緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第17弾 悲しみ

アリアと別れた次の日、俺は手のトレーニング禁止を言い渡されランニングだけだけしてキンジの部屋に戻ると目玉焼きをトーストに乗せてもぐもぐしているとキンジが起きてきた。

 

「よう、おはよう」

 

「おう」

 

キンジと俺は挨拶してからねぼけながらトーストを焼いて席に座るキンジ

 

「その、優はアリアと組むのか?」

 

一番いやな話題。

俺は首を横に振った。

たぶん・・・わからんからな

 

「お前はどうなんだよキンジ」

 

聞いた話によればキンジはアリアと怒鳴り合いになりもういいと言われてしまったらしい。

だが、キンジよ。

俺は知ってるんだぞ。 迷ってんだろ?

 

結局、俺とキンジはぶらぶらするかということで学園島のクリーニング店によりその帰りにアリアを見つけた。

前髪を作るアリアが美容院から出てきたとき俺は胸に痛みを覚えた。

くそ、あれは俺の責任でもあるんだよな・・・

どうするという指信号を見て俺は追跡と即断した。

キンジも異存はないらしく追撃が開始される。

アリアは私服で白地に薄いピンク柄の入ったワンピースを着たアリアは電車に乗り新宿で降りる。

ちくしょうデートか?

ん?ちくしょうって何言ってんだか

俺は別にアリアの恋人や好きな相手じゃないんだぞ?

新宿警察署? こんなとこに・・・

 

「下手な 尾行しっぽがちょろちょろ見えてるわよ」

 

振り返らずにいきなりいってきたアリアに俺達はへへへと笑いながら

 

 

「質問せず自分で探るのが武偵だろ?」

 

「教えるかどうか迷ってた・・・でも、ここまできたらついてきちゃうでしょ?」

 

なんなんだと思いながらも俺とキンジは警察署にアリアに続いて入っていった。

 

留置人面会室でその人を見た瞬間俺は確信した。

ああ、この人はアリアの・・・

 

「まあ、アリア その人達は彼氏さん?」

 

「ち、ちがうわよママ」

 

へー、アリアの母さんってどちらかといえばお姉さん見たいな感じだな

って間違ってますよお母さん! なんで俺ら2人とも彼氏みたいになってるんだ?

いわゆる天然さんかな?

 

「じゃあ、大切なお友達かしら? へーえ、アリアもボーイフレンドを作るお年頃になったんだ。 友達を作ることも下手だったアリアがねぇ ふふ、うふふ・・・」

 

 

「違うのこいつは遠山 キンジ! こっちは椎名 優希! ―そういうのじゃないわ絶対に」

 

くそう、そこまではっきり言う必要ないだろアリアよ

俺はアリアの母と目が合い

 

「…優さん、キンジさん初めまして、私アリアの母で―神崎かなえと申します。 娘がお世話になっているそうですね」

 

「「い、いやぁ」

 

同時にどもる俺とキンジ

しかし、アリアはそれを無視するそうに

 

「ママ、時間が3分しかないから手短に話すけどこいつら武偵殺しの3人目と4人目の被害者なのよ。 先週武偵高で自転車で爆弾を仕掛けられたの」

 

う、改めて聞くと間抜けな話だよな

 

「・・・まあ・・・」

 

かなえさんは表情を固くする。

 

「さらにもうひとつ、奴は一昨日バスジャック事件を起こしてる。 奴の活動は急激に活発になってきているのよ。 ってことはもうすぐ尻尾をだすはずだわ。 だから、あたし狙い通りまず武偵殺しを捕まえる。 奴の件だけでも無実を証明すればママの懲役1064年から942年まで減刑されるわ。 他の事件も最高裁までに全部なんとかするから」

 

事実上の終身刑か・・・

 

「そして、ママをスケープゴートにしたイ・ウ―の連中を全員ここにぶちこんでやるわ」

 

「アリア気持ちは嬉しいけどイ・ウ―に挑むのはまだ早いわ―『パートナー』は見つかったの?」

 

「それは・・・どうしても見つからないの。 誰も、あたしにはついてこれなくて・・・」

 

ちらりと俺とキンジを見て言うアリア

だよな

 

「駄目よアリア あなたの才能は遺伝性のものでも、あなたは一族のよくない一面 ―プライドが高くて子供っぽい一面も遺伝してしまっているのよ。 そのままではあなたは半分も能力を発揮できないわ。 あなたにはあなたを理解し。 あなたと世間を繋ぐ橋渡しができるようなパートナーが必要なの。 適切なパートナーはあなたの能力を何倍も引き出してくれる。 曾お爺様にもお祖母さまにも優秀なパートナーがいらっしゃったでしょ?」

 

「…それはロンドンで耳がタコになるぐらい聞かされたわよ。 いつまでもパートナーを作れないから欠陥品とまでいわれて・・・でも・・・」

 

「人生はゆっくり歩みなさい。 早く走る子は転ぶものよ」

 

かなえさんはすいうと長い睫毛の目をゆっくりまばたかせた。

 

「神崎時間だ」

 

管理官が時間を見ながら告げる。

 

「ママ、待ってて!必ず公判までに犯人は全員捕まえるから」

 

「焦っては駄目よアリア。 あたしはあなたが心配なの1人で先走ってはいけない」

 

「やだ! あたしはすぐにママを助けたいの」

 

「アリア私の最高裁は弁護士先生が必死に引き延ばしてくれてるわ。 だからあなたは落ち着いて、まずはパートナーを見つけなさい。 その額の傷はもう、あなた1人では対応しきれない危険に踏み込んでいる証拠よ」

 

「やだやだやだ!」

 

「アリア・・・」

 

「時間だ」

 

興奮するアリアをなだめようとアクリル板の向こうから身をのりだした管理官がはがいじめにする。

 

「やめろ! ママに乱暴するな」

 

アリアは激高してアクリル板に飛びかかるがびくともしなかった。

かなえさんはアリアを悲しそうな目で見ながら管理官2人に力づくで引きずられ向かいの部屋から運ばれていった。

 

 

 

 

 

「訴えてやる! あんな扱いしていいわけがない。 絶対に訴えてやる」

 

曇り空の下で新宿駅に向かうアリアの後ろで俺達は声をかけられずにいた。

ああ、分かったよアリア。

お前が戦う理由と俺が護衛すべき敵が

イ・ウ―という組織に濡れ衣をきせられた母親を助けるために・・・

 

「・・・」

 

そのアリアが突然止まる。

俺たちも止まり見るとアリアは手を握り締め肩を怒らせ顔を伏せていた。

その足元に水滴がぽたぽたと落ち始めている。

アリアの・・・涙だ。

 

「アリア・・・」

 

「泣いてなんかない」

 

怒ったようにいうアリアの肩は震えていた。

町を歩く人々は道の真ん中で立ち止まる俺たちを見てにやにやしている。

痴話げんかとでも思っているんだろ。うせろ!

俺は本気で殺気をぶつけてやると慌てて目をそらして行ってしまう。

 

「おい、アリア」

 

キンジがアリアの前に出て声をかける。

俺も行くとアリアは歯を食いしばりきつく閉じた目から涙をあふれさせ続けていた。

 

糸が切れたように泣き始める。子供のように・・・大きな声で

 

「うあああああぁあ! ママぁー・・・ママあああぁぁぁぁぁ!」

 

新宿のネオンの光が道を照らしまるでアリアの涙に呼応したように通り雨が降り出す。

ただ、悲しいと言う感情だけが俺の心を支配していた。

でも、泣き続けるアリアに俺もキンジも何もしてあげることはできない・・・

できないんだ。

ただ、無言でその時間は過ぎて行く。

 


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