緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第180弾ー粉雪パニック3 その未来

さて、とりあえず0・3単位だ。

マスターズに鏡夜を学園案内したことの任務完了の報告メールを送ってから受信メールを見るとメールがきていた

差出人はE.Wああ、あいつか

本文を開いてみると近況報告だったので情けない話だが単位不足で大ピンチだと送り返すとすぐに返事が返ってきた。

『相変わらずだね君は』

ほっとけとメールを返してから布団の中に入った。ちなみに時刻は午後8時、なんでこんな早すぎる時間に寝るのかといえば

粉雪ちゃんが原因だ。

8時までに就寝しないのは不衛生だと聞かなかったのだ。

秋葉あたりを誘って夜の鍛錬でもしようかと布団の中でごろごろしながら考えている。

キンジも同じらしく、2段ベッドの上で寝返りをうってるな。

まあ、たまには体を休めるかなと目を俺は閉じた。

だが・・・

眠れるわけねえ・・・

浅い眠りには入っていたのだが携帯を取り出すとまだ、午後9時。

1時間しか寝てないな・・・

さっきまで、リビングでは粉雪ちゃんと白雪が何かを話していたみたいだが終わってもう、寝室で寝てるらしい

よし、鍛錬にし行こう。

もはや、すぐには寝れないと俺は思い、そっとベッドを抜け出してトレーニングウェアを取り出そうとした時だった。

かたんと物音が聞こえたのでそちらに行ってみると小部屋の1つから明かりが漏れている。

ここは元々4人部屋なので個人のプライーベートルームがある。

1つかキンジ、1つは俺、もう一つはアリアが私室にしており、物音は最後の空き室から聞こえてきた音らしい。

「ゆ、勇気を出すのです。チャンスは今夜しかないのですから。ファイトです」

なんだろう?

そっと、小部屋を覗き込んでああと俺は納得した。

部屋の中の粉雪はおしゃれしていたのだ。

流行のレイヤースカート。ちょっと大人っぽいUネックの半袖カットソーにデニムのベストを重ね、バックルの大きなメッシュの

ベルトで決めている。

女の流行はよく変わらんが雑誌でありそうな格好だな・・・

中学生の粉雪ちゃんにはちょっと早い気がするが・・・

まあ・・・

粉雪ちゃんが抜き足差し足で玄関に向かい、これも、おしゃれなサンダルを取り出して扉をこっそりと閉めて出て行った。

うーん・・・

時計を見ると午後9時を回っている。

格好からして遠出の可能性もあるな・・・

俺は素早く、防弾Gパンと防弾Tシャツを着て紫電と銃を持つと外に出て粉雪ちゃんの尾行を開始する。

インケスタじゃねえが姉さんとの旅でこういうことは大体学んでるからな。

それも、大概は姉さんがいない場所で強制てきにな・・・

粉雪ちゃんは、モノレールに切符の買い方もほかの人に聞くような箱入りぷりを発揮しながらもなんとかモノレールに乗り

台場に着くと付箋をつけた雑誌をもって緊張した顔で歩いていく。

見てて微笑ましいな

粉雪ちゃんはきらきら輝くヴィーナスコート、まあ、女性向けのショッピングテーマパークを嬉しそうに見上げている。

ものすごく輝いた瞳で・・・

そうか・・・

白雪を見ていれば分かる。

おそらく星伽は外に出ることも大きな制限があるんだろう。

名家とそういうもんで、咲夜も世間知らずだし、俺も姉さんと旅にでるまでは世間知らずだったからな・・・

恐ろしく、まじめな子という印象がある粉雪ちゃんだがたまにはハメをはずしてみたいんだろう。

でも、中学生にとっては少し危ないんだぞこの時間東京は・・・

しゃあねえ・・・

護衛しよう。

俺はそう決意して粉雪ちゃんに見つからないように尾行を再開した。

夜に営業している店を次々と粉雪ちゃんは回り、高級そうなオルゴールを購入してから勢いをつけたのか紙袋を

増やしていく。

おお・・・金持ちだな粉雪ちゃん

星伽の神社は大きいから金に余裕があるんだろうな・・・

幸せ一杯という粉雪ちゃんに頬が緩むのを感じ、微笑ましいと思いながら見ているその時だった。

「な、なんであなたがここにいるんですか!」

ん?

「くっ!」

なんだ?

声の方を見ると・・・えええ!なんであいつがここに!

粉雪ちゃんと鏡夜がばったりと出くわしていたのだ。

なぜか、鏡夜の手には紙袋がたくさん。

しかも、お土産関連ばかり・・・

ああ・・・咲夜か?渡せもしないのにまあ・・・

「お、おまえこそなぜここにいる!俺は・・・買い物だ・・・」

「わ、私もです! あ、いえこれはその・・・」

どうやらお互いに詮索されたくないと互いに悟ったのだろう。

「俺と出会ったことは誰にも言うな!俺もお前に会ったことは誰にも言わない。見なかったことにする!」

粉雪ちゃんもそれでいいと思ったのだろう。

「分かりました・・・」

「それにしても、すごい格好だな」

今風の格好をしている粉雪ちゃんに対して鏡夜は言ったんだろうが粉雪ちゃんは顔を赤くして

「放っておいてください!」

「ふん」

ちなみに鏡夜は動きやすい格好を意識しているのかGパンにTシャツ1枚といった服装だ。

顔がいいので時折、女性が振り返ってねえあの子かっこよくない?とか言われているのを聞いていると

いいなと思ってしまう・・・

なんで俺、女顔に生まれちまったんだ・・・

にしても、気まずいなんてものじゃない。

鏡夜の出現で水を指された粉雪ちゃんはそれから帰ることにしたらしく自由の女神像を経由しながらホテル日航を回り込むようにして台場駅に向かっている。

その粉雪ちゃんの足が止まり振り替える。

「どうしてついてくるんですか!」

そう、鏡夜は粉雪ちゃんの後ろをついていたのだ。

「俺も学園等島に用がある。兄貴に伝え忘れたことがあるんだ」

俺に伝える事?

「兄貴? ああ、あの色魔のことですか?」

「ふん、否定はしない」

否定してくれ弟よ・・・

そして、粉雪ちゃん色魔はやめて・・・

「だが、あいつは俺の目標でいつか必ず倒す相手だ」

「倒す?」

粉雪ちゃんが聞いている。

「ああ、俺はあいつに・・・兄貴に負けた。見下していたはずのあいつにな・・・」

「・・・」

やはり野蛮とか思っているのかもしれないが粉雪ちゃんは何も言わなかっかたがやがて・・・

「あなたも・・・兄のことが好きなんですか?」

「どうしてそうなる?」

不愉快だとばかりに鏡夜は言った。

「あいつは、俺の目標で倒す相手だ」

「いえ、見ているとあなたはしき・・・椎名様のことを尊敬しているようにしか見えないですよ」

「椎名様はややこしい、あいつの名前は優希だ。俺は椎名鏡夜、俺達の前でそれぞれを呼ぶときはいるときは名前で呼べ」

「仕方ありません。呼んであげます」

2人はそんな会話をしながらぎこちない会話を続けて台場駅に歩いていく。

微笑ましいのか?あの2人・・・

星伽と椎名、権力者が見ればいい光景なんだろうが・・・

うーん、やはり粉雪ちゃんは男嫌いだし、鏡夜も協調性ないしこれっきりだろうなこの2人と思いながら見ていると

「こんばんはー一杯お買い物したね」

公園の方から数人の若い男達が歩いてきた。

「君達中学生でしょ?いけないなぁ、中坊がこんな時間に出歩いてちゃ」

数は10人くらいか?

あっという間に鏡夜と粉雪ちゃんを取り囲んでしまった。

「彼氏とお買い物? お!マックス・アンド・コーの袋じゃん。もしかしてお嬢様? お金持ち?」

「ラッキーお金貸してくんない?」

「そんな無愛想な彼氏ほっといて俺達にレンタルされない君?」

ぎゃははわらいながら輪を狭めていく男達

粉雪ちゃんは逃げようにも取り囲まれているので、左右を見渡しながらその場を動けない・

「・・・」

鏡夜はさめた目でため息をついている。

「の、退きなさい!星伽の巫女は悪徒の威迫には応じません」

と、粉雪ちゃんが睨むと男達は態度を一変させる。

「はぁ? 日本語しゃべれやガキ!」

「剥くぞオラ!」

男達の一人が拳銃を取り出して粉雪ちゃんに向ける。

おいおい、最近はあんなチンピラにまで出回ってるのかよ・・・

武偵の制度を取り入れ、銃を持つことを許可した弊害の一つだな・・・

まあ、少なからず銃を持つ人間は昔からいたんだが・・・

あれはクロボシか?中国製の劣悪品だな

「・・・っ!」

粉雪ちゃんは紙袋を落とし慌てて懐をまさぐるがおしゃれなその服に護身用の武器はないらしい

残りの連中も、拳銃や、ナイフ、スタンガンを取り出した。

粉雪ちゃんは気丈な顔をゆがませてその場にへたり込むと涙目で

「・・・お、お姉さま・・・助けて・・・」

と泣き出した。

うーん、これで粉雪ちゃん1人なら助けに出るんだが・・・

あいつがいるしな・・・

「おら、彼氏もびびってねえで反抗したらどうなんだ?中坊?」

と、よせばいのに拳銃を持った男が鏡夜にへらへら笑いながら言った。

知らねえぞ・・・

「ふん、雑魚がおもちゃをもっていきがって楽しいのか?」

「あ?」

拳銃を持った男が言った瞬間

ゴキ

鏡夜は男の拳銃を持つ手を掴むと足を蹴り上げて男の右手をへし折った。

「え?」

ありえない方向の曲がっている腕を見た男は

「う、うぎゃああ!俺の手!手がぁ!」

と激痛にのたうちまわる。

「た、タク!」

仲間達がうろたえた声を出す。

まさかこの人数差で反抗されるとは思っていなかったのだろう。

鏡夜も日本刀紅蓮を持ってはいない。

だが、鏡夜の動きは迅速だった。

まず、残りの1人拳銃を持っている男に襲い掛かるとその、腕を掴み、回り込むと首筋に手刀を叩き込むと

男はぐっと、気絶してしまった。

さらに、鏡夜はしゃがみこむと右手を基点に回し蹴りで男たちを倒し、容赦なく蹴り、手刀を叩き込んでいく。

実力が下でも囲まれたら先手必勝が定石だ。

「え?」

一瞬で7人を無効化された残り3人はうろたえた。

まあ、当然だろう。

小さい頃から戦闘訓練を受けている鏡夜がごろつきに負けるはずがない。

たとえ、素手でもな

「まだやるのか? クズ?」

挑発するように鏡夜が言う。

「くっ・・・」

それだけで目の前の相手が次元が違うと男達は悟ったのだろう。

動けずにいる。

「あ・・・」

粉雪ちゃんはそんな鏡夜を見上げている。

それに対して鏡夜は言い放つ

「勘違いするな。俺は別にお前を助けているわけじゃない。ゴミを片付けているだけだ」

「て、てめえ!」

「なんだ?クズ?」

本当にゴミを見るように鏡夜は相手を見下している。

あんなめで見られたら子供とかなら精神崩壊するだろうな・・・

ゴミだのクズだの言われて男達の一人が言うが何も出来ない。

これは鏡夜圧勝で終わりかと思ったその時だった。

「やー! 彼氏君強いね」

ん?あいつ・・・公園の中から出てきた奴・・・フードを深くかぶっているので顔は見えないがかなりの小柄だ。

声はマスクしてるようでこもっている。

「先生!」

男達がフードの男(?)に道を明ける。

「ふん、お前がクズののリーダーか?」

意識しているのかいないのか、座り込んでいる粉雪ちゃんの前に鏡夜が立つ。

フードの男(?)は口をにやりとすると

「やー、リーダーちゃリーダーだけどね。 別にこいつらのやることに興味ないわけだよ。君・・・強いね。

私と戦ってくんない?」

「何?」

鏡夜が言った瞬間、フードの男が動いた。

ジャキジャキジャキと手に組みあがったのは

「くっ!」

連結式の棒、棍だ。

ズガアアンとアスファルトをえぐったその一撃を

「ほいっと!」

重力を無視するようにフードは不振り上げる。

鈍い音がし鏡夜の腹に棍がめり込んでいる。

「がっ!」

刀があれば少しは違ったかもしれない。

だが、あの動きは一流クラスの動きだ。

鏡夜は苦痛に顔を歪ませながらも右手を振りかぶり殴りかかる。

それは、一般人なら普通に当たっただろう。

「遅い遅い!」

フードは棍を地面において基点に飛びのくと横殴りに鏡夜の頭に棍をたたきつけた。

ガッと嫌な音がし、鏡夜がひざを突く

「終わり?」

とフードは棍を肩に乗せてトントンと叩いた。

「っ! 鏡夜!」

額から血を流した鏡夜に粉雪が悲鳴を上げて駆け寄る

「馬鹿・・・女・・・逃げろこいつは雑魚じゃ・・・」

「んじゃ、彼氏君の前で君は強姦決定!」

と棍を振り上げた瞬間

ドオオオン

「おっと!」

衝撃で棍を揺らしたが取り落とさずにフードは新たに現れた相手を見た。

「何?新手?」

さて、護衛は表に出てきましたよと

「人の弟と友達の妹に何してやがるてめえ」

そう、怒りで戦闘狂モードを発動させた俺はデザートイーグルで棍を弾き飛ばそうとしたがフードはそれを飛ばされなかった。

紫電を抜いてフードと対峙する。

いきなり、刀を抜いたのは相手の力量を悟ったためだ。

少なく見積もっても小太刀のみで戦うアリアと互角かそれ以上の戦闘力があいつにはある。

「・・・」

無言で紫電を両手で構えて相手との距離を少しつめる。

「くっ・・・なんでおまえが・・・」

「動かないで!」

と粉雪ちゃんは買ったらしいブランド物のハンカチを鏡夜に惜しげもなく当てて、血をぬぐう。

俺は残りの3人にも気を払う。

「へぇ、刀使えるんだ。んじゃお手並み拝見と」

フードが動いた。

一瞬で加速してくるとぱっと、両手で持っていた棍の左手を離して横殴りに殴りつけてくる。

それを俺は紫電で受け止めながら2歩後ろに後退しながら、右腰のワイヤーを発射した。

今日の右腰のワイヤーの先端は鉄球だ。

「うわ!」

フードはいきなり飛び出してきたワイヤーに驚いて右に飛んで回避した。

あれを回避するか?

完全に不意打ちだったのに!

「いやぁ、危ない危ない。そういやそれがあったね」

ん?その言葉に俺は違和感を覚えた。

「どこかで会ったか?」

これほどの棍の達人と戦った記憶は俺にはない。

「ハハ、何かと有名だからね君。 何気に超人ランク乗ってるし」

「何物だおまえ?」

ただの、チンピラじゃないのは間違いない。

だが俺は、こいつをどこかで見た気がする。

また、忘れてるのか?

いや、違う・・・

これは引っかかる程度だ。

「うん、名残惜しいけど白熱しすぎたらまずいからね。今日はおしまい。またね」

がしゃがしゃと連結棍をしまうと、フードはチンピラ3人にじゃねと言って走り出した。

そのあまりの思い切りのいい逃走に俺や残りの3人はあっけに取られている。

「え!先生!」

頼みにしていた人に逃げられ、3人はうろたえ、一瞬俺達を見て、特に俺を見て力量を悟ったのだろう。

「お、覚えてやがれ!」

お約束のせりふをはいて逃走して言った。

「・・・」

パチンと紫電を鞘に収めてから俺は鏡夜達に歩み寄る。

「おい、大丈夫か鏡夜?粉雪ちゃん」

「わ、私は大丈夫です。椎名・・・優希様、でも鏡夜が・・・」

粉雪ちゃんが持つブランド物のハンカチは真っ赤に染まっていた。

「もういい。血は止まった」

といい、鏡夜が立ち上がった。

「病院行くか?」

「必要ない・・・」

負けたことが悔しいのだろう。

鏡夜は粉雪ちゃんのハンカチをポケットに入れるとふらふらと歩き出す。

「鏡夜!」

粉雪ちゃんが後を追おうとするが

「放っておいてやろう粉雪ちゃん」

「で、ですが怪我が・・・」

「男にはプライドってもんがあるんだよ。馬鹿でも女の子の前では情けない格好は見せたくないもんさ」

「理解できません!」

粉雪ちゃんは怒っているようだが少し、反省してもらわないとな」

「元々、夜遊びした粉雪ちゃんにも責任はあるけどな」

その言葉に粉雪ちゃんははっとし、事態の重大さに気づいたらしい

「ゆ、優希様助けていただいたことには感謝してます。 こ、このことは星伽にはなにとぞ内密にしてください」

今になって、恐怖がよみがえってきたのだろう。

粉雪ちゃんはぽろぽろ泣きながら言ってきた。

なんとなく、ここで鬼畜な奴なら黙っててやるかわりに・・・という展開になるんだろうなと考えてから

素直に

「いいよ別に」

「ほ、本当ですか?」

「ああ、まあその代わり条件がある」

条件と聞いて粉雪ちゃんはびくりと体を震わせた。

ある程度の条件は飲まないといけないと怯えているんだな・・・

心配要らないさ俺の条件は切実だ。

「覗きと、色魔ってところ水に流してくれないかな?」

ハハハと苦笑しながら言うと粉雪ちゃんは目を丸くして

「それだけでいいのですか?」

「ああ、それだけでいいよ」

というか色魔だのといわれ続けたら俺の精神崩壊しちゃうからな

「あ、ありがとう・・・ございます」

「言いって、んじゃ帰るか」

送っていくと言って紙袋を拾い、粉雪ちゃんと歩いて駅に向かい歩き出す。

鏡夜は心配しなくてもいいだろう。

あいつは、意地っ張りだし構えば余計に拒絶してくるだろうからな・・・

それに、姿は見えないが椎名の護衛の気配もあったから俺が出なければ彼らが出ていただろう。

丁度、電柱の上で粉雪ちゃんを尾行していたあの白雪さんみたいにな

後は任せとけよと目配せすると白雪はごめんねと手を合わせてきた。

いい姉さんだな粉雪ちゃん。

さて、一応粉雪ちゃんのことが星伽にもれないように・・・

何人かにメールしてから最後に戦ったあいつのことを思い出す。

一体何者だったんだ?

土方さんもいないし、あいつを調べる方法はあのチンピラを締め上げることだがおそらく奴らは知らない気がする。

一応、救急車をあいつらが倒れている場所に手配しておいたがもう、関わることもないだろう。

ま、いいか

翌朝、星伽の運転手を名乗る美人のお姉さんがやってきた。

長ーいリムジンが止まってるな。

椎名も金はあるがリムジンは金持ちの相場だな・・・

俺は隼のほうが好きだけど

帰る準備をすませていた粉雪は大きくなった風呂敷包みを運転手に渡すと玄関で三つ指をついた。

「逗留中、何から何までお世話になりました。優希様、お姉さま、遠山様ごきげんよう」

少しは、男に対する態度も軟化したらしい

キンジもああ、粉雪も元気でなといっても不快そうな顔はしていない。

白雪が車まで送るというので俺達も車まで向かう途中、エレベーターを降りて俺のそば場までやってきた粉雪ちゃんは

「優希様」

「ん?」

ちょっと赤くなりながら、怒ったように

「鏡夜に守ってくれてありがとうと伝えておいて下さい」

「直接言ったらどうだ? まあ、伝えとくけど」

といいながら俺はメモを粉雪ちゃんに渡した。

鏡夜のメアドと電話番号、そして、俺の連絡先だ。

「困ったことあったら力になるぞ? 俺こう見えて人脈すごいから」

「はい」

粉雪ちゃんが鏡夜に直接ありがとうというかは微妙だがなんだか見ていて楽しいな

「優希様、鏡夜はこの武偵高に来年入学するのですか?」

「どうだろう? 一応、興味はあったみたいだけど、なんでだ?」

「私は武偵という仕事を侮辱していました。ですが、ここにきて認識を改めることにしたんです。まだ、好きにはなれませんが

お姉さまは結局、星伽に帰る意識がないということが分かりましたので逆に考えたのです。それなら私がくれば

ずっとお姉さまと一緒にいられるのではないかと」

どれだけお姉さま大好きっ子なんだこの子は・・・

その未来を想像したのか粉雪ちゃんは笑顔を俺に向けてきてくれた。

そして、俺も想像してしまう。

東京武偵高の制服を来た鏡夜と粉雪ちゃんがいがみ合いながらも供に歩いて行くその姿を・・・

そんな未来もあるのかもしれないな・・・

 


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