法を考える。

生半可な方法じゃ砕かれて終わりだ。

受けるなんて冗談じゃない。

いくら、紫電や冬雷でもあんなもの受けたら弾き飛ばされるか下手したら折れる。

かといって俺の中であれに対処できるのは極光のみだがおそらく・・・

《極光があれを消し去る前に多分、体に届くぞ。それに、あの槍の先端の金属は・・・》

「ようは、チート禁止って訳だろ」

《どうするんだ?》

「へっ!大技は大技で砕くのが礼儀ってもんだろ」

右手を右肩後方へ。左手左下に構えた。

《ほう、それか。1歩間違えたら死ぬぞ》

そうならないよう祈れよ

俺だって怖いんだぞ。

でも、やる以外道はない!

ゴオオと爆風が耳に俺と水は互いに最後の瞬間を待った。

時間はもはや、ほとんど無い

「奥義」

先に動いたのは水だった。

回転の勢いを乗せて上段から恐ろしい速度で俺を両断・・・いや、粉々にしようと叩きおろしてくる。

「覇山!」

直撃すれば100%死ぬ一撃が俺に迫る。

だが、同時に水の攻撃に合わせて俺も行動を起こしていた。

右手の紫電を滅壊以上の突きを繰り出す。

私の方が早いよスローモーションのように見える中、水の目がそう言っている。

だが、狙いは別にある。

ギイイイイインと鉄が激突する音とともに水の目が驚きに代わる。

紫電の先端が水の槍の打ちおろす刃に激突したのだ。

刃部分に当てるなど白羽取り並みに難しい。

だが、覇山の勢いはわずかに衰えただけ。

このままでは終わるだけだ。

「うらあああああ!」

俺は咆哮しながら紫電を手放し左下段から振り上げた全力の冬雷を落ちてくる覇山に激突させた。

多少とはいえ刺突で勢いの落ちていた覇山の速度が完全に落ちた。

同時に今度は冬雷を手放す

「なっ!?」

技を殺され、刀を手放すとは水も思っていなかったのだろう。

俺は打ちつけられる覇山が新幹線上部に叩きつけられた瞬間、水の槍をつかんで全力で肉薄する。

銃も剣も使わねえ。

ワイヤーもこの体制じゃあたらねえ!

キンジよ俺はお前ほどじゃねえが・・・

「これで終わりだぁあああ!」

がしと水の両肩をつかんだ俺はえええという顔をする水の頭に思いっきり頭突きをかました。

火花が散ったような感覚と激痛が頭を襲った瞬間

「ブレーキだ!武藤!」

というキンジの声

ギィィィィィィィィィ

一瞬車輪が空転するような音とともに投げ出されそうになる。

「くっ!」

踏みとどまろうとするが俺の視界に入ってきたのは負けたよと満足そうに微笑みながら投げ出されていく水の姿。

「くそったれが!」

俺は地を蹴ると水の手を掴みワイヤーを天井に打ち込んだ。

だが、先ほどの攻防で手がしびれておりおまけに頭もくらくらする。

ずるずると水と俺の手が滑って行く。

「もういいよ優希」

「いいわけないだろうが!こんなふざけた形で友達失ってたまるかあああ!」

「!?」

水が小さく口をあけた。

足のワイヤーを頼りに俺は両手で水の手を掴むと渾身の力で引き戻す。

水を抱き寄せる形になる。

思わず後ろを見ると東京駅がみるみる迫ってくる。

だ、駄目だ止まらない!

だいぶ速度は落ちたが100キロぐらいはまだ出てる!

「っ!韓信!」

水が叫んだその時だった。

「いやっほおおおお」

そんな声とともに空から新幹線の前に飛び降りてきたのは・・・

「ね、姉さん!」

世界最強の我が姉、水月希

姉さんは100キロ以上出ている新幹線の先端と激突したと思った瞬間、新幹線が急減速する。

信じられないことに新幹線を素手で減速させてるらしいあの人

だが、それでも新幹線は東京駅に迫る。

そして、激突する瞬間、一瞬新幹線がふわりと後部部分が浮かび上がったかと思うとズウウウンと線路上に下ろされる。

持ち上げて下ろした。

多分、なんかのステルスなんだろうがもう・・・あの人のチートぶりやだもう

「は、ハハハハ」

水を左手で抱きかかえたまま俺は新幹線の天井にばたああんと倒れると心の底から安心した。

結局誰も死なず姉さんまで来たということはもう勝敗は確定した。

「東京〜東京〜お降りのお客様はお忘れ物がないようにお降りください」

と笑いながら俺たちを見下ろしてる姉さんに俺は・・・

「チートをありがとう姉さん」

と心の底からお礼を言った。

 


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