緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第195弾 援軍なき戦い

シンの仕込刀と紫電が激突し、火花が散り、押し合いになる。

「ふっ!」

シンは微笑を浮かべながら左手の仕込み刀を展開した。

「ちっ!」

俺は舌打ちしつつ、右腰のワイヤーを牽制で放ちつつ後退し左手でガバメントを3点バーストで発砲する。

シンはそれを右のワイヤーを上の木に発射し、それを引き戻すことで回避する。

そして、神戸で使っていたグロッグを俺に向けた。

俺と同じく3点バーストで発砲された弾を銃弾切りで捌きながワイヤーで宙を飛びガバメントを2丁フルオートで撃ちつくす。

シンはそれをグロッグで全弾ビリヤード撃ちで迎撃し、火花が散った。

その動作が終わると俺達は距離をとったまま、地面に降り立った。

やはり、こいつ強い。

戦闘スタイルが似ているという件もあるが何より、あの仕込み刀には毒が塗られている。

食らえばこの状況では100%助からない。

「ふぅ・・・」

汗でぐっしょりしている服が少し重い。

レキ達といたあの時間は思っていたより体力を消耗していたようだ。

長引くと負ける。

「・・・」

ミンはにやにやしながら参戦してこない。

おそらく、シンが一騎打ちをあらかじめ指示していたんだろう。

ありがたい状況だな。

できれば援軍が欲しいところだが・・・

「援軍を期待しても無駄ですよ」

心を見透かされたようだがシンは続ける。

「この状況を作り出すために僕らは苦労しましたからね。外部の組織の力も借りてね」

「どういうことだ?」

俺が聞き返すとシンは糸目を更に細めて面白そうに

「君の人脈は大体調べたんですよ。現在、現役の君の知り合い達の居場所を教えてあげます。

公安0土方歳三は東京、同じく沖田刹那も東京。水月希はソマリア、遠山キンジ、神崎・H・アリア、峰・理子・リュパン3世は呉、

君の家のRランク月詠は現在日本を離れています。武田の人間は皆、山梨の戻っています」

「はっ、つまり援軍はないって言いたいのかお前は?」

「そういってるじゃないですか。遠慮なく殺しあえる舞台を整えて上げたんですから感謝してください」

「上等じゃねえか」

 

「ああ、そうそう」

シンは微笑みながら

「君を殺したらウルスの姫を殺します。その後は神戸でふざけたことをしてくれた藤宮の2人を殺しましょうかね。

拉致のほうがいいですか?2人とも美人ですからきっと、かわいがってもらえますよ中国でね」

「てめえ!」

このげすやろうが。挑発だということは分かる。

だが、俺はそれを俺は利用する。

居合いの構えからありったけの殺気をシンにぶつける。

「これは・・・」

シンの目からは俺が陽炎のように揺れているように見えるはずだ。

殺気による目くらまし。

「飛龍0式陽炎」

「!?」

ギイイイン

シンをきりつけて背後に回る前に割って入った影がある。

「何ぼーっとしてんのシン」

「ミン?これは」

「ちっ!」

後退しながら紫電を構えた。

陽炎の弱点は対象者を1人にしか絞れない。

離れた場所にいたミンには効果がなかったんだろう。

シンは納得したように頷くと

「なるほど、椎名の剣術ですか。高密度の殺気を相手にぶつけて視覚を錯覚させる。もう、通じませんよ」

1回だけで見抜いてきやがったか・・・

「ねえ。シンそろそろ決めちゃわない?できりゃあのウルスの姫捕まえて回復させてからなぶり殺しにしたいからさ」

「神戸の時の因縁ですか? まあ、いいでしょう」

「ラッキー、見てるだけって好きじゃなかったのよね」

青龍円偃月を構えて嬉しそうにミンは言った。

「というわけで2対1で死んでもらいますよ」

くそ、せめて体調があと少しましだったなら・・・

愚痴っても仕方ねえか・・・

「武偵は諦めるな・・・決して諦めるな」

活力を入れるために言ってから意識を集中した瞬間、2人が動いた。

「キャハハ!」

ブオンと青龍円偃月が空を切る。

それを紙一重で交わしながらシンの仕込み刀と紫電を激突させた。

右をミン、左をシンに、ワイヤーを発射し、わずかに2人の体勢が崩れた。

ここだ!

ほぼ、0距離でデザートイーグルをシンに向ける。

終わりだシン!

だが、シンは微笑んだままだ。

引き金を引こうとした瞬間、俺はわき腹に衝撃を受けて吹っ飛んだ。

「がっ!」

激痛に耐えながらなんとか背中のワイヤーを木にかけると後退ししている間に闇の中から銃声が聞こえデザートイーグルを俺の

手から吹っ飛ばした。

いてぇ・・・骨やられたか・・・

激痛で折れてるかもしれないわき腹に手を置きながら闇の中を見る。

レキと戦った狙撃主?いや、

「春蘭か・・・」

「正解」

闇の中から狙撃銃を手にした少女が現れる。

「なぜ、頭を撃ち抜かなかったんです春蘭?」

シンが聞くが春蘭は

「なぶり殺しにしたいシンの気持ちを汲んだ」

「おや、ばれてましたか」

にやりとシンが邪悪な笑みを浮かべる。

3対1か・・・それも狙撃手がいるんじゃ逃げられねえ。

防弾制服で貫通はされていないとはいえ多分骨がやられた・・・

これじゃ満足に動けない・・・

「・・・」

レキの笑顔が脳裏によぎった。

レキ・・・生きて帰れないかもしれない・・・

だけど、最後まで諦めねえ。

武偵弾は炸裂弾が1発だけある。

これで活路を見出すしかない。

緋刀の力は使えない。

あれの発動条件はアリアを守るときにしか発動しない。

少なくてもこれまでは全部アリアが関わっていた。

だが、今回アリアはこいつらに狙われていない。

「無様ですね優希。どんな死ぬ方が好みですか?じわじわ死んでいくか苦しんで死ぬか?」

「どっちも同じだろ」

「ええ簡単には殺しません。骨という骨を砕いて殺してくれと懇願するほどに痛めつけてあげますよ」

「はっ・・・」

冗談抜きにこれはまずいな・・・

3人が包囲を狭めてくる。

やるだけはやる・・・村上、うまく逃げ切れ・・・姉さん。土方さん・・・後は頼みます

相打ち覚悟でやってやる。

紫電を構えたその時だった。

「おお!見つけた見つけた!」

頼もしいその声に俺は顔を上げた。

シン達も同じくその方角を見上げるとそこにいたのは

「やぁ、大ピンチだね優希」

「す、水!」

「はーい、水ちゃんでーす」

とんと地面に降り立った水は俺を見ながら手に持った日本刀を肩にとんとんと置きながら

「レキちゃんは?」

「村上が連れて逃げてくれた。お前が来てくれたならこいつらも倒せる」

そう、水は強い。

1対3も2対3なら話は変わるのだ。

水はシン達を見ながら

「ふーん。まだ、殺せてないんだ」

「え?」

なに・・・言ってるんだお前?

「シン、ミン、春蘭。ウルスの姫を追って。殺してきて」

「しかし、優希の相手は僕が・・・」

「ああ、聞こえなかった? ウルスの姫を殺せ。捕縛でも構わない」

「分かりました」

シン達が村上達が消えた森に入っていく。

「ま、待て!」

シン達を追いかけようとしたが水が前に立ちはだかる。

「動かないほうがいいよ」

「水!お前!」

シン達と知り合いだった。

導き出される答えは一つだけだ。

「いいよ。もう、隠すつもりはない。所属組織はランパン」

信じたくはなかったよ・・・

「ねえ優希?」

水は月明かりを背にいつもの笑みを浮かべながら

「ランパンにおいでよ」

とにっこりと右手を差し出した。

 

 


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