緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第187弾 伝説の少女レキ

「さあ、どこからでもかかっておいで!っと、今日は水投げなんだよね」

水は日本刀を鞘に納めると左手を前に右手を顔の横に持っていく。

「きひ」

ココが姿勢を前倒しにして水に突貫した。

一瞬で、距離をつめた瞬間

「ほっ!」

水は左手裏拳をココに放つがココはそれを酔ったような動きで交わした。

「おお!、酔拳ってやつ?」

水はココの左回し蹴りを体をひねって交わし、さらに蹴りにかかったココの足に自分の足を激突させた。

蹴りと蹴り。

押し負けたのはココだ。

ババと、ココは後退すると注意深く水を見ている。

一瞬の戦闘だったがそれだけで力量を把握したらしい。

「私(ウォ)、万武ココ。万能の武人ね。名乗るね」

「元北京武偵高、現東京武偵高 鳳 水! とおり名はないかな」

ココは次に俺を見ると

「椎名の後継 10点、赤点ね。再試験しにまたくるよ」

二度とくんな!

ココは角を曲がって消えていった。

「ぐるおん」

なんだったんだと?ハイマキが俺を見上げて言ってくるが俺が聞きたいよ。

「それ優希の犬?あ、狼か」

「俺のじゃない友達のだ」

「へー」

水はしゃがみこんでハイマキを撫でている。

「アハハもふもふだ」

ぽんぽんとハイマキの頭を軽く撫でてから水は立ち上がった。

腰よりも更に長い黒髪を白い髪留めでまとめている。

姉さんに近い印象を持つ黒い目を俺に向けて

「やー、それにしてもおひさしだね。2年ぶり?」

「3年ぶりだな。 兵庫武偵中以来だ」

「そんなにたっちゃったか・・・」

思い出すように言う水と会ったのは3年前だ。

兵庫武偵中の2学期に転向してきた水はなんというか、孤独な奴だった。

当時、俺はシン達にいじめられていたから屋上にいることが多かったんだが、水もよく屋上で寝てたんだ。

なんとなく話すようになり、仲良くなった2年になる直前、あいつは中国に帰っていった。

別に驚くことではない。

留学生が国に突然帰るなんてこと、ありえないような話でもないしな

「優希今日暇? 久しぶりだし遊びにいかない?」

「あ、ああ・・・暇といえば暇なんだが・・・」

「じゃあ・・・」

「優さん」

その声に俺はびくりとしてしまう。

「れ、レキ」

パレードが終わり、俺に合流しに来たらしいレキだった。

「おりょ? 誰その子?」

「えっと・・・」

首をかしげる水だが参ったななんて説明すればいいんだ?」

「す、水こいつはな」

「分かった彼女だ」

くししと目を細めて水が言った。

「ち、ちが・・・」

違うといおうとした瞬間、背後から殺気を感じる。

れ、レキさん?否定は許さないって意味ですか?

「そうだよ・・・」

「あれ? ええ!本当に優希の彼女!」

そんな馬鹿なという水は驚愕しているな。

「君名前は?」

と、水はレキをまっすぐに見て言うが

「・・・」

レキは何も答えないな。

挨拶ぐらいしろよ

「レキだ」

と俺が変わりに名前を教えてやると水は頷いた。

「私は鳳 水。水でいいよ。で、本題だけど優希借りていい?」

ふるふるとレキが首を横に振った。

「別に浮気じゃないよ。久しぶりに会ったから話したいだけ」

ふるふる

「ありゃ・・・独占欲強い彼女さんだね優希」

まいったねこりゃとばかりに水は右手を頭に置いていった。

レキを引き剥がしていくのは無理そうだな・・・

「じゃあ、水3人で遊びに行こうぜ」

「んん? 私はいいけど他の女の子と同伴していいの?」

こくりとレキが頷いた。

お前が見てるならいいってことか?

「よし!決まり!ご飯食べに行こ。おなかすいちゃってさ」

と俺達は学校の外に出るのだった。

         †

最初は水への案内をかねて学食にしようとしたんだがそこで俺は妙な連中に取り囲まれたんだよ。

「レキ様との日常について教えてください」

「寝顔はかわいかったですか?」

「ていうか死ね!」

RRRかと思ったがどうやら違う一派のレキのファンに取り囲まれ殴りかかられたので食事どころではなく結局

外で食うことにしたのだが炎や、他の学園島の食事どころはRRRやレキの他のファンが張っていたので仕方なく

学園島の外で食うことになった。

水と昔話をしながら歩いていたんだが、レキは何も言わずにとことことハイマキを連れて俺の後ろを歩いている。

心なしか不機嫌な気がするがお、怒ってるのか?

「ここにしよ。犬同伴可能らしいよん」

水がスマートファン(いいなぁ)といじりながら見つけたのはこじゃれたカフェだ。

お昼の時間帯を越えているので人もまばらだ。

「いいかレキ?」

こくりとレキが頷くがや、やっぱり怒ってるのかな?

       †

カフェ『ハリアー』という店の中で俺達はメニューを広げたんだが結構メニューそろってるな。

ん?なんだこれ

『アルティメットグレートハイパースペシャルパフェ3万円』

という、馬鹿みたいなネーミングセンスのパフェがメニューの1番上に書かれていた。

1時間以内に完食したらご飯が全部ただ+1万円か・・・

ルールは3人が食べ、1人がギブアップしたら次の人、さらにギブアップしたら次の人というシステムだ。

ふ、だがやらないぞ!絶対になぁ!

炎での例もあるので慎重に・・・

「アルティメットグレートハイパースペシャルカフェ1つ」

「おおい!」

水がいきなり頼み始めたので俺はばんと机を叩いた。

「いやぁ、これ挑戦したかったんだよね」

どうやら、これを見てこの店にしたらしい

「お客さん達勇者ですね」

とアリスに似たウェイトレスさんが言う。

「アルティメットグレートスペシャルパフェ、略してグレートパフェを倒せたお客さんはこれまで存在しません」

「ほほう」

きらりと水の目が光った。

うや、やる気だぞこいつ

「今日私は伝説を作る!」

「・・・」

ハイテンションの水をよそにレキは無言で机を見ているな。

ハイマキはふあとあくびしてやがる

「協力してね優希!レキさん」

勘弁してくれ・・・

こうして俺達は略してグレートパフェと戦うことになったんだが・・・

パフェがきた瞬間、俺達は目が点になった。

がらがらと巨大な台車に乗せられたそのパフェが・・・っていうかこれはパフェとかいうレベルじゃ・・・

まず、高さだが余裕で3メートルはある。幅も机一杯でまるで雪山のような白いクリームにふんだんにイチゴ

桃といったフルーツ、トッピングも完璧で普通サイズなら実においしそうだ。

「す、水責任取れよ」

と俺が言うと

「ご、ごめんこれは無理・・・」

ちなみにパフェが来るまでに3人の残金を見ると1万4千しかなかった。

いやいや、これを1時間で食えとかねえよ!炎の地獄ラーメンがかわいく見えるぞ

「でははじめて下さい」

ウェイトレスさんがストップウォッチを押してしまう。

「こ、こうなったら!食うぞ!」

俺達は全速力でグレートパフェに挑みかかった

            †

15分後

「うぇ、もう駄目・・・」

「・・・」

俺と水は死んでいた。

うえええ吐きそうだ。

だが、グレートパフェは残り2メートルはあるぞ・・・

水と俺で1メートル・・・われながらよくやったよ。

もやはこれまでか・・・

武偵憲章第10条、武偵は諦めるな決して諦めるな!

「これは無理・・・」

と、俺が横を見たとき

「・・・」

レキがスプーンを手に取ったぞ。

駄目だレキこいつは、姉さんに爪楊枝で挑むようなもんだ!

勝てるわけがない!

「フフフ、最後の戦士登場ですか。ですがあなた達もグレートパフェの餌食となるのです」

とウェイトレスのお姉さんはサディスィテックや笑みを浮かべて言う。

周りのお客さんも「また、若者達が散ったか」「くっ、奴を倒せる奴はいないのか」と

俺達の敗北を早くも決めたらしい

「・・・」

レキはひょいぱくひょいぱくとリズミカルに口にパフェを入れていく。

まずは、周りのフルーツを食べ終わると次にクリームとスポンジをひょいぱくひょいぱくと入れていく。

「おお!」

周りがどよめきだす。

20分後、パフェは1メートルを切っていた。

ひょいぱくひょいぱく

だが、レキの速度はまったく落ちない。

「な、なんて人ですか!」

ウェイトレスさんも引いている。

レキ・・・頼むよ・・・俺達を救えるのはレキだけなんだ・・・

ひょいぱくひょいぱくとパフェが減っていく。

そして、今まで誰にも見ることが出来なかった皿の底が見え、レキはひょいぱくとパフェを口に入れごくりと

それを飲み込んだ。

レキがウェイトレスさんを見ると

「私の感覚ですがあなたが計測を開始されてから49分20秒です」

と、以前アリスに言った言葉と同じように言った。

ウェイトレスさんはひざまづくと

「で、伝説が生まれたわ」

「すげええ!」

わあああとお客さん達が歓声を上げる。

今ここにアルティメットグレートスペシャルパフェは敗れたのだ。

ロボット少女レキに・・・

               †

「やあ、すごかったねレキさん」

店を出てしきりに感心している水。

つうか、あの量がこのレキの体のどこに入ったんだ?

やはり、女の子の胃はブラックホールなのか?

「・・・」

顔色一つ変えないレキ

「っと、もうこんな時間か」

スマホで時間を確認した水は俺達に背を向ける。

「じゃねまた、学校で」

「おいなんだよ突然」

「今日、人に会う約束あるんだ。彼女と仲良くしなよ優希!じゃ!」

と水は人ごみの中に消えていった。

あああ・・・また、レキと二人きりに・・・ハイマキはいるが

「仲がいいのですか?」

ん?

俺の横に並んだレキが言ってくる。

「水か? まあ、友達だからな」

「あの人は危険です」

「危険?水が?」

「何かを隠しています。 それも途方もないものを」

「それも風か?」

「はい」

それに対し、俺は少しむっとした。

「水はいい奴だぞ。 あんまり人の友達をけなすな」

「風が告げているのです。あの人に優さんは近づいてはいけない」

「いいかげんにしろレキ!あいつはいい奴なんだ。これ以上あいつのことは言うな」

「それは命令ですか?」

「そうだ命令だ」

「わかりました」

言ってから俺は最低なことをしたことに気づいた。

怒っていたといえ命令という言葉で意見を押し込めちまった。

「ごめんいいすぎた」

「いいえ」

「でもなレキ。あんまり、風の言うことばかり、聞くなお前の意見で動くようにしろ」

「それは命令ですか?」

また、同じようにレキが言って来る。

俺は笑いながら

「これは、お願いだ」

「・・・」

レキは答えない。

まあ、すぐにうまくいくとは考えてないよ。

さて、これからどうするかな・・・

「これからどうするレキ?どっか行くか?」

優さんについていきますと言うだろうな

「優さんについていきます」

やっぱりな・・・

さて、どこ行こうか・・・

と考えていたとき

「姉参上!」

どーんといきなり、俺の首に手が回り引き寄せられた。

レキも同じらしく中央に引き寄せられ俺の頬とレキの頬がぴったりとくっついた

「☆♯○▲!」

声にならない声で暴れるが腕はまったく動かない。

つうか・・・

「姉さん離して!」

こんなこと出来るのはあの人しかいない」

「ハハハ、昼間からデートとはやるじゃないか」

ぱっと姉さんが手を離したので俺とレキが振り返る。

道路の真ん中で存在感を放つその人は水月希、俺の姉さんで世界最強の人

「ほとんど、強制的にね・・・ていうか姉さん助けて!」

「やだ」

にっと姉さんは笑っていった。

だろうね・・・この話姉さんも絡んでるし

「姉さん。俺7年前の記憶がほとんど思い出せないんだよ。 なんで、レキと婚約することになったか

説明してほしいんだけど・・・」

「それは自分で思い出せ」

思い出せないから聞いてるんだけど・・・

「一つだけ教えておいてやる」

と、姉さんは少しだけまじめな顔で

「お前がレキとくっつくのは悪いことじゃない」

「家同士の問題?」

「それは私は知ったことじゃないがお前のためだ」

「俺の?」

どういうことなんだ?

レキを見るがレキは何も言わずに姉さんを見ているな

「ハハハ、義妹弟を頼んだぞ」

「はい」

とレキが答える。

姉さん公認で外堀が埋まっていく気がする・・・

「さーて未来の妹と弟と遊びに・・・」

と姉さんが言いかけた瞬間

「てめ!見つけたぞ希!」

「げっ!歳!」

見ると人ごみを掻き分けながら土方さんがこっちに向かってくる。

「姉さんまだ、土方さんから逃げてるの?」

あきれて聞くと姉さんは頷きながら

「あいつ怒らせると怖いからなぁ・・・というわけで私は逃げる。とう!」

ばんと姉さんはジャンプするとビルの屋上に降りさらに、ジャンプして視界から消えた。

通行人はにっくりした様子でそれを見ていたが一瞬のことで誰も見ていることしかできなかった。

「逃がすかあの野郎!」

土方さんはそれを追って通路の向こうに消えていった。

あの大人な土方さんも姉さんがらみだとまるで子供だな・・・

しかし、姉さんが言ってたレキとくっつくのは俺のため・・・

「?」

レキが俺を見ている。

レキ・・・お前にはどんな秘密があるんだ?

一体、俺とどんな過去を歩んだんだ・・・

一緒にいればそれが分かるのかな・・・

レキ

 


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