緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第201弾 鈴

達人同士の戦いは割りと早くけりがつく。

それは一般的な常識だがSランク以上の人間にそれは当てはらまない。

1撃で決めさせせない技量や先読みの能力が備わっているからだ。

(雪羽さん!)

俺が鳥居を抜けて階段に到達したのはまさに決着の寸前だった。

右手と左手を腰の後ろに回す雪羽さんと槍を左腰に構える項羽。

びりびりと殺気が俺の後ろに抜け、いかに2人がすさまじい才覚を持っているかを連想させてくれた。

援護など出来ない。

すれば雪羽さんの邪魔になるだけだ。

それほど、俺と実力が違いすぎる。

これがRランク級の・・・武だけでこのレベルに到達できれば・・・

「・・・」

項羽、雪羽さんは互いに構えたまま動かない。

そして、俺がごくりと息を飲んだ瞬間、それが引き金となったように互いは動いた。

「迅雷!」

「破砕!」

新撰組の滅壊を上回る神速の突き、全てを撃破する日本刀と槍が交差した。

2人は互いに技を放ったことにより交差し背を向けあい沈黙した。

ど、どっちが勝ったんだ?

「惜しいな」

口を開いたのは項羽だった。

「その迅雷、完璧であればお前の勝ちだった」

振り返らず項羽が言った。

「無念・・・です・・・」

そういって、雪羽さんはどぅと倒れた。

う、嘘だろ

「さて」

水の顔で俺を見上げた項羽は槍の先を俺に向ける。

 

 

 

勝てるのか?相手は世界最強の武人だぞ

だが、逃げればレキが殺される

「逃げるなら構わんぞ。後ろにいるウルスの姫は首をはねて持っていく」

「やるしかねえのかよ」

紫電を抜き放つと構えるが項羽は動かない。

「先制攻撃は譲ってやるぞ椎名」

完全になめられてる。

重石を外した項羽はここまで圧倒的。

世界を見回してもこんな化け物そうはいない

ワイヤーを外して・・・駄目だそれだけで埋まる差じゃない。

「どうした?こないのか?あの山で見せたあいつを呼べ」

あいつ?ってまさか

《私がご要望のようだ。変わるかわが子孫》

やっぱり、お前があの時俺の体使って項羽を退けたのかよ。

お断りだよ。

《ふむ、では戦い方を伝授しよう》

戦い方?

頭の中だけに響いてくる声に俺は問い返す

《緋刀と呼ばれる力は使いこなせれば世界最強にだってなれる》

世界最強・・・姉さんが思い浮かぶスサノオはそれを読んだのか

《この時代の世界最強のイメージ・・・さすがは椎名直系。ちょっと勝てないかな私でも》

今世界最強になれるっていってたのに翻しやがった。

まあ、それだけ姉さんは化け物だからな

《まあ、君の姉には勝てなくても項羽には勝てる。それを伝授しよう》

 

 

これを放つのか?

「むっ!」

項羽が警戒したように俺を睨んできた。

《それはエネルギー消費が激しすぎる。光を抑えるイメージだ。強すぎず弱すぎず》

こうか?

光が少し弱くなり、紫電の刃に薄くまとわりつくレベルにまで落ちた。

《君はセンスがいい。よし、その状態で彼女と切りあってみればいい》

こうなりゃやけくそだ!

階段を蹴り項羽に接近する。

技も何もない上段叩き落し。

項羽はにただ、槍でそれを受けようとしたのか槍を俺の紫電と激突させ・・・

「何!?」

おいおい!なんだこりゃ!項羽の槍と紫電が接触した部分が消えたぞ!

槍の先が地面に落ちていく刹那、紫電が項羽の体に当たりそうになるが

「ちぃ!」

項羽は躊躇せずに後ろに思いっきり跳躍しつつ腰の日本刀を俺に向かってナイフのように投げつけてきた。

当たれば遠慮なく地面を爆砕するであろうその一撃を俺は迎撃する。

ただ、横になぎ払う

日本刀紫電が激突し、紫電をすり抜けた時その日本刀は形を持っていなかった。

刀が触れた部分が消滅したのだ跡形もなく。

《次はじゃ刀が伸びるイメージ、そうだね西遊記の如意棒が延びるイメージだ》

地面に着地して体勢を立て直そうとしている項羽を一瞬見てからイメージする。

刀が伸びるイメージだ。

刀が巨大化するイメージ。

「っ」

力が吸われるような感覚と共に緋色の光が7メートルほど伸びた。

《それを振るんだ》

ひ、疲労感が半端ねえぞだけどこれで!

「うらあああ!」

技の名前も考えてないので振るうだけだが大火力の一撃。

鳥居に緋色の光が触れた部分を片方を消し飛ばし崩壊していく。

これは、極光と違い長い棒での攻撃のようなものだが当たればおそらく大怪我ではすまない。

 

 

いいからさっさと教ええろよ

《いいかい?まずは君の刀に意識を集中するんだ体の中からエネルギーが流れていくように》

こうか?

刀に体の中から何かが流れるイメージ。

紫電が緋色の光を発しはじめた。

これは極光の・・・

 

「次はお前だ椎名」

「っ!?」

紫電を手に俺は1歩下がった。

気おされてやがる雪羽さんを倒したこいつに・・・

 

「うおおおお!」

だが、項羽も只者ではない。

地面を蹴ると恐ろしい速度で階段を駆け上がってくる。

しまった階段の上だし光の部分が長いから微調整がきかねえ!

振り払った位置に項羽はすでにおらず距離をかなりつめられている。

もう一度この力で切りあうしかねえ

「しいいいなあああ!」

狂気にというより狂喜に満ちた戦闘狂の笑みで項羽は折れた槍を根代わりにして俺に叩きつけてきた。

「何度やっても・・・う・・・」

突如視界が霞みやがった。

しま!

紫電と根が激突するが根は消滅しない。

見ると緋色の光が消えてしまっていた。

拮抗したのは一瞬

「ハハハハハハハハ!」

項羽は笑いながら力をこめてくる。

くそなんて力だ!

俺は紫電を両手で持つと押し返そうとするが地面に組みひしがれてしまう。

ぐぐぐぐ紫電が俺の首の近くまで迫ってきた。

刃は項羽側だがこのままじゃ首の骨が砕かれる。

だが、反撃しようにも力を入れる以外に意識を飛ばせば即座に押し負けるだろう。

ワイヤーを使うおうにも操作するために力を使えば一瞬で骨が砕かれる。

つまりは、手づまりだ。

ぶるぶると渾身の力で紫電を押すが首が迫ってくる。

ひたりと金属の部分が首に一瞬当たった。

ま、まずいぞこれはおい!スサノオ!

《・・・》

こんな時はだんまりかよ!

「どうした椎名ぁ!死んでしまうぞ?」

ついに、鉄の部分が首に当たる。

のど仏に辺りほ、骨がくだける・・・う、ち、畜生!ここまで来て・・・俺は死ぬのかよ

緋刀の再生能力も即死ではおそらく意味を成さないだろう。

お、俺はこんな所で死ぬわけには・・・

首が圧迫されていく。

項羽が一段と笑みを深めた次の瞬間、項羽は目を横にずらして後ろに突如飛んだ瞬間、ナイフが3本木に突き刺さった。

位置的に動かなければ項羽の背中か首に突き刺さっていたはずだ。

「がは・・・げほ」

 

上半身を起こしながら階段の下を見ると人影があった。

グレーの肩から足に近くまですっぽり覆うマント、そしてどんなセンスなのか黄色の麦わら帽子をかぶっている。

背中にあるのはレミントンM700か?

「貴様ぁ!今、いいとこだったのにいい度胸だなぁ!殺す!」

項羽が駆けようとしたした瞬間、奇妙な格好のそいつは狙撃銃を項羽に向ける。

そして、何かを呟いた。

「私は魔弾・・・魔弾は敵を貫き破壊する。それは必然・・・ただ・・・打ち貫くのみ」

銃声は2発。その2発を項羽は紙一重でかわした。

交わされてるじゃねえか!

項羽が根でそいつに殴りかかる。

フードのそいつは動かない。

だが、項羽の攻撃が当たる直前、項羽が体を痙攣するようにして止まった。

「何?」

え?

俺は思わず階段の上を見たが誰もいない。

だが、誰かが銃を撃ったはずだ・・・でなければ項羽の右手の甲から血が出ているはずがない。

「魔弾・・・空間跳躍狙撃。お前・・・」

「肯定」

その顔を見たとき、少しレキに似ていると思った。

無表情だがその目はエメラルドグリーン。

「り、鈴」

雪羽さんが上半身をなんとか起こして言った。

鈴さん?てことはあの人が鈴・雪土月花の生き残りの最後の一人か

「剣聖に続き魔弾まできたか!だが、狙撃手が目の前まで出てくるなんて浅はかだなおい」

そうだ、接近戦が苦手なのが狙撃手というわけではないが相手は覇王。

鈴さんは動かずに

「否定。あなたはもう負けた」

「何?ぐっ・・・」

がくりと項羽が左ひざをついた。

根を杖にしてなんとか倒れていはいないが・・・

「特殊性の麻酔弾を使いました。あなたはもう動けない」

「そ、即効性の痺れ薬みたいなものか・・・くっ・・・今回はこれぐらいにしておいてやる」

 

「否定。あなたはもう逃げられない」

フードの中から名前は忘れたがロシア製のナイフを取り出して項羽の首筋に鈴さんは突きつけようとしたが次の

瞬間、項羽の姿がふっと消えてしまった。

「推定、空間跳躍。テレポートのステルス」

鈴さんは空を見上げながら

「追撃不可能。撃退成功、撃破失敗」

そして、俺たちの方を見る。

「けが人多数。治療を最優先」

な、なんというか特殊な喋り方だな

「希の弟は軽症」

といってから鈴さんは雪羽さんの治療を開始する。

「優希様!」

見ると階段の上からは日向が駆け下りてくる。

その後ろからは武装した風雪さんや武装巫女達。

数で攻めるために準備してたみたいだがとりあえずは終わったよ・・・

こつんと地面に寝転がりながら空を見上げ

「しんどいな・・・」

そのままスゥと意識が遠くなるのを感じて俺は再び眠りについた。

 

 




遅れてすみません

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