緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第196弾 覇王

こいつと・・・水と始めで会ったのはもう、4年前か・・・

お前は、虎児達といないときの俺によく話しかけけてくれた。

「屋上で一人の人発見!」

「今日は学校サボって遊びに行こ!」

俺はお前をあの時は親友だと思ってた。

再開したときもレキがいたからあまり、表現できなかったかもしれないが嬉しかったんだ。

そのお前が今、ランパンを名乗った。

「何の冗談なんだよ水!」

笑顔のまま右手を差し伸べる水を見て俺は言った。

「冗談じゃないよ。私はランパン」

ああ、そうかよ

俺の答えは決まってる。

「仲間になるなんてのはお断りだ。犯罪組織の仲間になる気はねえ!」

「んー、合ってるけど少し違うよ優希」

「どう違うんだよ」

「ランパンに来て。他の勢力や他の派閥には渡さない。私の下でそれを教えてあげるから」

理由はある。

だが、仲間にならないなら教えられないということかよ。

「お前はレキを・・・俺の友達を殺そうとしている。そんな奴にどんな理由があっても従うことなんてできない!」

「ウルスは最終的に私の邪魔になるかもしれない。でも、どうしてもというならランパンの管理の下でレキちゃんだけは生かして

あげてもいい」

「管理だと?ふざけたことを言うな!」

「やっぱり、駄目?ランパンにはこれない?」

何か違和感を感じる。

こいつの目的は他に・・・

「理由を話せ。まずはそれからだ」

「駄目だよ。仲間にならないなら教えられない」

「なら、交渉決裂だ」

「違うよ」

水は右手を刀に置くと

「優希を倒してから、ランパンに連れ帰る。説得の時間はいくらであるよね」

「!?」

後退して紫電を構える。

「始業式の戦い。遅れたけど今からはじめよう。優希!」

水が動いた。

早い。

上段から左、さらに右から

連撃が紫電と激突し火花を散らす。

その速度に怪我をしている俺は受け流すのがやっとだった。

さらに10・20と剣の攻撃が続いた。

反撃の隙がまるでない。

水には派手な技はないがこの速度と反撃させない剣技でその強さを維持してきたのだ。

「ほらどうしたの?拉致しちゃうよ」

「くそったれが!」

わき腹の痛みに耐えながら右腰、左腰のワイヤーを発射する。

水はそれを読んでいたのか体をひねり交わすと左手で右腰のワイヤーを掴んだ。

「捕まえた」

日本刀を振り上げるとそれを俺に向かい振り下ろす。

その動作一つとっても速い。

直撃はもらえねえ!

剣の軌道を読んでかわそうとしたが刃が浅く右手をえぐった。

「っ!」

ありたっけの力で後ろに飛んで傷口を押さえる。

傷は浅い・・・

つっと傷口から血が滴り落ち、紫電に赤い色を作った。

まだ、右手は動くが痛みも含めて不利な要素の一つになっちまうな

「遅いよ」

次の瞬間、水が一瞬で、距離を詰めてきた。

紫電を横殴りに牽制で振るうが水はそれをかがみこんでかわすと刀を左手に持ち替えて右拳を振りかぶった。

まずい!

回避が間に合わないと判断した俺は腹の筋肉に力を入れた瞬間水の拳が腹に吸い込まれるように打ち付けられた。

ぶっ飛ばされて木に激突する。

「うぐ・・・」

ずるずると木に沿うように滑り落ちるように木を背にしたまま地面に座り込む。

「はぁはぁ・・・」

今ので切れたのか頭から血がつっと左目を伝う。

これは・・・勝てないか・・・

体に力が入らない。

意識が遠のきそうだ。

だが、ここで気を失えば死ぬことはなくても起きた先にあるのは後悔だ。

「・・・」

震える手でガバメントのマガジンを入れ替える。

ザッザと地面を揺らしながら水が歩いてくる音が聞こえてきた。

武偵は決して人を殺してはならない。

だが、仲間を殺されるぐらいなら俺は・・・

ドンドンドンと単射を水は日本刀で歩きながら銃弾切りで払いつつ歩いてくる。

まるで、私がそこ行ったら降伏してねというように・・・

これが・・・最後の賭けだ。

ドンと再びガバメントから弾が発射された。

水は同じく銃弾切りでそれを弾こうとした瞬間

「!?」

水の周りで大爆発が起こった。

武偵弾炸裂弾。

最後の武偵弾だ。

これで大ダメージを受けるかしてくれれば・・・

爆煙を見ながら俺は息を吐いた。

「けほ、殺す気だったでしょ優希。ひどいなぁ」

ハハハ、今のかわすか普通。

「あーあ、服ぼろぼろ。刀もどっか飛んで行っちゃったし」

あちこちが破けた服を見ながら水が言う。

だが、次の瞬間には元の笑顔を受かべた。

「でも、もう、終わりだよね」

スカートの中からガシャガシャと一瞬で展開された武具。

黒い棍・・・

東京で粉雪ちゃん達を助けたときに現れたあいつ・・・そうかあれもお前だったのか・・・

だが、それを知ったところで

「ぅ・・・」

ガバメントの残弾を全て撃ちそれを水が棍で弾く。

新しいマガジンを探そうとした瞬間、水が一気に距離を詰めてきた。

正面から俺を見下ろす位置に来るとガバメントを持つ手を踏みつけた。

「ぐぅ・・・」

「もう、諦めなよ。万全なら分からなかったけど今回は完全な私の舞台。勝ち目はないよ」

右手を踏んだまま水が左拳を握り締めるとどぅと俺の体に威力ある1発を放つ。

ザザザと地面を滑りながらも一瞬手を離していた紫電を左手で握り締めている。

「・・・」

俺は紫電を地面に突き立てると杖代わりにふらふらになりながら立ち上がった。

ぼろぼろだな・・・満身創痍だ。

「昔より打たれ強くなったね優希。もう、勝ち目なんてまるでないよ。なんで起き上がるの?」

「俺には・・・負けられない理由があるんだよ・・・」

視界に霞む水をにらみながら俺は言う。

「それはやっぱりレキちゃんのため?」

「そうだ。だが、レキだけじゃない」

紫電を地面から抜いて震える手で水の方に刃を向ける。

「お前らみたいな犯罪者がいるから不幸になる奴がいる。レキもアリアも理子も秋葉も・・・その他の俺の手に

届く範囲の知り合いだけでも俺はその不幸から守りたいんだよ。それが・・・あの時の贖罪にもなる」

「かっこいいね」

水は少し悲しそうに微笑んでから

「でも口で言うだけなら誰でも出来る。力がないなら守れない」

ピピピと電子音が聞こえ水は俺を見たまま、衛星電話らしい小型の機械を取り出して耳に当てた。

「そう。ううん方針変更。今すぐ殺して」

ぴっと水は電源を押す

嫌な予感がする・・・まさか・・・

「レキちゃん確保。シンには殺すように言ったから今のの瞬間レキちゃんはおそらく死んだ」

レキが・・・死んだ?

嘘だろおい・・・

レキ・・・俺はお前と昔何があったのかも完全には思い出せてないんだ。

お前やっと笑顔を・・・ちゃんとした感情を表に出せたんじゃないか・・・

なのに・・・

ああ・・・レキ、俺が弱かったから・・・レキすまない・・・

ドクンと心臓が跳ねた気がした。

体の血が熱くそれを感じられる。

目を閉じてあける。

その目の色は緋色

 

「絶対に許せねえよお前」

スゥと目に入ってきた1本の髪は黒から緋色に染め上がった。

緋刀

傷が塞がっていくのが分かる。

骨折でさえこの力は修復する。

紫電を肉と力強くそれを構える。

水はそれを黙って見ていたが微笑んだまま

「それが緋弾とはもはや違う系統の緋刀だね。傷が塞がるなんてすごいけど何回塞がるのかな?」

「うるせえよお前」

レキ・・・絶対に敵は討ってやる。絶対にこいつらランパンは潰す!

「うああああ!」

普段の数倍の脚力で地面を蹴り水の棍と激突する。

がちがちと金属同士がぶつかり合う音。

「こ、こりゃ・・・まずいかな」

力負けすると感じたのか水は紫電を反らすように受け流し、左足で刀を受け流した逆の方角に蹴りを放つ。

「遅せえ!」

左手で紫電を持ち右拳で水の左足を迎撃した。

「わ!」

打ち払われた左足のためバランスを崩した。

「死ね!」

本心からそういって上段に振り上げた紫電を叩き落した。

それだけの動作で雷落とし以上の破壊力はある一撃を水は棍で受けた。

ぐにゃり

「!?」

水が驚いた顔をした瞬間、棍が真ん中から折れ曲がった。

だが、達人級の水は素早く武器を捨てると後ろに跳躍した。

「どうした水? こいよ」

簡単には殺してやらやらねえぞ!

怒りで冷静さを欠いているのは自覚できているがこれは止められない。

こいつはレキを・・・

「緋刀か・・・話には聞いてたけどさ。すごいね」

水は木の影から棒のようなものを取り出した。

武器を隠してたのか?先がまだ見えないが同じことだ。

「でも・・・」

ザアアアと風が森の中を揺らした。

うつむいて前髪が水の前髪にかかる。

ぷつんと後ろ髪の先端につけていた髪飾りがはじけとび風が水の髪を揺らす。

「私じゃ勝てないくても優希は負ける。私の体で」

何ってやがる?

「殺したくはない。だけど殺しちゃったらごめんね。さあ、貸すよ項羽」

ぞくりと嫌な予感と同時にびりびりと殺気が辺りを包み込んでいくのが分かった。

発生源は水・・・

「ふぅ・・・」

水が顔を上げる。

先ほどとは違い微笑むような柔らかではなく見下すような冷笑

「ほめてやろう小僧」

「なに?」

「俺じきじきにお前を試してやろう」

口調まで変わった水に俺は警戒心を隠せずにいる。

この圧倒的な存在感。

水じゃない?

「誰だお前?」

「お前だと? まぁいい名乗ってやろう。俺の名は項羽、西楚の覇王だ」

項羽だと?確か大昔の中国のおそらくは世界最強の武人の名

「分かりやすく教えてやろう。この水という娘は過去の俺の血を継いでいる」

「幽霊が取り付いたとでも言う気か?」

「幽霊だと?そんなものでない。血の奥底に眠っていた覇王の血がこの娘の力を求める心に反応して覚醒したに

過ぎん」

びりびりと感じるこの存在感と殺気は姉さんクラス・・・い、いや下手すれば姉さん以上の・・・

「覇王。そして、俺のもう一つの通り名はな」

ガシャンと巨大なその武具を担いで項羽は言う。

「万武(バンウー)の項羽。これは正確にはこの小娘の水だがな」

かつて、同じく武により最強クラスといわれていた武人、呂布が使っていたとされるその槍、方天画戟を構えながら奴はいう

「さあ、やろうか」

 

 


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