緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第188弾 修羅場

今の状況を説明しよう。

なぜか、レキに膝枕されている・・・

「・・・」

「・・・」

互いに無言だが、これには理由がある。

あのパフェのせいで気持ち悪さが限界に達した俺はレキに先に帰れと言ったんだがレキは拒否した。

ならばと、バス停のベンチで俺が寝転がろうとするとレキは私の膝を使ってくださいと言って来たのだ。

首を少し上げる体勢は楽なので甘えさせてもらったんだがああ、気持ちいい・・・

羞恥心よりも気持ち悪さから開放されたかった俺は運よく曇っている空の下で蝉の鳴き声を聞きながら

体調の回復を待っていた。

「ふぁ」

と、ハイマキのあくびの音が聞こえてきたが俺が右腕を両目に置いてレキに寝顔を見られないようにしていた。

うえ、気持ち悪いてか、レキよく、あのパフェ食って平然としてられるよな

こりゃ、今日の鍛錬はできんかもしれん・・・

♪♪♪

ん?携帯か?

ポケットから携帯を取り出して誰かも見ずに通話ボタンを押す。

気持ち悪いのでレキに膝枕されたまま

「はい?誰?」

「ゆ、優希?」

この声は・・・

「奏ちゃんか?どうした?」

「よ、用がなければ電話しちゃ駄目なの?」

「い、いやいいけど・・・」

「今暇?」

「暇・・・」

といいかけて状況に気づく。

レキに膝枕されてるなんて言ったら潔癖症の奏ちゃんは怒る気がする。

なので

「ちょっと、いそが・・・」

と言い掛けたときだった。

「ああああああ! 優先輩がレキ先輩に膝枕されてるうううう!」

ものすごい大音量の方を首を動かしてみると

げっ!マリ!

「膝枕?レキさんに?」

と電話から奏ちゃんの絶対零度の声が聞こえてきた。

ま、まずいんじゃないかこれ?

「い、いやあのな・・・」

と弁明しようとして気持ち悪くなって起き上がりかけた頭をレキの膝に戻す。

気持ち悪い・・・

マリを見ようと首を曲げると俺に更なる不幸が襲い掛かる。

「・・・」

「・・・」

理子とアリアが俺を見て固まっていたのだ。

ちなみに、理子はクレープをむぐむぐと口に押し込みながら

「や、やるじゃんユーユー、レキュは2週目からでないとルートに入れない超無理ゲーキャラなのに膝枕だ!

熱々?熱々?」

理子は混乱してるのか自分のブラウスに手を突っ込みどーんと前に突き出すようなしぐさをしてアリアにぶつかった。

そして、金縛りがとけたらしいアリアがぎろりと俺を睨んできた。

ちょっ

まずいと俺は慌ててレキの膝から飛び起きると立ち上がりかけてベンチに座り込んだ。

気分悪いのは変わらんか・・・

「れ、レキやってくれたわね! 校内ネットでみたわよ!あんたあたしに断りもなく優よ2人のチームを申請するなんて!」

え?何それ?初耳だぞ

「それについては私も聞きたいと思ってました。

ぎぎぎとロボットのように俺が後ろを向くと秋葉が無表情で俺を睨んでいた。

「どういうことですか?優君?いえ、レキさん」

「レキ、パートナーの横取りは風穴もののルール違反よ!」

そう、俺達とアリアは組んで戦うことが多かった。

俺達は約束はしてないがチームを組む可能性が非常に高かったのにレキは俺と2人のチーム申請を出していた。

それは裏切りでしかない。

というか、これは暗黙の了解で禁則だ。

「あ、あんた達が恋愛するのはあたしはどうでもいい。応援してもいいわ。だけど、パートナーの横取りは許さない!

優はあたしが調教したのよ!」

調教ってなんだよおい!

「アリアさん、秋葉さんは・・・」

レキが立ち上がり俺の横で抑揚のない声をで言う。

「優さんのなんなんですか?」

「私は優君の友達で主君です」

と、秋葉がちょっと動揺したように見える声で言った。

「優は・・・あたしの奴隷よ!」

とアリアも言うが次の言葉は2人を凌駕する言葉に間違いはない

「私は婚約者です」

理子がふおおと鼻息まじりの声をあげアリアは体を前に崩し秋葉は硬直した。

「こ、高校生同士の恋愛なんて・・・ごっこ遊びよ」

「優君。信冬様のことはどうなさるのですか?」

とアリアと秋葉が言ってくる。

の、信冬か・・・あいつがここにいないのは幸いだったな・・・

「遊びではありません。本気です。アリアさん、秋葉さん。マリさん。あなた達は今後優さんに近づかないようにしてください。

優さんは昨夜のように私の部屋に泊まり、昼もできるだけ私のそばで過ごし、夜も一緒に寝てもらいます」

もうやめて!秋葉とアリアとマリのライフはとっくに0よ!という状況で3人が固まった。

いやいやレキ!その言い方だと俺とレキは毎日その・・・親密な関係の行為ばかり夜にしてるような言い方じゃねえか!

レキは秋葉の方を見ると

「秋葉さんと優さんが互いに複雑な思いを抱いていることは知っています」

「っ・・・」

動揺した秋葉が1歩下がる。

「あなたは、優さんを縛り付けている。優さんの幸せを願うならもう、優さんに近づかないでください」

「わ、私は・・・」

顔を下にして秋葉は何かをいいたそうにした。

レキは次にアリアを見ると

「あなたにはキンジさんがいます、優さんは私のものです。引いてください」

「っ・・・」

アリアも何かをいいたそうだが顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

マリは何かいいたそうだが迫力に押されて何もいえないようだ。

「優君・・・」

秋葉が苦しそうにその言葉を言う。

「レキさんと2人のチームを組むんですか?」

秋葉・・・

もしかしたら・・・

俺は考えてしまう。

お前は俺に束縛されすぎている。

このまま、チームを組めば更に一生お前は俺に束縛されることになるんじゃないかと・・・

だから・・・

「そういうことだな。お前は違う奴とチームを組め」

「っ!」

秋葉は衝撃を受けたようにうつむいた。

これでいいんだ・・・秋葉お前は俺に縛られないで・・・

「っ!」

怒ったアリアが俺に掴みかかってきたがレキが間に入り込むとバシィとアリアの頬にビンタしたのだ。

レキ以外の全員が驚いて目を丸くしている。

アリアはそのまま、後ろの理子にぶつかって頬を押さえている。

「優さん下がっていてください危険です」

と、友達だと思ってたレキに危険物扱いされアリアはゆらりと立ち上がった。

「もうなにもかもどうでもいいわ。レキ、よかったわね、今日が水投げの日でバリッツでやってあげる」

といって、両腕を上段に構えた。

「それにさっき通り魔の留学生に掟破りのアルカタを挑まれて結局勝てなくていらいらしてたところだしね」

まさかココがアリアにも?

背後に殺気を感じて振り返ると秋葉も格闘でレキに挑むきのようだった。

実質ハイマキをいれても3対2だレキが

「理子、バック、秋葉サポート任せたわよ」

とアリアが言った瞬間、俺は秋葉の前に出る。

気分は多少は回復した。

「優君」

秋葉が構えを取りながら言った。

「やめろ秋葉!3対2は卑怯だろ」

「そんなにレキさんがいいんですか?」

 「何?」

水投げは基本武器は使用禁止なので秋葉とは格闘になる。

そういえば、秋葉と格闘なんて初めてじゃないか?

俺と秋葉がにらみ合う中、アリアたちの戦いが開始される。

ばっととびかかったアリアにレキはろくな抵抗もできずに押し倒されてしまう。

さらに、レキを助けようとしたハイマキのしっぽを理子が掴みハイマキの前足を払い、うつぶせにさせてべたりと背中に乗ってしまう。

「アハハ、レキュこの子もらっちゃうぞ。もらってフルもっこだ!!」

アリアはレキに馬乗りになり、抵抗もできないレキにこぶしを震わせ止まってしまう。

レキは接近戦ができない。

実家でも荒木源也との戦いでもレキは格闘戦はしなかったらしい。

否、できないのだ。

スナイパーは基本的に接近戦はしない。

遠距離からの一撃離脱が基本なのだ。

「アリア!秋葉やめろ!頼むから!」

レキを助ける余裕はない。

俺が背後に動けば秋葉は俺の背中を襲ってくるだろう。

というか、秋葉・・・俺にここまで攻撃できる自由意志を持ちつつあるお前に少し喜びも感じるな

アリアがこぶしを振り下ろせない状況で膠着したかの思えたが

しゃっ!と銀色の一閃をアリアはかろうじて避ける。

慌てて、アリアが退く。

レキがスカートに隠していた銃剣を抜いたのだ。

「おいレキ!」

レキはそれを銃剣につけ、さきほどとは違い信じられない速度でアリアに襲い掛かった。

狙いは急所のみ、えげつない連打がアリアを襲うがアリアはかろうじてそれをかわし、壁に追い詰められる。

「っ!」

アリアが目を丸くした瞬間レキが銃剣を突き出した。

それはかろうじてかわしたアリアの首の真横の壁に突き刺さっていた。

完全に殺す気だったその攻撃に俺を始め全員が目を丸くしている。

レキはさらに後ろに下がり、連打の攻撃をしかけようとしたので

「レキやめろ!」

レキはキャンセルボタンを押されたみたいに停止するとアリアを見たまま、ドラグノフを担ぎなおした。

「レキ・・・あんたなんか・・・」

友達と思っていたレキにこんな仕打ちをされて

「あんたなんか絶交よ!絶交!二度と顔も見たくないわ!」

無言のまま自分を見るレキにアリアはわめき取らして走り去ったアリアを追って理子も言ってしまい。

俺は秋葉にまばたき信号で

『フォローしてやってくれ秋葉』

と頼むと秋葉は一瞬、考えたのか止まるがアリアを追っていってくれた。

さて、レキに言わないといけないが・・・

人目をあるので俺は歴を連れてよく鍛錬に使っている看板裏にレキを連れてくる

レキは体育すわりして海を見ている。

「レキ」

「はい」

「お前さっき、アリアを殺すきだっただろ?」

「はい」

はいときたか・・・

「なんでそんなことしようとした?」

「風が命じたのです。アリアさん達を優さんに近づけてはならないと」

また風かよ

「そのヘッドホンで聞いてるのが風か?」

「違います。これは私の故郷の風を録音したものです」

「故郷の風?」

「風と共に育った頃と同じようにいられるように聞いています」

「別に誰かに連絡されてるとかじゃないんだな?」

「違います」

「じゃあ、どうやって連絡されてる?風に命令は」

「風の言葉は私の頭に直接聞こえてくる。はるか故郷から」

妄想と言うのか?

姉さんと旅をしてた頃もこういうやつはあまりいなかったからどうしたらいいのやら・・・

まあ、とりあえず

「レキ、これからは人を殺すな」

「なぜですか?」

「武偵憲章でも決まってる。それに俺も殺さないこと決めている」

「それは命令ですか」

「ああ、そうだ」

「分かりました。では殺さないようにします」

その言い方だと殺したことがあるような言い方だが・・・

まあ、いいさ・・・そうだとしても俺も同罪だ。

責める権利などないんだからな・・・

それに、レキが中国とかで武偵の資格をとってたなら合法だからな・・・

中国の武偵は人を殺してもいいのだ。

犯罪者は別に殺してもいいという考えの奴が多いが西側の諸国は基本殺人を禁じている。

どちらが正しいのかは分からんが・・・

にしても、前途多難だ・・・どうしたら前の状況に戻れるんだか・・・

力づくでの排除はなしにしても外部の助けは必要かな・・・

俺はいつの間にか切れていた奏ちゃんの電話に言い訳のメールを打ちながらため息をついた。

 

 


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